第652話 敵潜水艦を追え
俺達はただ待機していたが、敵はすぐに動かなかった。仲間達は俺がいるからと、ぐっすり眠ったが、米兵達は眠れぬ夜を過ごしたらしい。まだ日が登りきらない朝、原潜からの核弾頭発射の連絡を受ける。
「朝の空気を吸ってくる」
「おう」
俺がタケルにそう言って再び海岸に行くと、昨日と同じように核弾頭が飛んでくる。
「次元断裂!」
暗い空で、核弾頭はその姿を消した。すると、そこに仲間達がやって来る。
「どうだ?」
「ああ、クキ。弾頭は消した」
「いよいよだな」
そこに、米兵達が駆け寄って来る。
「位置の確認をしました。出動します!」
「わかった」
米軍の作戦に参加するのは、俺とクキ、デル。俺はタケルに言った。
「帰ってくるまで、みんなを頼むぞタケル!」
「もちろんだ。まあ、気を付けろよ」
「ああ。任せておけ」
俺は、ミラー少将にも言った。
「仲間達は、人外の強さを持っているが、非戦闘員もいるんだ。よろしく頼む」
「命の恩人である客人を、危険な目には合わせんさ」
「わかった」
そこで、女の米兵が言う。
「皆さんの身の回りの事は、私たちにお任せください!」
米兵が俺に、米軍の軍服が勧めてくる。
「ありがたいが、これでいい」
「そ、そんな高級スーツで作戦に参加するのかね?」
「そうだ。これが一番良い」
「……わかった」
俺とクキとデルが、米兵に混ざって出発した。航空機に乗り込んで、飛び立っていく。既に戦闘艦が先に出ており、目的の地へと向かっているのだそうだ。
「これから哨戒行動に入ります。通信が使えず、ドローンが飛ばせない今は、これで探す事になります」
そこで、クキが言う。
「護衛機も飛ぶのか」
「はい。敵に航空戦力があるかもしれません。小隊が護衛をします」
これだけ図体が大きいと、レーザー衛星の格好の餌食だったろうが、人間を狙える精度から考えても、最初の哨戒機はあっという間にやられたはずだ。船との通信も綿密に行われ、どうやら敵原潜の位置は、ミラー少将の想定した通りの場所にいるらしい。
ピピッ!
「敵航空機小隊を確認! こちらに向かっております。スクランブル状態に入りました」
どうやら、戦闘機どうしの戦いが行われているらしい。忙しなく交信が行われ、俺達にも聞こえる。
「奴らは捨て身だぞ! 防御を考えずに、一直線に哨戒機を狙っている!」
米兵が、俺達に言う。
「敵は、なんとしても原潜を守らんとしてます」
「いや。構わず、敵がいる方へ飛べ」
「いま、ドッグファイトが行われています。敵を撃墜するまでは」
「敵を逃がすわけにはいかん。行け」
聞いて、デルが言う。
「ミラー少将は、ラッキーボーイの言う事を聞けと言っていただろう?」
「わかりました」
そして、哨戒機は飛行機同士が戦っているところに突っ込んでいく。戦闘機側からも、通信が入った。
「だめだ! また、敵機がいる! 標的になる!」
だが俺は構わず、ハッチに手をかけた。そこで、米兵が言う。
「なにを?」
「外に出る」
「飛行中です。ドアには十トンの圧力がかかっています!」
「大丈夫だ」
俺はドアを回し、グッと外側に押して開く。それと同時に風が入り込んできて、後ろに立っていた米兵が飛ばされた。俺はそのまま外に出て、すぐに飛行機の上部に登る。
「なるほどな」
どうやら、戦闘機同士が戦っているようだ。だが、そのうちの一機がこっちに一気に向かって来る。
「あれは、敵か味方か、どっちだ?」
その飛行機は、この機体に向かってミサイルを打ち込んできた。
「あれが、敵か」
向かって来るミサイルに向かって、剣技を振るう。
「空接瞬斬!」
ミサイルはバラバラになって、海に落ちていった。
「閃光孔鱗突!」
ミサイルを撃った戦闘機を撃墜する。するともう一機が、この機体に向かって突進してきた。
「激突させるつもりか……」
近づいてきたところで、剣技で撃ち落とした。敵の数が減り有利になったこちら側の戦闘機たちが、次々に敵を撃墜していく
「よし」
俺は、すぐに飛行機の中に戻る。すると、あっけにとられた米兵が言う。
「も、戻ってきた!」
そのままハッチを締めて、米兵に言う。
「このまま進め」
そこで、通信が繋がる。
「原潜三隻を確認! 護衛艦に位置を知らせます」
「見つけたか」
俺がクキとデルのところに戻ると、デルが俺に手を差し伸べて来るので、握手をした。
「やったな」
「だが、まだ潜水艦を見つけたばかりだ」
そこで、クキが言う。
「ソナーで位置を確認しているんだ。あとはエンジン音などで位置が分かる」
「そこを船で叩くのか」
「そうだな」
すると、また兵士が言う。
「潜水艦。ロスト……位置を見失いました」
それを聞いて、クキが冷静に言う。
「レーザー衛星まであるんだ。位置を特定させない技術ぐらいはある。位置は確認しているんだろう?」
「はい」
「動力を止めて息を潜めているころだ。だが、そこまで行けばもう大丈夫だ。なあ、ヒカル」
「ああ。上空を旋回してくれ」
そのまま哨戒機が飛び、米兵が言う。
「このあたりです!」
それに俺は、ニヤリと笑って答えた。
「言われなくても分かっている。なるほどな……奴らは試験体も連れていたか」
「試験体?」
「護衛艦を近づけさせるな。そして、動力を切らせろ」
「しかし!」
「言う事を聞いてくれ」
「わかりました!」
どうやら敵は、自分達の潜水艦を止めて、繋いでいた試験体を解き放ったらしい。艦隊が沈めに来ることを想定していたのだろう。
「遅かったか……マズいな」
試験体は、艦隊の位置を確認したらしく、そちらに泳ぎ始めた。
だが俺は、そこにいた米兵の腰から、手榴弾をとってピンを抜く。
「もらうぞ」
それを海にめがけて、投擲した。一秒後には海面に沈み、手榴弾は爆発した。
「よし」
その音に反応した、三体の試験体は方向を変えてこちらに泳いで来る。その間に俺はパッと服を脱ぎ、パンツ一丁になる。そして村雨丸を持って、クキに言った。
「敵をつかまえて来る。敵は、試験体を持ってきているらしい」
「わかった。潜水艦のどれかに、マーガレット・ブラッドリーが乗っていると推測される」
「分かっている。既に顔は覚えているさ」
「気を付けろ」
「誰に言っている?」
「だな」
そこで、米兵達がざわめいている。
「どうするので?」
「海に潜るんだ」
「この高度から??」
「関係ない。とにかく敵に攻撃されないように、高度をとっておけ」
「わ、わかりました」
ドン!
俺はハッチに立って、そのまま飛行機を蹴って海上に向け、ミサイルのように飛んでいくのだった。




