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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第659話 放射線の雨で突然変異したゾンビ

 俺達は、ウェスト・ヴァージニア州の米軍基地で最後の給油を行った。そこでクキが皆に指示を出し、放射線防護服を準備する事になる。どれほどの影響を受けているかは分からないが、準備をしておく必要があるということだ。


「人数分揃ったな?」


 すると、研究員が言う。


「私達にはあまり影響がないかも」


 だが、アビゲイルが首を振る。


「いいえ。放射線が、どんな影響があるかは未知数だわ」


「わかりました」


 皆がヘリコプターに乗り込み、米軍基地で必要な物資を積みこむ。さらに西に向かって飛んでいくと、空の様子がおかしかった。


「あちらは、気象条件が悪いようだ」


「核で舞い上がった粉塵で、気象状況が変わったのさ」


 クキが答え、皆が固唾をのんでその空を見る。そこでデルが、面白くなさそうに言う。


「自分の国のミサイルで、自分の国が焼かれるとはな。やってらんねえな……」


 そしてオオモリが、操縦席に行って二人に伝える。


「九鬼さん。アッシュバーンから七十五キロの地点に、米軍基地があります」


「了解だ。そこで、車両に乗り換えるぞ」


「はい」


 西に行くほどに、天候が悪くなり雨が降り出す。ヘリコプターの窓を雨が叩きつけ、時おり雷もなっているようだ。かなり、不安定になっているらしい。


 そこで、クキが言う。


「みんな! 防護服を着用してくれ。ここから先は危険ゾーンだ」


 皆は、言われたように防護服を着た。それぞれ着用するのを手伝い、全員の服をデルが点検していく。雨足は強まり、視界も悪くなっていく。俺だけは、金剛と結界があるので防護服を着ていない。いつものスーツのままだ。


「そろそろだ」


 ヘリコプターは、車両に乗り換えるために米軍基地へと降りていく。だいぶ視界が悪いが、クキとデルは経験と勘でなにごともなく飛ばしていった。そこでオオモリが言う。


「このあたりです」


「よーし」


 高度を下ろしていくと、ようやく都市部が見えて来る。その先に、基地があった。


「着陸する」


 ヘリコプターが米軍基地に着陸したが、皆が違和感を口にする。


「ゾンビ……いないんだ」


 マナが言うと、オオモリが答える。


「そうですね。なんか静か」


 だが、俺が首を振る。


「いや。いるが……出て来てない」


「人?」


「ゾンビだな。だが……何かがおかしい」


「どう、おかしいんですか?」


「まるで待ちかまえているみたいに、建物に潜んでいるようだ」


 そう言うと、皆が顔を見合わせた。今までは、音にゾンビが近寄ってきていたが、ここではゾンビが出てこない。


「ゾンビ化兵ですかね?」


「反応は普通のゾンビなんだが」


「出てこない……と」


「まあ、来ないなら来ないで、さっさと車両を確保して出ていくべきだろう」


「なるほど」


 そこで、タケルが言う。


「んじゃ、車両確保するか」


「そうしよう」


 俺達は、着陸したヘリコプターの側に置いてある戦闘車両に近づいて、一台ずつ開けていった。


「うーん。動きそうなのが無いな」


「なら、格納庫に行くしかないだろう」


 デルが言い、俺が頷く。


「俺とタケルとデルで行こう、皆はヘリコプターに乗り込んでハッチを閉めて外に出るな」


 俺とタケルとデル以外、全員ヘリコプターに乗り込んで、ハッチを閉めた。雨はまだ降り続いていて、ゾンビ達も動く気配がない。


 そして、俺がタケルとデルに言う。


「いいか。おとりも兼ねるぞ」


「りょーかい」

「そうなのか?」


「ああ、俺の経験上だが、恐らくやつらはこっちに来る」


 俺達は、わざと恐る恐るヘリコプターを離れ、デルが格納庫がある方向へと導く。ヘリコプターから離れたところで、雨足が強くなり視界が悪くなる。


 タケルが言う。


「防護服で視界が悪いぜ。あと、雨が濁ってる」


「俺の気配感知があるから、全く問題ない」


「そうだけどな」


 ヘリコプターが雨で見えなくなったところで、ゾンビの反応が動き始めた。


「やはりな」


「どうした?」


「少ない方を狙ってきている」


「……まるで動物の狩りだな」


「まあ、何の問題も無いがな」


 まるで息をひそめるように、こちらに近づいてきているが、俺は躊躇なく殺す。


「刺突閃五連」


「いま、やったのか?」


「ああ」


 俺達が格納庫に到着すると、そこを囲むようにゾンビが寄って来た。


「なるほどな、人間ほどの知能は無いようだ」


「なんでだ?」


「五体がやられたら、人間なら警戒するが、多少やられてもいいという様子だ」

 

 デルが、不思議そうに言う。


「人海戦術? そんな知恵があるのか? ゾンビに」


「まあいい。手っ取り早く車をみつけよう」


 中に入ると、軍用のトラックが数台置いてあった。タケルがエンジンをかけると、普通に動き出す。


「よっしゃ、燃料はたっぷり入ってるぜ」


「いこう」


 デルが俺に聞いて来る。


「ゾンビは?」


「ギチギチに囲んでるが問題ない」


 俺は、トラックの上で剣を構えた。入り口を出たところで、ゾンビがたちが一斉に飛びかかって来る。


「炎蛇鬼走り!」


 ゴウッ!とうなりを上げて、飛びかかるゾンビを一瞬で焼き払う。炎を突きってトラックが飛び出し、雨の中を走り始めた。それを追うようにしてゾンビが来る。


「飛空円斬」


 見える範囲のゾンビが二つに切れて、地面に崩れ落ちていった。ヘリコプターに戻り、合図を送ると、ハッチが開いて皆が荷物を持って出てきた。


「こっちにはゾンビは来なかったか?」


「来なかったわ」


「やはりそうか……」


 そして、クキが皆に号令をかける。


「じゃあ、今のうちに物資を運びこめ」


 ヘリコプターから物資を移し変え、皆が乗り込み準備を終える。


「ここに、生存者が来たら被害にあうからな、基地を始末していくぞ」


 俺の声に皆が頷いた。デルがぽつりと言う。


「同朋が……あんなふうになってしまうなんてな……」


「せめてもの弔いだ。軍人が生存者を襲う事のないようにしてやろう」


「頼む」


 俺は基地に向かって、村雨丸を握る。


「大地裂斬!」


 ゴゴゴゴゴ! と地面が割れ、米軍基地の建物が奈落に堕ちていく。そこにクレーターが出来上がり、建物の上に岩が降り注いでいった。


「剛龍爆雷斬!」


 掘り下げられた地面が、窯となり炎を噴き上げる。全てを焼き尽くした後で、トラックに乗り込んだ。


「出してくれ」


 俺達が乗るトラックは米軍基地を抜け、市街地へと出ていく。その中で、俺はさっきの事を説明した。


「ゾンビが……狩りを?」


「そうだ。集団行動をとっていた」


 それを聞いたアビゲイルが、腕組みしながら言う。


「もしかすると……ですが」


 皆が、アビゲイルに集中する。


「突然変異かもしれません」


 ミオが聞き返した。


「えっ? なんでですか?」


「仮説ですけど。放射線を含んだ雨が降ったのかもしれません」


「それで?」


「はい。放射線によって急激な遺伝子損壊が起き、ゾンビ因子がそれを修復される過程で、本能的な脳の一部とシナプスが繋がった可能性があります」


「でも、人間みたいには戻らないと?」


「人を食う、噛むと言った本能の動きだけじゃなく、それを達成させるための細胞レベルでの反応です。本体の脳が持っていた能力と言うよりも、ゾンビ因子が知恵を持ったと考えた方が良いかもしれません。ゾンビ因子そのものの進化です」


「そんな事が?」


「充分に考えられます。そもそも、ウイルスというものは人間が薬やワクチンを作っても潜り抜けます。作られた薬を迂回しては、人から人へと移る為の進化をします。強いウイルスは弱体化していきますが、今度は多くに感染する道を選んだりする訳です。まあ、分かりやすく言えばですが」


「ウイルスの進化……」


 皆が複雑な表情をした。知恵も無く闇雲に歩き回って襲って来るゾンビよりも、よほど厄介だからだ。それを聞いて、研究員が不安そうに言う。


「あの」


「なあに」


「それも、研究対象に入ってました。ナノマシンだけじゃなくゾンビ因子のリンク、そしてそれの進化」


 シャーリーンが、ため息をついて言った。


「まさか……そこまで、研究対象に……」


 クキが苦笑いする。が、目は笑ってない。


「おいおい。核弾頭も……実験の一貫とか言うんじゃないだろうな」


 アビゲイルが、残念そうな顔をする。


「いえ、それも想定していた事かと。核兵器基地の占拠は、その為だったとも考えられます」


「……核に耐えるゾンビか、笑えないね」


「ええ……」


 雨足が強まる中で、装甲トラックは東へとひた走る。これから行く、アッシュバーンまでの道のりで、生存者がいるのかもわからない。


「いずれにせよ。ここからは、要警戒だ」


「「「「はい」」」」


「ヒカルに、頼りきりになるかもしれんがよろしく頼む」


「問題ない」


 そして、ミオが言う。


「私も気配は関知できるわ。ツバサだって音が拾える、それなら先手を打つしかないと思う」


「ああ」


 不安な表情をする研究員たちに、オオモリが笑って言う。


「ねえ、ゲームの続きしようよ。あの、大ボスみんなで倒そう」


「「「「はい」」」」


 沈みかけたムードを、オオモリの一言で変えた。俺達のトラックは、不気味な街の中を走りながらも、雨足は更に強くなってくるのだった。

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