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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第553話 ファーマ―社軍の待ち伏せ

 俺達のバイクはラスベガスを脱出し、ロサンゼルスに向かって走り出した。しかし、俺の気配感知は直ぐに違和感を感じる。何かがこちらに向かって飛んできているようで、俺達の居場所を掌握しているように感じるのだ。


「タケル!」


「ん?」


 ブレーキをかけてバイクを停止させた。荒野の真ん中で周りには何もないが、乾いた風が吹き俺達の髪を撫でていく。俺が、タケルの側に寄って聞いた。


「この人のスマートフォンの電源は切れているか?」


「ちっとまて……ああ、切れてるぜ」


 タケルが見るが、スマートフォンの電源は切れていた。


「それは捨てて行こう」


「わーった。あのー、ボクサーのおっさん。あんたのスマホ捨てるぜ」


「かまわない」


「あと、身体検査もしといたほうがいいな」


「やってくれ」


 タケルがボクサーの体をまさぐるが、これといって異常は無さそうだった。


「何もねえと思うが」


「じゃあ、これは捨てよう」


 スマートフォンを荒野に放り投げると、土煙を上げて地面に落ちた。再びバイクを走らせ、しばらく走るが、やはり何かがこちらについて来ている。俺はまたタケルの前に出て、バイクを止めさせた。


「まだなんかあんのか?」


「ちょっと待ってくれ」


 俺がバイクを下りて、空を見上げて確認する。空の高いところで、何かがこちらを伺っているように見えた。空には雲もあるようだが、その向こうに何かいるのが分かる。


「空接瞬斬!」


 手ごたえはあった。何か飛行機的な物が、落下していくのが分かる。


「よし」


 俺達は再び走り出す。だが何故か違和感が無くならなかった。何故か、こちらの位置を把握されているように感じてしまうのだ。そして、その感覚はやはり的中してしまう


 ギャギャギャ! とタケルが止まり、その先を見て言う。


「なんで分かったんだ? スマホは捨てたんだけどな」


 タケルの視線の先には、明らかに戦闘車両のような物が数台止まっていた。今まで見て来た、米軍の物ではなく漆黒の不気味な集団だった。


「タケル……あそこには、ゾンビ化兵と、恐らく試験体もいる」


「気配感知か……。しかし待ち伏せ? 俺達の事がバレてんのか?」


「分からん」


 するとボクサーが、バイクの後ろでぽつりと言った。


「俺かもしれん」


「どういうことだい?」


「この体を治すと言われ、何かの注射を打たれた」


 俺とタケルは顔を見合わせた。もちろん、それが原因かは分からななかった。


 まだ敵は、こちらに何かを仕掛けてくる様子はない。そこで俺がスマートフォンを出して繋げる。


「ヘイ、オオモリ」


「あ、どうしました?」


「ボクサーを連れて来たんだが、敵に感知されている。どうやら待ち伏せされていたらしい」


「あー。だと、恐らく相手の7G回線なのかもしれません」


「ナナジー回線か」


「6Gでも僕はゾンビを停止出来ましたからね。下手をすると、位置を掌握するぐらいは分るのかもしれません」


「何か注射をされたと言っている」


 すると、アビゲイルに電話が変わる。


「ヒカルさんの感知で、ボクサーにゾンビ因子は感じますか?」


「ある。試験体の因子に似ているが」


「適合者……その後に注射を打たれたのですよね?」


「そのようだ」


「ナノマシンを注入された可能性があります。血中にあるナノマシンを感知しているのかも」


「なんだそれは?」


「細かい機械と言ったらいいでしょうか? ファーマー社はその研究もしていました」


 俺がもう一度ボクサーを探るが、試験体の因子しか見当たらない。だが敵はこの細胞を認識しているか、ナノマシンとやらを認識しているのかもしれなかった。


「どうする? ヒカル?」


「まず、目の前の敵を片付ける。だが、追手は次々来るだろうな」


 すると、電話の向こうでアビゲイルが言った。


「阻害することは出来ます。放射線防護服を着ればいいかと」


「……そんな物がどこかにあるのか?」


 するとタケルが俺に言う。


「日本では消防所にあったぞ」


「決まりだ」


 そして俺が敵に向かおうとすると、ボクサーが慌てて止める。


「ど、どうするつもりだ?」


「アイツらを蹴散らす」


「まて。俺は、あの薬を使って強くなったんだが、アイツらには敵わなかった」


「知っている」


「なら話は早い。その俺をもってしても、アイツらにはかなわなかったんだ。あんたらも強いようだが、さっき仕留めた四人とは訳が違いそうだぞ。それに銃を持った奴らが、あんなにいるじゃないか」


「ああ。それなら問題ない」


「問題ないって……」


「それよりタケル。この二人を守っていてくれ」


「あいよ」


「じゃあ、まずは殲滅する」


「そ、そんなに簡単に、こっちは三人と子供一人だ」


「いや。俺一人で殲滅するから問題ない」


「……」


 どうやら敵も、じわりじわりとこちらに近づいてきているようで、一瞬の殺気を感じた。


 ギイン! 俺が剣で斬り落としたのは狙撃の弾だった。そこで俺は三人に言った。


「伏せていた方がいい」


「言う事聞こうぜ」


「あ、ああ」

「うん……」


 二人には、何が起きたのか分かっていないらしい。敵はどうやら荒野にも潜んでいて、そこからここを狙って狙撃して来たのだ。既に方向と位置は確定し、そのむき出しで寝そべる体も確認した。


「やはり……クキは別格なんだな。他の狙撃手は、こんなにも分かりやすいものなんだ」


 俺は感心する。


「閃光孔鱗突!」


 狙撃してきた奴は、脳天から尻の穴にかけて胴体の中央を失った。そして俺は金剛と結界、身体強化を施して敵に向かい縮地で距離を詰めた。


 次の瞬間、装甲車の間で銃を構えていた男の隣りに立ち、そいつに話しかける。


「何を狙ってるんだ?」


「なにって……おまえ……」


 違和感を感じたのか、こちらを見たので首を飛ばした。直ぐに反対側の奴も脳天から、股の間に斬り下ろして消える。


 ドサ。ドサ。ドサ。


「えっ」

「えっ」

「えっ」


 敵が、ようやく気が付いたようだ。


「敵襲!」


 一斉に臨戦態勢に入るが、その時、俺は既に上空五十メートルに浮いている。


 威力を極力押さえて剣技を放った。


「剛龍爆雷斬!」


 装甲車の間に、火の玉が落ちて大きな爆発を起こし、先頭車両がひっくり返る。爆心地に居たゾンビ化兵は全て飛び散り、飛ばされた車両に潰されて身動きが取れない奴もいた。


「砲撃だ!」


「どこから!」


「わかりません」


「あ、あれを出せ!」


 そう言って皆が装甲車を見た時、既に壊れたその車の亀裂から爪のような物が出ていた。


「もう、外に出てる!」

「に、逃げろ!」


 周りの奴らが離れようとすると、その車からバキッ! という音と共に羽の生えた筋肉の塊が出て来た。丸まっていたそれが広がると、三メートルほどの人間の形になり、体中が収縮を繰り返していた。そしてすぐに、逃げ惑う兵士をつかまえてヘルメットごと頭を噛み切った。


「ヒィィィィ」

「ウワァァァァ!」


 ベッとヘルメットを吐き出し、直ぐに次の得物に飛びつく。ゾンビ化兵は銃を構えて応戦するが、頭と腕を掴まれて引きちぎられた。さらにそいつは、逃げようとする集団に向けて、装甲車を両腕手で掴み放り投げる。


 ズシン! という音と共に、兵士達が潰れ、断末魔の声を上げた。


「だいぶ、性能が上がっているようだな」


 俺は着地と同時に、逃げている奴らに向かって剣技を放った。


「屍人飛空円斬!」


 シャイン! と一閃、目に見えている範囲の兵士とゾンビ化兵が斬れ落ちる。それを見て、目の前の羽の生えた試験体が吠えた。


「グギャアアアアアア!」


「醜いな」


 試験体は俺を確認し、片手に持っていたゾンビ化兵の頭なし死体を放り投げて来る。


 シュキン! 目の前で両断したところに、試験体が突進してきていた。


「知恵があるのか」


「ガギュルガギュル!!!」


 顎が広がり、バカッ! と、口が必要以上に広がる。そいつは俺を食うつもりで、こちらに飛びかかってきたらしい。


「だが、お前の一部は持ち帰らねばならん」


 俺の肩にその巨大顎が食らいついたが、金剛と結界により鋭い牙は全く通らない。


「俺は、美味くないぞ」


 頭を振ろうとしているようだが、俺はびくとも動かなかった。


「どうする?」


 するとそいつは羽をバタバタさせた。


「なるほど」


 俺の体が少し浮いたところで、試験体がにやりと笑った気がした。


「残念だな」


 俺は試験体の頭の上半分を握り、剣技を放つ。


「乱波斬!」


 ババッ! 至近距離で受けた剣技により、何百の肉片となって飛び散る。俺の手には頭の四分の一が握られおり、他は肉の雨になって地面に降り注いだ。


 ズシャ! と飛び降りたところで、砕けた肉片たちを見るとどうやら結合を始めている。


「やはり。改良されているか……」


 だが様子を見ていると、上手く再生は出来ないでいるようだ。


「細切れにすると無理のようだな。あのスライム状のやつとは違う訳だ」


 俺が握っている試験体の一部が、ブルブルと震えてそいつらを集めようとでもしているようだ。


「残りはいらん。蘇生斬!」


 するとビチビチ動いていた肉片が、ただの肉片になって動きを止めた。俺が握っている、頭部の一部だけが、うずうずと動いている。俺は次に、逃げたファーマー社を全て仕留めた。そして肉片を持ったまま、タケル達のいるところに近づく。


「そのまえに」


 俺は試験体の一部を放り投げて剣技を放つ。


「絶対氷結!」


 ピシィィィ……。


 凍ったそいつを手に取り、タケルに言った。


「入れ物の缶をくれ」


「あいよ」


 俺はそれを受け取り、完全に凍り付いた試験体の一部を入れて蓋をし鍵をかけた。一連の流れを見ていたボクサーが、自分の息子に言っていた。


「おまえの言うとおりだ。コイツはマジもんのヒーローなんだな」


「そうだよ!」


 子供が嬉しそうに言う。


そしてタケルが言った.


「んじゃ、次は消防署だな。ちっとまて」


 スマートフォンを覗き込むと、既に近い場所にある消防署の位置を、オオモリが送ってくれていた。


「こっからニ十分ほどだ」


「念のため、試験体の一部とゾンビ化兵の一部は俺が運ぶ。タケルは二人を頼む」


「ああ」

 

 だが子供が言う。


「僕は勇者のバイクがいい!」


「……なら前に乗れ」


そして二台のバイクは、近くの町へと急行した。探すまでも無く、地図に従って行くと消防署があり、そこには人の気配がしている。


 道路の前から消防署を眺め、俺達はどうするかを考えていた。


「消防士がいるなあ……強奪するか?」


「いや。それもまた、大騒ぎになる」


 するとボクサーが言った。


「俺が話してみる」


「そうか」


 ボクサーのいう通りに、俺達は消防署に入ってみる事にしたのだった。

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