第627話 散らばったミミズゾンビを一掃する究極奥義
軍部に到着してすぐ、カナダ首相が緊急通信で、都市内の各部隊に対して通達をし始める。
「こちら指令部! バケモノは、攻撃すれば分裂し人間を襲う! 現在の対応策は、大型車両での遮断や、誘導による対応だ!」
だが、各部隊から答えが来る。
「無理です! 既に分裂して、市民達を襲っています! 兵士もやられてます!」
「こちらも! 無理です! 部隊は半壊! このままでは全滅します!」
「退却の許可を! 都市の閉鎖を要請します!」
「な、なんだと……」
その時、事務局の人間が言う。
「総理!」
「なんだ!」
「ノースダコタのマイノット空軍基地基地に向かった軍が到着しました! 突入指示を出しますか?」
カナダ首相は、すぐに答えた。
「突入せよ!」
そこで、俺が言う。
「とにかく、都市の人を逃がす事を優先させろ」
首相が、部隊へ再び指示を出す。
「できるだけ多くの市民を、都市外に避難させるんだ! バケモノから、出来るだけ離れろ! 車で出れる市民は、とにかく都市から離れるように誘導。部隊もバケモノを見たら、離脱して良い! 絶対に攻撃をするな! 逃げ遅れたものは、置いて行くしかない」
「「「「は!」」」」
非情な指示だが、今は、それしか方法がない。
その言葉を聞いて、それぞれのオペレーターが各地へと通信をしだす。カナダ首相が呟く。
「大変な事になった……」
オオモリが、軍の人に言った。
「位置を! 化物に遭遇した位置を、地図で表せませんか!」
するとオペレーターが、画面に出現場所を提示した。
オオモリがスマホを繋いで、そのデータを表示させた。
「ヒカルさん! 試験体は、この場所にいます!」
受け取って見れば、四カ所に赤いマーキングがなされている。
「クキ! ここを頼んだ!」
「ああ」
俺は皆に背を向けて、身体強化を施す。
「最筋力強化!」
ドシュン! 俺はそこから消えた。次の瞬間、廊下を出て窓を破り屋上に飛んでいく。屋上に立つと、あちこちで煙が上がっているのが見えた。
オオモリからもらったスマホを見る。
「思考加速。全位置記憶」
全ての正確な位置が頭に入り込んだ。
「レベル解放!」
そして、一番遠い試験体がいる現場に体を向ける。風向きも全て読み込む。
「広範囲完全気配感知!」
そオタワ市内の、各地にいる人、ゾンビ、試験体、の位置を特定させていく。
「超空間跳躍術!」
ボッ!
次の瞬間、一番遠い試験体が出た現場に立っていた。
「超高速思考。全、試験体確認」
思考の中に、飛び散った試験体の位置が見えて来る。どうやら、地面に潜り込んだりしている奴もいるようだ。
「ゾンビに変わってしまった人も沢山いるか……」
カナダの首相を救い軍部に行くので、時間をかけてしまった。だが人を避難させてもらったおかげで、究極奥義を使う事が出来る。レベル解放しているので、見る見るうちに周囲の車やビルが崩壊する。
「最大究極奥義! 屍人斬! 光子天網斬!」
キャン!
甲高い音と共に、俺の刀から無限とも思われる数の、光の剣線が発せられた。それらがこの位置にいる全てのミミズ試験体の行先を塞ぐ。もちろん、この剣線に触れれば一瞬で蒸発する。
逃げ場を失った全試験体に、次の剣技を繰り出す。
「最大究極奥義! 光終焉滅!」
光の網の全ての先から、邪を滅ぼす無限の光がパッ! と発せられた。
「よし」
この位置にいる、分裂したミミズ試験体は全て蒸発させた。
そしてすぐに、見える範囲のゾンビを斬る。
「飛空円斬!」
剣技を発した、次の瞬間、俺は近くのビルの屋上にいた。更に、次の試験体の位置を確認する。
「超高速空間跳躍術!」
ボッ!
すぐ、次の場所に移った。やはり、バラバラにちぎれた試験体が、あちこちに入り込んでいた。
「最大究極奥義! 屍人斬! 光子天網斬! 光終焉滅!」
キャン! パシン……。
「よし。飛空円斬!」
次の瞬間、再び近くのビルの屋上に立っていた。
「超高速空間跳躍術!」
同じように処理し、最後の試験体の場所に飛んだ。やはり、同じように分裂している。
「滅びるがいい。屍人斬! 光子天網斬! 光終焉滅!」
そして、最後の試験体が消える。
「飛空円斬」
周りのゾンビを駆除した時、目の前に軍の本部があった。レベル解放のおかげで、周囲が溶けていた。
そのまま、軍施設に飛びつつ、解放術を解いた。中に入り込み、先ほどの指令部に戻る。
ミオが言う。
「ま、まだ十分くらいしか経ってないけど……」
「試験体は全て排除した。あとは残ったゾンビの処理をしつつ、市民を安全な場所へ連れて行けばいい」
それを聞いて、首相や軍関係者が目を見開いて言う。
「全部、排除しただと!」
「そうだ。すぐに、部隊に指示を出せ」
「本当なのか?」
「本当だ。早くしろ」
「わかった」
そして首相が指示を出すために通信を繋げると、向こうのほうから話し始める。
「司令部! なんと、化物が消えました!」
「こちらもです! 突然いなくなりました! 地中に潜ったのでしょうか?」
「西方も消えました! どうなってるんだ! まったく!」
そこで、首相が言う。
「バケモノは処理した。リビングデッドを排除しつつ、生き残った市民を安全な場所に移動させてくれ」
「「「「は!」」」」
そして俺が画面を見ると、どうやらアメリカの基地で戦闘が起きているようだった。
「どうなっている?」
「謎の軍隊が占拠している」
「ファーマー社の私兵だ」
「いま、不用意に入れない状態だ。核基地内では銃を使えない」
そして、クキが説明してくれる。
「万が一があるからな。核が爆発したら、それこそ全滅だ」
「先に入った米軍は、どうなってる」
「それが、分らないんだ。今、我が国の先発部隊が調査中だ」
その時だった。
ミサイル基地の中から、ぞろぞろと兵隊が出てきた。そいつらはいきなり、カナダ軍に対して発砲して来たのである。
「発砲許可!」
「撃て!」
無線の向こうから、機関銃の音が聞こえて来る。俺が見ている画面の中でも、銃撃戦が行われていた。それを見ていた、オペレーターが言う。
「な!」
「なんだ?」
「おかしい……」
画面の向こうで、カナダ軍が一方的にやられ始めたのだ。見ていると、敵は被弾するのもかまわずに、兵士達を攻撃しまくっている。
「ゾンビ化兵か……」
「だな」
カナダの首相が聞いて来る。
「どうなってる?」
「あれは、人の知能を持った、回復能力を備えたゾンビ兵だ」
「どうすればいい!」
そこで、クキが言う。
「ロケットランチャーで四散させるか、火炎放射器で焼くかなら止められる可能性がある」
「核ミサイル施設で、ロケットランチャーや火炎放射器……無理だ」
「なので、一時撤退を勧める」
「わかった! 撤退だ! 一時撤退! くりかえす! 一時撤退!」
カナダ軍の車両が撤退し始めた。かなりの死体が転がっているが、ゾンビ化兵は深追いすることなく、再び核ミサイル基地へと戻っていくのだった。




