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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第535話 ゾンビ試験体薬、エンハンサーX

 ファーマー社のゾンビ因子は死なない、だから人はゾンビになって動き続ける。人体に侵入した後に、遺伝子書き換え作用していく物質だ。それは俺も見ているし、アビゲイルも言っている。それは粉末にしたところで死ぬことはなく、人間の細胞と結合すればすぐに動きだす。


 俺のゾンビ因子除去施術か、ゾンビ破壊薬をもってしか死滅させることは出来ない。そんな危険極まりない、試験体ゾンビ因子に感染した人肉を粉末にし、体を増強する薬品と偽って流通させるとは思わなかった。ゾンビ因子と違って、試験体因子がどのように作用するのかは未知数過ぎた。


 だからこそ、早期発見して消さねばならない。


「ヒカルさん。前もって言っておきますが、これから進入する場所の人間は下っ端です。殺したところで、薬物が回っている先が分らなくなってしまいます」


「わかった」


 事は簡単では無かった。既に、街に出回っている以上は、広範囲に広がっている可能性がある。だから俺達は、その大元を見つけ、流通経路を叩かなくてはならなくなった。


「そして、あとから本物の警官を突入させますので、そこで私達は姿を消しましょう」


 それを聞いてタケルが言う。


「本当に警官が来るかねえ?」


「それは大森さんだよりです」


「ま、奴を信じるしかねえか」


 俺達は車を降りて、一気にギャングのアジトへと向かった。そこは大きな家で、中に数人がたむろしているのが分かる。


「とにかく。中にあるスマートフォンを全て回収する事を心掛けてください」


「「「了解」」」


 正面を避け、ぐるりと植え込みを回っていく。すると、家が良く見渡せる場所に出た。


「庭に二人」


「殺さなければいいんだな?」


「はい」


 俺は縮地で現れて、二人の意識を刈る。周辺を見ると、上に監視カメラがあり破壊した。

手振りで三人に合図をすると、物陰に隠れながらこちらにやってきた。


「んじゃ、こいつらのスマホをっと」


 そう言ってタケルが、ポケットからスマホを取りリュックに入れる。


「逃げられる前に、家の中の全員の意識を刈り取る」


「はい」


 俺はすぐに建物に入り、意識を辿って次々にギャングを眠らせていく。その後を追いかけて、タケルとミナミとクロサキが、次々にスマートフォンを回収して行った。


「ノートPCとタブレットも」


「ほい」


 俺達はクロサキに指示された電子機器も集めつつ、奥に行くとそこからゾンビ因子の気配がした。


「どうやら……薬を使ってしまった奴がいる。発症はしていないようだが」


 するとクロサキが言った。


「仕方ありません。万が一があるといけないので、それは殺害しましょう」


「わかった」


 俺がその部屋に入り込むと、中にいるガラの悪そうな奴らがこっちを見る。


「なんだてめえ」

「見張りはどうした?」

「こんなところに入って来やがって」


 そう言って立ち上がり、ナイフなんかを見せて来る。


 すると、やたら余裕ぶった、体の膨れ上がった男がにやりと笑う。


「丁度いい。俺の力を試してみるか」


 俺はすぐに日本刀を居合で振るった。


「屍人斬」


 ドサリ。ゾンビ因子ごと破壊され、そいつは行動を停止した。


「うお! なんだ!」

「銃を!」


 だが時すでに遅し。タケルとミナミが部屋の全員を行動停止にする。


 クロサキが驚いたように言う。


「こんな潜入捜査が楽な事はなかったです」


「そうかい?」


「ええ。武さんも南さんも凄い」


「こいつら、ただの人間だからな」


 そして俺が言う。


「車を追跡していたのは、こいつら四人だ」


 テーブルの上には、いろいろな錠剤や粉末が散乱していた。


「そこにあるのがゾンビ因子の薬だな」


「では、除去を」


「わかった」


 俺はすぐに、ゾンビ因子除去魔法を使って取り去った。


「ただの人肉の粉末になった」


「ありがとうございます」


「他の白い粉は何だ?」


 クロサキが軽く臭いを嗅いで言う。


「コカインですね」


「コカイン」


「麻薬です。法に反した薬です」


 すると外から、ウーウーとサイレンが鳴り響いて来た。


「おっ! 来たようだぜ」


「はやく、スマホとパソコンを」


 俺達は手早くそこにある電子機器をリュックに詰め込み、直ぐにその屋敷の裏手に周る。皆、身体能力が上がっているので、軽々と植え込みを越えて屋敷を出る事が出来た。


 そのまま隣の家の庭を通過し、次の塀も軽々と超えていく。


 そして何食わぬ顔で路地に出ると、次々にパトカーが走り去っていくのが見えた。


「あのギャングはコカインで摘発されます」


「試験体の薬の、裏までは辿り着かないという事か?」


「それは、これから、こちらでやっていくしかないかと」


「オオモリに見てもらうしかないな」


「監視はどうです? 私達を見張っている者は?」


「今は見られてない」


「ならば、分かりずらいところで皆と合流しましょう」


 そうして俺達は車には戻らず、路地裏を進んで立体駐車場に出た。そこに入り込み、階段を上がって屋上まで登ると、街が見渡せるところに出る。


 クロサキが、直ぐにスマホを取り出して連絡を取った。


「ここで、まちましょう」


 俺達四人は、駐車場の端から街を眺め待った。すると俺達のキャンピングカーが、立体駐車場に入っていくのが見える。しばらくして、ようやく俺達は仲間と合流する事が出来た。


 車に乗り込むとクキが言う。


「まさか、ゾンビ因子が薬になってるとはな」


「ああ」


「このままじゃ、日本の二の舞ね」


 俺達はリュックをおろし、オオモリの前にそれを置いた。オオモリはリュックの中を見て、スマホやパソコンを取り上げ始める。


「これがギャングの?」


「そうだ。俺達をつけていたギャングのアジトに行って、回収して来たんだ」


「わかりました。まずはGPSを解除します。九鬼さん、車を出してください」


「わかった」


 オオモリがひとつひとつの機械を操作しているうちに、キャンピングカーは料金を払って道路に出る。しばらく走って郊外に出ると、キャンピングカーだらけの駐車場を見つけた。


 ミオが言う。


「RVパーク、オートキャンプ場だって。ここはいいわね」


「いい隠れ蓑になりそうだ」


「木を隠すには森っていうしね」


 そこには大小さまざまなキャンピングカーがあり、俺達のような大型バスのようなのも停まっていた。

俺達はそこの一角に車を置く。


「GPSは解除出来ました」


「よし」


「これから、通話履歴やデータを調べます」


「頼む」


 そうしてオオモリが、ギャングたちの情報を洗いだした。


 それを見てオオモリが言う。


「試験体因子で作った薬は、エンハンサーXって読んでるみたいです」


 それを聞いてアビゲイルが乾いた笑いをする。


「はは……偶然でしょうか? エンハンサーとは遺伝子の転写量を増加させる作用をもつDNA領域のこと。エンハンサーXなんてまるで、中身を知ってるような名前です」


「どんな意味になりますかね?」


「そのものずばり。DNA強化といったところでしょうか?」


 それを聞いてクロサキが言う。


「という事は、この薬を作る上で、科学者が絡んでいる可能性もありますね」


「偶然でなければ。これが、どう作用するのかを知って居る人物がいるかもしれません」


 そしてまたオオモリが言う。


「連絡先から割り出した流通経路からすると、クラブなどにも流れてますね。それと……」


 そこでオオモリが口ごもる。


「なんだ?」


「信じられませんが……スポーツ選手にも。スポーツ選手のドーピングに使われてるんでしょうか?」


それを聞いて何人かが上を見る。タケルも残念そうに目頭を押さえ、ただ俯いてしまった。


「流れてるのはギャングだけじゃないか……」


 そしてまたオオモリが言う。


「これは、末端の売人のスマホのようですね。大した連絡先は無いようですが、薬を流したのギャングの名前は出てます。それは……ロズウェルにはいないようです」


「そうか……別なところで作られてるのか?」


「どうでしょう?」


 事態はかなり複雑になっているようだ。だがオオモリがホッとため息をつきながら言う。


「救いは。エンハンサーXが、異常に高額と言う事です」


「一般人は手が出ないか?」


「そうですね。それだけに厄介なのが、富裕層に出回ってしまっている可能性です」


 それを聞いてシャーリーンが言う。


「なるほど。異常性の出てきた著名人や、起業家などもいるかもしれないという事ですね?」


「そうなります。突然ゾンビになるかもしれませんよね」


「それは、こちらのルートからも調査しましょう」


「お願いします」


 事態は、どうやらかなり深刻な状況になっていたのだった。

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