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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第610話 ゾンビ化人間の開頭手術

 目的の大学に到着すると、救急車などが乗り捨てられていた。俺が大学に気配感知を張り巡らせると、どうやらゾンビだけじゃなく人間の気配もある。


「降りるか」


 トレーラーを降りると、あたりにゾンビはおらず静まり返っている。


「ゾンビ、いないな」


 だが、俺は首を振る。


「中だ、ただ外に出ていないだけだ」


「そうか……」


「だが、人間もいる」


「なに?」


 俺達が入り口に近づいて行くと、自動ドアの方に向かって中からゾンビが来る。


「お。おいでなすったな」


「まずは片付けていくか」


「あけるぜ」


「やってくれ」


 タケルが自動ドアの隙間に手を入れ、グイっと引っ張るとバギンと音がした。


「鍵がかかってた。鉄がちぎれちまったな」


 デルが乾いた笑いをした。


「どんな馬鹿力だよ……」


 自動ドアを開けミナミが入り込んで、ゾンビを切り捨てる。それを見ていた研究者たちがざわめいた。


「えっ! サムライ?」

「アニメみたい」


「えっ! アニメ好きなんですか!!」


「はい!」

「わたしも」


 なるほど、日本のアニメはいろんなところで人気があるらしい。


「私も好きなんですよー!」


「日本人は、剣士がいっぱいいるんですか? あなたのような女の子でも、剣を使うの?」


「あー、いません。でも、剣道とか得意な人はいますけど」


「おもしろいですね」


 俺達が中に進むと、ツバサが指をさす。


「監視カメラ」


 そこで、タケルがカメラに向かって手を振った。


「きっと、どっかに立てこもってんだな」


「でしょうね」


 気配感知を張り巡らせると、人が固まっている方向が分かる。


「こっちだが、ゾンビもこっちに固まってる」


 病院の通路を進んでいくと、ぽつりぽつりとゾンビが立っていて、見つけては狩り始めた。


「服装からすると、こりゃあ……怪我人とかか? 病人みたいだな……」


「運ばれて来た人じゃない?」


「ああ……なるほど。ゾンビに襲われたりして怪我をした人か」


「そうみたいね。噛まれ痕とかあるし」


 更に先に進んでいくと、通路にびっしりとゾンビがいた。


「おー、いるいる」


「いくわよ」


 俺とタケルとミナミが、一気にゾンビを斬り倒して進んでいく。ゾンビが通路にばたばた倒れて行き、その先にあるドアの前で俺達は止まる。そして、ミオがみんなに告げる。


「この先に人がいるわ」


「生きてる人か?」


「そう」


 ミオがドアをノックして、声をかける。


「すみません。ゾンビは倒しました! ひとまず安全です! 開けてください!」


 だが答えが無い。


 コンコン!


「ゾンビはここにはいません! 開けて下さい!」


 すると答えが来る。


「だめだ。感染者がいるかもしれない!」


 確かに研究員やデルは、ゾンビ感染者だ。だがミオは嘘をつく。


「いません。ここには正気を失っている人はいません!」


「……」


 しばらく待っていると、中からゆっくりとドアが開かれた。その男は消火器を持っていて、その隣にいる男はメスを握っている。


「あなたたちは?」


 中の人間に聞かれデルが前に出て、声をかけた。


「海兵隊だ。スマンが入れてくれないか?」


 少し沈黙していたが、諦めたようにドアを開けて俺達を中に入れる。白衣を着たやつらが、数人いた。


「良く生き残ったな」


「軍服だが、米軍が助けに来てくれたのか?」


「残念ながら、海兵は俺一人だ。あとは、研究者や一般人だ」


 白衣のやつらが、がっくりと肩を落とす。


「助けに来てくれたんじゃないのか……」


「実は治療が必要な人間がいるから、ここに連れて来たんだ」


 そう言った途端に、白衣の人間達に戦慄が走った。


「さっきは、感染者はいないと……」


「ちがう。爆弾を体内に仕掛けられた者達がいる。それをどうにかしたいんだ」


「体内に……爆弾?」


 白衣の人間達は、目を見開いている。すると奥から、禿げ上がった初老の男が言う。


「いったい、体内のどこに?」


 デルが頭を指さしながら、残念そうに言う。


「ここだ」


「頭……」


 そこで俺達の一番後ろの方から、アビゲイルが前に出てきた。それを見て、白衣の連中が言う。


「あ! あなたは!」

「なんで……」


「アビゲイル・スミスです。お願いです。ここで手術をさせていただけないでしょうか?」


 禿げ上がった男が聞く。


「その、爆弾を取り除くつもりですかな?」


「そうです。しかも金属製なので、CTなどを使わずに行います」


「そ、そんな馬鹿な。どのあたりにあるか、分っているのかね?」


「わかりません」


「そんな、無茶な」


 そこで俺が言う。


「おおよそなら分かる」


「あんたは、医者かい?」


「違う」


「どうやって?」


「異物の位置を探ればいい」


「そんな事が出来るわけない」


「だが、どうしてもやらねばならない」


「……」


 アビゲイルが更に言う。


「彼らは、優秀な研究員なのです。彼らが、このゾンビ騒ぎの収束の鍵を握ります」


「彼らが?」


「工科大学から連れてきました」


「ちょっとまってくれ」


 白衣の連中が、部屋の奥に行って集まり話を始めた。俺達はただそれを待ち、研究者たちは気まずそうにしている。しばらく待っていると、禿げ上がった初老の男が振り向いた。


「わかった。我々も手伝おう」


「本当ですか?」


「だが地下にある非常電源を付ける為の、ガスタービンを回して発電しなくちゃならん。この電力じゃ、手術に耐えられん」


「ではやりましょう」


「しかし……館内には奴らがうようよしているんだ。ゾンビが」


 タケルがドアを開けて先を見せて言う。


「大丈夫。ぜーんぶ、こうしてやっからよ」


「な、これをあなた達が? 銃声もしなかったが?」


 するとミナミが、するりと仕込み刀を抜いてみせる。


「これよ」


「カタナ?」


「そ」


「……」


「なら、私が地下に案内しよう」


 そこで俺が言った。


「なら、俺とミナミが一緒に行こう。他は、ここで皆を守っててくれ」


 それを聞いた、初老の男は驚いたように言う。


「二人だけ? しかも、この女の子?」


「そうだ」


「海兵の君はいかんのかね?」


「すまんが、足手まといになる」


「……」


「急ごう」


 俺とミナミが、初老の老人と一緒に部屋を出た。病院内のあちこちにゾンビがいたが、俺とミナミが切り落とす。それを見て、初老の老人はポカンとしていた。


「あんたら……何者なんだ?」


「あー、ゾンビ倒すのはもう慣れちゃったの。ただそれだけ」


「慣れ……とか……あるのか」


「ある」


 俺達は、暗い地下の通路に辿り着いた。初老の男は異常なほど汗をかき、少しの音でもビクビクしているようだ。


「大丈夫だ。安心しろ、凄い汗だ」


「な、なんで、そんなに安心していられる。いつ暗がりから、奴らが出て来るか分からんのに」


「安心もなにも、出てきたら倒せばいいだけだ」


「……」


 先に進むと一つのドアがあり、そこの先だと言った。男が鉄のドアに手をかけるが、鍵がかかっていて開かなかった。


「鍵が開かん! 守衛室に行って鍵をとってこないと!」


「守衛室はどこだ?」


「一階だ」


「面倒だ」


 俺がそのドアの鍵を切り中に侵入していく。初老の男が後に続き、ミナミが後ろをついて来る。


「それを動かすんだ」


「どうすればいいの?」


「分からん……」


「分かんないの??」


「私は医者だ! ボイラーの動かし方など!」


 だが、ミナミはもう聞いていなかった。すぐにスマホを取り出し、ミオに電話をする。


「これから、ボイラーカメラで撮るから、誰が動かし方分ったら教えて」


 そしてスーッとボイラーを移すと、ツバサが言う。


「あー、多分わたし分る。きっと操作パネルがあるわ」


 探すとそれが見つかった。それからツバサのいう通りに、レバーを回し鍵を捻ると、ぶるんと音がしてそれが動き出す。それと同時に、一気に地下室も明かりがともる。


「ついた!」


「よかったわ。こっちも明かりがついた」


「ありがと。翼」


 そうして俺達は、元来た道を戻っていく。皆の元に戻ると、早速、禿げ上がった初老の男が言う。


「では、オペ室に行こう」


 白衣の女が怯えたように言う。


「でも、ゾンビが……」


「いや。彼らとなら、むしろ安全だ」


「ドクター……?」


「本当だ。この目で見た」


 白衣の人らは、顔を見合わせて頷いた。


「わかりました」


 納得した白衣の人らが出て来て、手術室へと向かう。倒れているゾンビを恐怖の顔で見ているが、動かないのを見て少しは落ち着いてきたようだ。


「ここだ」


 初老の男が言い、俺達がそこに入り込むとエイブラハムが頷いた。


「確かに最先端じゃな」


 そこでアビゲイルが言った。


「早速、手術の準備を」


 初老の男が言うと、白衣の人間達が忙しなく動き出した。そうやら、彼らは医療行為のプロらしい。


 禿げ上がった男が言う。


「幸い私は、外科だ。少しは役に立つだろう」


 アビゲイルが喜ぶ。


「それは心強い! では、早速取り掛かりましょう」


 研究者の中から黒人の女が、率先して手を上げる。


「私から! 万が一があっても、死ぬのは私だけで済むから!」


「……わかりました。では、あなたから。ミスターヒカルもよろしい?」


「わかった」


 白衣の人間達が準備した手術台に立ち、皆が手袋をして準備を終わらせた。


 アビゲイルが俺を見たので、寝ている黒人の女の頭に手を当てる。魔獣の弱点を見抜く時のスキルだ。すると俺の意識の中に、黒人の女の頭の違和感が出た。


「ここだ。この奥。首の付け根の上の、後頭部の部分に白い光がある」


「そいつは……そこを爆破すれば、脳も死ぬが体の神経が切断される」


 禿げ上がった初老の男が言うと、アビゲイルが答える。


「はい……それが目的で設置されたようです」


「なるほど。酷い事をする……」


 頷いて、エイブラハムも言う。


「わしも医者じゃ……町医者じゃがの」


「それは心強い。手伝っていただけますね?」


「うむ」


 アビゲイルも言った。


「私も手伝います」


 だが、その時、白衣の一人が驚いた。


「えっ?」


「どうした?」


「……麻酔が……効きません」


「麻酔が効かない?」


 どうやらゾンビ化して、休まず働くようにされたと言っていたが、麻酔が効かないらしい。その時、腹ばいに寝そべった黒人の研究員が言う。


「いいんです。このまま、やってください」


「こ、このままかね?」


「はい」


 白衣の連中が驚いた顔をして、顔を見合わせている。だがそこで、アビゲイルも言う。


「やりましょう」


「博士……」


 そして、その禿げ上がった初老の男に、メスが手渡されるのだった。

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― 新着の感想 ―
めちゃくちゃ面白くて一気に読みました! これからどうなるのか、日本の状況も気になるし、続きも楽しみにしております!
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