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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第617話 パンデミックし始めるカナダ

 カナダ保険局の研究機関に到着した時、研究員らが出迎えてくれた。どうやら、カナダの研究者にも、アビゲイルは尊敬されているようだった。


「博士! 授賞式は見ておりました!」

「素晴らしい発見をされて!」


 だがアビゲイルは、沈んだ顔をしている。ファーマー社に悪用されて、こんなことになってしまった。褒められれば褒められるだけ、罪悪感が襲うのだろう。


 だが、そこでオオモリが言う。


「堂々としていればいいんですよ! 博士は、本当に凄い発見をしたんだから!」


「ですが……」


「全く問題ないです!」


 そう言われて、アビゲイルは少し笑った。


 雰囲気を切り替えるように、首相が皆に告げる。


「アメリカの感染症のパンデミックが、カナダにも入り込みつつある。博士が予防薬と防止薬を量産したいと言っているので、協力をしてほしい!」


 すると、カナダの研究員が質問をした。


「どのような感染症なのでしょうか? 情報では、狂犬病のようなものだと聞いております」


 そこで、カナダの首相が続けて言う。


「信じられんかもしれんが、あれは暴動ではない。どうやら、リビングデッドのようだ」


 カナダの研究員たちが、顔を見合わせて呆れたような笑いを浮かべる。


「まさか、ゾンビだなんて」


「事実だ。そして、その脅威はトロントやバンクーバーまで入り込んでいる」


「目と鼻の先ではないですか!」


「そうだ。いま、軍が防衛体制を整えている」


「「「……」」」


 どうやら、冗談ではない事が伝わったようだ。そして、研究員たちの質問が次々にアビゲイルに飛び、丁寧にひとつひとつ答えていた。そのやりとりが全て終わり、すぐに着手する必要があると話をすると、休みの研究員たちも全て呼び寄せるよう首相が指示を出した。


「信じられない。ゾンビだなんて」

「架空の話だと思ってました」


「本当です」


「我々の研究機関でも、植物由来のブリッジISCの研究はしておりました」


「そうなのですね」


「日本と提携を組んでましたが、日本が感染症で壊滅し、連絡が途絶えて研究はとん挫しておりました」


「そうなのですか?」


「はい」


 そこで、ミオが研究員に尋ねる。


「日本との提携ですか?」


「はい。日本には、ミスター石井という優秀な研究者がいました。そして、宮田教授と言う方とやりとりをしていたのです」


 俺達がみな、顔を向ける。ミオが悲しそうな顔をすると、研究員が何かに気が付いたようだ。


「まってください。あなた方はアジア人……それも、日本人ではないですか?」


「そうです」


「もしかすると、ミスター石井を知っている?」


「いえ。宮田先生が私達の仲間でした」


「おお! 宮田教授はまだ生きているのですか!?」


「……いえ」


「……そうですか、残念です」


「最後まで、ゾンビを何とかしようと頑張ってました」


「そう言う方でしたね」


 話をし終えると、研究員たちの顔つきが変わりはじめた。殺されたミヤタの事も尊敬していたらしく、その弔いだとばかりに真剣に取り組み始めたのである。


 そしてアビゲイルが、俺に言った。


「ミスターヒカル。完成した、ビスク製剤を一部ほしいです」


「わかった」


 凍らせた冷凍庫から、剣技で切り取ってケースを取り出した。中から、凍ったビスク製剤が出て来る。


 アビゲイルが研究員に見せた。


「これが完成したビスク製剤です。分析していただければ、完成している事が分かります」


「アビゲイル博士。流石に、それは特許ものです。明かして良いのですか?」


「構いません。特許など、どうでもいい。とにかく、全てを開示します」


「「「「はい!」」」」


 そうしてすぐに、研究員たちはしかるべき場所に向かった。研究を始めると、研究員が集まって来る。


 俺がタケルに言った。


「こんなところに来て、ミヤタの名前が聞けるとはな」


「ああ、やっぱあの人すげえ人だったんだな」


「残念だ」


「だな」


 更にアビゲイルは、合流して来た研究員達にゾンビ破壊薬の製法を伝え始める。


 クキがカナダの首相に聞いた。


「現状、アメリカはどうなってますかね? 大統領と連絡が繋がったと聞きましたが」


「なにか、不穏な空気だったよ。通信は、そう長くは出来ないと言っていた」


「やはりそうですか」


「どうしてかね?」


「アメリカは、内部分裂を起こしているんです。この騒ぎを収束させたい側と、これを利用している側。ゾンビパンデミックを起こしている張本人たちとの、対立構造がありました」


「そんな事が……」


 アビゲイルがやってきて、首相に尋ねる。


「あの……首相」


「はい」


「カナダのファーマー社の件はどのように?」


 そう、一連の流れを伝える中で、ファーマー社の事は首相に伝えていた。その確認をしているのだ。


「既に動いたよ。連邦警察が、向かっているところだ」


 それを聞いて、クキが言う。


「いや。軍も向けた方が良い」


「連邦警察もそれなりの武装だが?」


「万が一がある」


「検討しよう」


 俺達は顔を見合わせる。この状況で、奴らが大人しくしているだろうか? 下手をすれば、加速させるため、あえて招き入れるような行動をするかもしれない。


「検討では無く、決定したほうがいいと思いますよ」


「……わかった。なら、すぐに要請しよう」


 俺達の言葉に、首相が頷く。


 だが……遅かった。カナダの首相が、先に連邦警察に確認を取ったところ、先に突入した部隊との連絡が途絶えたというのだ。それを聞いて、俺達が顔を見合わせる。


「マズいな」


「ああ」


 カナダの首相が聞いて来る。


「これは、どうなっているか、分かるかね?」


 クキが答えた。


「次の部隊の突入を止めてください。そして、施設を囲むように指示を」


「わかった」


「ファーマー本部は、ここから、どのくらいの場所ですかね?」


「車なら二時間弱。ヘリなら一時間をきるが……」


「きるが?」


「どうやら、ヘリコプターが謎の墜落事故を起こしたらしい」


「……ファーマー社が、私兵を動かした可能性が高いです」


 首相はしばらく、補佐官たちと話をし始める。


「わかった。一個大隊を送ろう」


「賢明です」


 どうやら、俺達の動きを知ってか知らずか、ファーマー社も動き出したらしい。


 クキが言う。


「下手をしたら、通信を傍受されたかもしれん」


 それを聞いて、シャーリーンが頷いた。


「可能性が高いですね。既に、カナダ国内の敵も、動き始めたと考えて良いでしょう」


「だな」


 トロントとバンクーバーだけでは無く、国内に点在しているファーマー社が動き出せば、さらに状況は悪化する可能性があった。おそらく、動き出しているのは、ファーマ―支社だけではないだろう。


「クキ。俺達がカナダにやってきた事で、藪蛇になったのではないか?」


「いや。いずれはこうなった。おそらく、世界同時にやってしまえば、アイツらもコントロールできなくなると考えているのだろう。だが、速まったのは事実かもしれんがな」


 そんな事を話していると、オオモリが俺達に映像を見せた。


「いよいよです」


 そこには、ゾンビに襲われる人間達や、家に避難して助けを求める市民の映像が映る。


「そのようだな……」


「SNSは、ゾンビ一色です……」


 トロントやバンクーバーは、もはや壊滅状態になっていて、生存者が懸命に救助の要請をしている映像が映し出されている。カナダ政府は恐らく後手に回ってしまうだろう。そこで、クキが首相に行った。


「ロックダウンした方が良いです」


「わかった。そうしよう」


 いよいよアメリカに続いて、カナダも緊急事態に突入していくのだった。

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