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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第598話 分裂ワーム試験体と有益情報

 やはり一人で泳ぐより、シャーリーンを掴んで泳ぐのは時間がかかる。それでも急いで、難破した二隻の船が見えて来たところで海上に顔を出す。するとシャーリーンが、ボンベの口を外して俺に行った。


「嘘みたいです……距離にしてニ十キロはありましたよね? ニ十分に満たないで来たという事は、時速六十キロ以上で泳いで来たという事になります……。物凄い水圧でしたし」


「一人ならもっと早いんだが、結界を張らないとシャーリーンが辛い。だから、かなり力を落として泳いだんだがな……辛かったか?」


「い、いえ。耐えられる水圧でした。お気遣いありがとうございます……」


「ならいいんだ。結界の抵抗で、ちょっと泳ぎが遅くなってしまった」


「それで、遅いんですね……。もしかして、間に合いませんでしたか?」


「いや。まだ船が浮いている。乗員は既にボートで脱出したようだがな」


 俺とシャーリーンが船を見る。どうやら試験体の反応もある。


「急ごう」


「はい」


 俺はシャーリーンを掴んで一度深くまで潜り込み、一気に海面に向かって泳ぐ。海面から飛び出して、五十メートル程上空に浮かび、周辺を確認するが船員の気配はない。


 トン! と音も無く甲板に降りて、直ぐにシャーリーンがボンベを外した。


「行こう」

「はい!」


 シャーリーンが頷いて、直ぐに船内に入っていく。すると、シャーリーンが俺に言う。


「船ごと爆薬で沈めるのなら、動力部分の近くに爆弾があるはずです」

 

 ゴウンゴウンとエンジンが鳴る方に向かい、シャーリーンを連れて下に下りていくと、機関室のようなところに出る。するとシャーリーンが指をさした。


「あっちです」


 急いで走り寄ると、シャーリーンが立ち止まる。


「ありました。ここに爆薬が設置されてます」


 箱がいっぱい置いてあり、それが爆弾だという。そして、そこにシャーリーンが何かを見つけた。


「えっ!」


「どうした?」


「あと……二十秒です。解除、間に合いません!」


 美しいシャーリーンの顔が蒼白になっており、指先が震えていた。視界の先には、数字を点滅させる、モニターが見えている。


「いや、間に合った」


「えっ?」


 俺は村雨丸を抜いた。


「次元断裂」


 ゴッパア! 口を開いた空間が、爆薬と動力エンジンごと飲み込んで閉じる。次の瞬間そこには、広い球状の空間が出来上がった。


「えっ!」


「ひとまず。これで大丈夫だ」


「なんでしょう……心配してるのが、無駄に感じてきました」


「いや。爆弾のありかを教えてくれたのは、シャーリーンだ。来てくれてありがとう」


「ま、まあ……はい」


「では、急ごう。動力を解除したから、試験体が逃げ出すかもしれん」


「急ぎましょう!」


「試験体の気配はこっちだ」


 俺はシャーリーンを連れて、更に船の奥へと進んだ。オレンジ色のあかりが照らしている。


「非常電源に切り替わりましたね」


「そうか」


「恐らくは、バッテリーがあるのでしょう」


「なら、まだ出てこないかもな」


 そう思って近づいて行くが、どうやらそうはいかなかったようだ。


「非常電源は弱いのだろうか?」


「どうしました?」


「試験体が船内に進んできた」


「解き放たれましたか!」


 奥に進むごとに、気配がこちらに近づいてきている。


「いた」


 そこには、うねる大蛇のようなものが何本も蠢いていた。頭はあるが、その上に人間の頭がへばりついている。それが、数体ほどこちらを睨んでいる。


「気色の悪い。五匹いるな」


「恐ろしいです」


「下がって居ろ」


 シャーリーンが俺の後ろに隠れ、俺は、村雨丸を試験体に向けて構えた。


「なるほど……」


 こいつらは、あのサンパウロで遭遇した奴よりはましのようだ。恐らくは、こういう閉鎖的な空間で、効果の高い形状に作られているのだろう。入り組んだ船の柱や手摺に絡まりながら、スルスルとこちらに向かってきた。狭い所も通れるようで、障害物など無いように早い。


 シャーリーンが言う。


「恐らく……下水道から進入させようと思っていたのではいでしょうか?」


「その可能性が高いだろう。 それに適している」


 地面の下を進ませて、一気にワシントンを襲う気でいたのかもしれない。


「蛇というより、ワームという感じですね」


「まず、斬ってみる」


 村雨丸を構え、飛びかかってきた奴に剣技を振るう。


「螺旋槽斬」


 シュパパパパ! ミミズの頭から尻尾にかけて、細かく輪切りにして落とした。


 ボトボトボト!


 様子を見ていると、そのバラバラになったミミズの胴体が、蠢き始める。


「動いてます……」


 すると……それらは小さなミミズになって、ぐるぐると動き始めた。


「分裂か……」


「元はひとつだったのではないでしょうか?」


「かもしれん」


 その分裂したのが、ぶくぶくとした体をうねらせて、またこちらに迫ってきた。その後ろから、四体の巨大ミミズがこちらに突進して来る。


「乱波斬!」


 シュパシュパシュパ! もっと細切れにしてみた。しかし、少しすると更に細かいミミズが這いまわりはじめる。


「これは……爆発させていたら、恐ろしい数になっていただろう」


「敵の狙いでしょうか?」


「まあ、対、爆弾用の試験体なのかもしれん。人間に食らいつけばゾンビが増える」


 うねるミミズが増えたが、俺はもうこいつらを試す必要は無かった。似たようなものが都市に撒かれた場合の対処法を、見極めるための戦闘実験だからだ。


「ど、どうしましょう! 凄い数です!」


「大丈夫だ。終わりにする。蛇には蛇だ」


 ミミズたちがうねり、一斉に俺たち二人に飛びかかってきた時。剣技を放つ。


「屍人斬! 炎蛇鬼走り!」


 新スキルの屍人斬を乗せた炎の蛇になった斬撃が、一斉にミミズたちに飛びかかっていった。

ジュウジュウと焼け焦げて、地面に落ちた炭は、もう二度と復活する事は無かった。火の海になった船内に向けて、再び剣技を放つ。


「氷結斬!」


 ピシィィィ! と全ての炎が凍り付き、炎上は一気に収まった。


「よし。試験体は全て消えた。直ぐに、艦橋にいこう。非常電源が落ちないうちに」


「はい」


 試験体を大人しくさせたあと、艦橋にあがりシャーリーンが情報を探り始める。それを映像に移すと、どうやらこの船の記録映像だった。ディスプレイには、艦内の監視カメラの映像が映っている。


「見てください」


 ストップモーションをかけられた映像を見ると、覚えた顔がある。


「ガブリエル・ソロモン……」


「ええ。どうやら彼が乗っていたようです」


「こんな所でか……」


「医薬品食品安全省のトップが、ファーマー社の船に乗っているなんて」


「もはや、地上が危険だと分っているのだろう」


「もっと早く来ていたら……倒せましたね」


「だが、この周辺にいる事はわかった」


「そのとおりですね」


 シャーリーンは次々、データを自分の持ってきたメディアに移した。更にデータを探っているうちに、また新たなデータが見つかる。


「受信記録です。誰が相手か分かりませんが、声で分かります」


 その声はビデオで何度も聞いた、マーガレット・ブラッドリーの声だった。


「やはりそうか」


「直接指示を出していた可能性があります」


「収集を続けよう」


 そうしてシャーリーンは、次々にデータにアクセスし、この船の航海履歴も突き止めた。


「やりました。この船が出航した先が判明しました」


「でかした」


「やはり、米軍の一部と繋がっているようです」


 そうしてデータを吸い上げている時だった。俺が危機を察知する。


「こちらに何か飛んで来る」


「用意周到ですね。爆発しなかったので、ミサイル攻撃したのだと思います」


 直ぐに剣を構えた。


「大龍深淵斬!」


 俺達がいる艦橋を円形に斜めに切ると、ずり落ちるようにして上部分が下に落ちて行った。俺達の頭の上には、空が広がっている。


「ファンタスティック!」


「空接瞬斬! 三連!」


 遠く離れた場所の空で、三つの爆発が上がりミサイルは空中で四散する。


「に、逃げなくて大丈夫ですか?」


「必要ない。ミサイルは落とした。データを探り続けてくれ」


「ミスターヒカルは、何でもありなのですね……」


「大した魔獣もいないしな。絶対超神龍王を相手しているわけでもない。魔王でもないし」


「そうでしたね。ミスタータケルが言ってました。あなたは、スー〇ーマンどころの騒ぎじゃないと。それを今回、完全に理解しました」


「前世じゃ俺一人じゃ倒せなかった怪物は、ごろごろいたがな」


「恐ろしい世界から来たのですね……」


「どうだろう? この世界は人間が恐ろしい」


「……違いありません」


 それからしばらくデータを取っていると、パッ! と電源が消えた。


「非常電源が終わりました」


「なら、用はない。帰ろう」


「はい」


 シャーリーンが再び、酸素ボンベを背負い、俺達は直ぐに海に飛び込む。しばらく泳いでいると、船がいた辺りで爆発する音が聞こえた。どうやら、奴らは完全に証拠隠滅を図ったようだ。


 ニ十分すると陸地が見えて来て、俺達が水面から顔を出すと、釣りをしているタケルとクキがいた。


「おう。お帰り」


「戻った」


「対象物はどうなった?」


「細切れにして焼いた」


「そうか。じゃあ、魚しかないが、晩飯にしようぜ」


「ああ」


 岸壁から道路に上がると、不思議そうな顔の市民達がいる。


「あんたら、こんな非常時にダイビングなんて、よっぽど肝が据わってるなあ」


 それにはシャーリーンが答えた。


「あら。気持ち良かったですわよ。海は綺麗だし、いいところだわ」


「別嬪さんが言うと様になるね。そっちの優男のあんちゃんといい、あんたら……ヨーロッパあたりの俳優さんじゃないよね?」


「違うわ。でもありがと」


「とにかく、大量なんだ! あっちでみんなが食ってるから行ってみるといい」


「ええ」


 そして俺とシャーリーンは、なにごとも無かったように白い家に向かい、楽しそうに魚でバーベキューをしている市民達に迎え入れられるのだった。 

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