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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第559話 ボクシングチャンピオンの決断

 アメリカは直ぐにロックダウンを発令し、住民が住宅から出ないように指示を出した。このロサンゼルスも例外では無く、人が町から消え去ってしまった。またオリバーが独自のルートで、米軍の情報を察知していた。


「既にシアトルも完全に封鎖されたようだ」


 クキが深く頷く。


「ニューオーリンズ、フォートリバティに引き続いて、ラスベガスとシアトルがゾンビだらけになったんだ。人の往来をなるべく防ぐのが、拡大を防ぐ方法だとアメリカは知ってるんだ」


「日本もこれくらい早く、ロックダウンに踏み切ればよかったんだけど」


「美桜。日本とは広がり方が違うさ。日本は国民全員に薬品を撒かれたんだからな」


「段階的に試験をして来たというわけね……」


「そう言う事になるな」

 

 それを聞いたオリバーが憤慨しながら言う。


「奴らは、この地球全てを実験場にしているということかね」


「と、いう事になりますねえ」


 クキが手に持ったコーヒーをグビリの飲み干して言う。


「日本を壊滅させた後に、中東イスラエル周辺も戦争に乗じて壊滅させ、ベルリンやローマで大首都のゾンビ拡大実験をしやがった。世界各地で、適合者とやらを見つけるために実験を繰り返し、とうとう知能があるゾンビを作り出してしまったわけです」


「これから、どうなると思うね?」


「今回のファーマー社の動きは今までとは違って、同時多発的にやっています。次の段階に入ったのだと思って間違いないでしょう」


「次の段階か……」


 確かに今までとは違う。恐らく軍隊は封鎖する事でしか対応できない。都市の変わり果てた人間達を狩り尽くさねば、この騒ぎは終わらないのだ。それが各地で同時に起こったという事は、既に修復不能な状況の追い込もうというのが目に見えていた。


 既にリビングのテレビでは、ロックダウンの情報一色で、何処で何が起きているのかは分からなった。インターネットによる、個人が発信する情報の方が現状が見えるような状況である。


 そこで俺がオリバーに言う。


「アメリカ軍が出来る事は、かなり限られてしまった」


「どういうことかね」


「恐らく手遅れな地域に、核を打ち込む」


「……核か……」


「生きている人間もろとも焼き尽くすほかは、ないと考える」


「それは何故そう思う?」


「ファーマー社は今までそうやってきた。アメリカ政府につながっている者がいるとすれば、同じことをやるだろう」


 そしてクキが残念そうに言った。


「恐らく、アメリカのこの現状から考えれば、それが理想的な解決方法になるでしょうね」


 オリバーが頭を抱え、全員を見る。だが、それはもう間違いのない事実だった。


 だが俺が言う。


「シアトルならまだ間に合う」


 だがクキが首を振った。


「ヒカル……ベガスとシアトルがああなったって事は、位置的にカリフォルニアもロサンゼルスも、西海岸は危うい状況だぜ。お前がここを開けている間に、ゾンビパンデミックとファーマー社の攻撃が始まれば、新型試験体破壊薬の完成を見る事は出来んかもしれん」


 既に通常ゾンビ破壊薬の量産のために、オリバーが用意したファーマー社の息がかかっていない製薬工場で製造中だ。クレイトン家の息のかかった社長が経営しているところで、ロックダウンに際して除菌薬を作ると称して、やらせているような状況だった。


「ゾンビ破壊薬の工場も……守らねばなるまい……か」


「そう言うこった」


 オリバーもクキに賛同して言う。


「小さい町工場だからね。一応私服の警備隊は置いているが、ゾンビの群れには対応できんだろう。その時は、我々だけでは無理なんだ」


 確かにその通りだった。俺達がここに足止めをされているのは、既にエンハンサーXが拡散されていることと、ファーマー社が次に何処を攻撃してくるか読めない為である。


 するとバタバタと足音が聞こえて来て、オオモリとアビゲイルが部屋に入って来る。


「やりました!」


「おお! どうだ?」


「ナノマシンを破壊する事は困難ですが、動きを妨害することは出来そうです!」


 オオモリが意気揚々と言う。アビゲイルも、オオモリのその姿を見て喜んでいた。


「流石はミスター大森。天才です」


「そ、そんな事無いです。予め、6Gの挙動が分かっていたからですよ」


 クキが聞いた。


「原理は一緒だったってことか?」


「はい。多分、これを理解しているのは、GOD以外では僕だけですよ」


「でかした」


「それと、博士が開発した新型試験体の抑制薬ですね。7G回線でナノマシンを停止させてそれを打ち込めば、理論上は新型試験体は破壊できるはずです」


 データ回収から、既に3日が経過していたが、ようやく兆しが出てきた。


 俺達が、その事を喜んでいる時。オリバーのスマートフォンが鳴る。それに出たオリバーの顔がみるみる曇っていき、まもなく電話が切られた。


「バッドニュースだ」


「どうした?」


「軍が核兵器の使用の検討段階に入ったらしい」


「なんだと」


 全員がざわつく。そしてクキが残念そうに言った。


「ラスベガス……か」


「生存者の可能性が絶望的で、既に核使用以外に対処方法なしとの判断が下されそうだ。知り合いの将軍が、わしに逃げろと言うが、西海岸の一体どこに逃げろと言うのか?」


 そこで俺が言う。


「ゾンビ破壊薬は、どのくらい出来ただろう?」


 アビゲイルが答えた。


「最新の工場ではありませんので、まだ二割にも満たないかと思います」


「どうするつもりだラッキーボーイ?」


「ラスベガスのゾンビを排除し、核弾頭の落下を防ぐ」


 だがオリバーが首を振った。


「ラッキーボーイ。君ならきっとそれが出来るのだろうね……。だけど、短時間にこうなったという事は、シアトルもこのロサンゼルスも、カリフォルニアも対象に入る」


「まだ、ゾンビは出ていない」


「ファーマー社はそんなに悠長かね?」


 オリバーの……いう通りだった。ゾンビ破壊薬の開発をしている、このロサンゼルスが攻撃されれば終わりだ。俺がいない間に、核弾頭を撃たれれば仲間達ではどうする事も出来ない。


 俺はギリっと奥歯をかみしめる。


 既にアメリカ軍も、打つ手なしと考えており、最終手段に出るまでの時間はそう短くは無いだろう。


 するとそこに、ふらりとルーサーが入って来た。


「話は聞かせてもらった。その薬品を持って、ラスベガスに行って撒けばいいんだな?」


 皆がルーサーを見る。だがアビゲイルが首を振った。


「そんな事をしたら、あなたが死んでしまいます。その薬はあなたにも効果があるのです」


 だがルーサーは首を振る。


「俺が、エンハンサーXに手を出さなければ、ファーマー社は俺を狙わなかっただろう。ラスベガスがあんな風になってしまったのは俺のせいだ」


「それは違うわ。遅かれ早かれ、どこかでこうなっていた。たまたま、あなたがそれに該当したというわけです」


「違う。俺が、ズルをしなければ、こうはならなかった」


「ルーサーさん……」


「ラスベガスは俺の庭みたいなもんだ。アメリカ軍も知らねえ抜け道を知ってる」


 ルーサーは下がらなかった。俺達はその気迫に押されて静まり返る。すると苦笑いしながらルーサーは言った。


「妻の弔い合戦と、最後くらい、息子にいいところを見せたいんだよ……」


 するとオリバーがそれを聞いて言う。


「……チャンピオン。もう、間に合わないかもしれんのだ。米軍は、その前に核を撃つかもしれん」


「でも、やれることはやりたいんだ」


「…… 」


 そこにルーサーの子供が入って来た。そしてルーサーに言う。


「パパ。何処に行くの?」


「ん? パパは、ママの為に戦って来ようと思うんだ」


「……行かないで。僕、一人になっちゃうよ」


「……すまない。だけど、パパはやらなくちゃならない。責任を果たさなくちゃならない」


「やだよ! じゃあ僕も行く!」


 だが俺達には、ルーサーの気持ちが分かった。もう自分は半分化物になっている。だからこの先息子とは一緒に生きてはいけないと悟っているのだ。子供がルーサーに飛びつこうとしたので、タケルがガッと抱きしめて止めた。


「放して!」


「……」


 タケルはただ黙って子供を抱きしめている。子供も同じ遺伝子を持っているため、アビゲイルが一緒にしてはいけないと指示を出していたから。


「ジュニア。許しておくれ。パパは取り返したいんだよ。お前の心を」


「もう、いいよ! パパはパパだもん! もう信じてるよ!」


「許しておくれ……」


 そして俺がオリバーに言う。


「ならば工場に……連れて行こう」


 オリバーが静かにうなずいた。子供はタケルの腕の中で暴れているが、ルーサーは試験体である。米軍の包囲網さえ、潜り抜けてしまえばゾンビはルーサーを襲わない。そうなれば容易に、中心部のビルまで辿り着いて、破壊薬を散布できるだろう。


 そこでオオモリが言った。


「じゃあ、なるべく直にじゃなくて、間接的にふりまける方法を探しましょう」


 それにオリバーが答える。


「噴霧器はどうじゃろう? タイマーをつけて、時間で発生するようにすればチャンピオンは被らなくて済むじゃろ」


「いいですね!」


「よし! ボク! お父さんは死なずにやれるかもしれんぞ」


「……」


 もちろん気休めである。その機械が上手くいかなかったら、それはおろか米軍に殺される可能性もある。だが皆は、ルーサーに希望を託してみようというふうに思ったのだ。


「ありがとう。オリバーさん。では、俺が行くという事でみなさん異存はないね」


 俺が答える。


「わかった。途中までは俺が送り出してやる」


「助かるよ。ラッキーボーイ」


「ああ」


 そして俺達はゾンビ破壊薬の出来上がった分を、ルーサーに持たせてラスベガスへと送り出す事にしたのだった。

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