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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第599話 荒んでいくアメリカの日常

 シャーリーンが回収したデータにはかなり重要なデータがあり、俺達は試験体が運び出された場所に行くべきという結論に至る。


 そしてクキが言った。


「てっきり、あの基地があった、バミューダ海域あたりなのかと思っていた」


「あれは爆破されたからな。もうその周辺には無いだろう」


「まあそうなんだが、想像とはだいぶ違っていた」


 それを聞いてクロサキも頷いた。


「本当ですね。大都市の近くとは……」


 だが、アビゲイルがその言葉を受けて、静かに話す。


「もしかするとですが、ファーマー社は……大学を利用していた可能性があります」


「……なるほど」


「出所から考えると、その可能性は大きいです」


 皆が頷いた。俺にはよくわからんが、皆には分かっているらしい。


「とにかく、どこかで船を入手するか、航空機を手に入れる必要がある」


「陸路では、厳しすぎますね」


「ああ」


 そう、あの試験体は、このアメリカ本土から出ていたのだ。しかも、ここからそう遠くは無い。そこで俺達は、次の場所を決めた。オオモリが確認するように言う。


「では、良いですね。ここで」


 地図を指さすと、クキが深く頷く。


「ああ。行こう。マサチューセッツへ」


「「「「「「はい!」」」」」」


「では、先に目指すのはここだ」


「ここから、目と鼻の先。バージニア州の、ノーフォーク海軍基地ですね」


「そうだ」


 俺達は、避難してきた人らに出て行くことを告げる事にする。クキが、警察官に語り掛けた。


「このままでは埒が明かんので、一度ここを出てゾンビの町を通り、南に向かってみようと思っている」


「危険じゃないか?」


「来たの米軍基地は壊滅していた。なので、南ならと思うんだ」


 だが他の人間が言う。


「俺達は、南のニューポートニューズから逃げて来たんだぞ。ここよりも、ずっとゾンビが多かったが、なんとか脱出して来たんだ。あんたら、本当にそっちに行くつもりか?」


「そうだ。あとここに居たら、いずれアイツらがやって来るかもしれん。俺達が出て行ったら、全ての道にバリケードを設けるといい。とにかく、食い止めるしかない」


 すると警官が言う。


「わかった。あんたらも気をつけてな」


「ああ」


 すると屋敷の主人が言う。


「あんたらのおかげで、魚がいっぱいとれたよ! 日本の干物の作り方を、教えてくれてありがとう! 燻製をするにも、燃やすものが限られていてね。あれで食料を保存できそうだ」


「それは良かった。じゃあ、皆も元気で」


「あんたらの無事を祈るよ」


 俺達は、ガソリンを分けてもらったトラックで、その集落を出発するのだった。一旦西へ向かいつつ、迂回して南下するルートだ。


 そして俺が言う。


「南下するまでは出来るだけ、通り道にいるゾンビは全部かたずけて行こう」


「だな。できるだけ、あの集落にゾンビが行かねえようにな」


 走りながらも、ゾンビを見つけては荷台の上から剣技をくりだした。


「刺突閃」


「まったく。こんな長閑な風景で、ゾンビなんてな」


「天気もいいし、本来なら最高の観光なんだろうね」


 クキが言うと、ミオが寂しそうに言った。つい最近まで、アメリカは普通の暮らしが出来ていたのに、今は屍人が歩く地獄と化してしまった。


「どれだけの人が生き延びてるのかなあ?」


「そうよね翼。でも、日本だって数年も経過したのに、生きている人はいたわよ。あちこちに避難して、生きている人はいるはずだわ」


「そうだよね」


 俺が日本に転生した時は、既にゾンビで埋め尽くされていたが、ゾンビが大陸全土に広がった経緯を見たのはこれが初めてだった。これは前世ではありえない事で、文明の発達が人の行き来をスムーズにし、人口の多さが招いた速すぎる広がりなのだ。


「こうして、日本も壊滅したのだな……」


「そうよ、ヒカル」


 だが、クキが首を振りながら呟く。


「恐らくは時間の問題だったさ。ファーマー社やその利権に群がる奴らが生きているうちは、これは絶対に起きると予測していた。ヒカルに会うまでは、抗うのは無駄だと思っていたんだ」


 アビゲイルも深く頷く。


「巨大企業の集まりと、国家にまで及んだ金の流れ。それがこんな事を引き起こしてしまうなんて……、それの入り口を私は……作ってしまった」


 だがそれには、マナが首を振った。


「いえ。アビゲイル博士。あの、アインシュタインだって、広島や長崎の原爆を想像していなかったわ。結局、力を得たものが、どう使うかが問題なのよ」


「そうですね、アインシュタインには挽回の余地は無かった。だけど私にはまだそれがある。それだけ、まだ救いがあるかもしれません」


「そうよ。絶対に切り開けるはず」


「はい」


 揺れるトラックは、左に曲がり先の橋を渡る事になる。そこで俺は、ゾンビを処理するのをやめた。あとは道を塞ぐ大群が居れば、それを排除するだけだ。そして、広大な畑が続く道をひたすら走り続ける。


「アメリカは広大だな。日本じゃ、山か海に差し掛かっていただろう」


 美しい風景が広がり、遠くに見える木々が赤い葉を付けている。時おり民家があり、俺の気配感知では生存者がいる事も分かっている。


「田舎に行けば、ある程度ゾンビは減るな」


「そのようだ」


 ただ、皆は警戒を解いていなかった。それは、ゾンビ以外に原因がある。


 ミナミが運転しているタケルに言う。


「道は気を付けてね」


「わかってるさ」


 そしてその懸念は、すぐに現実のものとなった。トラックがスピードを落とし、先を見ると道に車が置いてあり封鎖されている。


「あー、やっぱそうなるか」


 タケルがあきらめのように言う。先を見ていると、男達がぞろぞろと出てきた。構えてはいないが、銃を持っている。敵対するかどうかは分からないが、軍人や警察じゃない。今までの世界を冒険した経緯から考えると、どう見ても品行方正の奴らじゃない。


 ミオが悲しそうに言う。


「ゾンビ世界になると……こう……なっちゃうのよね」


 タケルも残念そうだった。


「だな。で、今のところ敵対してる感じは見えねえけど、あぶねえっちゃあぶねえぜ?」


 だがシャーリーンが言う。


「海に行って分かりましたが、ミスターヒカルがいて、危ないなんてことあるんですか?」


「「「「「「「「「ない」」」」」」」」」」


「では、接触して良いんじゃないでしょうか?」


「しかたねえなあ」


 タケルがゆっくりとトラックを進め、男達が待っているところに進んだ。戻る必要も無いが、後ろの方から何台かの車が走って来た。


「挟まれたなあ」


 クキが言う。


「話をつけてくるか」


「じゃあ、行こう」


 俺とクキがトラックの荷台から降りて、男達のところに歩いて行く。刀は背中のリュックにさしており、クキも銃などはもっていない。


「あー、ここを通りたいんだが、あんたらは何をしてるんだい?」


 するとガラの悪い奴らが、ニヤニヤ笑いながら言う。


「いや。食料を持ってねえかと思ってな」


「食料はもってない」


「あっ? それを信じろと?」


「本当だ」


「まあ、見ても良いが……」


 すると男達がトラックの後ろの方に歩いて、荷台に乗っている仲間達を見る。


「おいおい! ハーレムかよ! いい女がごろごろ乗ってるぜ」


 一人が言うと、男達がぞろぞろとトラックを囲む。


「おお、いいねえ。なんだ、あんたら、自分達だけお楽しみって訳か?」


 クキが渋い顔で言う。


「楽しい事など無い。あんたらの国の一大事だ。こんな所で、こんなことしてていいのか?」


「あはははは! もう世界は終わったんだよ! ゾンビだらけだ!」

「ちげえねえ! こんな世界になったら、好き勝手やったやつらの勝ちなんだよ!」

「まったくだ! どうせ終わるなら、美味いもん食って女抱いて。それでいいんだよ」


 呆れたものだ。この状況を力を合わせて突破しようとは思っていないらしい。


 面倒なので俺が言った。


「とにかく、邪魔だ。車をどけろ」


 それを聞いても、男らはへらへらと笑い続けていた。そうしているうちに、後ろの方から走って来た、三台の車が停まり、何人かの男が下りて来る。


「どうした?」

「見ろよ。いい女をいっぱい乗せてる」

「ほう……」


 それを見て、ミオが大声で言う。


「あなた達。多分、やめた方が良いわ。後悔すると思う」


「「「「くっくっくっくっ!」」」」

「これでも、そんな事が言えるのか?」


 次の瞬間だった。ガシャっと、男達が銃を抜いて俺達に向けて来た。するといつの間にか降りてきた、タケルが男の後ろに立って言う。


「あーあ、やっちまった」


「おわ!」


 気配を消して近づかれた男は、ショットガンをタケルに向けようとするが、あっさり奪い取られてる。タケルはショットガンを取って、構えるでもなく草むらに捨てた。


「てめえ!」


 銃が一斉にタケルに向いた。だがタケルは既に、ブンという音と共にそこから消えていなくなる。


「あっ! なんだ?」


 違う所に現れて男達に言った。


「おいおい。よそ見してていいのか? 俺なんかよりもっとおっかねえのが怒りだすぞ」


「撃て!」


 だが銃声は起きなかった。それもそのはず、十数人の銃は全て俺の手の中にあった。


「「「「あ、あれ?」」」」


「お前達が探してるのはこれか?」


 男らがあっけに取られて、俺の手元を見てる。


「て、てめえ!」


 だが俺は、その十丁の銃を力まかせに丸めて大きな鉄の団子を作り、ぎゅっと握って小さくした。そして、それを草原の方におもいっきり投げてやった。


 ビュン!


 一瞬にして見えなくなる。


「で、どうする?」


 だが俺達の言葉を聞かずに、男らはただ呆然として言った。


「俺は……夢でも見てんのか?」


「いや、現実だ」


「……」


 次の瞬間。男達のズボンが切れて、全て地面に落ちた。ミナミが全員のズボンとベルトを斬ったのだ。


「あら、終末世界の新しいファッション?」


「「「「「な、ななななななな」」」」」


「じゃあ、通らせてもらうわね」


「ま、まて!」


「あら、おバカさんなの? 次は、その粗末なものを斬ってあげようかしら?」


 諦めの悪い男達は、パンツまる出しで悪態をつき始める。


「お、お前ら! なにもんだ! こんなことしてタダで済むと思ってんのか!!」


 俺が言う。


「ただじゃ嫌なのか? 十分だと思うが?」


「う、うるせえ! 何のマジックだ!」


 埒が明かないな。


「ただが嫌なら、くれてやろう。剛龍爆雷斬!」


 俺は後ろから来た車に、剣から火の玉を飛ばした。


 ドッゴォォォォン!!! と三台の車が遠くの方に吹き飛ばされて行った。


「「「「「へ?」」」」」」


「お前達の車が爆発したぞ」


 ようやくわかったようだった。


「に、逃げろぉぉぉ!」

「うわあああああ!」

「バケモンだあぁぁぁ!」


 既にタケルが運転席に座り、俺においでおいでをしている。俺が荷台に乗ると、そのまま前方の車の列に向かった。


「推撃!」


 路上の車がドカンと吹き飛び、俺達の車は悠々とその間を走っていくのだった。そして俺は確信した。日本であんなにひ弱だった仲間が、こんなに強くなったことを。まるで前世の冒険者のように、ゾンビ世界に順応している事に、嬉しさを感じてしまうのだった。

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