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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第550話 壊滅したラスベガス

 バイクで走る俺達の視界に、ラスベガスから立ち上る煙が見えてきた。それは広範囲に広がっており、このあたりには渋滞で動けなくなった車達がいた。そこにバイクを止め、侵入経路を考えている。


「本当なら、四時間から五時間はかかるところだがな」


「どうにか二時間で付いた」


「たぶん警察も、スピード違反の二台のバイクを探して大騒ぎだと思うぜ」


「そんな事を言っている場合ではない」


「ちげえねえや」


 その場所にはチラホラと残っている人たちもいて、テレビを見たりゲームをしたりしている。どうやらこれらはラスベガスに向かっていた車のようで、この何キロか先で軍が閉鎖している事を知らないのかもしれない。バーベキューをして酒を飲んでいる奴もいて、なんと言うお気楽な国民なのだろう。


 そこでタケルが、近くに居た家族に言う。


「軍が閉鎖してんだ。多分何日も動かないと思うぜ」


「と言ったって、身動きが取れないんだ」


「車が動くうちに、Uターンしたほうがいいと思うけどな」


「ご忠告ありがとう。それで、君らは?」


「ベガスに、ちと用事があるんだ」


「なんだ、それなら私達と同じじゃないか」


「いや、そうじゃねえぜ。あんたら、ゾンビの餌食になりてえのか? 可愛い子供達もゾンビにやられてしまうぞ」


 すると家族たちが顔を見合わせて、次の瞬間大笑いした。


「プッ! あーははっは! ゾンビだってぇ?」


「そうだ」


 すると子供が言った。


「お兄ちゃん。あれは映画の中だけの話だよ」


「違うんだよ。あれは本当で、ベガスでそれがおきてるんだよ」


 すると母親がタケルに言う。


「ちょっと、うちの子を怖がらせないでもらえます? 夜眠れなくなっちゃうでしょ」


「いや……眠れる眠れないじゃなくて、軍の閉鎖を破って出てきたらマズいんだよ……」


「からかうのもいい加減にしてくれ。こっちは昨日から、ここに居て気がたってるんだ」


「いやいや。一日たって解消しねえってのが、変だって思わねえのか」


「にしてもゾンビなんて」


「駆除に手を焼くと、核弾頭が飛ぶかもしれねえんだ」


「おだやかじゃないねえ。あんたらいったいなんだって、そんな事を言うんだ?」


「助かってほしいからだよ」


「タケル。急ぐぞ」


 そしてタケルが念を押す。


「とにかく危険だからよ。早く引き返す算段を付けた方がいいぜ」


「まあ、ご忠告は聞いておくよ」


 そして俺とタケルは再び、道路じゃない土のところを走り始める。この地面だとそれほど速度を上げる事は出来ない。


「やべえなあ。これじゃ日本の時と全く変わらねえ」


「彼らは知らないからな」


「だなあ。気づいた時には遅いんだけどな。俺達はそれを経験した」


「そのためにも、一刻も早く、アビゲイルに因子を届けねばならん」


「だな」


 渋滞は数十キロに及んでいたが、その先ではやはり軍隊が道を閉鎖し堰き止めている。銃を持った奴らが、金網の上の見張り台のようなところにいた。


「まあ、あれで正解だけどな」


「まだゾンビは溢れていないようだ」


「こっちに流れて来てねえだけかもしれねえ」


「道路だけ閉鎖しても意味がないのだが」


「恐らく、ゾンビ対策なんてマニュアルがねえんだろうよ。迂回しようぜ」


バイクで道を引き返したところで、左手に積み上がっている土の山を登る。するとその先にキャンピングカー売り場が見えてきた。その先には荒野が広がっており、俺達は道なき道を突っ走り始める。


 左手には煙の上がるラスベガス、空には先ほどからヘリコプターが何機も飛び回っていた。


「ヘリがいっぱい飛んでんなあ」


「武装してる。兵士と、そうじゃない奴が乗ってる」


「んじゃ、救出してんだろうよ」


 生きる命があれば救う。軍隊も必死のようだが、既に陸路では移動できない状態なのかもしれない。俺とタケルのバイクが、荒野からラスベガスに向かって進路をきった。だが荒野のあちこちにも街があり、工事車両なども置いてあるようだった。昨日までは、日常生活を送っていたのであろう。


 そのそばを通りかかったが、人の気配はせずにどうやら避難をしたようだった。するとそのそばの荒野の先から、何機ものヘリコプターが浮かび上がる。


「あの空港から出てるみてえだな」


「逃げて来たのだろう」


「でもよ、こんなのでゾンビを止める事は出来ねえぞ。この町はどこからも入れるようになってるしよ、道路だけ閉鎖したってダメなんだけどな」


「暴動している人だと思ってるんだろう。人なら砂漠を歩いてはいけないからな」


「ゾンビは関係ねえからなあ」


 そして俺達のバイクが、荒野から住宅街の方へ入っていくとボロボロになっている家や、あちこちで煙の上がる場所があった。


 タケルが言う。


「お出ましだ」


「既にここまで来てるのか」


 俺の気配感知にも、多数のゾンビの気配が伝わってきた。生存者も多少、立てこもっているようだが、既に街のあちこちにゾンビがうろついているのだった。


「どうする?」


「構っていては時間がかかる。ゾンビ化人間と試験体を探すしかないだろう」


「了解だ」


 バイクの音につられ、ゾンビがこちらに寄って来るが、それには構わずに奥へと進んだ。そしてタケルがスマートフォンを取り出して言う。


「えーっと。例のボクサーの家はこっちだな。それともジムに行った方がいいのかね?」


「どこから始まったのだろうな」


「分からねえ。俺達がニュースを見た時は、ベガスは荒れ果てた姿だったからな」


「なら、ジムに行ってみるか」


「よっしゃ。付いてこい」


 そしてタケルがスマートフォンの地図を頼りに、ジムがある方へと進んでいく。先に進めば進むほど、人の気配が少なくなりゾンビが増えていった。


「知性の無い奴ばかりだな」


 ガウガウと声を出しながら、俺達のバイクを追うゾンビ達。ほぼ手遅れの状態のようで、一帯はもう人が生きれる環境には無かった。


「あれだ!」


 特徴的な建物が現れる。そこが、エンハンサーXを使用したボクサーが所属するジムらしい。


「ゾンビを少し排除する」


「了解」


 俺はバイクを下り、


「飛空円斬」


 見える範囲のゾンビを切って落とした。だがじきに、またこちらに流れて来るだろう。


「いくべ」


「ああ」


 俺達はバイクを下りて、そのジムへと向かって行った。中にゾンビがいるが、まずは手がかりがないか探る必要があった。入ってすぐに、ゾンビ達がこちらを振り向く。タケルが無造作に歩いて行って、モーニングスターでスキルを使った。周囲のゾンビが、一気に潰れていなくなる。


「まずは、あのボクサーがいるかどうか探そう」


「んじゃ、おりゃこっちに行く」


「派手に潰せ」


「あいよ」


 そして二人は別れてあちこちを探した。だが何処にもあのボクサーはおらず、結局建物の中にいたのは普通のゾンビだけだった。


「あーあ。勿体ねえなあ……未来の世界チャンピョンがいたかもしれねえのに」


「仕方がない。既に人ではなくなっている」


「んで、奴のロッカーを見つけたぜ」


 二人でロッカーに行き、俺が鍵のかかった扉を斬る。そしてそこにぶら下がっている上着から、エンハンサーXの気配を感じた。


「やはり、薬を使ったようだな」


「やっぱそうか」


「問題は薬を使った奴が何処に行ったかだ」


「まったくよ。つうか、ゾンビがこれだけ広まってるつうことは」


「間違いなく。ファーマー社が動いてるだろう」


「だよなあ。このボクサー、関係してると思うか?」


「無いとは言い切れん」


「あれか、博士の言っていた、適合者か?」


「知性を保っているのならそうだと言っていた」


「ぶっ壊れてる可能性もあるんだろ?」


「その通りだ」


 俺達はその事務を後にし、外に出てバイクにまたがる。


「そいつん家に行って見るか」


「そうしよう」


 そして俺達は、荒廃するラスベガスの中心に向かって進んでいくのだった。あちこちではヘリが飛び交い、銃声が聞こえて来る。


「銃声だ」


「警察か軍か、いずれにせよ俺たちも撃たれっかもしんねえぞ」


「家まで地図をおぼえる。見せてくれ」


 思考加速をして、タケルが見せた地図を覚える。そして俺はタケルに言った。


「ついてこい」


 俺がバイクを急発進させると、遅れずにタケルが付いて来た。これで警察や軍に打たれる事はないだろう。うろつくゾンビと、散乱する車を避けて進み、俺達はボクサーの家の前まで来た。俺がバイクを止めると、タケルがその横に止まる。


「あそこか」


「そのようだ」


「随分、堅牢な屋敷だな」


「探るぞ」


 俺達は高い塀を乗り越え、屋敷の中に飛び込むのだった。だが……屋敷の中には人の気配もゾンビの気配もない。


「静かだな」


「入ろう」


 屋敷に侵入して直ぐに気が付く。


「血の匂いがする」


「まじか」


「こっちだ」


 俺達がそこに行くと、 何人かが倒れている。そして俺はその死体を確認する


「これは、ゾンビじゃないのに銃殺されているぞ」


「ひょっとして、こっちの子供もかい?」


 俺がその子を見ると、同じ様にゾンビじゃないのに殺されていた。そして屋敷を探してみると、また人が死んでおり、違う部屋にまた子供の死体があった。


「こりゃひでえな」


「押し入りだろうか?」


「こんな堅牢な屋敷にかい?」


 その時だった。地下に気配がする。しかも人間の気配が。


「地下に一人いるようだ。どこかに地下に行く階段があるはずだ」


「よし」


 だが、どこを探しても地下に続く階段がない。ある部屋で、タケルが何かを見つける。


「この床の一部だけ鉄だ。ここが入り口じゃねえのか?」


「どうやって開ける?」


「さて?」


「斬るか」


 そして俺は剣技を繰り出した。


「断鋼裂斬」


 ギィン! と裂け目が出来て鉄の扉が落ちる。


「随分分厚いな。十センチ近くあるぜ」


「なんだここは」


「たぶんよ。パニックルームかシェルダーだ」


「隠れ家か?」


「そんなところだろうよ」


 俺達が下におりて、気配のする方向に行く。暗く灯りが灯らないので、タケルがスマートフォンのライトをかざした。


 すると……部屋の片隅に震える、小さな子供の姿があったのだった。 

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