第619話 敵の黒幕と接触しカナダ兵を救う
俺達が更に先に進んでいくが、すぐにゾンビになった軍人たちが襲ってきた。
「乱波斬!」
細切れになって、ゾンビ達が落ちる。
「ゾンビに変えられたという事は、試験体がいる可能性がある」
「だな、もしくはガスか」
リラックスしているタケルとは対照的に、デルは緊張の面持ちだった。緊急用のオレンジの光が回り、あたりが暗闇になっているのが、恐怖心をあおっているようだ。
「デルは、襲われる事はない。安心しろ」
「分かってはいるが、やはり恐怖心はある」
「まあ、後ろに下がっていればいい」
俺が気配感知を発動させると、更に下の階に試験体の気配を感知した。
「いた」
「試験体か……」
「やるぞ」
「おう」
階段に入り込むと、緊急用のランプが光っていた。下の階に行くと、研究室には白衣を着たゾンビが、バラバラになって転がっている。それでも、上半身だけで這って迫って来る。
ズン!
タケルが潰した。
「試験体にやられちまったんだな」
するとデルが言う。
「敵味方、関係なしか」
「試験体は、知能の無いタイプなのだろう」
「どんな、バケモノなんだ」
「見ればわかるさ」
俺が気配のする方に向かうと、ドアの向こうにいるのが分かった。タケルがドカンと扉を蹴り飛ばし、中にいる試験体を見り。
「バ、バケモノ!」
だが、タケルが冷静に言う。
「いや、今まで見た奴より可愛げがある」
人間のような姿ではあるが、その身長は三メートル近くあった。膨張した筋肉がぼこぼこ動いていて、腕からタコの足のようなものがうねうねとうねっている。
シャッ! と、その触手が伸びて来たが、俺が日本刀で斬り落とす。
「ギャーーース!」
タケルが言った。
「これくらいなら、俺がもらっていいか?」
「そうだな。やってみろ」
「しゃっ! やるぜ!」
そいつが触手を伸ばすも、タケルがモーニングスターで叩き落す。そのパワーも、かなり強い。
「だ、大丈夫なのか? 彼は」
「問題ない」
部屋のあちこちを破壊しながら、次々に打撃スキルを使うタケル。デルがあっけに取られている。
「彼は、人間なのか……」
「ああ。元はレーサーだ」
「レーサー……」
「もともと、得意なものが伸ばされる。それが、レベルアップだ」
「レベルアップか……」
俺が手出しして無くても、試験体を潰し始め、再生不可能なくらいの液体レベルにしてしまった。
「はあはあはあ! やった! 自力で試験体をやった!」
フワリと、タケルが輝いている。
「おっ。傷が治った! 体、軽!」
「レベルアップだ。停滞していたからな」
「暴れたりねえ」
それを聞いて、デルが呆れている。
「暴れ足りない……」
部屋を見れば、原型が無いくらい全てが壊されていた。
「なんか、力が溢れる」
「というか、デスクを片手で投げてなかったか?」
「ああ。牽制するためにな」
「まるで、ヒーローだ」
「なってみたいもんだね。ヒーロー」
そして、俺が言う。
「じゃあ、タケル。オオモリに言われてた、データを抜いて行こう」
「あいよ」
そして俺達が、その階層を回っていると、データセンターがあった。
「あったあった。サーバールーム」
「タケルができるのか?」
「いんや。オオモリが、これをUSBに差し込めばいいって言ってた」
「なるほど」
タケルがオオモリからもらった機械を、サーバーの一つに差し込むと勝手にサーバーの画面がついた。そして、画面上にデーターが浮かび上がる。
デルが驚いている。
「か、勝手にパスワードを解除して、端末を操作しているのか? どうなってるんだ?」
それにタケルが答える。
「ああ、こりゃ、オオモリが作った、AIなんだよ。あいつキモいから、AIちゃんとか言ってるけど、でもめちゃくちゃ、優れもんだってのは俺でもわかる」
「恐ろしい。あんたら、いったいどんな訓練を受けて来たんだ?」
「実戦だよ。実戦あるのみ」
「……良く死ななかったな」
「いや、何度か死にかけた。でも、ヒカルが助けてくれたから」
そして、それには俺が答える。
「俺は、体を治す力を発する事が出来る」
「体を治す力?」
「そうだ、傷ならすぐ治せるんだ」
「そんなの、奇跡じゃないか」
タケルが頷く。
「俺なんか、一回、腕がとれたからな。それを、ヒカルに時間をかけて生やしてもらった」
「腕を! 生やすだと!」
「ああ。びっくりだよな」
「びっくりなんてもんじゃない!!」
ただ驚愕の眼差しで、デルはあっけに取られている。
「おっ! データが取れたみたいだぜ」
そう言ってタケルが、USBを抜き取った。だが、デルの目線が画面に釘付けになる。
「見ろ」
ディスプレイには、覆面をした人間の顔が映っていた。
「なんだ……?」
すると突然、その覆面が話を始める。
「これはこれは、あなた方はカナダ軍かな?」
俺達は凍り付く。それは、録画では無く、今、話をしているようだった。
「よくこの階層まで無事に辿り着いたものだ。プロトタイプは、一体どこに行ったのやら」
俺達が黙っていると、デルが話し出す。
「貴様は何者だ? まるで、人がここに来ることを想定していたような口ぶりだが」
「いや。進入コードがアラームを慣らしてね、接続したら君らがいたのだよ」
「なぜ、ここにはリビングデッドがいる?」
「あなた方に言ったところで、理解は出来まい」
「どういうことだ?」
「私達は、世界の再生をしているのだよ」
「……再生? 破壊の間違いだろう」
「スクラップアンドビルドさ。一度、壊さないと、新しいものは生まれないだろう?」
「何のために、こんな事をしているんだ?」
するとそいつは、高笑いした。
「あははははは! 愚問だよ! だから、話しても無駄だと言ったのだ」
「貴様……」
だが突然画面に、デルの顔写真が浮かぶ。
「なっ!」
「アメリカ海兵隊のデル・ブライトン君そして……」
その隣に、タケルの顔が映った。
「タケル・オカダ。バイクレースで幾つも優勝しているね。なんで、軍人でもない人間がこんなところにいるのかね?」
「さてね。まあ、ネットにゃ俺の顔は乗ってるだろうからな」
だが、その覆面が言う。
「その男……出てこないね」
俺の事を言っているらしい。
「だからなんだ?」
「そんなはずは無いんだけどね」
そこで、タケルがニヤリと笑って言う。
「お前……ネットで声聞いた事あるぞ……」
「……」
「GOD社の……お偉いさんだなあ」
「貴様……」
「なんで、ネットの会社のお偉いさんが、こんな所に出て来るんだ?」
「お前になど、関係ない!」
「あるね。日本を滅ぼされて、黙ってられっか」
すると若干、画面の向こうの男が狼狽え始める。覆面はしているが、動揺が伝わる。
「知らん。俺は、技術提供と金を出しただけだ」
あっさり露呈した。そこで、タケルが追い打ちをかける。
「あんた、テッド・グローバーだろ? GOD社のCEOの」
ブン!
画面が突然消えた。どうやら、図星を突かれて慌てたらしい。
「良く分かったな。タケル」
「いや。かまをかけたら。マジで張本人だったらしい」
それを聞いてデルが言う。
「ブラフだったのか」
「ああ、まんまとひかっかった。膨大なデータをフリーで調べられんのは、あの会社くらいのもんだろ。ネットが麻痺しているような状態でよ」
「確かにな」
そして俺が、話を切り替える。
「タケル。もう一つ、奥に数人の人間の気配がある」
「お、いってみっか。テッド・グローバーがいたりしてな」
俺達が通路を進み、奥の部屋の前で止まる。
「この中だ」
タケルがコンコン! とノックをした。
「誰かいるか?」
すると中から答えが来る。
「お前達は何者だ!」
するとデルが答えた。
「アメリカ海兵だ! 救出に来た」
「アメリカ海兵?」
「本当だ」
ガチャっ! と扉が開いて俺達が入っていくと、銃を構えた軍人が五人いた。
「あんたらは、カナダ軍か?」
「そうだ。化物に追われ、隠れていた」
「バケモノは片付いた、すぐに地上に戻ろう」
「俺達は……助かったのか……」
「そうだ。急ごう」
そうして俺達は、五人のカナダ兵を救出して、地上に向けて走り始めるのだった。




