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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第591話 次第に明らかになる事実

 やはり俺達の想定した不測の事態は、現実のものとなりつつあった。短時間で、二人目の適合者が現れてしまったのだ。このセーフティエリアは、むしろそれが浮き彫りになる土壌になっている。


 そして二人目は、余り素行の良くない人間だった。


「保健所です」


 割り当てられた臨時の住宅のドアを開ける。


「しらねえよ。とりあえず食いもんとかねえのかよ」


「少し待ってください」


 タケルが軍用車に戻り、俺達用に配られた食料を持ってきた。


「酒とかねえのか?」


「それは、今は配られてないようです」


「ふん。んじゃ、ようはねえ」


 食料をふんだくって扉を締めそうになったので、俺が割りいるように中に入って男を押す。


「な、なんだ! てめえ!」


 シュッと、ポケットからナイフを取り出そうとしたが、瞬間で俺はそれを取り上げた。


「あれ?」


「まあ、座って話を聞いてくれ」


「出てけよ! 話す事なんてねえぞ!」


「こっちはある」


 そいつは俺を押そうとして、胸に手を着けた。


「あ、あれ? なんで、こんな優男……う、動かねえ」


 俺はそいつの肩をもって、グイっと椅子に押し付けるように座らせる。


 ドスン。


「く、くそ!」


「話は、それほど長くない。だから、聞いてくれ」


「ちっ!」


 そこでようやくクロサキが話す。


「最近、体調など、変わったことは?」


「しらねえ」


 俺が、肩を押さえつける手に力をこめる。


「う、うぎゃ!」


「何か変わった事は?」


「くそ! 体が変わったよ! なんか強くなった!」


「そうですか。他には?」


「さてな。一緒にこのエリアに運ばれた奴らは、みんな具合悪そうだったが、俺はピンピンだった。みんな弱ええんだよ」


「そうですか。分りました。あなたは、ゾンビに感染してます」


「はあ? 何言ってんだてめえ!」


「異常に力が付いたんですよね?」


「そういってんだろ!」


「では、申し訳ないのですが、この家から出ないでください」


「はあ? なんでてめえに指図されなきゃいけねえんだよ!」


「あなたは良くても、周りが感染します」


「はあ? 知ったこっちゃねえ。おりゃ、誰にも縛られねえ」


 クロサキが困ったように俺を見るが、強制する術はなかった。俺が首を振ると、クロサキが頷いた。


「わかりました。でも、目立ったことをすれば軍が駆けつけます」


「ふん。軍とか関係ねえし」


「では、忠告はいたしました」


 俺達は憤慨する男をそこに置いて、車に乗り込んだ。車を走らせつつ、クロサキが言う。


「こうなりますよね。皆が、一人目の時のようには行きません」


「そうよね……多分、情報は留めてはおけないわ」


 運転しながら、タケルが言った。


「やっぱ、隠し通すのは無理だな。まあ、そのうち次の人間が現れるだろ。その話は、いずれ広がって、噂になるだろうからな」


「やはり、予め報告していた方が良いのかしらね」


「かもなあ」


 拠点に到着し、その事をクキに伝えても、やはり手の打ちようが無い事を悟る。


「まあ時間の問題だろう。それにな、セーフティーゾーンの事は、そろそろ国のあちこちにも噂は回る。いつまでも、ファーマー社の目を欺くのは無理だ」


「どうするか?」


「グレイブを通じて、大統領に直接言う他あるまい」


 皆が頷いた。直ぐにグレイブに連絡を取ると、まもなくオリバーと共に現れた。そしてクキの方から、グレイブに言った。


「大統領に直接伝えたい事がある」


「……わかった」


 グレイブが、直ぐに大統領に連絡を取った。俺達がシェルターを出てから、大統領には会っていない。そして、電話を終えたグレイブが静かな声で言う。


「会うそうだ。ホワイトハウスに来るようにと言っている。だが、大人数では行けない」


 それにクキが答える。


「俺とヒカルと、アビゲイル博士だけでいい」


「あとは、私だな」


「頼みたい」


 そしてグレイブがまた連絡すると、直ぐに軍人が迎えに来た。


「行こう」


 グレイブについて、俺達三人が車に乗り込むと、死体が片付けられて綺麗になった道路を走り始める。ポトマック川の橋の上も綺麗に片付いており、車両は止まる事なくホワイトハウスに到着した。


 俺達は少し待たされ、直ぐに建物の中へと通される。武器はもっていないか身体検査をされたが、特に取り上げられたものはない。


「大統領」


 中に入れば、大統領以外にも補佐官や専門家たちが待っていた。


「グレイブ。良く来てくれた。彼らのおかげで、かなり復旧のめどがついた。アビゲイル博士も、本当にありがとう」


 一人一人に握手をし、席に着くように言われたが、クキがそこにいた人間に言う。


「大統領以外を人払いして話す事は可能だろうか」


 すると補佐官たちがざわつく。


「それは無理だ」


「ならば、グレイブと大統領を二人きりにするのは? それから大統領の判断を聞きたい」


「それも、無理な話だ」


 だが大統領が手を上げて、補佐官を制する。


「この老人に、私をどうこう出来るはずがない。武器も無いのだ、速やかに全員退出してくれ」


「しかし」


「大統領命令だ」


 俺達はそれを聞いて、踵を返して外に出る。大統領補佐官や専門家たちも後について渋々と出てきた。そして俺達が廊下に立つと、補佐官が声をかけて来る。


「どういうことだ?」


 それには、クキが一言だけ答える。


「アメリカの為だ」


「……」


 微妙な空気が流れ、少しすると大統領自らがドアを開けて顔を出す。


「三人だけを入れてくれ」


「しかし」


「頼む」


「わかりました」


 そして俺達が部屋に入れられて、大統領と同じテーブルに着いた。


「詳しく聞かせてほしい」


 それに対して、アビゲイルが話し始める。


「大統領。以前お渡しした情報に、ゾンビではなく試験体やゾンビ化人間のデータがあったのは分かっておりますか?」


「見ている」


「それ以外に、ゾンビに変わらない体質の者がいます。いえ、ゾンビになっても、自我が崩壊せずに体の崩壊が始まらない人と言ったらいいのでしょうか? 体が強靭になり、ゾンビ因子をふりまき始めるという厄介な体質です」


「……そんなものが、いるのですか。博士」


「はい。これまでファーマー社は、私が発見してしまったゾンビ因子に改良に改良を加え、新型の試験体やゾンビ化人間まで開発し、動物との融合などを試してきたのです」


「それは、見た」


「ですが……それは、ファーマー社の真の目的のための事だと気が付いたのです」


「真の目的?」


「はい」


「それは?」


「もちろん推測の域を超えませんが、その、ゾンビになっても自我も体も崩壊しない、われわれが適合者と呼んでいる存在を探すためだったと考えられるのです」


「なぜ、そんなものを」


「何故かは分かりませんが、明らかにそれを狙っています」


 大統領はテーブルに肘をついて、拳を組んで顎を載せる。そして何やら、考えているようだ。しばらくして、ぽつりと言葉を発する。


「人類削減計画……」


 俺達は身を乗り出した。


「それは何ですか?」


「陰謀論の類だ。君達も聞いた事はないだろうか」


「あります。それは、グレイブから聞きました」


「もちろん、デマの類の話だ。だが、我々も知らない組織体がそれをやっていると」


 それを聞いて、グレイブも頷く。


「わしも眉唾だと思っておった」


「富裕層や高官の間では、酒の席で笑い話として出るくらいの話だ」


 それを聞いてアビゲイルが言う。


「大統領、グレイブさん。それは恐らく現実のものとなっています。これが、自然災害的なパンデミックでない以上は、間違いなく何らかの意図があるでしょう」


 二人が頷いた。


 そしてクキが言った。


「そこでなんですがね。流石にそんな、世界的な組織が裏にいるとなると、もはや誰も信用できない状態にあると思うんです。開発したアビゲイル博士や滅亡した我々日本人、それ以外の人間はどちらに属しているか分からないという訳です」


「それで、人払いをしたわけか」


「はい」


「かなり……深刻な話だ。だが、その可能性は大きいとも、直感が伝えて来る」


「その上でお伝えしますがね。適合者が、既にこのセーフティーゾーンに集まって来てるんです」


「なんだって?」


 アビゲイルが話を変わる。


「ゾンビパンデミックを生き延びてきている人が多いのですから、その中に適合者が含まれてくるのは、必然だと思われます」


「その通りだ……。だが彼らは、周りにゾンビ因子を感染させるだけの存在なのだろう? このセーフティーゾーンであれば、万が一でも、その周辺の人間が身体不良を起こすだけではないのかね?」


「その通りなのですが……私達が懸念しているのは……7G回線なのです」


「7G回線?」


「もちろん、まだそこまでの確認は出来ていません。ですが、強靭な体を持つ彼らを、自由に操れるとしたら……、そしてそれを集めた軍隊を作る事が出来たら?」


「……終わりだろう。知恵のあるゾンビなど対応方法が無い、強いとなれば大量破壊兵器でもない限り、そいつらを処分を仕切るのは難しい」


「はい。恐らく、敵の狙いはそれかと」


 あまりに深刻な状態に、大統領が黙ってしまった。自分の周辺にいる人類全てが信用できないとなれば、どうして良いかも判断が難しくなる。


 だが、大統領が立ち上がって言う。


「日本から来た君達であれば。多くの市民を助けてくれた君らであれば。信用出来るのではないかな?」


 それにクキが言う。


「滅びた日本人を、信用してくれるのですかな?」


「少なくとも、利権に絡んではいなそうだ」


「ふふっ。まあ、そうですね」


 そして大統領は、テーブルにあった紙とペンをとって何かをさらさらと書き出して、書き終えるとその紙を折って、なぜか俺に渡して来た。


「俺にか?」


「なぜだろう? 君が一番信用出来る気がしたんだ」


「わかった。預ろう」


「ここでの話は以上だ」


「ああ」


 そうして大統領が、電話を取り上げて人を呼んだ。


「失礼します」


 補佐官たちがぞろぞろと入って来る。


「話は終わった。客人は帰る」


「わかりました」


 そして俺達はSPに連れられて、ホワイトハウスを出て軍用車に案内された。直ぐにそれに乗り込んで、拠点に向けて戻って行くのだった。

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