第623話 カナダ国内にも忍び寄る危機
衛星からの映像では、車から銃を持った人間達が、ぞろぞろと降りてきていた。
クキが、政府関係者に言う。
「アメリカ大統領府に連絡はついたか?」
「呼び出し中です」
俺達が見ていると、銃を持った人間が基地の方に近づいて行くところだった。
「つながりました! 大統領補佐官です!」
「九鬼さん。どうかしましたか!」
「大統領は?」
「いま、別件で出ています」
そして、クキが俺達を見た。それは、この補佐官は信用するに値するか? と言う事だ。
「オリバー・クレイトンかグレイブ・クレイトンをお願いしたい」
「わかりました」
少し待つと、グレイブ・クレイトンが出た。
「どうしたね?」
「核ミサイル施設に、銃を持った人らが近づいているのを衛星映像で確認した。これは、アメリカ軍で間違いないのだろうか?」
「大統領に確認せんと分らん」
「すぐに確認してほしい」
「わかった!」
映像では、どうやら次々に基地内に入り込んでいってる所だった。
そしてクキが、政府関係者に聞く。
「……これは、何処の基地だ?」
「ノースダコタの、マイノット空軍基地です」
クキが、地図を見た。
「ここから……どのくらいだ?」
「ヘリで八時間ほど。陸路なら二十四時間かかります」
「これが米軍ならいい。だが、裏切り者だとしたら……」
大統領からの返答は、なかなか返ってこなかった。皆がそわそわして、衛星からの映像を見ている。
カナダの政府関係者も慌ただしく動いており、政府へも緊急通達したらしかった。
すると衛星通信で、オリバーが出てきた。
「オリバーだ」
「オリバーさん。大統領からの連絡は?」
「まだだ。軍関係者に聞いたが、部隊は送っているようだ。君らが、見ている部隊かどうかは確認中だ」
どうやら、アメリカのほうでも、情報が錯綜しているらしい。慌ただしく動いており、既に他の奴らに情報は伝わってしまったようだ。
その時、カナダ政府の関係者が言う。
「見てください!」
なんと、衛星からの映像で、ヘリコプターが数機、到着したのだった。
「また、来た。今度は、ヘリか……」
オリバーが聞いて来る。
「どこの軍か、確定できるか?」
「いや、民間の衛星を借りてるんだ。そこまで鮮明には拡大できていない。豆粒のような人間が動いているのが、分かる程度なんだ」
そこでデルが言う。
「ヘリは間違いなく、米軍のものだ。こいつらが、どっちかは分らんがな」
ヘリコプターから、数人が下りたのが見えるが、確かに米粒にしか見えない。そして次の瞬間だった。いきなり、一機のヘリコプターが爆発し、他の機体が一斉に回避行動をとりはじめる。
デルが言う。
「スティンガーだ。地上から撃墜されてる」
タケルが拳を握って言う。
「どっちがどっちか、分からねえじゃねえかよ!」
すると丁度、オリバーのところに大統領がやってきた。
「待たせたね」
デルが答える。
「大変です大統領、ノースダコタのマイノット空軍基地にて、戦闘が行われております」
「なんだと!」
「至急、増援を送られたし!」
「時間がかかる……、まともに稼働している基地がないんだ」
深刻な状況だった。カナダの政府関係者が言う。
「首相に伝え、アメリカ大統領との合意があれば、戦闘機を飛ばせます」
すると向こうから、アメリカ大統領が言う。
「領空侵犯を許可する! そして、正式にカナダ政府に対し、援軍の要請をしたい!」
「すぐに!」
管理官が動いて、すぐに向こう側とカナダ政府が繋がったようだ。アメリカの大統領の依頼を受けて、カナダ軍をノースダコタのマイノット空軍基地へ向かわせることになる。
そして俺が言う。
「俺たちも、行った方が良いんじゃないのか?」
「時間がかかるが?」
「カナダ軍がけん制している間に、何とかならないだろうか」
「確かにな」
それを聞いて、政府関係者が直ぐに連絡をする。事態は一気に険しくなり、俺達が慌ただしく動き出そうとした時だった。俺の耳に飛行機の音が聞こえてくる。
「ん?」
俺では無く、ツバサが言う。
「なんか、ここに飛んで来てる?」
カナダ兵が言う。
「飛行機ですか?」
だが俺の危機センサーが警鐘をならす。脱兎のごとく部屋を出て、一気にガラスを突き破り外に出た。すぐに屋上に飛び上がると、こちらに向かって飛行機が飛んできているのが分かった。
次の瞬間、飛行機がミサイルを撃ち込んでくる。
「空接瞬斬!」
ミサイルと飛行機を同時に斬り落とし、飛行機はそのまま市街地に墜落して炎上した。
「くそ」
すぐに、みんなの下に戻ると、オオモリが言う。
「通信を探知された可能性があります」
アメリカと通信をした事で、こちらの状況がバレた可能性がある。すぐに、次の対策をうたねばならない状況に陥ってしまった。
クキが政府関係者に言う。
「首相のところに、連れて行ってはもらえないだろうか」
「わかりました。少々お待ちください」
俺達は、待たされることが多くなってきた。一刻も早く動かねばならないが、現場で判断して勝手に動くわけにはいかないらしい。だがその答えは、更に悪いものだった。
「大変です! カナダ官邸が襲撃されています」
「「「なに!」」」
後手に回ってしまっている。ここに来て、ファーマー社は一気に活動を開始したらしい。
クキが政府関係者に言う。
「どうなってる?」
「軍が防戦しているようです」
「すぐに向かおう!」
「ですが、返事が」
「かまわん。車両を貸してくれ」
「わかりました」
そして俺が言う。
「ここも危険だ。皆で向かおう」
「そうだな」
そして皆で外に出て、大型軍用車両に全員が飛び乗り、政府の車の後ろを首相官邸に向けて出発する。俺が先ほど撃ち落とした、飛行機の火災の為サイレンが鳴り響いていた。
だが俺は、おかしな気配を感知する。
「ん? 殺気だ。車を止めろ!」
ドゴン!!
遅かった。先頭を走っていた、政府関係者の車が爆発して炎上した。
「くそ」
俺が直ぐに車を飛び降り、剣技を繰り出す。
「刺突閃!」
ビルの三階から狙っていた、敵の眉間に穴をあけた。
クキが言う。
「武! 脇道に入れ!」
「おう」
俺達が乗る車両に、銃撃が飛んで来たが、俺が剣で叩き落した。そして、撃ってきた奴の眉間に向けて剣技を振るう。
「刺突閃!」
そいつが死ぬのを確認した。そして、車の中からクキが叫んだ。
「外部に情報が漏れている! どうやら……アメリカ軍だけじゃなかったようだ!」
「奴らが入り込んでいるという事か……」
「だろうな。敵の動きが早すぎる!」
「普通に生活している人達がいる。大規模な技は使えん」
普通に車が走る都市、いきなり始まった銃撃。俺は車両の上で、気配感知を最大に拡大するのだった。




