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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第584話 この世界でのポーションの原理

 前世では、ポーションはアンデッドに逆の効果があった。人の傷を回復させるポーションではあるが、アンデッドには完全なる毒薬のようなもの。アビゲイルが言うには、ゾンビを殺す俺の細胞を培養して、ゾンビを死滅させる過程でその特性を発見し、それぞれをビンに分けて培養し検査していたのだ。


 そして見つけたのが、魔力に反応するという事実だ。そして、魔力をかけたらポーションがうまれた。


「じゃあ飲んでください」


 俺は、アビゲイルやエイブラハムと一緒に、人体を検査する部屋にいる。そこで、アビゲイルからポーションを飲むように言われたのだ。


「ゴクリ」


「反応してますね。まず体温が上昇するようです。全体に広がりました」


 俺の体が映し出された、赤や黄色の人体の映像。そしてポーションを飲んだ時に起きる発熱と、その流れを見ているらしい。


「じゃあ、怪我を治して見たらどうだ?」


 俺が言うと、エイブラハムが眉間にしわを寄せる。


「うーむ。人体実験は、ファーマー社と同じことじゃがのう」


「関係ない」


 そう言って、俺はそこに置いてある、メスをとりだして自分の手のひらを斬る。


「お、おいおい!」


「大丈夫だ。これが効くのは飲むだけじゃない」


 そう言って手のひらにかけると、傷が塞がり跡形もなくなった。


「えっ!」

「おお!」


「こういうものだ」


 アビゲイルが食らいついた。


「あ、あの! 電子顕微鏡で確認したいのですが!」


「ああ」


 すぐにアビゲイルと一緒に、同じことをしてポーションをかけた。


「で、では、血液や体液を採取して、ポーションで試してみましょう!」


「わかった。とことんまでやってみよう」


「はい」


「人体実験は好かんのう」


「お爺さん。ですが、人類の未来がかかっているのよ」


「そうじゃが」


「更なる、精密検査をする必要があるわ」


「うむ」


 そこで俺がエイブラハムに言う。


「いや、アビゲイルのいう通りだ。調べてもらう必要がある」


 アビゲイルがメスを持ち、どんなにメスを入れても、俺の腕は切れることが無かった。


「あれ? あ、なんで? あれ?」


「レベルが違いすぎる。俺の体は俺じゃないと傷つけられない。タケルでも無理なんだ」


「じゃあ、お願いします」


 そして自分で斬って、顕微鏡を構えてそこにポーションを垂らす。すると、アビゲイルだけでなくエイブラハムも、驚愕の表情を浮かべた。


「こんな風になってたんだ。想像はしてたけど」


「実際に見るのは初めてじゃな。トカゲのしっぽなどとは比べ物にならんわい」


 そして次に、血液や体液を採取し始め、それとポーションをかけ合わせたたりしている。それから数時間ほど、そんなことを繰り返している時にアビゲイルが言った。


「これは……」


「どうした?」


「これ……ポーションは、ヒカルさんかヒカルさんが施術した人じゃないとダメかもしれません」


「そうなのか?」


「はい。ちょっと、ラットで実験してみましょう」


 そして、アビゲイルがネズミを用意して、ポーションを注射する。バタバタと動き回ったと思ったら、だんだんと動きが弱まってきた。


「弱体化しています。これは……死にますね」


 ネズミが死にかけていた。そこで俺がアビゲイルに言う。


「ヒールをかけて、除去施術をして見ようか?」


「お願いします」


 俺はネズミを治した事は無かったが、これはこれで楽しいものがある。


「ローヒール」


 ヒールをかけると、死にそうになっていたネズミの動きがとまる。そしてゾンビ因子除去施術をかけてみる。すると、鼻をひくひくと動かして、元気よく駆けまわり始めた。


「治りましたね!」


「そうだな」


「では」


 そう言って、アビゲイルがいきなりポーションを飲んだ。


「おい!」

「な、なんて無茶を!」


 だが……効いている。ポーションの動きとして淡い光を発していた。


「う、うう」


「大丈夫か!」


「いえ、熱い。お酒よりも」


 するとエイブラハムが、体温計をかざしてアビゲイルの熱を測った。


「三十八度五分。結構な高熱じゃぞ! 大丈夫か?」


「それが頭も居たくないし、くらくらもしないわ。なんて言うか……たぎる。血がたぎる」


「血がたぎるか」


「それに、なんか疲れが無くなったわ」


「どういうことだ?」


 するとアビゲイルはいきなり、メスで自分の手のひらを切って血を皿に垂らす。


「おいおい」


 俺はすぐにアビゲイルにヒールをかけて直した。直ぐに電子顕微鏡で見て、アビゲイルが言う。


「お爺さん! 抗体検査の準備を」


「分かったのじゃ」


「私の免疫と血圧も」


「うむ」


 二人は慌てて検査をして、また驚いている。


「これは……」


「活性細胞が……T細胞もB細胞もマクロファージもえらいこっちゃ」


「お爺さん……これでは、免疫暴走です」


「だが、良い細胞を攻撃しとらん。むしろ、それらを包むような動きをしとる」


「守りの……再生……信じられないわ」


 そこで俺が聞く。


「どういうことだ?」


「免疫というものがあるのだけど、それらが生物のそれの常識を遥かに超えているのよ」


「それなら、誰にでもいいものなんじゃないのか?」


「いいえ、それが良いばかりでもないんです。本来ある自分の細胞や、良い細菌まで攻撃して死滅させちゃうんです。だけど、それが一切みられない。恐らく、ミスターヒカルに書き換えられた人だけかと」


「普通の人が使うとどうなる」


「免疫暴走して、発熱が四十五度にもなって死にます。もしくは、心臓が耐えられずに死ぬ」


 するとエイブラハムが言う。


「血圧も二百五十を超えている。普通は立ってられん」


「それが、ピンピン」


「これを普通の人間に使ったら、血圧は三百を超えるかもしれん。血管が切れる」


「後は、ゾンビにどう反応するかだな」


 するとアビゲイルが言う。


「うーん。直接かけないとダメかもしれません。揮発性が低いです。ゾンビには、元の破壊薬の状態の方が拡散するでしょう」


「そうか。そう言うものなのか」


「そうです。まあ、今ここで調べた限りですけどね。もっと本格的に時間をかけて、多くの人で調べないと正確な所は分かりません」


 と、アビゲイルが言っている矢先だった。


「ゴクリ」


 エイブラハムがポーションを飲んでしまった。


「お、お爺ちゃん!?」


「孫娘が飲んで、ワシが飲まんわけにいかん。年寄りにどう反応するか」


 するとだんだんと、エイブラハムの顔が赤くなってくる。


「だ、大丈夫?」


「熱いわい。それに……」


「それに?」


「なんだか、走り回りたくなってきおった!!」


「やめて!」


 そしてアビゲイルが、エイブラハムの検査をした。


「お爺さん……これでなんともないの?」


「いや、意識もはっきりしとるし、なんが腰の痛みもひいた気がするがの」


「そう……」


「なんじゃ?」


「普通の老人ならもう死んでるわ」


「なんじゃと!」


「本当になんともないの?」


「なーんともない」


 心なしか、エイブラハムの肌の色艶がよかった。白いひげも、いきいきして来たように見えてしまう。


 そして二人が話合った末に、テープに文字を書いて貼る。


 ー劇薬 取り扱い注意ー


「どういうことだ?」


「まあ、飲んだら死ぬから。劇薬じゃな」


「そうか」


 前世では、ポーションを飲んで死ぬ奴は一人もいなかった。だが、この世界ではポーションは毒になるらしい。使えると思っていたが、俺は少しだけがっかりするのだった。


 すると、俺の顔を見てアビゲイルが言う。


「大丈夫、ミスターヒカル。これは、この世界ではダメだとは思う、でも私達にとっては使える薬です。がっかりする事無いわ。量産して皆が懐に収めておけば、かなり使えるはず」


「だが、怪我しているからと言って、一般人には与えるなと言う事か」


「そう言う事です。下手をしたら毒殺したと思われます。皆に徹底しましょう」


 そうして俺達は、ポーションを携帯する事になる。


 そうしているうちに、ようやく大統領から声がかかり、すぐに指令室へと向かうのだった。

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