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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第655話 首謀者の女狐を毛布でくるんで帰還

 パンツ一丁の俺に、だれもが息をのんで近づこうとしなかった。


「な、何をしているの! 早く、そいつを殺して! 棒しかもってないわよ!」


 兵士達は、倒れた分厚い鉄の扉と俺を見比べて、ただそこに固まっていた。ただ、マーガレット・ブラッドリーだけが喚いている。するとマーガレットは、後退ってじりじりと俺から距離をとる。


「は、早く! その男を押さえなさい」


 電子機器などを避けながら、マーガレットが下がりきったところで、突然ニヤリと笑った。


「うはははは」


 ガーーーーー!


 手元のボタンを押すと、マーガレットの周りにだけ、透明なケースみたいなのが降りてくる。


「ま、マザー!」


 兵士達が、それを見て狼狽えている。


「みな、しもべになるのよ!」


「マザー! やめてください!」


「役立たず!」


 そしてマーガレットは、ガスマスクを取り付けた。ブシャアアアアアアア! と白い煙が噴出される。それは、テッド・グローバーの部屋に入る前の部屋の臭いがした。同じ薬品が撒かれているのだろう。


「まったく、世話が焼けるわね!」


「ギッギッー、ギャシャー!」


 真白になった空間が、次第に晴れていく。俺の前に居た兵士達が、融合してバケモノに変わっていた。触手を伸ばして、その光のない目をこちらに向けている。


「えっ……」


 声を発したのは、マーガレット・ブラッドリーだった。


「なんで、変わっていないの……まさか……適合者?」


「残念だな。俺は、何者にも影響されない」


「……どういう……」


「とにかく、お前は終わりだ」


 マーガレットは震える手でスマートフォンのような物を取り出すと、にわかに操作し始める。すると、試験体に変わってしまった兵士達が、俺の方に近寄って来た。どうやら、操作しているらしい。


「こ、殺せ!」


「哀れな」

 

 剣を構えた。


「屍人! 真空乱斬!」


 ババババババ! 混ざりあった兵士達が、散らばって普通の死体に変わる。静かになった部屋の中で、マーガレットだけが金切り声を上げた。


「えっ! えっ! どうして!」


「もはや、逃げられん」


「どういう事……レーザー衛星もロスト……核弾頭も消えて……」


「小手先で、どうにかしようとしたのか」


「こ、小手先……最新技術を……」


 俺が近寄って行くと、透明なケースの中で慌てふためいている。そして目の前に来ると真っ青な顔で、ガスマスクがシューシューいっていた。


「こ、これは、透明アルミニウムよ! 破れないわ!」


「で、どこに逃げるつもりだ?」


「……それは」


「まあ、待つ事も無いがな」


 日本刀に手をかけて、剣技を発動する。


「絶鋼一閃!」


 シュキン! 


 透明なケースが切れて、表側にパタンと倒れた。


「えっ……」


「こい」


「い、いや! バケモノ!」


 ゴン!


 俺はマーガレットの意識を刈り取り、首根っこを掴んで肩に担ぐ。そのままハッチに向かっていくと、兵士たちが待ち伏せていた。


「ま、マザーを離せ!」

「その御方は新世界の指導者!」

「その手で触れるな!」


 銃を構えているが、この女にあたる可能性があるため引鉄が引けないらしい。


「こいつは、厄災だ。アメリカや各国を滅ぼす張本人だ」


「違う! おまえは、この腐りきった世界が正しいと思っているのか!」


 俺に問いかけて来るが、そんなものはどうでも良かった。


「どうでもいい。俺は、仲間達と楽しく暮らせればそれでいい」


「お、お前のような奴が、世界をダメにしていくんだ!」


「いや、ダメにしてるのはおまえらだろ」


「き、貴様!」


 俺は構わずに、そいつらの方に進んでいく。すると、銃の引き金を引くのが見えた。


「結界」


 この女にあたったら意味がないので、俺は結界で銃を弾く。すると跳弾して、兵士達は慌てた。


「悪いが、これが死んだら困るんでな。死んでもらうぞ」


「なっ!」


「鴉影縫」


 影から多数の影刃が出て来て、周辺の兵士達が切断されて行く。陰に隠れていても、全てが絶命した。そのままハッチを登り、マーガレットの首根っこを掴んで外にでる。するとそこに艦隊が浮かんでいて、空にはヘリコプターが飛んでいた。俺が担いだまま戦艦に飛び移ると、兵士がジャンプ力に驚いていた。


「な、何十メートル飛んだ?」

「人を担いでるんだぞ……」

「いや、担いでなくてもだろ……」


「マーガレット・ブラッドリーをつかまえた」


「わかりました! すぐに、後部甲板へ」


 俺が兵士に連れられて後部甲板に行くと、ヘリコプターが降りて来て、クキとデルが手を振っている。そのヘリコプターに女を連れて乗り込んだ。


「ようやく捕まえたか」


「ああ」


「連行しよう」


 デルが、操縦士に言う。


「帰還してくれ」


「はい」


 女を床に投げ捨てると、クキが俺にスーツとシャツを差し出してくる。


「また、女達が色めき立つからな」


「すまん」


 俺はスーツに着替え、初老の女を見下ろして言う。


「こいつには、聞きたい事が山ほどある」


「そうだな。ヒカル。ずっと追って来たホシの一人だ」


 そこで、デルが言った。


「まあ、念のため、身体検査しておこう」


「だな」


 マーガレットのスーツを脱がせて、スマートフォンやなにやらを取り出した。下着姿になってみすぼらしい姿をさらしているが、俺がぽつりと言う。


「そいつも、女だ。何か布切れはないか」


 乗っていた兵士が答えた。


「救助を想定して、毛布が詰んであります」


「くるんでやれ」


「は!」


 マーガレットが毛布でくるまれると、デルが俺に言う。


「敵にも情けか」


「いや、みすぼらしい女を裸で連れて行ったら、俺達が悪人みたいじゃないか」


「プっ……そんな事を言うのか」


 するとクキも言う。


「まあ、ヒカルには美学があるんだよ。いろいろとな、スーツもその一つだ」


「なるほどねえ。まあ、悪い事じゃない」


 海から陸地が見えて来る。そして、兵士が言った。


「もう間もなく、基地に到着します。ミラー少将が首を長くしておまちです」


「まあ、手間をかけたからな。悪かった」


「いえ……作戦想定時間の三分の一であります」


 それを聞いて、デルが頷く。


「潜水艦を撃沈して終わりだと思ったが、一隻たりとも沈めてない。そのうえに理想的な作戦の遂行。

主犯格のマーガレット・ブラッドリーの捕獲。十分お釣りがくるほどの、仕事だぜ。こりゃ」


「それならよかった」


 そうして俺達が乗るヘリコプターは、サンディエゴ基地へと降りていくのだった。

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