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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第539話 ファーマ―社と法律を武器に戦う人

 ラスベガスで知り合った老人と共に、俺達はおしゃれなレストランへとやってきた。俺の隣りで賭けていた男も、かなり儲かったようで、それでご馳走したいのだという。


「いやはや。君みたいな運の強い男は初めて見た」


「そうか」


「名前を聞いても?」


「ヒカルだ」


「オリバーだ。よろしく頼む」


 だが、その挨拶をした途端。アビゲイルが大きな声を出す。


「あっ!」


 皆が一斉にアビゲイルを見た。すると、ずっと俺だけを見ていた、オリバーがアビゲイルに視点を合わせてぼんやりとしている。だが次に、声を出したのはオリバーだった。


「あ!」


 そして次に口を開いたのは、クキだった。


「いやはや。気づかれちまった」


 シャーリーンも頷く。


「そのようです」


 すると見る見るうちに、オリバーの顔が真っ赤になっていく。


「き、貴様! あ、悪魔!」


 大きな声をあげるので、俺が慌ててオリバーの意識を狩る。そして周りに聞こえるように言う。


「随分、酔っぱらったようだ」


「だなあ」


 するとミオが立ち上がって、店内の人に謝る。


「すみません。お騒がせをいたしました」


 一瞬ざわついたが、また店内は静かな歓談の場に戻る。そして俺がオリバーを担ぎ、シャーリーンがレストランの会計を済ませてそこを出た。


 通りには世界中の言語が飛び交い、ギラつく光と熱気が混ざり合っている。空気はどこか乾いていて、ほんのりとタバコと香水の香りが混ざった。高層ホテルのガラスに光る広告が映り込み、観光客たちはスマートフォンで撮影に夢中だった。その喧騒の中を、俺たちは妙な静けさを持って歩いて行く。

 

 俺の背中には、気を失った老人オリバーがいた。路地をホテルに向かって歩きながら、クキに聞く。


「なんで騒ぎになった?」


「その、おんぶしてる人。有名な弁護士だよ」


「それが何か問題があったか?」


 するとアビゲイルがバツ悪そうに言う。


「えっと。私は、その人から訴訟されているうちの一人です」


「どういうことだ?」


「その。私が大勢を殺したと……」


 すると、シャーリーンがそれに変わって言う。


「大きく言うと、その人はファーマー社を相手にして訴えているのです。御家柄は名家で、クレイトン家という由緒正しいお家です。過去にさかのぼれば、とても地位の高い人達が名前を連ねます」


「アビゲイルは、気づかなかったのか?」


 俺が聞くとアビゲイルが言った。


「はい。あのレストランまでは、誰だったか分かりませんでした」


「ずいぶん浮かれていたからな。この人は、何を訴えてるんだ?」


「ファーマー社の作っている薬品は違法で、沢山の死者を出しているから、即刻中止して会社をつぶすべきだと」


「間違っていない」


「ですが、世の中では半分、狂人扱いされています。デマを流す根源だと」


「デマじゃない」


「それは、私達が真実を知って居るからですよ」


「それはそうだが……。とりあえず、この人をどうしたらいいだろう?」


「泊っているホテルを突き止めないと」


 オオモリが言う。


「一回ホテルに行ってしらべますよ」


 俺達は急いでホテルに戻る。適当にフロントを誤魔化して入り、オリバーも連れて部屋に入った。


 そこで、ようやくエイブラハムが言う。


「あのー」


「どうした?」


「孫の疑惑を解きたいのじゃが」


「相当怒っていたぞ?」


「一度、話をしてみたいのじゃ」


「わかった」


 俺はシュッと、オリバーに気を入れて目覚めさせた。


「う、うう……」


 俺がオリバーに言う。


「飲み過ぎだ」


「わ、私は……」


 そして視界が少しずつ俺にあってくる。


「ら、ラッキーボーイ」


「そうだ。どうやら酔いつぶれたらしい」


「あ、そうだったか……何か。あれ?」


 そして次第に顔が赤くなってきた。


「わ、私は見たんだ。あの悪魔がいた」


 それにミオが優しく言う。


「あら。他人の空似じゃないかしら?」


「そうか……そうじゃったかもしれん。こんな所にいるわけがない」


「そうそう」


 そして、椅子に座らせて水を飲ませる。


「しかし……ラッキーボーイ! 痛快だったなあ!」


「だいぶ儲かったようだな?」


「あっ! レストランの支払いをしとらん!」


「いや。こっちで奢らせてくれ」


「誘ったのはこっちだぞ」


「いいからいいから」


 そしてその対面に、エイブラハムが座った。


「オリバー・クレイトンさんで良かったかのう?」


「そ、そうですが」


「エイブラハムと言います」


「どうも」


 そこでエイブラハムは落ち着いて話を始める。


「あんた。ファーマー社を相手取って戦っておるようじゃ」


「そう。治験被害者や戻って来なくなった人がおる。それに、あの美しき国である、日本が壊滅したのはアイツらのせいだ」


「その通り」


「わ、私の話を信じるのか?」


「それは、真実じゃからのう」


「そうか。信じてくれる人がいるのか」


 そう言ってオリバーは周りを見渡す。俺もクキもタケルも、うんうんと頷いて肯定してみせた。するとオリバーは少しずつ落ち着いてきたようだ。そして、エイブラハムが慎重に話をする。


「あんた。確かな証拠をもっておるのかな」


 するとオリバーは首を振る。


「確かな物的証拠はない。だが、確かに治験者に被害がでて、訴訟の依頼をもらっている。それも一人や二人じゃなく、大勢いるんだ。それにアイツらの薬で、人が多く死んでいるという事実がある。あんたらは知って居るか分からんが、日本はそれで消えたんだ」


 エイブラハムは深く頷いて答える。


「あんたの言っている事は、全部真実じゃよ」


「なぜ? 信じてくれる?」


「本当だからじゃ」


「?」


 また周りの俺達をみて、オリバーは落ち着き始めた。


「あんたら、被害者の家族かい?」


 皆が頷いた。俺以外は、すべてファーマー社の被害者だからだ。


「そうだったのか……」


 そしてエイブラハムが言う。


「よく、今まで殺されなかったのじゃ」


 すると血相を変えてオリバーが言う。


「いろいろと危ないことはあった。辛うじて毒を飲まずに、医療も自分の家の関連の医者を使った。私がこうして生きていられるのは、クレイトン家の保護によるものだ」


「凄い家柄じゃからのう」


「クレイトン家は、皆信じているが、狂人扱いされるのを恐れて黙っている。私だけが、声を大にして戦っているんだ」


「にしてもじゃ。ファーマー社はとても危険じゃよ」


「知っている。父も暗殺された」


「そうでしたか。それは申し訳ないことを聞いてしまった」


「いや。信じてもらえる人ならば、分かってもらえると思って言ったまで」


「信じておりますとも」


 そこで俺が聞いた。


「食事の管理も、きちんとして来たようだ」


「ん? ああ……。あいつらの会社の添加物が入っていたら、危なくてしかたないからな」


「そのとおりだ。あの会社の薬品はとんでもない」


「そうかい、ラッキーボーイ! 分ってくれるかい!」


「もちろんだ。それは真実だからな」


 そこでエイブラハムがクキに言う。


「どうじゃろう? 我々がこの人に協力するというのは?」


「それは皆で話し合いが必要だろう」


「うむ」


 そうして俺達は、オリバーに協力するかどうかを話し合うのだった。

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