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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第648話 天の雷を流星へと変えた

 ようやく捕えたテッド・グローバーが、いきなり蒸発してしまった。デルが、屋根の下で叫んでいる。研究者らも心配そうな顔をしているが、仲間達はただ俺を見ていた。


「ヒカル! すぐに屋根の下へ! 照準から逃れるんだ! 一瞬だぞ!」


「デル、あれはなんだ?」


「軍が秘密裏に開発していた、衛星兵器だ! 噂でしか聞いていないが、まちがいない!」


 俺は空を見上げたまま、じっと様子を見ていた。


「テッドから、情報が取れなかったな。すまなかった」


「仕方がない! まずは、こっちへ!」


「いや……」


「光の速さで焼かれるぞ!」


「あれは、光の速さなのか?」


「そうだ! 次の充填が終わったら、すぐに撃って来る!」


「そうか。撃って来るのか」


 そこで、タケルがデルに言った。


「あーっと、デルさんよ。ヒカルが、ああいう状態になって集中してるときは何か考えてる時なんだよ。だから、あんま集中力を乱さないでくれるかな」


「集中力? 狙っているのは、光だぞ?」


「いいからよ」


 俺は集中力を高めながら、自分のレベル解放をする。


「レベル八百解放。金剛、結界」


 ゴオオオオオオ! 建物のガラスが割れ、周辺の壁にひびが入る。


 次の瞬間、光が降りてきた。


 シュン! バシュ!


 俺を狙ったレーザーをかわす。地面が沸騰し、漕げた匂いが立ち込めた。


「奥義! 極天空跳躍!」


 ドン! 俺が立っていたところを窪ませ跳躍する。前世の冒険で、天空龍神を倒した技を発動させた。光が大気が焼いた線を辿り、極大跳躍をしたのだった。空気が薄くなり、眉毛や髪の毛が凍り始める。


「あれか」


 大袈裟な形をした、衛星がそこから見える。


「神殺星龍斬!」


 巨大な衛星を、一瞬にして細切れにする。すると今度は、俺の体が自由落下をはじめた。


 俺は頭を下に下げて、身体強化をかける。


「熱無効。重推撃!」


 ドン! と、地上に向かって落下していく。まだ、光に焼かれた大気のゆがみを辿って。


 次の瞬間!


 ズドン! と、さっき跳躍したところにめり込んだ。十メートルもめり込んだところで、止まる。


「おーい! ヒカルー」


 タケルの声がする。


「ああ。今出ていく」


 ボゴン! と、地面から出ると、皆が心配そうな顔で見つめている。


 そこで、デルが言った。


「レーザーに焼かれたかと思った……いきなり消えて」


「おそらく、目では追えなかっただろう」


「そう言う事か……で、何がどうなってる?」


 そこで、俺が黙って空を指さした。すると、ミオが言う。


「たくさんの流星が降ってる……」


 皆が見上げ、デルがまた聞いて来た。


「あれは、ヒカルがやったのか?」


「ああ、光の跡を追って、ちょっと斬り落として来た」


「……」


 研究員たちも、無言で俺を見ている。


「高い富士山に登ったように、オオモリが衛星の居場所を追尾してくれれば飛ばなくても済んだんだが。また光を撃たれたらみんなが危険だからな。だから、邪魔な衛星は斬った」


「な、何を言っているのか……よくわからん」


「あー、空の上に浮かんでいる、衛星とやらを近くまで行って斬って来ただけだ。前に斬った時よりも、かなり大きな奴で、そのまま落下したら被害が及ぶと思って、細切れにしただけだ」


「「「「「……」」」」」


 そこで、タケルが言う。


「まあ、細かいことはいいんだよ。デルさん。ヒカルはこういう奴なんだよ」


「そんな、理解のある友達みたいに……」


「ああ、おりゃ、ヒカルの事はだいぶ理解してるぜ」


「頭が……おかしくなりそうだ」


 そこで、オオモリが言う。


「いや、脅威が去ったからいいんですよ。タケルさんの言うように、細かいことは気にしない事です」


「……わかった」


 俺は、それよりも心配な事を言った。


「いや、そんな事は大したことじゃない。それよりも、テッド・グローバーが殺されてしまった。俺は、ほんの少し油断をしていたらしい。申し訳ない」


「……いや、普通は防げないだろ。申し訳ないとか……そんな問題じゃない」


「いや……デル。もっと、警戒しておくべきだった」


 だが、タケルが言う。


「いやいや、大丈夫だよヒカル。なあ大森、おまえ、ある程度掴んでんだろ?」


「はい。敵は恐らく、陸地にいないですよ。恐らくは、潜水艦だと思います。太平洋です」


「ま、それが分かっただけでもいいんじゃね?」


 そして俺達は、その建屋を離れて、移動の乗り物を探す事にする。まだ、ゾンビがうろついているが、仲間達にはなんと言う事は無かった。ゾンビを討伐しつつ、大きな建物に到着する。


「おお! あったあった」


 それを見て、デルが気を取り直したように言う。


「CHー53K キングスタリオンが、こんな所に」


「新型か」


「最新鋭機だな。アメリカ軍にも、敵は入り込んでるのは確実なんだな」


「次の、行先を考えないとな。デル」


「敵が……潜水艦にいるっていうなら、サンディエゴの海軍基地に行って見るべきだ」


「よし。そうしよう。ここから、どのくらいだ?」


「ヘリで四時間はかからんだろう。だが、途中で給油が必用だ」


「となると?」


「カートランド空軍基地を経由して、向かおう」


「よし! みんな! 出発の準備だ!」


 クキとデルが操縦席に座り、再びアメリカの空に舞い上がった。


 デルが言う。


「攻撃を全く気にしなくていいという理由が、良くわかったよ。そこのイケメンが長距離核ミサイルも、レーザー衛星も向こうにしちまうんじゃ、どんなミサイルでも撃ち落とせない」


「そうだ。大船に乗ったつもりでいてくれ」


「ああ……」


 それからすぐに、ゾンビだらけの、カートランド空軍基地へと降り立ち、適当に片付けて給油をした。そして、そこの通信機器を使い、サンディエゴ海軍基地に通信を繋げてみる。


「繋がらないな」


「壊滅しているか。シャットアウトしているか……」


「まあ、どっちにしろ、その辺りで情報を探さないといけない」


「行こう」


 ここまで飛んできて、俺が地上の様子を探ってみたが、都市部の多くは、既にゾンビに汚染されているようだった。だが田舎町や山岳地帯などに逃げた人が、まだ生きている。


 それを感じた俺が、アビゲイルに言う。


「アビゲイルの薬を大量生産する前に、ゾンビをばら撒く奴らを、なんとかしなければならん」


「はい。そうしなければ、イタチごっこです。奴らは、執拗にやってくるでしょう」


「ああ。生きている人間達がいる間に、なんとしてもケリをつけねばな」


「ええ。なんとしても」


 敵が強大であることは皆が分かっているが、少しずつ敵を追い詰めているという実感が出てきている。仲間達も感じているようで、絶望の中にも希望があるようだった。 

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