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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第612話 ゾンビ化進行を抑えるための調査

 生きている人間ならば、俺がヒールをかけて傷を治すところだが、研究員らはゾンビ化しているため、逆効果になってしまう。俺がネクロマンサーなら何とかなったかもしれんが、出来ないものは出来ない。


 アビゲイルが言う。


「体を傷つけると、修復のために何かを消耗するようです」


 それを聞いて、エイブラハムが答える。


「血じゃないのう。開頭手術は、それほど血が流れない」


「あの、ドクター。薬品の検査と、彼らの検査をしたいのです」


「わかりました」


 俺が白衣の人間の先を歩き、出てきたゾンビを処理しながら検査室へと進む。そこに入って扉を閉め、白衣の人間達がふうとため息をついた。ゾンビが出て来ると、恐怖が走るらしい。


「あなた方は、ゾンビが怖くないのですか?」


 白衣の一人が聞いて来る。それに、タケルが答えた。


「ゾンビだらけの国から来たからな」


「日本……」


「そうだ。俺達はさ、日本を出るまで、てっきり世界中がゾンビだらけになってるんだと思ってたんだ。だけど、出てみれば全部じゃなかった。日本と中東は壊滅していたけど、他の国はこうなってなかった。ユーラシアのあちこちで、ゾンビ騒ぎはあったけど、先にアメリカが壊滅するとは」


「日本が感染症で壊滅した事は知っていた。中東は戦争状態だと聞いていたが、ゾンビ被害だったと?」


 それを聞いて、クキが答える。


「恐らく、紛争地帯でファーマー社の奴らが実験したのさ。さしずめゾンビを蔓延させて、都市を壊滅させる方法でも調べてたんだろう」


「……そんな事をしていたら、世界が滅亡してしまう」


「どうやら奴ら、そうなってもいいと思ってそうだがな」


 アビゲイルが、その話の続きをする。


「ファーマー社は世界中に点在しています。人種や風土、地域性などをみてゾンビパンデミックを起こし、対応する遺伝子を持つ人種を探していたようです」


 白衣の人らは、デルを見た。するとデルが、苦笑いして答える。


「それが、俺という訳だ」


「なるほど……」


「適合者と、我々は呼んでいますが、それも彼らが捜している一つ。更に、動物や遺伝子を暴走させた、試験体と呼ばれる怪物を作り上げています。それらは、恐らく軍事目的」


 禿げ上がった初老の男は、研究者たちを見て言う。


「そして、休まずに働く人間への改造……」


「はい。それぞれを戦力、または労働力として考えているようです」


「そして……実験材料ですかな」


「そのとおりです」


「……おぞましいですな。確か……過去の大戦では、そのような人体実験をした国があったと聞きますが、平和な現代でそのような事が行われているとは」


「あの会社は、何でもやります」


「そうですか……」


 そうしてアビゲイルは、研究員からカプセルをもらい、成分分析をし始める。いろいろな試験をしているうちに、落胆にも似た声を上げる。


「そんな……」


「どうしました」


「あの。ちょっと場所を移して、話したいですね」


 アビゲイルと白衣の男、俺、エイブラハム、そしてクキが隣の部屋に入る。


「あの薬を調べてみてわかりました」


「何がです?」


「これは、新型のゾンビ因子そのものです。破壊されて行く遺伝子を補強するために、これを飲んで細胞の崩壊を維持しているのです」


「なんと……」


 クキが言った。


「分かりやすく頼みます。博士」


「恐らく彼らは、この薬を飲むペースが上がっていると思います。今の状態を維持するために」


「彼らは、じきにどうなりますかね?」


「……いずれ、知性を失って他のゾンビの同じようになるでしょう……。脳細胞が、全て浸食されてしまえば終わりです」


「で、対策はあるんですか?」


「これからやってみますが、進行を遅らせる事が出来れば」


「百パーセントは無理ですか?」


「はい」


 アビゲイルはきっぱりと言った。すると禿げ上がった白衣の男が、ため息をついて言う。


「博士……あの子らに、宣告をするのはどうするんです?」


「……彼らも、最高の頭脳を持っている子らです。恐らくは、うすうす気が付いているかも」


「そうですか……」


「あとは、彼らの体を調べて、何かを掴めるかどうか……」


「現状では、難しいのですね?」


「そうです。そもそも、私は医者ではありません」


 すると白衣の男が言う。


「とはいえ、我々では、すぐに解明できる事は出来ないでしょう」


 クキが言う。


「ファーマー社の根幹である、本部の研究施設に潜れば、どうでしょうか?」


「作った人間に聞ければ、一番良いのですが……特効薬はないかと」


「そうですか」


 そしてアビゲイルが続けた。


「とにかく、急激にテロメアを消耗させるカラクリが分からないと、どうにもできません」


 禿げ上がった初老の医者が言う。


「ここの遺伝子研究の教授らは、もうゾンビになってしまった」


「その情報はみれますかね?」


「あると思いますよ」


「見たいです」


「では、タービンの電力が供給されているうちに」


 最先端の大学だけあって、いろんな研究をしているらしかった。部屋に戻り、研究員たちに告げる。


「これから、遺伝子研究の棟に行きます。あなた方の知恵が、どうしても必要なの」


「「「「「はい!」」」」」


 研究員たちは何も言わずとも、自分達を助ける為に、アビゲイルが焦っている事が分かるようだった。彼女が何とかしようとしている気持ちは、周りにも痛いほど伝わって、そのやりとりを見ているうちに、白衣の医師たちも意識が変わってきたようだ。


「われわれも、協力しようじゃないか」


「「「「はい」」」」


 俺達は、遺伝子研究の施設へと進んだ。途中でゾンビがいたが、難なく俺達が倒しそこにつくとすぐ、パソコンの電源をつけ始める。だが、全部の端末にパスワードがかけられていた。


「だめだ。教授たちがいないから分からない」


 そこで、オオモリが言う。


「あーー、えっと解除します」


 オオモリが一台一台のパソコンのロックを解除していくと、皆が感心したように言う。


「こともなげにやりますね」


「まあ急ぎですしね」


 オオモリが、あっという間にパソコンを解除するとすぐにアビゲイルが言う。


「もうわかっていると思いますが、あなた方は遺伝子を操作されています。それが今の状態を引き起こしているのですが、ここのデータから何か対処できる方法が無いかを探りましょう。意見交換をしながら、有効な情報を探します」


「「「「はい!」」」」


 研究員たちの脳が劣化してしまう、その前にやってしまわなければならない。そして医療関係者らも、画面を覗き込みながら、あれこれとアドバイスをし始めた。専門家はアビゲイルだけだが、何とかしようと必死だった。


 タケルが言う。


「あー。なんか、切ねえな。自分らのために必死なのをみるとよ……。俺、何の役にも立てねえ」


「少しでも、ゾンビ化を遅らせる事が出来ればいいのだが」


「将来的にどうなっちまうんだろうな?」


「わからん。だが、ここまで来てしまうと、後戻りはできない。それだけは確かだ」


「だな……。まあ、出来る限りの事はやるしかねえか」


 必死に調査をする彼らを見て、レベル千となった俺でも、助ける事が出来ないことに無力感を感じる。戦いに明け暮れていた前世では、こんな感情を持つことは無かった。弱い人らを守るという事が、どれだけ難しい事なのかを再認識するのだった。

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