第635話 核を消す次元の刃と青春の絆
スパイを尋問して分かったのは、新たに何かを狙っていること。その何かをなかなか吐かなかった為、また俺が尋問する事にした。ベギン! と頭蓋を割り、またヒールで直す。その上で、魔力と闘気と殺気をぶつけた質問をする。
「あ……あう」
「吐け」
「アビゲイル……と、研究員……」
「なに?」
ガクッ、と気絶した。そこで俺は、気付けにボールペンを刺す。
「うが……」
「それが、いったいなんだ?」
「そいつ……は……ゾンビを、終わらせる……力を持ってる……」
「だから何だと言うのだ? 終わらせて当然のこと」
だが、余りに強烈すぎたようで朦朧としてきた。
「狙いは、博士」
アビゲイルを見ると、青い顔をして下を向いた。
「大丈夫だ。アビゲイル」
「で、ですが、私がいれば市民を巻き込んでしまう」
そこで俺は、アビゲイルの両肩をがっちりつかんで言う。
「俺が、いるのにか?」
「ミスター……ヒカル」
「そんなことは絶対にさせん」
すると、タケルも笑って言う。
「そうだぜ、博士。あんたに指を触れるつーんなら、ぶっとばしてやんよ」
「ミスター武も……」
エイブラハムが、ニッコリ笑って言う。
「かわいい、アビーよ。今までもそうじゃったろ。安心せい」
「お爺ちゃん」
そんな話をしていると、カナダ諜報部員のリーダーが言う。
「だが、彼女がいれば、狙われるのも事実。彼女一人を抹消するのに、敵は核基地を占拠した。恐らく、あんたらの力が強大だからだ。それが敵に伝わり、あんなバケモノをオタワに放しやがった。そのうえ、このトロントまで狙われるとなると……」
それを聞いて、クキが答える。
「敵が元凶を消したいという一点に集中しているからだ。だがな、博士が殺されればどうなると思う?」
「……そうか……そういうことか」
「そうだ。人類が生き延びるためには、全員が彼女を守らなきゃならないんだよ」
ミオも言う。
「だから、命がけで守って来たの。博士は私達の大事な仲間なの。世界は彼女の手にかかっているのよ。だから世界中を敵に回しても、博士だけは守らなきゃならないの。人類のために」
「お嬢さんの言う通り、すまなかった。彼女がいるから危険なんじゃなく、彼女はどこにいても危険で、それを人類が守らないと、絶滅してしまうという事なんだな」
「そういうこと」
その尋問の最中だった。ドアが思い切りあけられて、軍人が飛び込んで来る。
「緊急です! マイノット空軍基地より、核弾頭が発射されました。目標はトロント! 残り時間十分」
キュイキュイ! と、非常のサイレンが鳴り響く。それを聞いて、縛られたスパイが嘲笑し始めた。
「くははははは! 土台無理なんだよ! 核がみんなを焼く! そうすれば、その女も一緒に蒸発だあ! あははははは! あははははは!」
「狂ってやがる」
諜報部のリーダーが、ガンとデスクを蹴った。
「黙れ!」
「どうする、あと、十分だってよ! トロントは消滅する!!」
それを聞いて、俺が言う。
「そうか。まあまあ余裕があるな。みんなも見に来るか?」
タケルが、頭をかきながら言う。
「おりゃ、何度も見たよ」
「わたしもー!」
「私もね」
そして、ミオが言う。
「日本から一緒だったもの、もう何回も」
スパイが、キョトンとした顔で言った。
「と、とうとう、狂っちまったか! あと、十分だもんなああ! あははは!」
だがオオモリが言う。
「いや、正確にはあと、八分二十秒です」
「ひゃっは! 正確に言ってどうする?」
ガン! と俺はそいつを気絶させた。
「見たいものは、ついてこい」
そして俺と仲間について、デル、研究員、諜報部員全員が、俺と一緒にそのビルの屋上に登って来る。次に、通信機を持った諜報部の女が言う。
「着弾まで後三分!!」
オオモリが画面を見ながら言う。
「こっちの方角ですね。ヒカルさん」
「お前はいつも正確だな」
俺はそっちの方を向いて、腰の村雨丸に手をかけた。
諜報部員のリーダーが言う。
「な、なにを。もう、核が来るんだぞ。とはいえ、既に逃げる場所もない、せめて地下に!」
「ヒカルさん。後、二分十八秒です」
「待ちくたびれる。随分、ノロく感じてしまうものだな」
諜報部の女が言う。
「一分三十秒 二十九、二十八、二十七……」
するとその時、タケルが言った。
「あ、喉乾いたな」
諜報部のリーダーが言う。
「あんた……こんなときに何言ってんだ」
「一分きりました!!!」
そこで俺が言う。
「見えた」
皆が俺を見る。
そして剣技の構えに入った。
「空接瞬斬! 次元断裂!」
俺の意思気の中で空間が割れ、そこにミサイルが吸い込まれて行った。そして次元の裂け目が閉じて、ミサイルの気配は消滅する。
すると、諜報部の女も言う。
「ミサイル……ロスト……どこにも見当たらないそうです」
「なんだと……」
そこで俺が納刀しながら、振り向いて諜報部員たちに言う。
「言ったはずだ。問題ないと」
「あ……あんた……核を消せるのか?」
「もちろんだ」
皆が唖然とする。
「い、言っている事がさっぱりわからん」
「言葉通りの意味だ」
「じゃあなにか? あんたと一緒に居るアビゲイル博士は、絶対に安全と言う事か」
「そうだ。仲間達は全員、俺が守る。まあ、彼らもおんぶに抱っこじゃないがな」
「……バケモンだな」
するとミオが言う。
「あら、失礼しちゃうわ」
「いや、いい意味で」
デルが諜報部らに言う。
「わかる。あんたらと同意見だよ。シールズなんて厳しい軍に属してたが、こんなバケモノ見た事無い。と言うか、まるで神様だよ」
だが俺は、激しく拒絶した。
「神を軽々しく言うな。俺が、神な訳がない。ただの男だ!」
「す、すまん。そんなに怒る事か?」
「神を冒涜してはならん」
「いや、冒涜しているうちには入らんと思うが」
そこで、またミオが言う。
「いろんな国の考え方もあるし、世界によっても違うわ。それに、ヒカルは神様じゃない。私達の一番大切な人よ」
するとタケルが、茶化すように言う。
「あっ? いま、一番っつったか? 美桜。おまえ」
「な、なによ!」
すると、ツバサが言う。
「私だって! 一番よ!」
「つ、翼!」
「あたしもよ!」
「南!!」
「私だって!!」
「愛菜!!」
それを聞いていた、オオモリが言う。
「いや、僕では?」
「あんたなわけないでしょ!」
だがそこで、アビゲイルが言う。
「私は、ミスター大森がいちばん……」
「「「「えっ?」」」」
女達がアビゲイルを振り向く。
「い、いや、そうじゃなくて、あの!」
それを見ていた、諜報のリーダーが言う。
「そうか。仲がいいんだな。羨ましい限りだ。守護神に愛されるなんて、あんたらは本当に幸せ者だ」
「「「「でしょー!」」」」
そこで、諜報の女も言う。
「いいなあ……」
「は? お前……」
「いや! こっちのこと!」
諜報部のリーダーが苦笑して言う。
「核での破滅の直前だったと思うがなあ、あんたらといると、なんだかバカらしくなってくる。まるで、青春模様を見せられているようだ」
そこで、タケルが言った。
「青春と言えばよ。オタワからここまで何も飲んでねえんだ。コーラでも飲ませてくれよ」
「そうしよう。皆も、是非一緒に。ここの自動販売機のホットドッグは、まあまあ美味い」
「食いてえ」
そうして俺達は、部屋へと戻っていくのだった。歩きながらクキが言う。
「むしろ、アビゲイル博士狙いでよかったよ」
それに俺が頷いた。
「ああ。無駄に市民が焼かれずに済む」
「オリバーや大統領が……どうなったか」
「そこに、俺がいなかったことが悔やまれる」
「お前のせいじゃないさ」
それを聞いていたタケルが、頭の後ろに手を組みながら言う。
「ヒカルが、この世界で、いっちばん頑張ってっと思うぜ。てか、ヒカルより頑張ってるやつ探すのが、めっちゃムズイ」
それを聞いて、アビゲイルも言う。
「そうです。恐らく人類が、本当に守るべきは私では無く、ミスターヒカルだと思います」
だが俺は首を振る。
「違う。仲間達全員だ。必ず俺が守る」
「分かってます……」
そして休憩室に入り、皆にコーラとホットドッグが配られて、しばしの休憩に入るのだった。




