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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第650話 核兵器と、ご褒美のテキーラ

 レーザー衛星が無くなった事を確認した、ミラー少将と軍人たちが唖然としている。何度確認しても、確認できずに、通信兵も困惑しているようだ。俺が、ミラー少将に尋ねる。


「レーザー衛星は一つか?」


「一つだ。そういくつも上げられるものではない。国が破産してしまう」


「大統領は、レーザー兵器の存在を言わなかった」


「極秘だ。他国の人間には絶対に言わんだろう」


「そうか」


「だが、その極秘を、マーガレット・ブラッドリーに奪われたのは事実。やつは、米軍の一部を掌握し、味方につけているようだ」


 そこで、クキが聞いた。


「原潜も握られているとなると、アメリカ大陸が人質に取られているようなものですね」


「そうだ。さらには、核を保有したまま奪取されている」


 どうやらミラーは、だいぶ深刻に捉えているようだった。そこで、デルがミラーに聞く。


「なぜ、三隻もの原潜を奪取したのでしょう」


「これは、戦略担当の意見なのだが、アメリカ全土に広がる、リビングデッドを焼くためじゃないかと」


 そこで、クキが言う。


「マイノット基地を占拠した敵を壊滅させようとしたら、最後に核弾頭を六発発射させようとしました。それは、他の国に向けた物かもしれなかったのです」


 そして、ミラーが答えた。


「これも推測だが、あえて報復を目的とし、他国の核兵器を利用しようとしたのではないか」


「なるほど、他国の報復でアメリカ全土に核を降らせる……ということですか」


「そう言う事になる」


 クキが頷く。


「一つの基地の核では足りなくても、他の国のミサイルで焼けば数は足りるという事ですね」


「まあ、他国が、アメリカを根絶やしにするほどの、ミサイルを撃つかどうかも疑問だがね」


 確かに、ミラーの言う通りかもしれない。アメリカのひとつの基地では足りない火力を、他国の核で補うというのは、考えられない事も無い。ミラーが腕を組む。


「問題は、他国がどうなっているかなんだ」


「情報は取れませんか?」


「妨害されているのだよ」


「なるほど……」


 どうやら、マーガレット・ブラッドリーは、ミラー少将を恐れているように思えた。この初老の男は、どこか底が知れない凄みがある。そして、ミラーが俺に向かって言う。


「君らは、リビングデッドの扱いに慣れてるようだね?」


「ゾンビは、どうという事はないが数が多すぎる。人を救うのが難しくなってきた」


「まだ、救える余地はあるかね?」


 そこで俺は、アビゲイルを見る。


「アビゲイルの薬を、完成させることができればなんとかなるはずだ。だが、奴らはことごとくそれを阻止して来る」


「なるほど。彼らはアビゲイル博士を警戒しているか……」


「ゾンビを止めれば、奴らの作戦を根底から変えてしまうからな」


「そのリビングデッド破壊薬さえ、大量生産出来れば大きく状況は変わるだろう。彼らにとってみれば、最重要人物ということになる」


「そうだ。だからヨーロッパからここまで、アビゲイルは、ずっと付きまとわれている」


 部屋にいる兵士達は、ただ何も言わずに会話を聞いている。するとそこに兵士が入ってきて、ミラーに耳打ちする。だがミラーは、そのまま俺達に告げた。


「どうやら、返答の期限が過ぎたようだ。むこうさんから連絡が来た。君らはカメラの外にいてくれ」


 俺達が移動すると、ミラーの前にあるディスプレイが付いた。そこには、マーガレット・ブラッドリーが映し出される。


「さて、ミラー少将。答えは決まったかしら? 新世界の新たな盾となって働くか、このままサンディエゴ基地ごと、消し炭になって消滅するか判断を聞かせて頂戴」


「国務長官。私は軍人であり、上層部の命令を聞くのは当然です」


「ならば」


「上は、大統領に他なりません。連絡がつかない今、いち軍人が決められる話ではないと判断します」


「あら。お堅い事。だけど、それでは死ぬことになるわね。タイムリミットよ」


 すると、ミラー少将は一瞬俺に目配せをしてから、突然ニヤリと笑って言う。


「この女狐めが! 残念ながら私は、アメリカ合衆国の軍人だよ。貴様のような売国奴の下にはつかん! お前達は必ず後悔する事になる! そんな事を言っていられるのは、いまのうちだ!」


「そう……あなたは、もっと賢い男だと思ったわ。まさか、私が本気でそんな事をする訳がないとでも、思っているのかしら?」


「さてな。アメリカを裏切った女の末路など、どうせろくなことにならんさ」


「馬鹿な男。これを聞いている、軍の犬たちも不幸ね。あなた達の大将は、全員を皆殺しにする事を決めたらしいわよ」


 だが、軍人は誰一人として表情を変えなかった。彼らは、ミラー少将を心底信頼してるらしい。


「考えなしの犬たちは、本当に馬鹿だわ。まあ、飼い犬に手を噛まれて、驚くような事もないけど」


「あんたの、飼い犬になった覚えはない。女狐めが」


「残念だわ。では、あの世で吠えてなさい」


 パツンと回線が切れて、画面が落ちる。


 すると、そこで他の軍人が報告して来る。


「太平洋上から、ミサイルの発射を確認しました! 百八十秒後に着弾。目標はここです」


 それを聞いても、軍人たちは顔色を変えなかった。そこで、俺が言う。


「ちょっと、潮風にあたってこようと思う。俺は、海は好きなんだ」


「ラッキーボーイ。何か策があるのかね?」


「まあ、慌てず、まっててくれ」


 俺はすぐに基地を出て、海に向かって走った。砂浜に出たところで、空の向こうに飛んで来るミサイルの気配を確認する。


「マンネリな攻撃だな。やつらは、それしかないのか? まるで、バカの一つ覚えだ」


 海上にミサイルが迫ったところで、剣技を放つ。


「次元断裂!!」


 空の上で核弾頭が消え去り、静かな青空が広がっている。今日は天気もよくて、海風が心地よかった。俺が後ろを振り向けば、仲間達とアメリカ兵達が、こちらに向かって走って来ていた。


 タケルが手を振りながら、先頭を走って来る。


「タケル。いい海だぞ」


「のようだな!」


 遅れて仲間達と、ミラー少将、そして米兵たちがやって来る。


「か、核はどうなったかね?」


「消した」


「……オリバーが言っていたのは本当だったのか」


「そうだ」


 それを聞いた、今までポーカーフェイスだった米兵達が歓声を上げた。


「おおおおお!」

「やったあああ!」

「スカッとしたぜ!」


 俺は、ミラー少将に言う。


「来る途中に店があったんだが、あれはやってるのか? 酒の匂いがした」


「流通が途絶えてるが、酒くらいならあると思う」


「そうか……」


 すると、ミラーが言う。


「そうだったな。ラッキーボーイは酒が好きだったんだな」


「まあ……な」


「よし。それじゃあ、全員に酒を奢らせてくれ。店はやってないが、勝手にあけて飲むとしよう」


 すると、軍人の一人が言う。


「少将! お言葉ですが、基地の恩人につまみ無しですか! それは行けません。基地に残った中から、少し分けてもらいましょう! もちろん、少将の奢りですが」


「かまわん。厨房でもらってこい」


「イエッサー!」


 そうして、軍人たちが駆け出していく。ミラー少将が店の中を覗くと、中から女の店員が出てきた。


「ミスターミラー。お店はやっていないのですよ」


「すまんが開けてくれんか。今日は、皆に奢ると約束したんだ」


「いいわ。いらっしゃい! みなさん」


 俺達は、ビーチそばのバーに入る。皆にコップが渡されて、それに酒が注がれて行った。


「これは、なんて言う酒だ」


「テキーラよ」


 すると、人一倍、体の大きなアメリカ兵が前に出ていった。


「随分と優男だが、俺と飲み比べでもしようか?」


 俺がタケルやクキに振り向くと、苦笑いしながら顔をそむけた。


「いいだろう。付き合ってやる」


 そこで、ぽつりとミナミが言う。


「クジラと蟻みたいなものなのに」


 だが、エイブラハムが笑って言った。


「きっと、彼らなりの感謝の気持ちなのだろうて」


「なるほどね」


 ミラー少将が乾杯の音頭をとった。


「アメリカの未来に! そして、ラッキーボーイに乾杯!」


「「「「乾杯!」」」」


 皆で一気にテキーラをあおり、俺はすぐに店員にお代わりを要求するのだった。

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