第624話 カナダ総督公邸へ突撃
いきなり敵に攻撃された俺達は、一時的に回避を余儀なくされてしまう。
クキが言った。
「いくら装甲車とはいえ、ロケットランチャーの直撃を受けたらまずい」
「俺が全て防ぐ」
車の上に乗って、気配感知をしながら言う。
「こっちからの、攻撃を容易に出来ないのが辛いな……」
クキの言う通りだった。防御は出来たとしても、ここは一般人を巻き込んでしまう可能性があるため、こちらからの攻撃は注意を要する。だから俺が先に感知して、車を誘導する必要があった。
そして、タケルが言う。
「マズいな。先導する政府専用車がいねえから、停まるしかねえぞ」
信号でずらりと並ぶ車の後ろに、俺達が停まる。
その時……。
キイン!
狙撃だった。だが、クキの技の十分の一以下、居場所が直ぐに分る。
「陽炎斬」
五百メートル先のビルの屋上で、敵が死んだ。だがすぐに、ビルの角からロケットランチャーを持った奴が出て来る。
「刺突閃」
そいつは、そのまま倒れた。
「ヤツラ、なりふり構わずだな」
タケルの声にクキが答える。
「もう新たな段階に入ったんだ。もはやこれは、戦争だ」
すると、デルがマイクを取って言う。
「緊急車両です。道を開けてください」
すると、車両の外に声が響いた。前の車がゆっくりと脇により、一つ前に進む。前の車がまたどいて、また一つ前に進んだ。ようやく信号に差し掛かり、ゆっくりと通り過ぎる。
「流れに沿っていくか?」
タケルが進行方向を変えて、車の流れに沿って走り出した。
「都市部を出た方が良い」
オオモリが答える。
「じゃあ、左に曲がれば幹線道路に出ます」
「おっしゃ」
タケルは信号を無視し、道路に飛び込んだ。後ろの車と車が追突して、多重に事故を起こしてしまう。
クキがタケルに言った。
「気にせず行け!」
「おう!」
そのままスピードを上げて、走って行くと道路が少し高くなってきた。
「なんだ……」
俺が街を見渡すと、もうもうと煙が上がっている場所があった。
「あそこが、首相がいるところだな」
タケルが、車を路肩に停めた。
「どうするよ」
「周辺でも煙があがってるようだ」
「戦いが広がっているんだろ」
ヘリコプターが飛び交って騒然としており、あちこちでサイレンが鳴り響いていた。
「近寄れないでいるな。あのヘリは、カナダ軍か?」
「わからん。敵か味方か」
「マズい状況だ」
「行くしかねえんじゃねえか?」
「市民に被害が出るかもしれん」
「でも、政府がダメになったら、もっとマズいだろ」
クキが判断を下す。
「タケルのいう通りだ。向かおう」
「わかった」
次の降り口で幹線道路を下り、俺達は官邸に向けて一直線に進んだ。
「おっ! 封鎖されてるのぞ?」
バリケードのようなものが出来ており、十人ほどの人間がそこを見張っていた。
「どっちだ? 味方か?」
タケルが言った瞬間、一斉に殺気を感じた。
俺が車の前に飛び降りた次の瞬間、十人からが一斉に機関銃を撃って来た。
キキキキキキン!
銃弾を弾きつつ、剣技を繰り出していく。
「刺突閃」
「刺突閃」
「刺突閃」
銃撃が止まり、あたりは静まり返った。
俺が言う。
「敵だったのか?」
「まあカナダ軍なら、いきなり撃ってこないだろ」
「そうか」
俺はバリケードを、推撃で吹き飛ばす。
ズドン!
タケルの装甲車が走って来たので、その天井に飛び乗った。
「この先にも、銃を持った連中がいるようだ」
「ヒカル! 撃ってきたら、やっていい!」
「わかった」
俺達の車が走って来ると、慌てたように銃を構えた。
「敵だ!」
「龍波斬!」
ゴウッと、剣撃が走り停まっている車両ごと、銃を持った連中を切り裂いた。だが、先の店のビルや、他の車まで斬りつけてしまう。幸い人がいなかったからいいが、いたら一緒に斬っていた。
クキが言う。
「タケル! ツッコめ! ヒカルは、バリケードだけ吹き飛ばしてくれればいい! 車にぶつかっても気にするな! 急げ!」
「了解」
「わかった」
一気にスピードを増して、道にある車をガンガンと突き飛ばしていく。邪魔な車がいれば、俺が推撃で吹き飛ばした。
オオモリが言う。
「あの建物です!」
「つっこめ!」
その前には、壊された車両の残骸や、軍用車両が置いてある。
「敵だぜ」
「構わず行け!」
更に多くの敵が、一斉にこちらに銃を打ち込もうとしていた。
「ヒカル! 吹き飛ばしてしまえ!」
「炎龍鬼斬!!」
車を切り裂き、敵を切り裂いて装甲車は官邸に一直線に進む。
「突っ込め!」
俺達が建物に突っ込むと、入り口付近の奴らが慌てて飛びのいた。
「推撃」
ズガン!
吹き飛んだ壁に、そのまま車が突っ込んだ。周りで吹き飛んだ男らや、銃が散乱している。
すると敵が叫ぶ。
「増援のカナダ軍だ! 殺せ!」
慌てて銃を構えるが、俺が飛び降りて剣技を繰り出した。
「乱波斬!」
周りの人間を細切れにしていく。そして、装甲車からタケルが言う。
「ヒカル! 行け!」
俺が頷いて、人間の気配が多い方に走って行った。騒動に気が付いた奴らが、銃を構えて待っていた。
「水流閃!!」
ごうと濁流が通路を流れ、そこにいた連中を斬り刻み押し流す。その先にある破壊された扉を入ると、そこにも敵がいた。
「重力天雷斬!」
何トンもの重力で、そこにいた奴らを押しつぶす。そこにエレベーターがあり、扉があきっぱなしで、中は真っ暗。俺がそこに首を突っ込むと、下から気配がした。
「下か」
そのまま飛び降りると、三十メートルくらい落下する。エレベーターの天井には穴が開いていたので、そのままそこに入り込んだ。すると扉は開いていて、目の前に通路が見えた。
スッと出ると、そこには人はいなかった。どうやら先を曲がったところにいる。
「縮地」
シュッ! 角に移動すると、丁度そいつらが、鉄の扉を火花を散らしながら切っていたところだった。凄い音がするが、どうやらのこぎりで扉を破壊しているところらしい。
俺は、無造作にその男らの間を歩いて行く。
「えっ?」
「なっ?」
そいつらを相手にする事無く、俺は扉を斬っている奴のところに行った。
「なにをしている」
「あっ? な、なんだ? 政府関係者か? こ、殺せ! エージェントだ!」
そいつらが、一気に俺に飛びかかって来たので、剣技を繰り出す。
「錐揉龍閃!」
通路に刃の渦巻きが発生し、全員が細切れになった。
「う、うわあああ!」
のこぎりを使っていた奴が逃げようとしたので、首根っこを掴んで引き戻す。
「何をしている」
「く、はなせ! はなせ!」
「この先に何がある?」
「首相だ! 首相がいる!」
「それを、殺そうとしているのか?」
「……命令だ」
「どこから?」
「……う、上だ」
コツン! と、そいつの意識を狩る。そして首を掴んでぶら下げ、鉄の扉をノックした。
コンコン!
だが返事はない。
「仕方がない」
俺は鉄の扉に手をかけて、力まかせに引っ張って外す。三十センチくらいの厚さがあり、のこぎりではなかなか切れなかったらしい。
俺が入っていくと、奥から声がした。
「止まれ!」
俺は、言われるがままに止まった。
「お前は何者だ?」
「味方だ。首相を助けに来た」
「なに……? 特殊部隊か?」
「違う。アメリカから来た」
すると角から、こちらに顔を出した奴がいた。
「あっ。あなたは……」
「ここまでの敵は、ある程度片付けた。上で、仲間が待ってる。すぐに脱出しろ」
「ちょ、ちょっとまって!」
少しすると、カナダ首相がやってきた。
「な! ミスターヒカル! 来てくれたのか!」
「俺達も襲撃にあった。ここを脱出するべきだ」
「わ、わかった!」
出て来たのは、首相を合わせて四人。
「他は?」
「だめだ。やられたらしい。それは?」
「敵を一人つかまえた。のこぎりで切っていた」
「連れて行くのか?」
「そうだ」
四人を連れてエレベータ―に行くと、上から銃の音が聞こえて来る。護衛の一人が、エレベーターのパネルに鍵を差し込んで動かした。だが、一階にあと半分というところでエレベーターが止まる。
「どうした?」
「これ以上動かない」
俺が先に身を乗り上げて、四人を引っ張り上げる。すると仲間達が、落ちていた銃を拾って応戦しているところだった。装甲車のおかげで銃撃は防げているが、敵の数の方が多いらしい。
クキが振り向いて叫ぶ。
「首相!」
「ミスター九鬼。すまない!」
「早々に離脱を」
「だ、だがこの状況では……」
銃撃戦の様子を見て、首相が険しい顔をする。
それを無視し、俺がクキに言う。
「攻撃が収まったら、車に乗って出て来い」
「了解だ」
「一人捕えた。コイツを持って来てくれ」
「ああ」
首相と護衛達が唖然として言う。
「ど、どうするつもりだ?」
「大人しくさせて来る」
そう言って背中を向け、俺は入り口に向かって歩いて行くのだった。




