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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第618話 ファーマ―社カナダ支部への侵入

 こんなことは、前世ではあり得ない事だった。まるで、何処に行ってもついて来ると錯覚してしまう。人間が作った組織が、世界を滅ぼそうと動いているのは事実だった。魔王でもなく地獄の悪魔でもなく、人間が人間の世界を終わらせようとしている。


 この世界の状況を救うのが、簡単ではない事は分かっていた。いくら俺のレベルがどれだけ高くても、世界に同時に展開している敵組織を壊滅させられない。ゾンビが、こんなに厄介だと感じたことはない。


「どうするか?」


 俺が尋ねると、アビゲイルが答える。


「ファーマー社が、新しい情報があるのかもしれません。そのデータを守っている可能性もあります」


 だが、シャーリーンが言う。


「博士……。いままで、散々、私達に盗まれてますから……。既に消されているかと」


「……そう……かもしれません」


「今は、一刻も早くゾンビ破壊薬と、ビスク製剤の量産を急ぐべきでしょう」


「わかりました」


 そうしてアビゲイルは、研究室へと戻って行った。


「バンクーバーもトロントはまだ、軍隊が守れてるらしいぜ」


 タケルの言葉に、クキが返す。


「俺達の情報が早かったからな。首相が、早急に手を打ったのが功を奏したんだろう」


「確かになあ」


「それより、モントリオールのファーマー支部。突入した警察が、出てきていないらしいな」


「やっぱそっちか」


「ヒカルはどう思う?」


「ゾンビ化兵か、あるいは試験体か」


「なら、やはりそっちをおさえないと、内部から崩壊していくぞ」


「そうなるな。すぐに行った方が良いかもしれん」


「んじゃ、俺とヒカルでいっちょ、処理してくっか」


「ああ」


「そうだな。ここはひとまず安全なようだ。二人で行って来れ」


 するとそこで、デルが俺達に言う。


「なあ、俺も連れて行ってくれないか?」


「何故だ?」


「ここにいると、人に触るんじゃないかと、気が気じゃないんだよ。俺が触れたら、ゾンビ感染させる」


「……なるほど」


 クキも頷いた。


「いいんじゃないか?」


「なら、行こう」


「恩に着る」


 すぐ首相に、大型バイクを二台用意してくれと依頼する。一時間後には大型のバイクが運び込まれた。俺達はそれを見て唖然とする。


 開口一番、タケルが言った。


「えっ! これ、バイク?」


 持ってきた専門家が言う。


「そうです。カナダのメーカーです」


「これがバイクか……」


「カンナムスパイダーと言う三輪バイクです」


 それは、前のタイヤが二つ、後ろが一つの変則的なバイクだ。俺達の想像していた物とは違っていた。


「最高速は?」


「一応、二百キロがMAXです」


「おもしれえ」


 タケルが楽しそうだ。今までいろんなバイクに乗って来たが、三輪バイクは初めてだった。


「タケルさん! はい! スマホ!」


「サンキュ」


「ヒカルさんも!」


 オオモリが特別に用意したスマートフォン、それを懐にしまい込んでバイクに乗り込む。


「ふーん。安定感は高いな」


「そうだな」


「だけど、車体は重いみたいだ」


「スピードが出ればいいさ」


「ま、そっか」


 そして俺は、カナダ軍から装備を受取ったデルを後ろに乗せた。


「行くぞ」


「あんたは、くっついでも大丈夫なんだよな?」


「俺は、ゾンビにならんようだ」


「わかった」


 ランプを光らせた警察車両がサイレンを鳴らして、俺達を先導し始める。


 タケルが、ニコニコと喜んでいた。


「おもしろ! バイク用意してもらった上に、先導してもらえるなんてよ!」


「そうだな」


 車が次々に止まり、脇にどけていく。俺達の三輪車は、避けた車の間を突っ走った。


「うひょー! 特別待遇で、スピード違反。最高だねえ」


「そうだな、わざわざ避けなくても良い」


 デルが苦笑している。


「あんたら、ほんと面白いよな」


「なにがだ?」


「この緊急事態に、なんでそんなに楽しんでいられるんだ?」


「なんでって、楽しいからだ」


「そうか……楽しいからか」


 あっという間に、目的地に着いた。そこで、タケルが言う。


「つうかよ……バイク待ってた、一時間はなんだったんだ? 最初っから、パトカーに乗って来ればよかったんじゃねえかな」


「問題ないだろう」


「……ま! そうだな! 面白いバイク乗れたしな! 爽快だったし!」


「ああ」

 

 俺達を、警官隊が迎え入れた。一緒に来た職員が、説明をしている。


「あなた方が首相の言っていた、リビングデッドのエキスパート?」


「そうだ」


「どうぞ! 今、現場は軍が取り仕切ってます」


「わかった」


 俺達が警官から連れていかれると、そこに軍服を着た奴らがいたが、何かざわついているようだった。


「リビングデッドのエキスパートを連れてきた!」


「はあ? たったの三人か?」


 それには、タケルが答えた。


「そうだ。俺達が、ゾンビの専門家だ」


「そうか……」


 なんだか、気まずそうな顔をしている。


「何かあったか?」


「実は隊を率いて、突入してしまったんだ。何とか脱出して、今この状態だ」


「入るなって聞いてなかった?」


「いや……聞いていたが、警官隊の救出のために現場で判断をして入った」


「ダメだって言ったろ。どうなった?」


「隊員が二十人以上、犠牲になった。なにか、おかしな状態になっている」


「なんだ」


「隊員が……隊員を襲いだして……」


「だから……入るなって」


「それに、奥に入った奴らが戻ってきていない。通信も途絶えた」


「……とにかく、後は任せろ。あんたらは周りを見張れ」


 俺達三人が、先に進もうとすると、軍人たちが止める。


「お、おいおい! そんな軽装で行くのか!」


「問題ない」


 俺達は、軍人の制止を振り切って、ファーマー社の研究所へと踏み入れる。入り口は爆破されており、俺達は躊躇なく入る。


「さーてとぉ。ゾンビ掃除しますかぁ」


「そうだな」


「デルさんよお。あぶねえから、一応後ろについてな」


「わかった。なんとか、役に立つように頑張ろう」


 静まり返る、ファーマー社研究所。既に、電源が切れたのか、電気の消えた館内は薄暗いようだった。そして俺はすぐに、気配感知で研究所内部を探り始める。


「こっちだ」


 ゾンビの気配がするのは、どうやら地下のようだ。建物は四階建てらしかったが、他のファーマー社の研究所同様に地下に施設が続いている。


 地下一階の奥にいくと、ゾンビの気配が蠢いているのが見えた。


「警官だぜ」


 するとデルが言う。


「最初に潜った奴らじゃないのか?」


「だろうな」


 俺達が来たのを見つけて、こちらに走って来たが、ガラスの扉にぶつかった。次々にぶつかってきて、倒れた奴が、また立ち上がって全力でぶつかって来る。


「電源が落ちて、自動ドアがロックしたんだろう」


「そう言う事だな」


 そこでデルが言う。


「だが、随分頑丈なガラスだ。あれだけの突進でも割れないようだな」


「強化ガラスだ。奴らの施設は、全部そうだった」


「そうか、これもゾンビ対策という訳か」


「もしくは、進入を防ぐための策か。俺達が潜入したファーマー社の研究所は、何処も同じ作りだった」


「……なるほどな。ただの、製薬会社じゃないというわけだ」


「そう言う事だ」


 その間も、ゾンビのガラスへの突進は続いていた。だんだん顔が割れ、ぐちゃぐちゃになりつつある。だが、それでも突進を止めない。もちろん知能も、痛みも無い。ただ、同じことを繰り返すだけだった。


「先に進むぞ」


「あいよ」


「お、おう!」


 タケルが自動ドアを、腕力だけで開けた。


「炎蛇鬼走り!」


 俺の日本刀から、炎の蛇が飛び出して、開いたドアの先のゾンビを一瞬で焼いた。


「行くぞ!」


 そうして俺達は、カナダのファーマー社研究所地下へと、進入を開始し始めたのだった。

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