第594話 敵情報をキャッチする
ゾンビを間引きしつつ、大きく迂回してワシントンに向かっていると、時おりヘリコプターがやって来るので、いちいち建物に入り込まねばならなかった。
「血眼になって探してるな」
「俺が、墜とせばいいんだろうがな、こちらにいるのがバレてしまう」
「いいさ。隠れながら進もう、奴らは逃げたと思ってる。戻って来るなんて思ってないだろうしな」
「わかった」
建物の中にいるとゾンビが襲って来るが、もはやミナミやタケルが余裕で捌く。
ボキボキ! と体を砕いてゾンビを殴りつけたタケルが言う。
「大森よ。データーを盗む算段はついてるんか?」
「ええ。彼らの通信に接続して、そこから潜り込みます」
「位置は?」
「司令部じゃなくても良いんですよ。兵士の、通信端末からでも手繰ります」
「まったく……すげえバケモンだよお前」
「え、そうですかあ? 武さんに言われると、なんか嬉しいですねえ」
「褒めてねえけどな。世に解き放ったらマズそうだ」
「なっ! 僕は悪さはしませんよ」
「つうか、お前、知らない間に、スイスあたりの口座に莫大な金、あるんじゃねえのか?」
だがオオモリが、大きな声でびっくりする。
「なんでそれを!」
「こそこそ、やってたからな」
「あれは! 日本の復興資金です! 決して私利私欲じゃありません」
「そっかそっか」
軽口を叩くところも、もう冒険者パーティーそのものだ。ヘリコプターの音が遠ざかったので、俺達は再び進み始める。
「なんか日本でもこんな感じの時あったね」
「そういえば、逃げ回っていたな」
「いまは、こっちから向かっていってる」
「それだけ皆が強くなったということだ」
俺の言葉に、皆がにやりと笑う。間引きしすぎると、ゾンビが居なくなってバレるため、ほどほどに倒して邪魔をさせないようにしていた。ついて来ようとするのが居たら、全て斬り落とし進んでいた。
クキが言う。
「銃や車を使うからゾンビが寄って来る。こうして、細かく倒していくとゾンビも気づかない。自衛隊や米軍は、銃を使うから集まってしまうんだ」
「それが、普通よね?」
それを聞いて俺が言う。
「俺が居た世界に銃などなかった。音を立てる車も無い、奴らが寄って来る習性は誰もが知っていた」
「なるほどな」
話をしていると、俺達の視界の先にセーフティエリアが見えてきた。
「あそこからか」
「よし、そこのビルに入ろう」
俺達がビルに忍び込み、上に登って先を見る。
「敵だか味方だかわからんな」
「司令部につながる通信機があるはずです」
「次のヘリが過ぎたら行くぞ」
クキの指示に皆が頷いた。タケルがエイブラハムに言う。
「爺さん。疲れたんじゃねえのか?」
「いんや。全力で走れるわい」
「そうか、元気な爺さんだよ」
「ミスターヒカルのおかげで若返ったからのう」
俺は皆に伝えた。
「先行して状況を見て来る。少し待て」
皆が頷き、俺は身体強化をかけた。
「隠形、認識阻害」
スッと消えて、一気にセーフティエリアへと突入した。アメリカ兵がうろついているが、建物から建物を伝って進むと戦闘車両が見えてきた。その走る先の地面を剣技で抉る。
ドガガガガガ!
その穴に車輪を落として、車が動けなくなった。すると中から、アメリカ兵がぞろぞろと出て来て、穴の開いた地面を見ていた。
「地盤が緩んでいたか?」
「戦車なんかも通ったからな」
「他の車両に引っ張り上げてもらうほかあるまい」
なるほど、多分こいつらは違う気がする。根拠はないが、切羽詰まった雰囲気が無い。市民の救助やゾンビを駆除している奴らだろう。
そして街のあちこちをかぎまわっていると、テントが張られているところを見つけた。俺はすぐに皆のいる場所へ戻り、その事を告げる。
「拠点を見つけた」
「確認してみましょう」
オオモリの声に皆が頷く。テントの集まっている場所の前に、人のいない建物を気配感知で探した。
「よし、俺とオオモリが行く。皆はここで監視しててくれ」
「了解だ」
テントの場所が見える建物にオオモリ以外を待機させ、二人で一気にテントまで向かった。テント内部に人が居るが、俺が認識阻害で入り込み全員の意識を刈り取る。
「ここはどうだ?」
「いけそうです」
そしてオオモリが端末を取り出して、そこにある機械に接続した。しばらくするとオオモリが、ニヤリと笑って俺に親指を立てる。
「流石、ヒカルさん。ここに連れて来てくれてありがとうございます」
「何か見つけたか?」
「ええ、連絡の記録です。ここからそう遠くない所と、連絡を取ってますよ」
「なら、他の奴らが来る前に出よう」
「は、はい」
俺はオオモリを連れて、直ぐに皆のいる建物に戻る。そこでオオモリがみんなに言った。
「大体わかりました」
「どこだ?」
「また、海上ですよ。船か潜水艦です」
クキが大きく頷いた。
「なるほどな。自分は安全圏にいるってことか」
「多分そうです。相手が、マーガレット・ブラッドリーかは分りませんが、指示はそこから出ていると判別できます」
「よし、地図を出してくれ」
ミオが地図を出して、オオモリがぐるりと丸を書いた。
「このあたりです。まあ、動いていなければですが」
「それは、どうやって確かめよう?」
すると、オオモリが無線機を取り出して見せた。
「パクって来ました」
「それでやってみるか」
「ええ」
オオモリが操作してつなげると、無線機から声が聞こえてきた。
「まだ見つからないか!」
「残念ながら、既にこの地域から逃亡したようです」
「このゾンビだらけの中を、どうやって……」
「わかりません」
「引き続き捜索しろ」
「了解」
それを聞いて俺達は顔を合わせる。
「俺達の事だろうな」
「まあ、そうだな」
するとクキが言う。
「いつまでも俺達には構っていないさ。二分した、米軍をどうにかしないと、アメリカは取り返しがつかなくなるからな。大統領が必ず動く」
だがそこで、シャーリーンが言う。
「もし万が一、潜水艦であれば、危険ではないでしょうか?」
「危険?」
「恐らく大統領が邪魔になります」
「……だろうな」
だがそこで、オオモリが言う。
「好都合ですよ。攻撃地点が分かれば直ぐ見つけられます。ただ、ヒカルさんだよりですが」
「だとよ!」
「オオモリ、注意すべきはなんだ?」
「まあ、ミサイルでしょうね」
「よし、オオモリ。逐一報告を」
「了解です」
「すぐ湾岸に向かうぞ」
俺達は建物を出て、米軍に見つからないように徒歩で海に向かっていくのだった。




