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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第601話 ネイビーシールズのゾンビ適合者

 トラックが走る先に港が見えて、何隻かの船舶が停泊していた。それを見て、クキが言う。


「よし、空母がある」


「運がいい!」


 トラックを近くまで走らせ、俺達が降りると米兵が言った。


「まだ、生き残っている人がいるかもしれない!」


「いや……」


 俺が気配感知で探る限りでは、生存者は確認できなかった。伝えようとするが、いきなり走り出した。しかも適合者のため、筋力が増加していて速い。


「おい! 待て!」


 俺の言葉も聞かずに、空母の下まで走った。そして米兵は大声で叫ぶ。


「おい! 助けてくれ! おーい!」


 すると、空母の上に蠢くものが現れ、それが声につられてやって来る。空母から岸壁に落ちて来たり、海に落下したりし始めた。つぎつぎに堕ちて、それがゆっくり立ち上がり歩きだす。


「うわああ! リビング・デッドだ!」


 米兵はあっという間に囲まれてしまい、逃げ場を失った。


「まずい。飛空円斬を使うと、アイツまで斬ってしまう」


「助けるか?」


 タケルの言葉に、俺達が急いで駆け寄ろうとした時だった。立ち上がったゾンビ達は、米兵を素通りして俺達の方へと歩きだす。米兵は呆然と立ち尽くしているが、ゾンビが襲う気配はない。


「なんだ?」


「クキ。おそらくは同類だと思っているんじゃないか?」


「ゾンビに知能があるって事か?」


「いや。あれは本能のようなもので、同類を襲わないようになっているんだろう」


 すると、それを聞いてアビゲイルが言う。


「ゾンビ因子は……発病していないものだけを狙って、移るという性質があるんです。恐らくあの米兵は発病していると、ゾンビ因子が認識しているのです」


 おおおおおおおお。と呻きながら、軍服を着たゾンビたちが襲ってきた。俺達はそれぞれ武器を取り、次々に潰していく。落ちてきた数はそれほど多くなく、一気に殲滅した。


「大丈夫か?」


「な、なんなんだ? なぜ、俺は襲われなかった?」


 そこで、クキが言う。


「教える。だから、まずはその銃を降ろせ」


「……」


 そいつはゾンビを警戒しているのか、銃を構え続けており、どうすべきかを考えている。


「貴様ら……なにかを、知ってるのか?」


「そうだ。知っている」


「や、やはり。アイツらの仲間か!!」


「まて、おちつけ!」


 引鉄に指がかかりそうだったので、俺は思考加速と身体強化で加速し取り上げる。


「あれ?」


「落ち着け」


「な、なな! なんだ! 貴様ら!」


 一般市民だと言っていたが、今の動きで完全にパニックを起こしている。


「俺達は敵じゃない!」


「おかしいだろ! なぜ、俺の銃をそいつがもってる!」


「話を聞いてくれ」


「うるさい!」


 今度は、腰の拳銃に手をかけようとしたので、縮地で現れて手を抑える。


「な、どこから。放せ」


「いいから、落ち着け」


 俺が押さえていると、目の前にアビゲイルが来て告げる。


「私は、元ファーマー社の研究員でした」


 ジリッ、と米兵から汗が滴る。


「確か……やつらの、マークもそんなだった……」


「違うんです。元、です」


「信じろと?」


「はい」


 緊迫した雰囲気が漂うが、男は抵抗するのをやめた。すっと、力が抜ける。


「なら、この……俺を押さえつけている男は何だ? 俺はシールズだぞ。なんで、全く動けないんだ? かなりの戦闘訓練を受けているはずだ。というか……何かに挟まれてるみたいだ……。」


 それには俺が答える。


「いや、訓練はした事無い。実戦しか」


「……言っている意味が分からんが、とにかく分った。この男のような力があるのなら、俺はもうこの世にいないだろうからな」


 だいぶ、冷静に判断できるようになっている。そこで俺は、パッと手を離した。


「いてて。まるで大型重機にでも挟まれたようだったぞ」


「すまん。軽くやったんだが」


「軽く……」


 そしてアビゲイルが話を続けた。


「このゾンビ騒ぎ、あなたが言っている、リビングデッドパンデミックはファーマー社がやったのです」


「やはりそうなのか……」


「ええ。私達は、それを阻止するために動いていた。そこに、たまたまあなたがいたんです」


「あんたらは、ファーマー社の敵か?」


「そうです」


「なるほど……」


 俺に抑えられた手首を撫でながら、米兵は頷いた。そしてゾンビの残骸を見て、言う。


「あんたら、銃も持っていないのに、あっさりと殲滅したな」


 それにはタケルが答える。


「ああ、慣れてっからな」


「慣れ?」


「もう、何年もの付き合いだ」


 すると、シールズの男が何かに気が付いたようだ。


「アジア人が多いという事は……あんたら、日本人か?」


「あたりだ」


 それを聞いて、そのシールズの男が納得したような表情になる。そこでようやく、アビゲイルが核心を告げる事にしたようだ。


「あの、恐らく気が付いていると思いますが、あなたの体に大変なことが起きています」


「わかるぜ。強くなったし、さっきなんかゾンビが俺を素通りしやがった。俺の体に何が起きている?」


「ゾンビに感染しています」


「……」


 複雑な表情を浮かべて、俺達を睨みつけた。だが、スッと表情が溶ける。


「同類、だから襲われなかった?」


「そうなります」


「ふう……俺は、ゾンビか」


「ですが、人格は保ったままの新しい人です。私達は、これまでもあなたのような人を見てきました」


「そうなのか?」


「適合者と呼んでいます」


「適合者……」


 そしてアビゲイルが、更に真実を告げた。


「私は、ファーマー社でゾンビ因子を発見した。アビゲイル・スミス」


「あ……若くしてノー〇ル賞を取った人? あんたが?」


「そうです」


 更に複雑な表情になる。


「あんたが、これの、張本人ってわけか……」


「そうなります」


 だがそこですかさず、ミオが口を挟んだ。


「でもちがいます!! アビゲイル博士は、そのファーマー社の企みを挫こうと立ち上がったんです!!今は、その道すがらという訳なんです」


「だんだん、見えてきた。なるほどな、だから、あんたらは知ってるんだ」


「そう言う事です」


 腕組みをして、米兵が言う。


「で、これからどうするつもりだ?」


「手がかりをつかんだのです。奴らの、出所の目安が付きました」


「そこへ行くために、ここに来た?」


「そうです」


 男は空母を見上げて、合点がいったような顔をした。


「辻褄はあってるな……」


 そしてアビゲイルは、男が聞きたくないであろう事実を告げた。


「そして……すみません。あなたのまわりで、急にゾンビになった人はいましたか?」


「いた」


「それは、あなたの体内のゾンビ因子を製造する細胞に起因しています」


「なっ!」


 アビゲイルは申し訳なさそうに、目を伏せる。


「残念ながら……」


 米兵はしゃがみ込んで、地面を殴りつけた。


「くそ! 俺のせいか!」


「いえ。あなたのせいではありません。ファーマー社のせいです」


「くそ! くそ!」


 そこでクキがしゃがみ込んで口を開いた。


「悔しいのなら、俺達と行動してみるか?」


 ミオが驚いたようにクキを見る。


「九鬼さん?」


 皆がざわつく。だが、クキはじっと見つめて、米兵に手を差し伸べた。しばらく、にらみ合いの状態になっていたが、ようやく米兵が手を掴む。


「俺が触れても大丈夫なのか?」


「ふふっ。俺達だけは特別なんだ」


「日本人だからか?」


「いや……レベルアップしたからだ」


「意味が分からん」


 そして男を引っ張り上げて、クキが改めて言う。


「俺の名は、シュウヘイ・クキだ」


「デル・フライトンだ」


 二人には、何か通じるものがあったのだろう。それだけで、あとは多くを語らなかった。そしてクキが空母を見上げて、皆に告げる。


「さて、ヘリを盗むぞ」


 皆が頷く。


 俺達は、適合者の兵士デルフライトンを連れて空母に乗り込んだ。俺達が乗り込むと、軍服を着たゾンビ達が、ぞろぞろとこちらへ向かって来るのだった。

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