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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第570話 ニューヨークの海でオリバーの父と邂逅

 ニューヨークの町は、かなりのゾンビが増え始めていた。どうやらファーマー社はもう、ゾンビを隠す事はしないらしい。軍隊も出ているが、圧倒的に数が足りていないようだ。


 タケルとクキが、周辺を眺めて言う。


「よし! これで、少しはもつだろ」


「あとは、米軍やポリスになんとかしてもらうしかないがな」


「セントラルパーク周辺に、破壊薬を散布しまくったからな」


 ありったけのゾンビ破壊薬を散布した事で、セントラルパーク周辺にセーフティーゾーンをつくる事が出来た。気づいた人間は、きっとセントラルパークに逃げて来るだろう。


「んじゃ、行くか」


「すまないねえ。私の父親がいないばかりに」


「しかたねえよオリバーさん。みんなも、生き残るために必死だ」


「そうだねえ」


 ヘリコプターの燃料が無くなった俺達は、湾岸に向かって歩いている。ゾンビの気配はあちこちにあるものの、まだ壊滅しているわけではなさそうだ。


「人も居るが、ゾンビもいる」


 あちこちで銃声がするのは、米軍や警察が戦っているからだった。


「ラスベガスよりはまだマシだな」


「だが……」


「オリバーさんの言うように、国家をあげてゾンビ破壊薬の量産に協力してもらわなくちゃならない」


 そこでオオモリが聞く。


「まあ、そうなんですけど、政府自体を信用出来るんですか? もし、大統領が向こう側なら?」


「確かにそうなれば、かなり厳しくなる」


 だがそれに、シャーリーンが答える。


「ですが、今はその一手が、一番有力です」


「そうですけどね」


 そして、歩く先に川が見えてきた。時おり迫るゾンビは、俺達が駆除している。


「船。あるといいけど」


「どうだろうな」


 川べりに行くと、港があり、どうやら船もちらほらと見えてきた。


「ハドソン川だわ」


「ここから外海にいける。動く船をみつけねば」


 そちらに歩いて行くと、俺達に気が付いたゾンビがぞろぞろと走って来る。


「きっきた!」


 オリバーが慌てている。


「飛空円斬」


 見える範囲のゾンビを切り捨てた。


「い、いったいどうなっとるんだ? それのカラクリは?」


「剣技というものだ」


「ケンギ。見たところ、何の変哲もないサムライソードだが」


「これは、妖刀と呼ばれているらしい。だが、俺の能力にも耐えうる性能なんだ」


「ヨウトウ。流石はサムライの国」


 もちろん俺は、日本人ではない。だが日本刀を振るっているので、サムライと言われればそうなのかもしれない。


「船、あった!」


「帆船だな。二十人は乗れそうだ」


「帆船では、緊急の脱出には使えなかったか」


「そうらしい。あれを頂くとしよう」


 そしてタケルがぴょんと、船に乗ったのでミオがタケルに言う。


「中にゾンビいるから、潰してね」


「りょーかい」


 そして船の中に入って行ったタケルが、動かなくなったゾンビを二体引っ張り出してくる。


「せつねえな」


「親子か……」


 どうやらそれは、父親と娘らしかった。ゾンビになって、船の中にいたらしい。タケルは陸にその二体を持って来て、丁寧に寝かせて手を合わせる。


「なんまんだぶなんまんだぶ」


 タケルがそう言うと、日本人の仲間達も皆が手を合わせた。


「んじゃ、船。借りるぜ」


 タケルの言葉を合図に、俺達は船に乗り込んでいく。直ぐに帆を広げて、綱を切り船を出した。どうやらオリバーが操船出来るようで、そのまま滑り出すように海に向かっていく。


「無線を」


 船には無線機が付いており、それをとってオリバーがつなげる。


「応答せよ。こちら、オリバー・クレイトン」


 ザッ、ザザッ! ガガ!


「繋がらん」


「どうする?」


「めげずにやってほしい」


 そしてタケルがマイクを受け取る。


「んじゃ、俺がやっとくわ」


 タケルが無線に向かって話し続けている間に、船は沖へと向かっていく。すると湾内には、ポツリポツリと船が浮かんでいた。


 クキが聞いて来る。


「ありゃ。生存者か」


「そのようだ。ゾンビから逃れて、海に逃げたのだろう」


「だが、帰るに帰れなくなったか。様子を見て戻ろうと思っているんかね?」


「そうだろう」


 船の間をすり抜けていくと、タケルの無線にようやく反応が来た。


「こちら、クレイトン」


 きた。


「代ってくれ」


 そしてシャーリーンが舵をとり、オリバーが無線に出る。


「私だ。オリバー・クレイトンだ」


「オリバー様! 無事でしたか」


「ああ。そっちに父はいるのか?」


「おまちください」


 少し待つと、しわがれた声の男が出た。


「お、オリバーなのか」


「父さん。ご無事で」


「お前こそ。いま何処に」


「ニューヨークの海に来ているよ」


「そうか!!」


 今いる位置を伝えられ、船は海に向かって進んでいった。そしてオリバーが言う。


「あれだ」


「「「「「「えっ!」」」」」」


 女達やオオモリが声を出した。そしてタケルが、苦笑いして言う。


「デカいな」


「当家の客船だよ」


 俺達の見る先には、地中海で乗ったような船が見えていた。どうやら、その甲板の上にたくさんの人が乗っているようだ。そして俺達の船が隣接すると、するすると縄梯子が下りて来る。


「必要ない」


 俺は、ガシッとオリバーを掴み、一気にその船の甲板まで飛んだ。


「うわ! 人が落ちてきた」

「なんだ!」


 俺達の出現に、周りの人間達がびっくりしている。


 そしてオリバーが言う。


「私はオリバー・クレイトンだ。父が、この船に乗っている」


 ざわついていたが、一人の男がやって来る。


「オリバー様」


「父に話がある。連れて行ってほしい」


「わかりました」


 そいつについて、俺とオリバーが船の中に入っていく。するとパーティールームのような場所にも、人がいっぱいいて、そこに白髪と白髭の老人がいた。


「父さん!」


「おお、オリバー!」


 オリバーと老人が抱き合い、無事を確認し合った。


「よくぞ生きてたどり着いた」


「いえ。それより、船に乗っている人達は一般人ですか?」


「ああ。助けられるだけ助けた」


 そこで俺が言う。


「オリバー。出来るだけ急いで、人を甲板に集めて欲しい」


「どういうことだい? ラッキーボーイ」


「残念ながら、感染している人間が乗っている」


「なんと……」


「急いでくれ」


 そしてオリバーが父親にそれを言うと、ボディガードと同じ格好をした男達が、ざっと外に出て走り出て行った。


「あんたらも来てくれ」


 そこにいる人らと、オリバーと父親をつれて全員を甲板に集める。既により分けてる暇など無く、俺は魔力を開放し始めた。


 ブワッ! と俺から光が広がり、ゾンビ因子除去施術が行われる。するとあちこちで、大きな声が上がる。


「うわ! なんだおまえ」

「えっ」

「真っ白だぞ」

「本当だ……」

「私も……真白」

「こっちもだ!」


「よし」


 もう、この船に因子を持つ者はいなかった。そしてオリバーの父親が、オリバーに聞いた。


「この人は?」


「父さん。ラッキーボーイは、自分を助けてくれたんだよ」


「それは……感謝する」


「それに、仲間達もいる」


 船の縁まで連れて行き、下に見える帆船にのる仲間を見せる。仲間達が手を振っており、オリバーの父親も手を振った。


「よくぞ、無事で」


「それより。父さん……」


「なんだ?」


「大統領に、なんとしても伝えたい事があるんだ」


「大統領にか……それはやまやまだが、陸はゾンビであふれておる」


「彼らが居れば、大丈夫なんだ」


「軍隊も押されているようだが?」


「軍隊など比にならないほど、心強い味方なんだ」


「ふむ……」


 いまいち信じてもらっていないようだった。まあ、無理もないだろう。


 すると、そこでオリバーがハッとしたように言う。


「アビゲイル・スミスを連れて来たんだ!」


「それは、お前が訴えていた相手じゃないのか?」


「今は、もう争ってはいない。というよりも、彼女は、この事態を納められる重要な人間だ」


「なんだと……」


「とにかく、話し合おう。仲間達も乗せてくれ」


「わかった」


 俺達が合図をすると、次々にハシゴをよじ登って乗り込んできた。帆船はロープでつなぎとめて、俺達は先ほどのパーティールームに戻るのだった。

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