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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第630話 薬品の受け渡しと裏切者の可能性

 まだノースダコタのマイノット空軍基地は、敵の占拠が続いている。カナダ国内でもモントリオール、ビクトリア、カルガリーにまでゾンビが出現し始めていた。その情報を聞いて、デルがボソリと言う。


「工作員がいるのか……?」


 オオモリが答える。


「入り込んだんじゃなく、もともと国内にいる連中がやってるんです」


 それに対して、俺が言う。


「いま、薬の製造を中断させるわけにはいかない。ここを脅威から守らねばならん」


 クキも頷く。


「その通りだ。目先の脅威よりも、先を見てやらねばならん」


「君らは冷静だな」


「もう、奴らの手口は、嫌というほど味わった」


「そういうことか」


 そこに、ようやくアビゲイルがやってきた。


「工場を回し続けて、薬品のストックが出来ました!」


「よし!」


 すぐ無線を繋いで、カナダの本部へとつなげた。


「応答してくれ」


「こちら本部」


「薬の準備ができた。もう一度、軍人を呼び戻してくれ」


「首相に代る」


 そして、カナダの首相が出た。


「急いで軍人を呼び戻してほしい。薬の準備ができました」


「わかった!」


 クキが続けて言う。


「マイノット基地の状況は?」


「いまは、動きが無いが、カナダ軍は戻ってきていない」


「次にまた、撃つ可能性がある。いまのうちに、マイノット基地への空爆を」


「それは……できん。アメリカへの、宣戦布告のような形になってしまう」


「い、いまさら」


「親しい国の首相には電話したが、世界が、この事態を注目しているんだ……」


「そういうことか」


 俺が、クキに聞く。


「なぜ、ダメなんだ?」


「カナダが、アメリカ基地を爆撃をすれば、味方だった西側が黙っていないかもしれない。そうすれば、他の地域でも紛争が起きるだろう。アメリカが完全に無力化したと知ったら、東側が動く可能性も高い」


「だからか?」


「カナダ兵士が潜っているところに、空爆はあり得ないだろうが、それよりも世界情勢の方が問題だ」


「世界はどうなる?」


「アメリカは、世界の軍事バランスの最も大きな国だった。だが、現在のところそれが機能していない。それが、世界中に知られる事になれば、そのバランスが崩れるんだよ」


「そうなると?」


「下手をすれば、アメリカの傘の下にいた国々が、侵略されるだろうな」


「何故そんな事になる? アメリカが困っているんだぞ?」


「だからだよ。その弱いところにつけこむのが、国々の関係性だ。カナダもそうだが、今ごろはイギリスもNATO加盟国もオーストラリアも、情報を集めるので精いっぱいだろう。そんな中で、カナダがアメリカの国土を爆撃したとなると、自らこちらの情勢をバラす事になってしまう。世界では、アメリカに守られてた国が結構あるからな。アメリカの代理を、他の西側諸国が全てカバーするのは無理がある」


「それは、親分がいなくなって子分たちがやられる。それを、親分の友達たちでは、守る事が出来ない。という、理解であってるか?」


「あってる」


「そんなもので、世界が滅ぶとしても?」


「結局、それで日本も中東も滅んだ。そして、次にアメリカとなると、敵は喜んで攻めて来るだろうな。アメリカとカナダが争っているなんてのが、真実でなくてもでっちあげるだろう。そうすれば、西側諸国がいくら動いてもかなり不利な状況になる。下手をすると、大義名分を敵に与える事になるかもしれん」


「そうか……」


 それを聞いていた、オオモリが俺に言った。


「ヒカルさん。人間って……愚かなんですよ」


 この世界だけの話じゃない。前世でも、ろくすっぽ調査もせずに、世界核に対して俺達を送り込んだ。その世界の核を俺が壊しかけたが、俺の命と引き換えにそれを防いだ。この世界は、それより危うい。


「人……というのは、難しいものだ」


「そうです」


 聴覚が発達しているツバサが、皆に言う。


「ヘリの音がするよ」


「どっちだ?」


 窓を開けて、クキが確認して言った。


「カナダ軍だ。薬を取りにきたらしい」


「すぐに渡してやろう」


 すぐ工場に向かい、シャッターを開けて薬を運び出し始める。そこに、カナダ兵達が走り込んできた。


「薬品が、出来上がったと聞きました!」


「できている! 持って行ってくれ。すぐに、パンデミックを起こしている地域に散布を!」


「わかりました!」


 次々に段ボールを担いで、兵士達がヘリコプターに積みこんでいった。だがその時、俺の耳に違う音が聞こえて来る。そこで、運んでいる軍人に聞いた。


「ジェット機も、こちらに向かってるのか?」


「いえ! その連絡は入っていません!」


 俺達は顔を合わせて、俺はすぐに屋上に登る。


 すると二機のジェット機が、カナダ軍のヘリコプターに向かって、ミサイルを発射したところだった。


「空接瞬斬!」


 俺の剣技で二発のミサイルは空中で爆発して、地上からカナダ軍がミサイルを討つ。そのミサイルは、飛行機を追尾し始め一機を撃墜した。もう一機がミサイルから逃れ、こちらにむかって旋回し始めた。


「閃光孔鱗突!」


 ジェット機が上空で四散し、その破片が市街地に降り注いでいく。


 軍人が言う。


「あれは、どこの所属機だ?」


「すぐに、管制室に確認を取れ!」


 そしてクキが言う。


「敵に……情報が漏れている」


 デルも頷いた。


「そのようだ。中に……いるぞ」


「だな」


 俺が軍人に言った。


「積みこんだらすぐに持っていけ! 敵がまたやってくる前に!」


「わかりました!」


 荷物を運びきって、ヘリコプターが飛んで行った。


「すぐ通信を」


 クキが、通信機を取ったところで、オオモリが言った。


「この通信機は、使わない方が良さそうです」


「これが……原因か?」


「はい」


 皆が、顔を見合わせた。デルが言う。


「この通信機を持ってきた兵士の顔は、覚えているか?」


 そこで俺と、クロサキとシャーリーンが手を上げる。そして、クキが言う。


「俺も記憶している」


「首相が……危ない」


「急ごう」


 そして俺達は、製薬工場を締めて、どこにも連絡せずに軍司令部へと戻る事にする。


「一人とは限らん」


 クロサキが頷いた。


「敵が気づいている可能性もあります」


 適合者のデルも、ゾンビ化された研究員も、普通の人間より早く走れた。俺達とは違う体の変化だが、息を切らさずについて来れている。


 アビゲイルが言った。


「ビスク製剤が効いているわ。発作が起きなくなった」


「はい。薬を投入してから、私達の体も楽になりました」


「治験しているみたいで、申し訳ないわね」


「役立つのなら本望です」


 そうして俺達は、再び軍の司令部が見えるところに到着したのだった。

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