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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第658話 世界を救う前に、目の前の彼らへ小さな光を

飛ぶヘリコプターの中で、オオモリがマーガレット・ブラッドリーが持っていた端末解析したところ、モーガン・ウイリアムとの通信履歴や、貴重な情報を入手する事が出来た。この端末は一般的ではなく、どうやら専用に開発されたものらしい。それを、ものともせずオオモリが解析して、内容を読み始める。


「えっ!」


 オオモリが声を上げる。


「どうした」


「何かの間違いでしょうか?」


 オオモリの声に、クロサキやシャーリーンが集まる。


「どうしました大森さん」


「交信したのは、バージニア州のアッシュバーンです」


 皆が騒然としたので、俺が聞いた。


「どこだ?」


「それが……大型の核弾頭が落ちた、すぐ隣と言った場所です」


「なんだと? 自分のいるところに核弾頭を墜とした?」


 皆が顔を合わせた。シャーリンが言う。


「核兵器の影響があるでしょうね……」


「そんなところに、核を墜としたのか?」


「そのようです」


 何かの意図があったのか、もしくはそこに何かがあるのか。


「何を目的として……そんな危険な場所にいる?」


 俺は、その事をヘリコプターの操縦席に行って伝える。


「クキ、デル。どうやら、モーガン・ウイリアムはアッシュバーンと言うところに居る」


 それを、聞いたデルが驚きながらも言った。


「まさかの、ワシントンの近くか……核兵器を使用した……」


 クキも、それを聞いて頷く。


「灯台下暗し、そんなところに居るんじゃ見つからないだろうな」


「あえて、ということか」


「そうだろうな。一度、核で攻撃されたところには、他国の攻撃は無いし、米軍も寄り付かないだろう。それに、ワシントン周辺のゾンビも掃除されているはずだ。きっと明確な意図がある」


「ということは、何か、核心に近づける可能性がある?」


 二人が頷いた。そこに、オオモリも来て言った。


「そこには、世界最大のデータセンターがあります。それも関係しているかもしれません」


「なるほどな。大森の言うのは的を得ているかもな」


「どう、関連づくんだデル?」


「おそらく。地下だ、恐らく、施設のような物がある」


「そうか……探さないといけない訳だな」


「そうなる」


 そしてデルが、計器を見ながら言った。


「そろそろ、給油が必用だ。どこか空港に降りるぞ」


 オオモリが、端末を見ながら言う。


「東に百キロのところに空港があります」


「そこに、降りよう」


 間もなく都市が見えて来るが、あちこちで煙が上がっていた。皆の顔が曇り、そこでクキが言った。


「アメリカ軍が積んでくれていた、戦闘用のレーションはありがたいが、あまりうまくないんだよなあ。空港なら食料も手に入るかもしれん」


 寝っ転がっていたタケルが、バッと飛び起きて言う。


「よっしゃ。手に入れようぜ」


「だな」


 空港に降りていくと、音を聞きつけたゾンビ達が寄って来る。俺が、ひょいっと飛び降りて、滑走路にいるゾンビを片付けた。風を巻き上げながら、ヘリコプターが着陸し、ハッチから皆が降りて来る。


「ここもダメだな」


「さあ。外のゾンビが入ってくる前に、さっさと給油だ」


「おうよ」


 するとそこで、アビゲイルが背負っていたリュックを下ろし、研究員たちに言う。


「そろぞろ、ビスク製剤を注射しなくちゃいけないわ」


 中から小さなケースを取り出して、小さな瓶と注射器を出す。四人の研究員が腕を出したが、肌が乾燥していて、もう若者の皮膚では無かった。


「俺がヒールをかけられれば良いのだが、恐らくは逆効果だ」


「ヒカル。仕方ないわ、今はこれで持たせるしかないです」


 研究員たちも、悲しそうな顔で頷く。ヘリコプターが動き出し、給油所に到着した。そこで俺が言う。


「タケルとミナミは、ここに残ってゾンビが来たら処分してくれ」


「りょーかい」

「いいわ」


「ミオは、気配感知で警戒。クキとデルが給油作業をしている間、エイブラハムは、研究員たちの体を、診てやってほしい」


「わかったのじゃ」


 すると、アビゲイルが言う。


「空港なら、薬品が置いてあるかもしれません。私も連れて行ってください」


「わかった。じゃあ、ツバサ、マナ、クロサキ、シャーリーン。食料を探しに行こう」


「「はーい」」

「「はい」」


 俺達六人は、空港の建物内へと進入していく。もちろん空港の建物中にも、ゾンビは入り込んでおり、気配探知で位置を確認しながら潰していった。


「こっちです」


 シャーリーンが先を進むと、売り場が見えて来る。


「ありました」


「あそこに、カートがあるから積んでいこう」


 ぞろぞろとゾンビがうろついているが、俺が全てを消していく。もはや、仲間達は怖がってもいない。カートにジュースやスナック菓子、食料を入れて行った。アビゲイルが必要としている薬売り場を探し、そこでもまたカートに薬を入れて行った。


 するとミオが言う。


「ヒカル。シャンプーとか石鹼とかも欲しいし、化粧品や服も手に入れたいわ」


「ああ」


 空港内はかなり広くて、いろんなものが置いてあった。ゾンビがあちこちにいるが、比較的物資は荒らされていない。都市部ならば、物資は取り合いになって底をつくだろうが、ここはノーマークになっているようだ。


「スマホもある。幾つか持って行きましょう」


 彼女らは、とにかく詳しかった。日本の空港に避難して生活していただけあって、何処で何が手に入るのか、感覚で分かっているらしい。


「このぐらいでいいわ」


 五つのカートがいっぱいになって、それを押しながらみんなが歩いて行く。俺が気配感知をしながら、ゾンビがでて来るか来ないかのうちに刺突閃で仕留めていった。元の場所に戻ると、タケルとミナミも、いくつかのゾンビを倒したようで、その辺りに転がっていた。タケルが、カートを見て言う。


「おお! 大量だな!」


「ああ、彼女らは、本当に詳しい」


「いい感じだぜ!」


 給油も終わり、皆がペットボトルを持ってふたを開ける。その中でアビゲイルは、薬品を選びながら、ゾンビ化した研究員たちに渡していた。


「これで、少しは痛みも無くなるわ」


「「「「はい」」」」


 どうやら大量の痛み止めや、栄養をとれるものをとってきたらしい。細胞の劣化が進む彼らのために、アビゲイルがせめてもの歯止めをしているようだ。


「急がねばな」


「だな」


 クキとデルが操縦席に座り、ヘリコプターが進み始めた。離陸した所で、ミオが研究員たちに言う。


「あのね。ファンデとかローションとかクリームとか、お洋服も、もってきたの。好きなの選んで」


「いいんですか?」


「とにかく可愛いの持って来たから」


「うれしい!」


「さあ。男連中は全員前を向いて! 振り向かないでよ!」


「わかった」


 俺達は正面を向き、女達の嬉しそうな声を聞いた。しばらくして振り向く許可をもらい後ろを向くと、研究員たちは体の露出の少ない服に着替えていた。どうやら、ミオは彼らの劣化を隠すために、化粧品や服やニット帽を持ってきてくれていたのだ。


 すると、研究員たちが泣き出す。


「だ、大丈夫?」


「うれしくて。優しくされるのが……」


「本当なら、こんなひどいことに巻き込まれなくても良かった人達だもん。とにかく、欲しい物とかあったら言って。あと、大森くん! スマホを持って来たから、彼女たちの為に気晴らしのゲームアプリとか入れれない?」


「ああ。じゃあ、衛星通信でダウンロードできるか探して見ますよ」


「お願い」


 自分達が、日本で酷い思いをして来たから、辛さを知っている。更に彼らの体は滅びゆく運命にあり、それに対しても思うところがあるのだろう。


 アビゲイルが言う。


「もう、無理しなくていいから。辛かったら横になればいい」


「大丈夫です。ビスク製剤と鎮痛剤で楽になりました」


「しばらくは持つはずだから、みんな頑張りましょう」


「「「「はい」」」」


 これから先に、何が待ち構えているか分からないが、俺達は、彼女らを置いていく事は出来なかった。アメリカのどこに居ようが、死と隣り合わせの状態ならば、俺と一緒に行動するしかない。辛い旅だが、むしろこのメンバーとだからこそ、生き延びられている状態だった。


 俺達がこれから向かう、アッシュバーンに何が待っているのか?


「アプリ大量ゲーット!」


 オオモリが叫ぶ。


「みんな、でやれるのがいいよね!」


 すると研究員たちは、オオモリのところに集まってワイワイとやり出すのだった。

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