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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第572話 ゾンビに上陸されかけた島

 ブロック島に向かうにあたり、ゾンビ対策で閉鎖しているところに、いきなり船団が来たら撃たれるかもしれない。そんな話が上がり、甲板で双眼鏡を覗きながらオリバーが言う。


「ふむ。武装してるのう」


 それは俺も見えている。タケルが、オリバーから双眼鏡を借りてみた。


「ほんとだ。そのまま言ったら撃たれるんじゃねえか」


「だろうなあ」


 恐らく、この船団が近づいているのは見えているだろう。そこで俺達は、どうやって近づくかを考えていたのだった。だがそこで、ツバサがみんなに告げた。


「あ、なにか来る音がするよ」


 すると違う方向から近づく船があるようだった。それを双眼鏡で見たオリバーが言う。


「軍艦だ……」


「こちらと同じ考えか?」


「どうだろう?」


 俺は、なんとなく胸騒ぎがしてくる。


「俺が先に行って見てこよう」


「んじゃ、俺もいくわ」


 それを聞いて、オリバーの父親が言う。


「ボートで近寄るのは危険じゃぞ」


「いや、泳いで行く」


「ここから?」


「そうだ」


「……」


 するとオリバーの父親が言う。


「スキューバダイビング用のスイムウエアを用意しよう」


 だが、それを聞いたタケルがいった。


「いや、面倒だ。海パンツはあるか」


「水着ならあるが」


「それを二つくれ」


 そうして水着を持ってきたので、俺とタケルはその場で着替え始める。するとミオ達が、目を塞ぎながら言った。


「レディがいるんですけど」


「もたもたしてらんねえ。なあヒカル」


「ああ」


 そして着替え終わると、オリバーが驚いたように言った。


「なんだ、君らの体は……彫刻のような造形美だな。まあ、少し筋肉が多いか?」


 女の仲間達や、一般市民がジロジロと俺らを見ている。俺が仕込み刀のベルトを肩にぶら下げて、タケルがモーニングスターを肩にかけた。そしてタケルが、なにやら体を右に左に動かしている。


「何してるんだタケル?」


「泳ぐ前は準備運動だよ。常識だろ」


「いや……」


「んじゃ、行きますか」


「わかった」


「九鬼さん。みんなを任せたぜ」


「わかっている」


 俺が飛び込むと、タケルも後ろからついて来た。レベルがあがっているので、恐らくこの距離は問題ないだろう。モーニングスターをぶら下げていても、問題なくついて来る。俺達は島に到着し、岸壁に張り付いて様子を伺う。俺が身振り手振りで、人のいない方にタケルを誘い上陸した。


「このあたりに人はいない」


「相手は武装してっからな。気をつけねえと。海パン姿でやられたらカッコがつかねえ」


「行くぞ」


「おう」


 俺のあとにタケルが続いた。港付近に来ると、人がウロウロしているのが見える。


「どうするよ。ヒカル」


「話してみるべきだ。俺の後ろから離れるな」


「あいよ」


 俺は身体強化を施し、金剛で体を固め、結界をはって攻撃に備える。建物の側に隠れ、その先を見ると銃を持った連中が話をしていた。


「ありゃ、自警団と警察だ」


「なら、話は通じるか」


「と、思うけどな」


 そして俺達は普通に身を晒し、そのまま自警団に近づいて行った。もちろん銃撃されたら困るので、タケルは俺の後ろに隠れている。だが、なかなか、俺達には気づかずに話に集中しているようだ。


「何があった?」


 俺が聞いてみる。


「ああ。西の港に軍艦らしきものが来たって連絡が入ってな」


「軍艦。みんなは、ここに居て良いのか?」


「ああ、ここで待機って言われている」


 俺は普通に会話をしていた。だが、他の奴が俺達に気が付く。


「なんだ……あんたら? 見ねえ顔だが、こんな時に水泳か?」


 すると、そこで突然タケルが口を挟んだ。


「ちっと泳いでたんだけどよ。なんか、騒がしいなと思って」


「なんだ、あんたら大変な事になってるのを知らんのか? のんきに泳いでる場合じゃないんだぞ」


「いや。気持ち良かったけどな」


「本土側では、なにかおかしなことが起きているんだ。我々が自警団と共に、それを防衛しているところだ。とにかく、ホテルに戻って、待機していなさい」


「えっと。本土には帰れねえのかい?」


「今は無理だ」


「本土からの受け入れは?」


「それも認めてない」


 そんな事を、平和に話している時だった。


 タタタタン! タタン! タタタタン!


 西側から、乾いた音が聞こえて来る。警官の一人が大声を出した。


「銃声だ!」


「西の港と連絡を」


 そして男達はにわかに慌て始める。だが、通信は繋がらないような状態だった。


「繋がらない」


「何かあったんだ……軍艦が、何かしたのか?」


 それでも、銃声は何度も聞こえた。


「行くぞ!」


 すると、警察が俺達を見て言う。


「あんたらも、のんきに海水浴なんてやってないで、ホテルに戻るんだ。いいな!」


「へいへい」


 すると、俺達を置いて警察と自警団が、銃声のなる方へと車で走り去ってしまった。


「なんだろうな」


「まあ、行けば分かる」


「だ、な」


 そして俺達は周りを見渡す。そこらにポツリポツリと民家があるのが見えた。


「服。もらおうぜ。海水浴客と間違われてる」


「そうしよう」


 そして俺達はいくつかの家に忍び込み、サイズの合うシャツとズボンと靴を手に入れる。


「Tシャツとジーパンをはくと、ヒカルもアメリカ人だな」


「そうか?」


「少なくともジャパニーズの俺よりは」


「なるほど。そうかもしれん」


 Tシャツとジーパン姿になり、スニーカーを履いて走り始めた。いつの間にか、銃声が止んでいる。


「止まった?」


「いや、急いだほうが良さそうだ」


 そして俺達が数キロを走りきり、さっき向かっていた警官や自警団が車の後ろに隠れているのを見た。俺達はそのまま忍び足で、彼らのところに近寄ってみる。すると警官が、俺達に気が付いた。


「なっ! ホテルに行けと言っただろう! ここは、危険だ!」


「何があった?」


「わからん。だが、なにか不気味な静けさだ。さっきまで、銃声が鳴り響いていたが止まったようだ」


 警察に言われ、パトカーの向こうを見てみる。


「誰かが襲われている。先に進んだ方がいい」


「なに!」


 俺が言うと、皆がその先の様子を伺うようにした。


「もたもたするな! タケル行くぞ!」


「へいへい」


 俺とタケルがそこを離れ、一気に港の方に走っていく。すると軍艦が岸壁に突っ込んで乗り上げているように見える。その上から、ぼたぼたとゾンビが落ちてきていた


「軍艦が汚染されたんだ」


「マジかよ!」


「おそらく、制御不能になって真っすぐここに突っ込んだ」


 すると再び、銃声が聞こえてきた。どうやら、ゾンビから逃げつつ戦っている奴らがいるらしい。

警官や市民が倒れているところを見ると、落ちてきた軍人のゾンビにやられたのだろう。

 

「飛空円斬」


 仕込み刀を抜いて、ゾンビを斬り捨てる。そして俺達は銃声のする方に、一直線で走った。するとどうやら、建物の中に逃げた警察と自警団たちが、窓からゾンビを撃っていたのだった。


「飛空円斬!」


 再びゾンビを切り落とすと、銃声が止まる。


「うかつに近寄ったら、俺達もゾンビだと思われかねねえな」


「迂回するか」


 すると俺達の後ろから、警察と自警団が遅れてやってきた。


「どうなっている?」


「あの軍艦。ゾンビにやられてここに突っ込んだんだな」


 乗り上げた軍艦を見て、警察たちが唖然としている。


「あ! 人が落ちてきた」


 自警団の男が言う。だが船から落ちた人間は、ゆっくりと起き上がりこちらに向かって来る。


「頭を撃て。あれは、ゾンビだ」


 俺が言うと、警察の号令の下で、一気に銃が火を噴きゾンビが倒れる。


「仲間が倒れてる!」


 そこでもう一度、俺が言う。


「倒れている奴に近づけさせるな」


「おーい! 倒れたのに近づくな!」


「わかった!」


 そして警察と自警団が集まり始め、家から銃を撃っていた奴らが声をかけた。


「こっちだ!」


「おお! 皆! そっちにいたのか!」


「助かったぞ! 蹴散らしてくれてありがとう」


「いや……俺達は何も……」


 そこでタケルが大声で言う。


「とりあえずよ! 軍艦から落ちて来るやつを片付けねえとダメだぜ!」


「あ、ああ」


 そして銃を持っている奴らは、軍艦を包囲するようにする。


「ヒカル。ここに人を上げるのはどうかな?」


「あの軍艦さえどうにかすればいい。あとは、ここに散らばった奴らを海に捨てる」


「それしかねえか」


 そんな話をしていると、ここで襲われた奴らがむくりむくりと起き上がって来た。どうやら感染し終わって、ゾンビとして復活したらしい。そこで俺は、銃を持っている奴らに叫ぶ。


「あれは、暴動じゃない。ゾンビだ。もう仲間じゃないぞ!」


「そんな……」


 するとこちらの声を聞きつけたゾンビ達が、突進してきた。だが、俺が斬り落とした軍人のゾンビに躓いて転んだり、その転んだ奴に躓いたりしている。


「正気じゃない……」


「だから、あれはもうゾンビなんだ」


 すると警察の格好をしたやつが言う。


「仕方ない! 撃て! 撃て!」


 ズドン! ズドン! と、頭を打ちぬかれていく元の仲間達。そしてしばらくすると、皆が一カ所に集まって来た。何故か俺達も知らないふりして、そいつらに混ざるのだった。

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