表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

660/661

第660 ゾンビ因子変異株が新たな進化を始める

 アッシュバーンに向かう軍用装甲トラックの中、ずっと降り続けている放射線の雨に対抗するために、俺はトラックそのものに結界をはった。皆はフードを外して、チョコレートを口にしている。


 ミオが言う。


「なんか、不気味ね」


 皆が頷いた。建物が黒い灰で黒く染まり、ゾンビ達が動きを止めて空を見上げている。


「ゾンビ、なにしてんだ?」


  運転席のタケルの問いに、俺が見たままの事を言う。


「なにか……口が動いてないか?」


 ゾンビ達の口が、パクパクと開いたり閉じたり。それを聞いて、アビゲイルが言った。


「あえて、放射線の雨を取り入れているのかもしれません」


「あえてか……」


「ゾンビ因子の変異株が、そうさせているのかも」


 研究員も頷いた。


「バージョンアップに、似てるんじゃないですかね?」


「バージョンアップ?」


「あえて、細胞を壊して、ゾンビ因子で補修する事により繋がりを良くしているのかも」


 タケルが、うんざりした顔で言う。


「きもちわりい」


「ウイルスもそうであるように、ゾンビ因子も学習をするんです。病原菌のパンデミックと同じように、今までのがアルファ型だとすれば、ベータ型に、進化しようとしているのかもしれないと言うことです。闇雲に襲ってこずに、見上げているゾンビは変異種というわけです」


「進化中つーわけか。キモいなあ……」


 そこで、オオモリが何か気づいたように言う。


「えっと……なんか、規則的にゾンビが立ってません?」


 オオモリの声に、アビゲイルが運転席に言った。


「武さん。停めてください」


「あいよ」


 車を停めてみれば、確かにオオモリが言うように何か規則があるように見える。それを眺めていると、オオモリが手をポンと打った。


「たぶんですが、あちこゾンビが、一体のゾンビに向かって立ってます」


 皆がそれを確かめるために、外を眺めた。


「は!」


 アビゲイルが息を飲んだ。


「どうした?」


「もしかしたら……宿主が……他のウイルスを呼んでいる?」


 オオモリも、何かに気が付いたように言う。


「なんか、ハブみたいじゃないですかね?各拠点に、細かい回線が集まってるみたいな」


 それに、マナが答える。


「まさか……ゾンビが同期してる?」


 研究者が言う。


「バイオリンク……」


 アビゲイルが驚愕の表情を浮かべる。


「物理的な接触なしに、神経系を同期?」


「はい。ナノ研究にも入っていました」


 オオモリが、指をさして言う。


「まってください。えーっと、あれ。上見てないですよ」


 すると、一つの集まりの視線が、俺達のトラックに向いていた。


「見てる……」


 そいつらは、濁った眼でこちらを見ている。それを見て、俺が言う。


「処分しよう」


 だがアビゲイルが止める。


「待ってください。ミスターヒカル。あれが、どういう動きをするのかを見ておいた方がいいです」


「そうか……」


 すると、真ん中のゾンビがこっちを指さす。次の瞬間、周りのゾンビ達が石をこちらに投げ始めた。


 ガン! ガゴン! と結界をはったトラックに石がぶつかる。すると真ん中の奴が、口を開いた。


「がああああああ」


 すると、一斉に周りのゾンビだけがこちらに走って来た。


「指示を出した?」


「明らかに操ってますね」


「組織的な動きを……ゾンビが」


 ゾンビ達がトラックに飛びつく前に、俺が剣技で全てを斬り落とす。それを見ても、真ん中のゾンビはただこちらを見ているだけだった。


「あれは、近寄って来ない」


「他の個体が破壊されたのを見て、近寄れば、やられると学んだのです」


 研究員が言った。


「学習し始めた……次の段階に……入ったのかもしれません」


「ジェネシス・プロトコル・オーダーの一貫……。あれは、序曲ということかしら」


「そうなります」


「アークパンドラは、人間を間引くだけでなく、適合者を守るための家畜に変えようとしている……」


 皆が自分を抱きしめるような格好をして、ぶるりと身震いした。


「気持ち悪い……」


 俺はトラックから降りて、剣技を繰り出す。


「飛空円斬!」


 視界に入るゾンビが、全て斬れ落ちた。このゾンビを処理したところで、先にはまだまだいるだろう。だが、その先にあるものが何かを考えると、今は一体でも減らしておこうという気持ちになった。


 俺が、トラックに乗り込むと、アビゲイルが言う。


「これは、恐らく進化の初期段階です。核戦争後の事を、想定している可能性もあります」


 クキが頷く。


「だろうね。いよいよ、奴らの思う通りになりつつあるという事だ」


「はい」


 そこで俺が、タケルに行った。


「トラックを出してくれ。とにかく、その大元を叩くしかない」


「だな。出発すんぞ!」


 俺達のトラックは、その場を離れて先に進んだ。


 オオモリが続ける。


「モーガン・ウイリアムがアッシュバーンに潜伏している理由が、これで分かりましたね」


「ええ、検証データを集めているのでしょうね」


 モーガンがあえて、そこにいる理由が判明した。以前は一定方向に向かって歩くだけだったゾンビが、違う動きをし始めた事で、奴らの狙いがなんとなく見えて来たのだ。


 あたりの風景を見て、ミオが悲しそうに言う。


「閑静な住宅街なのに……あんな小さな子まで……」


 ミオの視線の先には、家族や子供などのゾンビが立っていた。


「とにかく、止めなければな」


 その町を抜けたトラックは、林の間を走る道路を走り始める。どこまでも真っすぐに続く道は薄暗く、泥で真っ黒に染まっていた。こんな荒廃した大地の未来に、人間の幸せがあるわけ無いと思った。


 次第に車が密集し始める。どうやら逃げようと思って、ここで詰まってしまったらしい。


「推撃でどかす」


 俺がトラックを降りて、道に詰まっている車を吹き飛ばした。トラックが後ろについてゆっくり進み、またゾンビ達がぽつりぽつりと集落をつくるように塊り、こっちを見ている。


「今度は……そうか……アビゲイルの言った通りだな」


 そのゾンビ達は、手に包丁や鉈、バールやスコップを持っている。アビゲイルが言った、ウイルスの進化と言う意味が良く分かってきた。奴らは、知恵をつけてきている。次の瞬間、バールや十字レンチが、ブンブンと飛んできた。それを全て撃ち落としているうちに、包丁や鉈やスコップを持ったゾンビ達が突進してくる。


「連携か……飛空円斬!」


 ゾンビが全て斬れて落ちる。俺がトラックを振り向くと、タケルが運転席で臭い顔をしていた。気配感知では建物にも隠れているゾンビがおり、これでは軍隊のゾンビ駆除は困難を極めるだろう。俺達は、アッシュバーンに近づくにつれて、恐ろしい真実に気づき始めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
好きな作家先生でしたが、こんなアポカリプスな物語(展開)を隠し持っておられたとは!!!!!!! 今話は、たいていの「鬱展開」をうんと凌駕するすごいプロットと感じます。 ドキドキワクワクにハラハラ 目…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ