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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第600話 巨大な海軍基地で狙撃される

 ゾンビで崩壊したアメリカを進むと、生き残った人々が、生きるために略奪を始めているのを知った。以前の日本でもそうなっていたが、ここまで崩壊は早くなかったそうだ。


 俺が、誰ともなく聞いた。


「アメリカ人は、諦めが早いのだろうか?」


 ミオが答える。


「まあ……むしろ、日本人が根気強いと言うか、人にものが言えないと言うか……保守的?」


「……なるほど」


 それは、仲間達を見ていても分かる。言いたい事を堪えている時もあれば、人を気遣ってそれ以上言わない事もある。もちろんこれまで出会った異国の人達に、それを感じないわけではないが、日本人の方が、思っている事を素直に言わない民族だとは感じていた。


「極限になれば、人はみな同じだ。だが、そのラインが違うだけだ」


 クキが言うと、皆が頷いた。


「それが、日本でパンデミックを拡大した原因でもあるのよね」


「まあ、広がってしまえば、日本もアメリカも同じだろ」


 田舎町は、殆ど損傷していない。田舎であればあるほど、ゾンビが侵入する可能性が低いのだ。日本とは違ってアメリカは広いので、ゾンビが行き渡るのも時間があるのだろう。


 クロサキが、あたりを見回している。


「過疎の村が生き延びて、発展しているところが壊滅とは皮肉なものです」


「文明がアダになるなんてね」


 前世では都市から都市までは数日かかり、自動車や飛行機は無く、拡散しにくい世界になっていた。


「急げばまだ、助かる人間は多いだろう」


 ミオが頷いた。


「そうね。ヒカル」


「日本は隅々まで広がっていたからな」


「狭いのよ。日本は」


 クロサキがそれに答える。


「こうやってみると、日本が標的にされた理由が分かります。狭い島国に、凄い人口がいる。実験の対象としては、それ以上の国は無かったのでしょうね」


 それからもときおり、俺の剣技でゾンビを削りながら道を進んでいくと、タケルが言う。


「橋が見えて来たぜ」


 タケルの言葉に皆が前を向く。そこには申し訳程度のバリケードが作ってあった。


「橋の向こう側にはゾンビがいるなあ……」


「バリケードは意味がなかったか?」


「きっと向こう側のゾンビだろう」


「……基地があるからか……」


「だな……」


 俺は車を降りて、バリケードの前に立ち剣技を繰り出す。


「推撃!」


 バグゥー! ガシャン! と大きな音をたてて、バリケードが吹き飛んだ。


 双眼鏡を覗いたクキが言う。


「ああ。向こう側のゾンビ達が気が付いたな。こっちに来る」


 そこで俺は、皆に言った。


「先に行く。あとからこい」


「あいよ!」


 俺は脚力強化を施して、一気に橋を駆けていく。すると、大量のゾンビがこちらに向かってきていた。あれだけ大量だと、トラックの妨げになるだろう。


「燃やす方が良いか……」


 剣を構えた。


「炎龍鬼斬!」


 ゴウ! と炎が橋の上を舐めるように走り、その分のゾンビが消えた。俺はまた前に進み、掃除をするようにゾンビを燃やしていく。止めてある車が爆発すれば橋に傷がつくので、推撃で海に飛ばしていく。


「新鮮なゾンビは、やはり動きが速いな」


 橋を渡り切り、ゾンビが少なくなったので俺は手を上げて合図をした。トラックが一気に渡って来て、タケルが言った。 


「んじゃ、いきますかあ」


「そろそろ、うんざりだがな」


「しかたねえって」


 渡りきってみれば、対岸は建物が多いようだった。程よく田舎ではあるが、恐らくは米軍の基地からゾンビがあふれたのだろう。あちこちにうろついている。


「俺が適当にやる。構わず進め」


「あいよ」


 そしてトラックは西に進み始め、基地の入り口に到達した。クキが言う。


「飛行場よりも、軍港に行ってみよう」


「なんでだ?」


「ここは、世界最大の海軍基地だからな。空母がある可能性もある。空母なら、飛び立つ準備ができてる航空機があるかもしれん」


 タケルがポンと手を叩く。


「なーるほどね。さっすが自衛隊」


「サルでもわかるさ」


「な!」


 そのやりとりを聞いて、皆が大笑いした。


「「「「あはははは」」」」


「ちぇ。ま、とりあえず行くぜ」


「よし」


 基地に入れば、やはりゾンビが増えてきた。市民達を救助した後から、パンデミックが起きたらしい。軍人のゾンビと一般人が入り混じり、こちらに向かってきた。


 クキが残念そうに言う。


「ゾンビになっても、軍人は軍人か。動きがいい」


 先頭をきって走って来るのは軍人のゾンビで、確かに動きが良い。


「飛空円斬」


 見える限りの大量のゾンビが、斬れて転がる。次の瞬間だった。


 キィィン! と俺が、刀で弾丸を斬った。


「狙撃だ」


「何処からだ?」


「気配の数が多すぎて特定できない」


 そう。俺の気配感知には、ゾンビしか見えていない。人間の気配がないのだ。


「どういう……」


「恐らくは、ゾンビ化兵か、適合者だろう」


「くそ。こんなところで網をはってたのか?」


「飛んできた方向は分かる。ひとまず、あの建物の後ろに!」


 ギィィィィン! また撃ってきた。


「まただ!」


 そして建物の陰に入り、ようやく銃撃が止まった。


「かなり正確な狙撃だった」


「マジかよ」


「確実に、運転しているタケルを狙っていた」


「俺、死ぬとこじゃねえか」


「俺が殺させない」


「守られる女の気持ちってな、こう言うもんなんかね」


 クキが笑う。


「おまえら、そっちの気があんのか? まあ自由だがな」


「ない」


「冗談だよ! 冗談!」


 そこで、エイブラハムが言う。


「おいおい。そんな場合じゃないじゃろ!」


「「「ああ……」」」


「ゾンビに紛れてんのか?」


「そのようだ」


「ゾンビ化兵という可能性はあるのかね?」


「すまん。数が多すぎてわからん」


「ファーマー社なら、不用意に動くわけにはいかんじゃろ」


 確かにエイブラハムのいう通りだった。狙撃してきた奴が何か分からないうちは、対応策が見えない。


「どうすっかね?」


「突き止めるしかないだろう」


「無視はしないということか?」


「ファーマー社なら潰しておきたい」


 俺の意見でやる事は決まった。敵は既に動いているかもしれないが、突き止めて調べる必要があった。俺達はゾンビを処理しつつ、近くの建屋に進入して狙撃から身を守る。


「で、どうやって調べるか」


 クキに俺が答えた。


「簡単だ。俺が身を晒せばいい」


「じゃあ……白旗をふってみるか?」


「どうするんだ?」


 建屋のゾンビを片付けて進むと寝室があり、そこのベッドからシーツを剥がす。それをモップに括り付けて俺に渡して来た。


「こいつを振れば。敵か味方か分かる。次撃たれれば方向は分かる」


「わかった」


 それはそのシーツを取り付けたモップを持って、この建屋の二階の屋根に飛んだ。そして、その上に立ちシーツを取り付けたモップを大きく振った。しばらくの間、ばさばさと何回も振ってみるが、銃撃は飛んでこなかった。直ぐに下におりて、その事を皆に告げる。


「銃撃はなかった」


「ファーマー社じゃねえのか?」


 それを聞いてクキが腕組みをする。


「ファーマー社なら向こうから来る。来なければ身動きが取れないという事だろう」


「待つのか?」


「いや、白旗を持って先に進んでみよう」


 そして俺達は再びトラックに乗り込み、白旗を立てながら港の方へと車を走らせた。少し走っていたが銃撃はされないようだ。


 その時だった。チカチカ! とビルの三階あたりで光る。


「ん? なんか光ってんぞ」


「行ってみよう」


 俺達は、そのビルの横にトラックをつける。そこにもゾンビがいるが、全て剣技で殺した。


「ちょっと俺が、見て来る。危険ならクラクションをならせ」


「おっけ」


 そして俺は、トラックの荷台から一気に三階の窓まで跳躍し、窓を割って中に入る。するとゾンビ達が寄って来るので、全て剣技で斬り落とした。光った部屋まで走り込み、入り口のドアをノックしてみる。


 コンコン!


 すると中から声がした。


「あんた! 誰だ!」


「一般市民だ」


「一般市民?」


「そうだ。港に向かいたいと思っている!」


 しばらく静まり返っていたが、中から鍵が開く音がした。扉が開くと、二十代半ばくらいの金髪を短く切った男が顔を出した。その姿を見れば、アメリカ軍と同じ服装をしている。間違いなく、ゾンビ因子に犯されているが、知能を無くしてはいなかった。そいつは、俺に銃を向けてる。


「一人か?」


「まずは、俺だけが先に来た」


「……なんだ。助からないじゃないか」


「お前ひとりか?」


「そうだ。全部ゾンビになった」


「なぜ、撃った」


「トラックを止めて、逃げようと思った」


「運転手が死ぬところだった」


「こんなところに来る奴は、まともじゃない。アイツらの仲間だと思ったんだ」


「あいつら?」


「ここにも来ていたが、二人位の人間を連れて、他は皆殺しにしやがった」


 なるほど。それならば、警戒する意味も分かる。


「俺達が、白旗を振ったから撃たなかったのか?」


「そうだ。でも、ただの市民とはな……がっかりだ。助からん」


「いや、ここを出よう」


「外は、リビングデッドだらけだぞ」


「ゾンビか?」


「そうだ」


 どうやら、自分が適合者だとは知らないらしい。もとより適合者のことなど、知る由もないだろう。


「ゾンビは、いったん落ち着いている。ひとまずその銃を、下げてくれないか?」


「信用ならん」


「俺は、銃はもっていない」


 仕込み刀の杖は棒に見えるので、銃を持っていないのは嘘じゃない。俺が手を上げると、そいつは俺の身体検査をして言う。


「まさか、あんた、その棒だけでここまで来たのか?」


「そうだ」


「……」


「まずは出ないか?」


「わかった」


 俺はその軍人を連れて廊下に出る。まずはそいつの前を歩き、居合でゾンビを斬ればいいだろう。


 角を曲がると階段があり、そこにいたゾンビが上がって来た。


 シュピ!


 ゾンビは崩れ落ち、障害物はなくなる。米兵は何が起きたのか分からないようだ。


「いくぞ」


「……あ、ああ……なんだ?」


 そして一階の階段から見下ろすと、エントランスに十数体のゾンビがいた。


「うわあああ」


 米兵が、パン! パン! と拳銃を撃ったら、全部こっちに気が付いた。


「思考加速」


 俺は一気にゾンビをかたずけて、元の場所に戻る。次の瞬間、ドサドサとゾンビが倒れた。


「な、なんだ!」


「ラッキーだったな」


「ら、らっきー?」


 そしてそいつを連れて、玄関から外に出るとトラックの皆が待っていた。


「連れてきた」


 すると米兵が、銃を構えて言う。


「あんたら……まさか?」


「違う。俺達は一般市民だと言ったろう?」


 だが男は銃を構えて緊張していた。トラックの荷台から、女達が顔を出すと、ようやくそいつが言う。


「本当……なのか?」


「そうだ」


 ようやく銃を下ろしたので、俺がみんなに説明する。


「俺達を、ファーマー社だと思ったらしい」


 タケルが苦笑いして言う。


「人違いで殺されるところだったぜ」


 米兵が申し訳なさそうに言った。


「申し訳ない。だが、なんであんたは死んでないんだ」


「ああ、俺には福の神がついてんだ」


「……?」


 そして俺がもう一言、皆に言う。


「残念ながら、適合者だ」


 それを聞いて皆がざわついた。だが、直ぐに理解してアビゲイルが男に言う。


「あの、あなたは、きっと気づかれてますよね? 自分の体の異常さに」


「……こ、この筋肉の事か?」


 腕をまくると尋常じゃないほどに発達した、腕が見えた。


「急になったのでしょう?」


「あんた! 何か、知ってるのか?」


「はい」


 アビゲイルは表情に少しくらい影を落とし、俯きながら返事をする。


「ひとまず、このまま港に向かう。あんたはどうする?」


「い、一緒に行こう」


 そして俺達は適合者の米兵を乗せて、一路港に向かって走り出すのだった。


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