第640話 十五秒の死神
俺達がいた部屋から外を覗いてみると、どうやらここは、どこかの建物の地下らしい。
「よし、死体を運ぶぞ」
俺達は、殺した六人を引きづり外に出る。そこは通路になっていて、奥に上に続く階段があるようだ。死体を全員で上に運ぶと、そこは普通の民家だった。
デルが言う。
「カモフラージュしている訳か」
「やつらは、本当に巧妙にやっているんだよ」
「厄介な奴らだ」
俺は、みんなに言った。
「適当にその辺に座らせて、のこりは壁に引っ掛けて立たせよう」
「おう」
六体の死体を並べ、普通に待っているような雰囲気を出す。死んでいるが、テーブルに突っ伏したり、頭を垂れて立っているようにした。
「来た。入り口のカギを開けて隠れよう」
そうして俺達は、地下に続く階段に入り待つ。すると、入り口をノックする奴がいた。
「入れ」
扉が開いて、三体のゾンビ化兵が入って来た。銃を携帯しており、室内を見渡して声をかけてくる。
「行くぞ! アイスクリームは持っているか?」
「……」
死体なので答えない。
「おい」
中に入ってきて、一人が死体に手をかけた。
ズルッ、ドサ!
「な!」
「屍人斬! 刺突閃!」
次の瞬間、三体の眉間に穴をあけ、普通の人間に変えて殺す。
そして、クキが言う。
「さて、嫌だろうけど引っぺがすぞ」
「あいよ!」
クキとタケルが、ゾンビ化兵の死体から服を剥ぎ取り始めた。オオモリが、いやいややっているのを見てデルが言う。
「変わろう」
「すみません」
それにマナが怒る。
「もう! 大森君は!」
その間に、ミオやミナミ、ツバサ、マナ、クロサキ、シャーリーンが、殺した奴らの上着を剥ぎ取り、それを着て髪の毛をまとめている。ゾンビ化兵から剥がした服を、クキとタケルとデルが着た。
「行くぞ」
アビゲイルとエイブラハムを縛り、縄でつないで歩かせる。
「こんなマネをしてすまない」
「いえ、これなら完璧です。敵は私を捕えたと安心するでしょう」
俺達が入り口を出ると、閑静な住宅街だった。そして俺が言う。
「ヘリコプターの音はこっちだ」
俺が仲間達を連れてそちらに行くと、広場の中央にヘリコプターが止まっている。
「いた」
敵兵は急ぐように手招きをしており、俺達はそれに向かって歩いた。
クキが言う。
「あまり至近距離に寄ればバレるぞ」
「その前に、カタはつく」
俺は隠形と認識阻害で皆の後ろに隠れ、何もないように近づき、ヘリコプターのハッチが開いた瞬間、ヘリコプターの中にいた。
兵士は、まだ外を見ており、俺がいる事にも気が付いていない。
俺は一秒もかからずに、パイロットを含め、中に乗っている六人を斬り落とした。
「終わったぞ!」
「早いな」
「死体を捨てよう」
全員がヘリコプターに乗り込み、斬った死体を捨てる。
「すぐ飛び立った方が良いな」
クキが操縦士、隣りにデルが座った。
「やっぱり、ヘリはカナダ軍に偽装してた」
「だから撃墜されなかったんだな」
二人の会話を聞きながら、皆が座ってベルトをした。
「死体を見つけたら、警察が騒ぐだろう」
「逃げればわからんだろ」
そうして、ヘリコプターは離陸した。
すぐにオオモリが通信を使い、このヘリコプターの飛行経路を調べる。
「わかりました。これは、西のこの地点から来てますね」
「アメリカとの国境沿いか。何があるんだ?」
「そこまでは分かりません。山脈地帯のようですが、地図には何も載っていないです」
「行って見るしかあるまい」
そしてヘリコプターは、西へと向かって飛んだ。しばらく飛び続けていると、山脈地帯に差し掛かる。それを見て、デルが言った。
「あんな所に施設があるな。あれか?」
オオモリが答える。
「そうです。位置はあそこです」
「いかにも、ってわけだ」
そして俺達の乗るヘリコプターは、その施設の上空に来て止まる。どうやら研究施設のような場所で、ファーマー社のマークがヘリポートにあった。
「ビンゴだな。周りに道路が無いから、地上からだとわからんだろ」
俺がクキに言う。
「先に行って始末して来る。ゆっくり降りて来い」
「了解だ」
そのまま空中から飛び降りて、地上にいた六人の人間を全て切り捨てた。すぐに大きな施設に侵入し、廊下を歩いている白衣の研究者を全て切り捨てる。気配感知で、全部の人とゾンビ兵の位置を特定した。
「超思考加速。全敵削除まで身体超加速。縮地」
俺は気配感知した一人目に忍び寄り首を飛ばし、次の瞬間八人のいる部屋に行き、一瞬で首を刎ねる。その次の瞬間には二階に現れて、待機している十六人の兵士を殺した。さらに加速し、その奥にいたゾンビ化兵九体を屍人斬で殺し、更に先に進む。司令塔のようなところにいたスーツの人間達十二人を、二秒で殺害して走る。窓を突き破って、隣の棟までの五十メートルを飛び、ガラスを突き破って、そこにいた七名の作業員を殺す。さらに奥に進み通路を歩いている一人を殺し、通路の奥の部屋にいた三人を殺す。
十秒。
「残り十一人」
またガラスを突き破り、気配のする地下に進入する。するとそこに白衣を着た六人がいてすぐに殺し、地下にいる残りの五人を全て殺害する。
十五秒。
丁度ヘリコプターが着陸し、仲間達が下りて来たので、すぐにそこに向かう。
デルが聞いて来た。
「敵にバレたら、危険じゃないか。無造作に降りて来て大丈夫なのか?」
「全員殺した。ここに増援でもない限り、問題ない」
「全員? 四、五人しかいなかったのか?」
「いや、七十四人だ」
「へっ? 固まってたのか?」
「いや。別々の部屋にいた」
「三十秒もかかってないぞ」
「敵に、バレないうちにと思ってな」
「そ、そうか……」
俺はそれよりも、気になる情報を伝える。
「クキ。ここに、試験体がいる」
「こんなところにもか」
「こんなところに、だからだ」
「どうする?」
そこで俺が言う。
「運び出そう」
「なんだと? 危険だろ」
「いや。ちょっと使い道がある」
「……そう、ヒカルが言うなら」
「俺が責任を持つ」
「わかった」
すぐ俺とクキとタケル、デルがセットで、試験体が確保されている場所に向かう。地下深くにいたが、速やかに全員を処分したため、警報もならずに試験体は解放されていなかった。そこに試験体を入れる、強力な冷凍庫があり完全密閉で保管されていた。
クキが聞く。
「コイツか……?」
「ああ。持って行こう」
「わかった」
そうして俺は、そのコンテナを取り出すために剣技で斬りつけた。もちろん、コンテナを壊さずに。
「よし! 運ぶぞ! エレベーターに乗せよう」
クキの言葉に、皆が頷きコンテナを滑車に乗せてそこに運んだ。一階についてすぐにそれを外に出し、幾つもの鉄のワイヤーでヘリコプターに結んでいく。
シャーリーンが言った。
「ヘリコプターの燃料の補給は済ませてます」
俺が言う。
「じゃあ行くぞ。向かうのは、マイノット基地だ」
「「「「了解」」」」
そして俺達は試験体をぶら下げて、マイノット基地へと飛ぶのだった。




