第645話 非道な敵の戦闘
銃を持った兵士達が次々と建物から飛び出してくるが、そいつらはどうやら大量のゾンビ化兵だった。俺達の力を知っていたためか、相当の数をそろえていたようだ。俺は目の前にあった戦車を蹴りつけて、出てきたゾンビ化兵に向けて飛ばす。戦車は宙を飛び、ゾンビ化兵達の頭の上に落ちた。
ガガガガガガガガ!
仲間もいるというのに、全員が機銃を撃ち始める。射線にいた奴らが、次々にバタバタ倒れていく。
「どこからか、砲撃してきているようだぞ! 戦車が吹き飛んだ!」
「とにかく仕留めろ!」
機銃が鳴りやまず、俺は車両から車両の陰に飛び移った。そうすれば、敵が敵を掃除してくれるはず。案の定、俺を追いかけるように撃った機関銃が、仲間の兵士達を倒して行った。
兵士が倒れた所に、何かが飛んできた。
「なんだ?」
丸い何かは、地面に落ちると破裂し液体をまき散らす。次々に、射出されてあちこちにばら撒かれた。
「ウウウウウウ」
「ああああああ」
「がぁぁぁぁぁ」
倒れた兵士達が、ゾンビになって動き出した。あれは、ゾンビを急造するための液体らしい。
「はなから、仲間を生かす気はないか……。ならば」
俺は縮地で機関銃を撃つ、ゾンビ化兵の中心に表れた。
「屍人斬! 飛空円斬!」
バシュゥゥゥ! 俺を中心にして、次々にゾンビ化兵が倒れていった。
「な、なんだ! 起きろ! 死ぬわけがない!」
屍人斬で人間に戻ったゾンビ化兵は、もう起きる事はない。それから、次々に俺がゾンビ化兵を倒し、あっという間に全てがいなくなる。すると車両の方で、ゾンビ化した兵士が元の仲間を襲い始めていた。兵士も俺に対して攻撃をしている場合ではないようで、必死にゾンビに銃を撃っている。
バン! バン! バン!
基地のドアが、次々に締められて行く。逃げてきた兵士を、中に入れないようにしているようだ。
「哀れなものだな。刺突閃! 十連!」
追いかけているゾンビを倒して、余裕を作ってやると、自分達の銃でゾンビを倒し始めた。
「だいぶ絞れたか」
俺はすぐさま縮地で基地を飛び出し、みんなの下に戻った。
「ヒカル! どうなった?」
「車両はある程度残した。あとは、ゾンビになった奴らが仲間を襲っているようだ。基地は閉鎖されて、逃げてきた奴らを締め出している」
「仲間を、なんとも思っていないという訳か」
「そうだ。だが今までとは違う数の、ゾンビ化兵が出てきたぞ」
それを聞いて、シャーリーンが言う。
「よほど、守りたいものがあるのではないですか」
クキが頷く。
「かもしれん」
そこでタケルが、皆に行った。
「んじゃ。せっかくヒカルが掃除してくれた事だし、行くとしますか」
「そうしよう」
そして俺は、皆に言った。
「なら、俺の後ろをついてこい」
デルが聞いて来る。
「それで、大丈夫なのかい?」
「すべて防ぐ」
既に車両のあたりには、生きた人間の気配は一つもなく、兵士達は散り散りに逃げてしまったらしい。ゾンビがあたりをウロウロしているが、もはや戦闘力と呼べるものはない。
すると、基地の上階に動きを確認した。
「ここを狙われている」
「狙撃兵か?」
「問題はない。陽炎遠斬!」
狙撃兵の首が、窓から落ちて来る。
ドサ。
「どうなってる?」
「狙撃兵を殺した」
「今のでか」
「そうだ」
俺達は車両の間を抜けて、基地の壁にへばりついた。そしてタケルが、無造作に鉄の扉を蹴り飛ばす。扉はちぎれて中に飛んでいき、待ちかまえていた人間ごと押しつぶした。
「行くぞ」
俺が先に入り込み、兵士達を倒していく。あとから仲間達がついて来て、死体を飛び越えた。
「タケルとミナミが最後尾を頼む。研究員を守れ」
「おう」
「わかった」
俺は、飛び出してくる兵士を倒しながら進んでいく。クキが歩きながら、監視カメラを潰していった。
「こっちだ」
より人が多くいる方に向かい、歩いて行くとガラス張りの通路に出る。
そこで俺が、スンと臭いを嗅いだ。
「何か。おかしな匂いがする」
「……どんな?」
「ニンニク……か? ごくわずかだが」
するとデルが言う。
「もしかすると、VXガスかもしれん」
「VXガス?」
「神経ガスだ。一滴でも致死量の。どこかに設置してあるのかもしれん」
皆がピリ着いた。だが俺が言う。
「なら、どこから臭うか分かっている」
「どうするんだ?」
「こうだ。神威零域」
バグン!
俺が剣を振ると、周辺の壁や、臭いの発生源が無の世界に吸い込まれた。壁やガラスや床まで消えて、丸い空間が出来上がる。
「消えた」
「目の当たりにして思う。こりゃヤバイ」
デルにクキが答える。
「というわけだ。まずは、このまま先に進もう」
入り組んだ基地内を、進むとエレベーターが出て来る。ボタンを押すと、エレベーターが動き出した。目の前で扉が開くが、中に何かが乗っているわけでもなかった。
「どうする?」
クキが答えた。
「斬り落としてくれ」
「ああ」
エレベーターの上に向けて、村雨丸を構えた。
「断剛裂斬」
バシュッ! ガラガラガラ!!!! ズズゥゥゥゥン!
エレベータはそのまま落ちて、最下層に堕ちたようだ。
「他のも頼む」
のこり三基のエレベータを斬り落とすと、クキが言った。
「これで敵も容易には逃げられまい。地下か?」
「いや、いるのは上だ」
「よし。階段で上がろう」
俺達は階段を探し出し、そこから上に向かって登り出す。
「敵が来ないな」
「気配感知では、上にいるようだが……」
「そうか」
俺達は、気配のする階層まで上がり、廊下に出る前に様子を伺う。
ミオが言う。
「先に、敵は居ないわ」
キン! 鍵を切りおとし、扉を押し込む。気配はその先だった。
「こっちだ」
注意深く廊下を進んでいくと、いよいよ気配のする場所に到達した。大きなガラスがあるようだが、その後ろにシャッターが下りていて、この先に大勢の気配がある。
「斬り落とす」
俺が村雨丸を構えた時だった。
ウィィィィィ!とシャッターが上がった。
「な!」
するとガラスの中の部屋には、大勢の兵士達が銃を構えていた。
「伏せろ」
皆が伏せるが、銃声はしなかった。ただ構えてこちらに向いているだけだった。
するとその時、通路の上にあるスピーカーから声がする。
「良くここまで来たものだな。デル・フライトンにタケル・オカダ」
「この声は……」
ガラスの向こうにある監視カメラが、俺達を撮影している。あれで確認をしているのだろう。
「異常な力を持つ者がいると、報告が入ったものでね」
そこで、デルがボソリと俺達に聞こえるように言う。
「テッド・グローバー……だ」
それは、GOD社のテッド・グローバーの声だった。一度、ディスプレイ越しに遭遇した男の声だ。
「いやはや……こんなところまで来てしまうとはねえ」
この話をしている間も、ガラスの中の兵士達は身動き一つしなかった。
どうするか……。俺はクキに聞く。
「まずは目の前の奴らを処理するしかあるまい」
俺が村雨丸に手をかけた時、テッド・グローバーが言う。
「わざわざ、ここに死にに来たのか?」
随分と余裕がある。どうやらこいつは、逆に俺達をここまで引き込んだと思っているらしい。
プシュウウウウウウ!
すると次の瞬間、ガラスの中に突然白い煙が充満し始めるのだった。




