第578話 ホワイトハウスからの脱出
大統領と補佐官たちが、オオモリが提示した画面を見て固まっている。
オオモリがいう。
「重要参考人です」
大統領たちは、驚愕の目で俺達を見つめる。
「どうやって、これを?」
「ファーマー社の、拠点に潜り込んで情報を奪取しました」
すると、それを聞いていた一人の男が言う。
「ま、まってくれ。CIAでも掴んでない情報だ」
そこで、大統領が静かに言った。
「いや、彼女は……CIAの長官も務めたことがある」
「……確かに」
画面に映っているのは、マーガレット・ブラッドリー国務長官だった。
「あと、これ」
オオモリがスライドさせる。
「医薬品食品安全省の……ガブリエル・ソロモン」
「そんで次がこれです」
「ファーマー社のCEOモーガン・ウイリアム」
ようやくそこにいたアメリカ人たちが頷いた。どうやら、ここはマークしていたようだ。
だがオオモリが続ける。
「そして……これです」
「……まさか」
「そのまさかです」
「GOD社、テッド・グローバー……」
それを受けて、クロサキが話し始める。
「そうです。この四人は、ファーマー社のデータ上でも、重要人物として扱われてました。先日訴えられた、国家感染症研究所のジェフ・ベイツは下っ端でした。これらの四人の、立ち位置がまだ良く分かっていません」
静まり返る。そこで補佐官が言った。
「というよりも、あんたらは、ファーマー社の深部に潜ったのか?」
クキが答える。
「何度も」
「何度も?……特殊部隊が帰って来ないんだぞ」
「それは弱いからだ」
「よわい……」
少しピリ着いた空気になるが、それを大統領が遮る。
「なるほどな。それこそ、灯台下暗し。ひざ元で、それがおこなわれていたという訳か」
「そのようです」
「それは、作戦が漏れて当然だな」
「でしょうね」
「だが、この情報が本当だと言う証拠はあるかね?」
まあ、そうなるだろう。そこで、一つオオモリが言う。
「そこのディスプレイは映りますか?」
補佐官がディスプレイを繋げる。するとそこには、面白おかしい動画が映し出される。
「さあ! ゾンビ暴露チャンネルはじまるよー!」
タケルだった。俺とタケルが、ファーマー社組織に潜入した時の映像が映し出される。
「なっ!」
タケルが少し慌てていた。だがファーマー社の組織に潜り込んでいく様が、面白おかしく映っている。それをみて、大統領と補佐官たちが、俺とタケルを交互に見た。
「これは……君らだな。顔を隠しているが、声も姿も同じだ」
「あー、それは黒歴史つーか。潜った時に動画とったんで」
「君らはクリエイターなのか?」
「違う。俺達は、ファーマー社を倒すための組織だ」
「な、なるほど」
それを最後まで見て、そこにいた連中が納得したようだ。補佐官が大統領に言う。
「本物ですね。サーバーにも上がっているようです」
「そのようだ」
大統領が身を乗り出して、鋭い目つきで言った。
「もしかすると、君らはテロリストじゃないのか? 世界各地で爆破騒ぎを起こしている」
それを聞いて、タケルが答える。
「ありゃ、違うよ。俺達が潜入したのは確かだけど、やつら証拠隠滅のために爆破するんだ」
「自爆?」
「そう。だから、あんたらの特殊部隊が成功したとしても、恐らく爆発に巻き込まれて死ぬ」
「そういうことか……」
それを見たうえで、大統領が言った。
「彼らを捕らえたいが、いま政府は崩壊し、軍も警察組織もままならない。大統領とはいえ、やれることが少ないのが実際のところだ」
そう言われてクキが答える。
「大丈夫だ。ここにいる人間を全て脱出させ、必要な場所へと連れて行くことができる」
「周りはゾンビだらけだが」
だが、補佐官の一人が言う。
「大統領それが……」
「なんだ?」
「周囲のゾンビが消えたようです」
「どういうことだ……」
すると仲間達が一斉に俺を見た。なので、俺は素直に言う。
「半径一キロのゾンビは俺が始末した」
ガタン! 補佐官たちが立ち上がる。
「馬鹿な! 君らでやったというのか!?」
「いや違う」
「ならなんなんだ!」
するとクキが訂正する。
「君ら。じゃない。そこの優男が一人でやったんだよ」
「ひとり!!!!」
全員が絶句した。皆が俺を見ている。
大統領がぽつりと言った。
「せ、整理……させてもらっても良いかな?」
「ああ」
「何万もいるゾンビを、君が何らかの形で始末したと」
「何らかのかたちじゃない。日本刀で斬った」
「まて、まてまてまて! 一人で、何万ものゾンビを日本刀で斬ったぁ??」
「ああ。そうだ、三十分ほどかかってしまったがな」
「さんじゅ……ちょっと、頭がおかしくなりそうだ」
「とにかく、脱出するんだろう? 直ぐに行こう」
「ならば、ある施設がある。そこはシェルターになっていて、全軍を掌握できるだろう」
「では、行こう」
そこで、アビゲイルが手を上げた。
「なんだね?」
「すみません。私の紹介が遅れました」
「君は……どこかで……」
「ノーベル賞を受賞した、アビゲイル・スミスです」
それを聞いて、周りが一斉に驚いた。多分ここに来てから、一番驚いたかもしれない。
「な、なぜ! あなたが、あなたはこの張本人では?」
「そうです。私がゾンビ因子を発見しました」
そいつらがざわつくが、そこでクキが言う。
「すまないが、彼女は俺達の味方だ。最重要の人物として、俺達が警護し続けて連れてきた」
「どういう……」
「博士は、このゾンビの騒ぎを納められる唯一の人類だからだ」
「……わかった」
大統領は、それを飲まざるを得ない状況になっている。そこで俺が再びいう。
「分かったのなら、皆もそのつもりで頼む。アビゲイルは、ゾンビを殺す薬を作るんだ」
「ゾンビを……殺す……」
そして、クキが再び尋ねる。
「それを踏まえて、どうすればいいかを考えてください。研究施設が必用なんです」
「それこそ、その国家機密のフィルターに連れて行く」
「よし、ではそれで」
そして俺達はエントランスに出た。いろんな専門家もそろっているようだが、戦力になるのは黒服と軍服を着た奴くらいだろう。
大統領が号令をかける。
「ここを脱出する! みな、直ぐに準備をしてくれ!」
すると一斉に動き出し、建物内が騒がしくなり始めた。バッグを持ってくる物や、リュックを背負った者が集まって来る。全員が集まったところで、俺達は外に出た。
誰かが言う。
「ゾンビが……全部倒れてる」
大統領が皆に行った。
「彼らは対ゾンビ対策のエキスパート部隊だ。信用して、ついて行くことにしよう!」
それを聞いて皆が納得し、俺達は彼らを囲むようにして、動く車を探し始めるのだった。




