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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第608話 工科大学からの脱出

 ガブリエルが持っていたスマートフォンを、オオモリが直ぐにロック解除して通信の履歴を確認した。するとそこには、GOD社への通信履歴とファーマー社の通信履歴があった。


 オオモリが言う。


「しかも、ほんの少し前ですよ」


 通信時間は、我々が研究者たちと接触して話している頃だった。 


「ここの襲撃は、既に敵に伝わっているという事だな」


「そうですね九鬼さん。むしろ、指示を仰いだのではないでしょうか?」


「その線が濃厚だな」


 それに対してデルが、慌てたように言う。


「おいおい! なら、増援が来るんじゃないのか?」


 俺が答える。


「だろうな」


「だ、だろうなって、そんな悠長にしてられんだろ」


「そのときはそのときだ」


「な、なんだ、その行き当たりばったりは」


「むしろ、探しに行って殲滅する手間が省けていい」


「……なんだその理論」


 その話を遮るように、アビゲイルが言う。


「この子達を、連れ出すわけにはいきませんか?」


 それにオオモリが答える。


「範囲性の起爆装置は解除しました。あとはメインシステムごと破壊し、装置をヒカルさんの例の技で、消したらいいと思います」


「わかった。そうしよう」


 俺がクキに言った。


「敵がいる。俺が先に出るから、十秒遅れて皆で付いて来てくれ」


「露払いしてもらって悪いな」


「俺の仕事だ」


 思考加速と身体強化をかけて、瞬時に廊下に出、待ちかまえていた部隊の後方に出る。


「屍人真空裂斬」


 シュパ!


 血を飛び散らせずに、全ての兵士を両断した。


「炎蛇鬼走り」


 死体を一気に焼き捨てる。数秒して、クキが研究者たちを連れて出て来た。


「ふふっ。この子らを、怯えさせない配慮か……ヒカル」


「いちいち、足をすくませていたら出るのが襲くなるからな」


「だ、な」


 皆が出て来て、俺を先頭に進んでいく。それからは、全ての場所で敵兵を俺が先に処理をして行った。走りながら、俺は全員に伝える。


「外に車両が集まっているようだ」


 デルがマズそうな顔で言う。


「敵に囲まれたって事か?」


「そう言う事だ。戦闘車両が囲んで、上空にヘリコプターが飛んでいるようだ」


「ガブリエルが呼んだんだ……」


 クキがデルに言う。


「デル、あれっぽっちでは、足止めにもならんと思うぞ」


「そうなのか……?」

「大丈夫なんでしょうか?」

「ここに居た方が安全では?」


 若い研究者たちも震えはじめる。だが、タケルがニッコリ笑って言う。


「大丈夫だって! せいぜい戦車の十台や二十台だろ? なんてことねえってばよ」


 それを聞いて、更に若い研究者たちが怯え始めた。それを受けて、デルが言う。


「流石に絶望だろうが」


「まあ、だまって見てろって、軍人さんよ」


 外を見れば、大学の敷地内には戦闘車両が入り込んでおり、ファーマー社の私兵たちがこちらを警戒していた。デルが、それを見て慌てて言う。


「おいおい。M1エイブラムスじゃないか……なんで、米軍の……主力が」


 クキが答える。


「だから。行っただろう、グルだって」


「そういうことかよ」


 どうやらアメリカ軍の主力の戦車もいるらしい。その周りにも、機関銃を構えた武装車が並んでいた。それに対して、タケルが言った。


「あいつらバカじゃね。敷地内に全部入れたら、まとめてやってくれって言ってるようなもんだ」


「まとめて? いや逆だろう? まとめて、俺達をやろうと思ってるんだろ?」


「あ、普通はそう考えんのか。でも、そんなに研究者をビビらせんなよ」


「俺は、現実的な話をしている!」


「きっ……キレんなって。俺もふざけてねえからよ」


「……すまん。だが、どうするつもりだ? 逃げられんぞ!」


 俺が言う。


「もちろん、逃がすつもりは毛頭ない」


「……お前達との会話は、頭がおかしくなりそうだ」


 俺が、するりと前に出る。


「そんな防備に……」


「申し訳ないが、少し爆風が来るかもしれん」


 そう言って入り口を出た瞬間、銃火器が一斉に火を噴いた。もちろん俺の結界を破る事は出来ないが、後ろの奴らに被害が出てはまずい。


「大地裂斬!」


 ゴゴゴゴ! ズゴォオォォ!!


 目の前の戦闘車両の下の地面が割れ、吸い込まれるように次々に奈落へと落ちて行った。このまま、剛龍爆雷斬を使っては、後ろの仲間にまで被害が及ぶ可能性があったからだ。だからまずは、地割れを起こさせて車を地底に落としてやる。


「剛龍爆雷斬!」


 地割れの穴に、大きめの火の玉が落ちて行った。それが、地下に着弾した瞬間。


 ボッゴォォォォ!


 穴の大きさに沿って、真っすぐ上に火柱が上がる。すると、上空にいたヘリコプター二機も、計算通りに蒸発してくれた。


「よし」


 振り向いて皆を呼ぶ。出て来たデルと、研究者たちが唖然としている。


「今の爆発音は何だ! なんで学校の前に、こんなバカでかいクレーターがある!」


 研究者も言う。


「なんで……建物が壊れてないんですか? 物理的におかしい」


「いや、君らに被害があってはダメだと思ってだな」


「なんという力だよ……」


 そしてオオモリが言う。


「じゃ、いきましょう!」


「わ、わかった」


 地割れを避けて回り込むと、爆発の音を聞きつけたゾンビ達が大挙して押し寄せて来た。それを見て、研究者たちが怯む。だが、俺達は足を止めずに、大挙して来るゾンビの方に向けて足を進める。


「お、おいおい! ゾンビ来てるぞ! 群れで!」


「集めた方が手っ取り早い」


 研究者の女も青ざめて言う。


「たぶん、私達は襲われません! むしろ、あなた達が、ひとたまりも無く飲まれます!」


 俺は構わず進み、俺を見つけたゾンビ達が一斉に集まり始めた。


「飛空円斬!」


 俺を中心に、輪が広がっていくようにゾンビが倒れていく。


 黒人の研究者が、信じられないように言う。


「ど、ドミノ倒し……」


 更に剣技を繰り出す。


「推撃!」


 ちぎれたゾンビ達を吹き飛ばして、道を開ける。


 タケルが言う。


「ヒカル! どっかで、トラックかバスを手に入れようぜ!」


「そうしよう」


 街に行けば、早速大型のトレーラーが乗り捨てられていた。


「あれにすっか」


 タケルが駆け寄ってドアを開けると、ゾンビが出て来たが、タケルが頭を掴んでちぎった。そして体を思いっきり外に投げ出す。


 研究者の男が言う。


「まさか……あなた方もゾンビ化を?」


「いや。ヒカル化だ」


「ひ、ヒカル化? なんですそれ?」


「いいから。トレーラーの後ろを片付けっぞ!」


 トレーラーの後ろを開けると、果物の良い匂いがしてくる。


「グレープフルーツか。まだ、新しいな」


「悪いが捨てて行こう」


「まあそうだけどよ。もったいないから、皆で食う分はとっとこうぜ」


「そうしようか」


 俺達は次々に、グレープフルーツの入った木箱を外に運び出す。道路わきに積み重ねて、仲間と研究者たちを乗り込ませ、デルも後部に乗りこむ。


 そこで、オオモリが言った。


「じゃあ、ヒカルさん。起爆のシステムのある工科大学を吹き飛ばしてください」


「わかった」


 だいぶ距離があるので、俺は魔力を強めて剣技を放つ。


「剛龍爆雷斬!!」


 火の玉が飛んでいき、真白に輝いた後で爆発を起こす。大きな火柱が上がり、キノコ雲が立ち上った。それを見て、デルも研究者もあっけに取られている。


「核弾頭と……一緒とは、こういうことか」


「そういうこった。んじゃいくぜ! ゆっくり、グレープフルーツでも食っててくれ」


 タケルとクキとシャーリーンが運転席に行き、エンジンがかけられた。俺も仲間達と共に、コンテナに乗り込んで出発する。


 するとマナが言う。


「ヒカル。これきっと美味しいよ、剝いてあげる」


「ああ」


 口にすればみずみずしく、酸っぱさの中にも甘さのある美味い果実だった。その時、オオモリが言う。


「あ、あの! 愛菜さん! あの! 僕も、剝いてほしいです」


「自分でどうぞ」


「えっ」


 それを見ていた、アビゲイルが言う。


「ミスター大森。私が向いて差し上げます」


「あ、ああ。ありがとうございます!」


 そうして俺達は、工科大学を後にするのだった。

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