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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第558話 手段を選ばないファーマー社

 テレビやインターネットでは、どこもかしこもGOD社の爆発騒ぎを報道していた。消防や警察の現場検証が続いており、なぜサーバールームが爆発したのかを調査しているらしい。データがロックされる前にナノマシンの情報を抜き出し、妨害の為にサーバーを破壊して来たのだが、テロではなく事故として報道されているようだった。


 オオモリが既にナノマシンのデータを調べているが、難しい顔をしている。


「新技術のオンパレードですよ」


「オオモリでも難しいのか?」


「まあ、未来の技術を見ているようですね」


「あそこを壊したから、もう敵はナノマシンの情報を持ってないんじゃないのか?」


「えっと、ヒカルさん。それなら良いんですけどね。間違いなく、データ分散させてますよ。バックアップは、違う拠点にもあるはずです」


「そういうものか?」


「はい。そういうものです」


「どうにかならないのか?」


「僕のAIウイルスでも、無理かと思います。流石はGODの技術ってところです」


 オリバーがGOD爆破のニュースを見ながら、苦笑いをして言ってくる。


「君らがやってる事は、スパイ映画のようだね」


「ずっと、こんなことをして来た」


「やはり、ナノマシンは厄介かね」


 オオモリが頭の後ろに手を回し、天井を見上げるような恰好で言う。


「今のところお手上げですね。僕の技術が、どんなに稚拙なものが思い知らされました」


「そうかね」


 そしてアビゲイルがオオモリに言う。


「それはどういう理由で、ですか?」


「僕はあくまでも、プログラムやシステムについての知識に長けているのであって、ロボット工学は専門外という事です」


「なるほどです。でも、日本のゾンビは止められたのですよね?」


「なぜか、ゾンビが6Gの電波に反応するのを見つけたからです」


「ナノマシンは反応しないのですか?」


「どうやら、7Gの技術らしいです」


「7Gの情報もあったのですよね? どうなのです?」


「……なるほど……出来なくは無いかもしれません」


「諦めずにやってみましょう」


「わかりました」


 そしてオオモリとアビゲイルが、早速作業に取り掛かり始める。出来上がったゾンビ破壊薬の数量はまだ少なく、この試作品を持って大きな製薬工場に行かねばならない。だがその前に、ナノマシンをどうにかしないといけないということになり、今のような話し合いをしていたのだ。


 そして俺が皆のいる部屋に戻ると、ニュースを食い入るように見ているところだった。


「どうだ? ミオ」


「ラスベガスは完全に封鎖よ」


「生存者は?」


「もう米軍は、救援に入ってないみたい」


「それでは、生き残った人たちは長くもたないだろうな」


「そうね」


 ミナミが残念そうに言う。


「まだ生きてる人がいるかもしれないのにね?」


 だが、今完成したばかりの薬品では、一部だけを処理するにとどまるだろう。そして今度はマナが、スマートフォンを俺に見せてくる。


「これ、一般人がドローンで撮ったみたい」


「なんだ?」


 動画では銃声が響き渡っていた。ラスベガスを囲んでいるアメリカ軍が、都市内に向けて機関銃を撃っているようだ。撃たれているのはゾンビのようだが、無差別に打ち込んでいるようにも見える。


「ちゃんとゾンビと確認して撃っているのかしら?」


 それを聞いてクキが言う。


「ニューオーリンズとフォートリバティの件があるからな。米軍も、正しい対応方法をとっているだけだろうよ。ゾンビを、一歩も外に出すなって命令でも受けてるんだろう」


「なるほど」


「酷いもんだな」


「これでは、生存者が外に脱出する事も無理だな……俺が行くか」


「ヒカル……今度はラスベガスを……更地にするのか?」


「そうだ」


「そんな事をすれば、恐らく、おまえは世界に知られる事になる。下手をすれば、お前がゾンビの王とでも言われて世界を敵に回す事になるかもしれん。フォートリバティと違って、ラスベガス周辺には世界中のマスコミが集まっているし、世界が注目してるんだ」


「そんな事はどうでもいい。生きている人間を救わねば」


「だがなあ」


 そこにオリバーがやってきて言う。


「ちょっといいかね?」


「なんだ?」


「すでに、ラスベガスだけの問題じゃなさそうだよ」


「なに?」


 オリバーがインターネットの情報を、大きなディスプレイに映した。そこにはラスベガスじゃない地域が、炎を上げているのが見える。


「ここは?」


「シアトルだな」


「シアトル……」


「例のアメフトのチームがここに遠征に来ていた」


「そうか……それを狙われたか」


 クキが俺に説明する。


「ファーマー社は、ルーサーのような適合者を手に入れるために、あちこちでやっているってことだ」


 オリバーが深く頷く。


「ファーマー社は本格的に、なにかを始めたのだろう……」


 奴らはどうやら、アメリカを犠牲にしてでもやろうとしている事があるらしい。俺達が動いている事は、ルーサーを誘拐した事で敵に伝わっているのだろうが、なりふり構わず動いているようだ。


 クキが言う。


「ファーマー社は隠蔽する気も無くなったようだ。日本を滅ぼした時のようにな」


「そうか……」


 そこで俺達はようやくわかった。既にファーマー社は、世界を存続させる気など無いのかもしれない。重苦しい空気が部屋に広がり、皆が静まり返ってしまう。


 だがそこでタケルが言った。


「ま、やれることをやるしかねえよ。日本だって、復活しつつあるんだ。何処までいったって、どっからだってやり直しがきくって教えてくれたのはヒカルだぜ」


「その通りだ」


「んじゃ、今更慌てたって仕方ねえさ」


「わかった。二人の開発を待つとしよう」


「そうだぜ」


 ここに世界を救うための可能性がある。今は、その可能性を信じて待つしかないだろう。俺達は静かに、煙を上げるシアトルの町を見ていた。


 するとシャーリーンが言った。


「しかし。適合者を見つけるためにワザと薬品を漏洩させて、適合者をつかまえ一般人を殺す。世界を絶滅の危機に晒して、奴らは一体何をするつもりなんでしょう」


 確かにファーマー社は、人類を滅亡させようとしているように見える。その目的までは、ここにいる人間で知る者は居なかった。


 オリバーも首をひねる。


「だなあ……人が滅びてしまったら、利益もへったくれも無いだろうに」


「なにか、目的があるんでしょうね?」


「だろうけどね」


 敵の目的が何かは分からないが、その目的がどのような目的であれ許される事ではない。俺達はなんとしても、ファーマー社を阻止する必要がある。それだけが、俺達に課せられた使命だった。

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