第602話 マサチューセッツでミサイル攻撃を受ける
米軍服を着たゾンビ達がフラフラとやってきて、デル・フライトンが銃を構える。しかしそれを見て、クキがそっと手をかざして静止した。
「ゾンビが音で、寄って来ると面倒だ」
「な、何言ってるんだ? どうするつもりだ?」
次の瞬間、タケルがモーニングスターをブンとふりまわす。
べちゃぁぁ!
「は!?」
「行くぞ」
「ま、まてまて! なんでゾンビが集団で潰れた」
それにタケルが言った。
「鍛えているからだ」
「きたえ……そんな訳があるか!」
「本当だ。俺はもうレベル十を超えてるらしいからな」
「その……さっきから、レベルって何の話だ?」
それには、俺が答える。
「レベルが上がれば、力だけじゃなくスキルもあがり、やれることが増える」
「何を言ってる?」
その時、ミオが言う。
「この扉の奥から六対近づいてくるよ」
鉄の扉を指さしている。
「な、なんでそんなことが分かる?」
「えっと、その……分るから?」
「こ、答えになっていない……」
「格納庫に行くぞ」
無視してクキが言うと、デルがハッとして言う。
「なら、こっちだ」
俺達は船内に入り込み、格納庫に向かって走る。
「そんな、無警戒に走るのか?」
「問題ない。分る」
「わ、分るってなんだよ」
俺が止まり、曲がり角にたって剣技で数体のゾンビを斬った。
「あんたら、あれが、怖くないのか?」
全員が頷いた。
「麻痺……でもしてんのか?」
「いや、ただのゾンビは簡単に死ぬからな」
タケルが言うが、デルは腑に落ちていないようだった。俺達は同じように進み、格納庫に到着した。
「ヘリが、あるな」
「いや、ミスター修平。それじゃない、救助用のシーホークなら全員が乗れる」
「わかった」
デルの指示で向かうと、そこにも同じ型のヘリコプターが置いてあった。
「よし。これを甲板に出すぞ」
それに対して、エイブラハムが尋ねた。
「動くのかの?」
「ええ」
そしてデルが言う。
「みんな、乗ってくれ」
全員が乗り込むと、デルが端にあるボタンを押した。するとヘリコプターが床ごと上に上がり始める。
甲板まで出て来て、クキがヘリコプターを起動させると、その隣りにデルが座った。俺達は後部の椅子に座り込む。
「行くぞ」
畳まれていたプロペラが伸びて、ぐるぐると回り始める。そこでデルが言う。
「だが、これに武装はない」
俺が答える。
「いらん。直ぐに飛ばしてくれ」
「よし。行くぞ」
ヘリコプターのエンジン音で、あちこちゾンビが寄って来るが、そのままヘリコプターは大空に舞う。直ぐに西の海側に向かって、海上の進路を北へとる。街で煙が上がっているのが見えるが、もしかしたらまだ生存者がいるのかもしれない。だが、今はそれらに構っている暇はなかった。
「目的地まで一気に行けそうだが……」
「航続距離的には問題がない」
二人が会話をして、周りの海を見渡していた。万が一があるので、俺も周囲を気配探知をしていた。
しばらく飛んでいると、突然通信が入る。
ガガッ!
「アンドルーズ空軍基地 ヴィンテージ・タワーより、湾岸を飛行中のシーホーク航空機へ。当管制圏に侵入中。即刻、コールサインと所属を応答せよ」
それには直ぐに、デルが答える。
「こちら、所属ノーフォーク・ネイビーシールズ、デル・フライトン中尉。ノーフォーク海軍基地からの緊急人員輸送だ。都市圏は危険なため、海岸線に迂回した」
「ノーフォーク・ネイビーシールズ。デル・フライトン中尉。確認した。こちら救助の体制が整っている。至急アンドルーズ基地へ、よくぞ生きて居てくれた」
そこでクキが、パチンと回線を切る。
「なっ!」
デルが唖然とする。
「何故切る!」
「すまん。デル、米軍内部にも奴らが入り込んでいる。敵が味方か分からない状態なんだ」
「なん……だと」
「なので、撃墜される可能性がある」
「……わかった。いきなりドカンでは割に合わんな」
そして無線を入れる。
「デル中尉。無線が切れたようだが、大丈夫か?」
「調子が悪いようだ。オーティス空軍州兵基地に向かうよう指示が出ている」
「だめだ。あそこはもう壊滅している」
そしてデルは、スイッチを入り切りしながら言う。
「良く聞こえない! とに、ガガ、オーガガ! 基地!ガガ! むかう!」
そして、そのまま回線の電源を切った。
「うまいものだ」
「トラブルはつきものだ」
「味方ならば救援を出すかもしれんな。敵ならば放っておくか」
「そのときわかるさ」
「いずれにせよ。デルが居てくれて助かった」
「軍に逆らうのは初めてだが、修平、なぜかあんたは信じれる」
「俺は、自衛隊だ」
「おお、そうか!」
そのまま通過し、二時間もしないうちに目的地が見えて来る。
「燃料も持ってくれた」
「空母に行って正解だったな」
だがその時だった。俺が地上に動きを察知し、ヘリコプターから身を乗り出し、足の部分に足を絡めてさかさまにぶら下がる。
「ミサイルだ!」
とデルが叫ぶが、俺は剣技を振るう。
「空接瞬斬」
着弾するずっと前に、ミサイルが切れて落ちていく。それを見て、俺がクキに言う。
「ミサイルを撃った場所へ飛べ!」
それを聞いてクキが反応するが、デルが大きな声で言う。
「おいおい! わざわざ撃墜されに行くつもりか!」
「ちがう。逃げる前に、捕えるためだ」
「と、捕えるって、こっちには武装が無いんだぞ」
「俺が武装だ!」
直ぐに次のミサイルが飛んで来る。それで、確実に攻撃して来た位置を掌握する。
「空接瞬斬! クキ! 高度を下げるな!」
「了解」
ヘリコプターはどんどん上空に上がっていく。何度ミサイルが来ても、俺が墜とした。
「うるさいやつらだ」
「警告なしで撃って来たんだ。アメリカ軍ではないだろう」
クキが言うと、デルも答えた。
「間違いない。テロリストだ」
「ならいい」
スッと息を吐く。
「剛龍爆雷斬!」
俺の剣から、シュッとミサイルが発射された場所に向かって火の玉が走る。それが地上に到達した瞬間、閃光がきらめいて大爆発を起こす。
ドゴォォォン!
デルが驚いていた。
「は? 地上が爆発したぞ!」
だがクキが俺に言う。
「このまま着陸するぞ! ヒカル!」
「そうしてくれ!」
ヘリコプターは高度を落とし、クキはうまく見つけた芝生の広場へと着陸させた。俺達はすぐに地上へと降りて、デルもそれについて来る。
「あれは、ファーマー社か?」
「恐らくはそうだ。さっきの通信では、オーティス空軍州兵基地は壊滅したと言ったがな」
「確かに。このあたりにアメリカ軍はいないという事になるか……」
俺達の視界の先には、剛龍爆雷斬の黒い煙が立ち上っていた。ミサイルを撃ってきた奴らはひとたまりもないだろうが、俺達がここに着陸したのは見ているだろう。
「直ぐに、待ち伏せできる位置を取るぞ」
俺の号令で、一斉に高いビルに向けて走り出す。
「あんたら、本当に一般人か? 訓練を受けてるんじゃないか?」
「ちがう。実戦で動いているうちにこうなった」
「実戦で……」
「さっきの爆発で、ゾンビが全部むこうに向かったな」
どうやら、このあたりのゾンビは一斉にむかったようだ。ゾンビのいない芝生を走り、道路に出て高いビルへと侵入する。だがビルの中にはゾンビが居て、皆がそれを処分しながらビルを登り始めた。既に手慣れたもので、皆はもう何をすべきか分かっているのだ。
「こんな若いお嬢ちゃんたちの動きじゃない」
「日本じゃ、これが当たり前だったわ」
「なるほどね……」
そして俺達は、ビル上階層にある部屋に陣取りヘリコプターの方を監視した。双眼鏡で覗いていると、ぞろぞろと軍用車両がやってくるのが見えた。
「おいでなすった。ファーマー社だ」
「本当だ」
どうやらここに来たのは正解だったようだ。
「ヘリコプターを見てきっと、アメリカ兵だと思ったよな」
「だろうな」
「米軍を無条件で撃つか。確実だな」
もぬけの殻になったヘリコプターを、正体不明の兵士達が確認している。俺達はそれを見て、次の作戦のために周辺の地理を確認するのだった。




