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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第629話 大陸弾道弾の標的はワシントンとオタワ

 薬を受け取りに来たカナダ軍を入れ、俺は屋上で気配感知を広げている。今は新たな試験体の気配も、怪しい飛行物体も空には飛んでいない。


 すると、下から誰かが走って来る気配がする。


「ヒカル! 大変だ!」


 タケルが慌てた顔で、屋上に飛び込んできた。


「どうした?」


「核ミサイル基地に動きが出た!」


「なに?」


「来てくれ!」


 俺がタケルについて行くと、軍隊が通信を行っているところだった。


「はい。分かりました。はい」


 その軍人が顔を上げて、俺達を見渡す。


「アメリカミサイル基地の、サイロが開いたようです」


 クキとデルが、同時に叫ぶ。


「「なんだと!」」


 デルが言う。


「スピーカーにしてくれ!」


 通信が俺達にも聞こえてきて、指令部からの話が皆に伝わる。


 クキが尋ねた。


「そして状況は?」


「熱線を感知! 恐らく……核ミサイルを発射するつもりです!」


「カナダ軍は?」


「緊急の為、中隊が突撃しましたが! 応答せず!」


 俺達が顔を合わせ、全員が眉間にしわを寄せた。


「入れてしまったのか……」


 向こう側から、カナダ首相が聞いて来る。


「どうするべきだろう?」


 クキが答えた。


「空爆しかない。ノースダコタが爆発してしまうが、撃たれるよりいい!」


「出来ん! カナダ兵が大勢死ぬ!」


「突入部隊は諦めるべきだ! すぐに退避させろ!」


「仲間は……まだ生きている」


「いや。緊急事態だ! なんとしても阻止せねば!」


 だが、次の瞬間だった。


「緊急事態! ミサイルが! ミサイルが発射されました!」


「くそ!」


 ドン! とテーブルを叩いた。そして続けて、クキが聞いた。


「弾道の軌道は? どこに向かっている!」


「算出中です!」


 クキとデル、そして軍人たちがざわめいた。


「どこだ? ロシアか? 中国か? どこだ?」


 緊迫した状況の中で、通信気を囲み皆が息を飲んでいる。


「軌道から算出された、着弾の地域が判明しました!」


「どこだ!」


「ワシントンDCです!」


「な! ワシントンだと!! 着弾までの時間は!」


「約三十分!」


「さ……ん……」


 全員が呆然とする。もはや、どうする事も出来ない状況だ。更に、クキが慌てながら言う。


「すぐにワシントンへ通信! こちらからも通信する!」


「はい!」


 衛星通信機を使い、俺達もアメリカのワシントンへの通信を試みた。


「こちらカナダ! 緊急だ! ノースダコタから核弾頭が撃たれた!」


 出たのは、向こうにいる軍人だった。


「なっ! なんだって!」


「急いで避難を! 着弾まで三十分も無い!」


 すぐに、大統領に代った。


「ミスター九鬼! それは本当かね!」


「衛星からの映像と、こちらでの観測で明らかになりました! もうニ十分も無い! 通信をきります! 全員すぐに行動をしてください!」


「わかった!」


 そうして、通信が切れた。


 静かになった通信機の前で、誰もが静かになる。


 ガガッ!


 また通信が入った。すると、次にカナダ首相が言う。


「また! 違うサイロが動き出した!」


「なんだと……」


 そこで、オオモリが言う。


「九鬼さん……さっきの通信、傍受されたっぽいです」


 それを聞いて、慌ててクキがカナダ首相に言う。


「ミサイルの次の標的は、ここかもしれません!」


「なぜだ?」


「アメリカへの通信が、傍受されたようです」


「通信が……」


 向こう側の、軍人の声が聞こえて来る。


「ミサイルが発射されました!」


「なに!」


 すこし沈黙が続き、そして軍人が無線の先で叫んだ。


「着弾まで十三分!」


 それを聞いて、ここにいる軍人たちが騒然となった。カナダの首相も叫ぶ。


「間に合わない! とにかく、地下に! 潜るより方法がない!」


 だが、そこで俺が言った。


「ここに飛んでくるのなら、俺が防ぐ」


「はあ? 何をバカな事を言っているんだ!?」


「大丈夫だ!」


「だめだ! 部隊を撤退! とにかく! なんとかしてくれ!!」


 軍人たちが、慌てて出て行ってしまった。外に出て、次々に車が走り去っていく。


 そこで、オオモリが俺に告げた。


「ヒカルさん! 方角は南西です!」


「わかった。皆は、引き続き情報を」


 皆が頷き、俺が再び工場の屋上に登った。そこから、一番高いビルを探して、身体強化で飛びついて、一瞬で屋上まで登りきる。


「超気配感知! 超思考加速! 魔気展開! レベル解放!」


 ボウッ! と、魔気がふくれあがり、屋上のフェンスが吹き飛ぶ。


「来たか……」


 オオモリの言った通り、南西からそれは飛んできた。


 砂粒ほどの光が見えた時に、剣技を繰り出す。


「空接瞬斬! 次元断裂!!」


 俺の意識にはっきりと伝わって見える、空中に開いた次元の裂け目に、核弾頭が吸い込まれて行った。次元の裂け目が閉じ、核弾頭は消え去ってしまう。残身で、次が無いか感知するが飛んでは来なかった。そのまま皆の下に戻ると、タケルが言って来る。


「だから軍人に言ったのになあ。逃げなくていいって」


 そこで、デルが慌てて聞いて来る。


「な、なんで逃げなくていいんだ? 核が来るだろ!」


 俺が冷静にデルに答える。


「核弾頭は俺が消した。だから引き続き薬を作れる」


「うそだろ」


 デルの言葉を聞いて、クキが苦笑した。


「いや、いままでも何度も消して来たから、もう驚かんけどな。本当らしいんだ。ローマでもやった」


「は、はは……ははは……。エッ〇スメ〇、とか、スー〇ーマ〇、とか言う次元じゃないじゃないか」


 それを、聞いてタケルが言った。


「あの映画をヒカルに見せたら、勝てるって言ってたな。それより強いのと戦って勝ったことあるって」


「ま、まて! そんな馬鹿な……。あれは、架空の話であってだな……」


「ま、俺は知らねえけど」


「いくらなんでも……」


 そんな会話をしていると、ガガッ! と無線が鳴る。


 カナダの首相だった。


「どういうことだ? 着弾しない」


 クキが言う。


「ミサイルは処理した」


「な、何を言ってるんだ……」


「本当だ」


「なっ!」ガガッ!!


 次の瞬間、一瞬通信が乱れる。


「どうしました?」


「ワシントンが……ワシントンDCに……核弾頭が落ちた」


「くそ!」


 俺達は、言葉も無かった。


 俺はただ……自分の無力に、心が冷え込んで来る。


「オリバー……」


 俺のつぶやきに皆が静まり返り、無線の向こうから聞こえる騒がしい音だけが鳴り響くのだった。

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