第604話 強制的に研究させられる者達
工科大学の周辺には、バリケードが設置されており、周辺を人間とゾンビ化兵が入り混じって武装し、警戒しているようだった。さらに暗闇の中を、敵兵が走っていくのが見える。
「恐らく、米軍が来たと思ってるんだろうな」
クキの言葉にデルが答えた。
「爆発騒ぎがあったからな。いまごろ、消えた兵隊を探している頃だろう」
「監視との連絡が取れずに、警戒してるといったところか」
「どうする? こちらには銃も無いが……」
そう言ってデルが俺を見る。
「すぐ制圧する。待っていろ」
俺はすぐにそこを離れ、隠形、認識阻害を発動し、一瞬で敵バリケード脇に現れる。
「屍人斬。刺突閃」
敵の死角にいるゾンビ化兵が、倒れ茂みに体をうずめた。もちろん、そうなるように仕向けて撃った。最大限に思考加速を発動し、次々に兵士とゾンビ化兵を仕留めていく。
「こい」
手を上げて呼ぶと、皆が急いで走り込んで来る。
「侵入する」
俺が、バリケードに穴をあけて侵入した。
デルが俺に不思議そうに聞いて来る。
「それ、日本刀だろ。そんなに、斬れるもんなのか?」
「剣技だ」
「……訳が分からん」
するとミオが言う。
「ねえ、みて! あの建物! 凄くない?」
街灯に照らされた先に、不思議な形の建造物が建っている。そんな形の建物は見たことが無かった。
「面白い形だ」
仲間達も珍しそうに見ている。すると、アビゲイルが言う。
「生物研究機関がある場所へ行きたいのです」
「よし、調べよう」
俺達が進んでいくと、建物の上にも見張りがいた。
「刺突閃 十連」
敵がバタバタと倒れている隙に、俺達は建物内に侵入した。中に入り込むと、監視カメラを破壊する。奥へと進み、俺が事務局のような場所にいる兵士を殲滅した。そこで、アビゲイルの目的の場所を探す。
「ここです」
更に先に進めば、ファーマー社の兵隊たちがウロウロしていた。瞬間的に全て殺しそのまま通過して、さらに建物の奥へと進む。そこでデルが、俺に興味津々に聞いて来る。
「ものすごいな……あんた。それは、侍のワザかなにかか。人気のアニメで見たことがあるぞ」
面倒なのですぐに答える。
「そうだ」
「あ、あれは、本当の話だったのか」
「ああ」
それをスルーして、シャーリーンが扉を指をさして言った。
「博士、目的の部屋はここでは?」
「そうです」
俺がスッと扉を開けて入ると、そこには白衣を着た若者達がいた。
「えっ……」
「だれ?」
「会社の人間?」
誰もが、俺達の事をファーマー社だと思っているようだ。
そこで、一人がアビゲイルを見つけてしまった。
「あ! アビゲイル博士!」
「ほ、本当だ……」
「なんで、こんな所に……」
「あなた方は?」
「私達は、研究員です。ここで……生物実験をしています」
黒人の女が答えて、アビゲイルが前に出ようとしたので、俺が制して言う。
「ゾンビ化している」
「えっ……」
その言葉を聞いて、白人の青年が言う。
「……なぜ、それを?」
「わかるからだ」
「そうですか……」
だが彼らは、特に騒ぐでもなかった。ただ、冷静に俺達に向いて話をしている。そこで、アビゲイルが悲しそうな顔で聞いた。
「あなた達は……望まぬ形でそうなったのですね?」
「はい」
「どうして……」
黒人の女性が言った。
「休まず研究させるためです。奴らは、私達に研究させ人体実験をしました」
「なんてこと……」
奥の白人の女が、前にやってきて言う。
「博士はどうして、こんな所に来たのですか? 敵地のど真ん中ですよ?」
「こんなことを、止めさせるためよ」
「やめさせる? ……そんな事が出来るのですか?」
「そうするしかないのよ」
白衣の青年たちは顔を見合わせた。どうやら、敵という訳ではないらしいが、アビゲイルの言う事が、信じられないようでもある。そこで、アビゲイルが俺に聞く。
「この子達を、連れ出す事は出来ないかしら?」
「可能だろう」
だが黒人の女が言った。
「だめです」
「どうして……」
黒人の女が自分の頭に指をさして、泣きそうな顔をして言う。
「ここに……爆弾があります」
「えっ……」
「奴らは、強制的に従わせるためにそうしたんです」
それを聞いてタケルが、壁を殴りつける。壁がひび割れてめり込んだ。
「クソが」
そこでアビゲイルが言った。
「もう一歩なの。奴らのゾンビ技術を破壊する薬品を作ったのだけど、協力があれば完成体を作れるの。本当なら、それの手伝いをしてほしいのだけど……あなた達のような優秀な頭脳の持ち主に……」
白衣の若者たちは、震えて涙を流し始める。
「ど、どうしようもないんです。逃げれば、頭が爆発する。ダメだって……」
そこで、シャーリーンが尋ねた。
「あの、あなた方は、ここで何を?」
すると白人の女が言った。
「アンデッド化の因子と、ナノテクノロジーの融合の研究。リンク操作についての技術の確立です」
「なんてこと……」
「それに……もう、あなた達も助からないです。だってここには、恐ろしい化物を開発する場所もある。そこで作られたバケモノたちには、もはや、人間に対応する術はないほどなんです」
俺が答えた。
「そんなものは、問題ない。それよりも、あんたらの頭の爆弾を何とか出来んのだろうか?」
「わかりません」
その一連の話を聞いていた、オオモリが顎に手を当てながら言う。
「起爆の仕組みが分かればいいんですが。どこかに、その情報が無いですかね?」
「わかりません」
かなり、手の打ちようがない状況だった。若い彼らは、死なないようにゾンビに改造され、頭の中に爆弾を仕込まれている。それが何らかのやり方で爆発させられれば、ゾンビ化しているとはいえ終わる。
アビゲイルが震えて泣いている。
「奴らは……こうやって、優秀な頭脳を生贄にしていたのですね」
「ゆるせんな」
デルも憤慨して、テーブルを叩いた。
「誰が……誰がこんなことをさせているんだ……」
それにクキが答える。
「アメリカのトップたちさ。政界そして企業のトップたちがつるんでやっている」
「まったく、俺達が必死に国を守って来たってのに許せんな」
「日本政府も似たようなもんだったさ。結局は金、そして利権が渦巻いていた」
「世界は……どうして、こんな風にしまったんだろうな」
「そうだな。その上に、これには、金や利権以上の何かが隠されている」
「もしかして……俺の体も……関係しているという事か?」
「そうなるかもな」
その話を聞いていたアビゲイルが、白衣の若者たちに聞いた。
「あなた方は、ゾンビにならない人の事を知っていますか?」
すると皆が頷いて、ハッキリ答えた。
「知っています」
「我々は、それを適合者と呼んでいるわ」
「まあ、遠くありません。私達はリンクと呼んでます」
俺達は敵の計画の、一つの情報を見つける事が出来たのだった。




