第533話 試験体感染の人肉の行方
俺達が仲間達の元に戻る頃には、もう朝になっていた。だが既にシャーリーンが手配した、車と物資が到着していて、俺達はすぐにモーテルを出る。長居をすれば、おかしな集団がいると通報されて、直ぐに警察がやって来るだろうと言う読みだ。
そして俺達は何台目かのキャンピングカーを、スーパーの駐車場に停めて話していたのだった。
オオモリが、新しく手に入れたパソコンを見ながら言う。
「うわあ……」
「どうした」
「今までのファーマー社の研究所爆破について、事故だったという見解から、テロリストの仕業だと塗り替えられてますね。見てください」
映された動画には、空から取られた拡大映像で、目だし帽をかぶった俺とタケルが映し出されている。俺達がテロリストとされており、今までの事件を擦り付ける為の作戦に出たらしい。
それを見てクロサキが眉間にしわを寄せている。
「スケープゴートにされましたね」
「逆手に取って来たか」
だが、それにタケルはあっけらかんと言い放つ。
「別にいいんじゃね? 俺たちゃ日本人だし、もう消えた民族だ。どんなに調べたって出て来ねえ」
オオモリが大きく頷く。
「その通りです。それより、見てくださいよこれ!」
それはオオモリが作った、ゾンビ暴露チャンネルユウ&レイの画面だ。それを見て、皆が喜んでいる。
「大バズりですよ。もう五千万回突破。半日も経たずしてこれは凄いです。既に、データーがあちこち独り歩きして、SNSのあちこちに散らばってます。アメリカの会社だけじゃなく、いろんな国のプラットフォームにどんどん切り抜かれていってます」
「それは凄いのか?」
「それはもう。警察官やスワットの証言も出てますし、ニュースでもすっかりその話題でもちきりです」
それを聞いて、マナが手をひらひらさせた。
「でも、また情報操作されていくんでしょう?」
「させませんよ。でもこれで、大きく分かってくる事があります」
「なに?」
「これの火消しに国、政府、団体、個人に至るまで、躍起になって動くでしょうからね。何処に金が流れたか分かります。関与している奴らと、大きな金の流れがつかめるはずです」
クロサキが大きく頷く。
「ハッキングで追うという訳ですね」
「僕のAIウイルスが、じきに全部紐づけして引っ張って来ます。そのデータ解析用のプログラムをこれから作りますので、それにぶち込んでしまえば、ファーマー社や関連組織との繋がりが分かってきます」
「凄い……」
「例えば、国家でも関与している国としていない国、政府でも関与している政府としていない政府。というふうに、ハッキリして来ると思いますよ。火消しに走るには金をばら撒かないといけないですからね、会社や組織だけじゃなく個人にまで全てです。影響のあるインフルエンサーや著名人、タレントに至るまでだれが火消しするかでハッキリします。まあほとんどは真相を分からずに、本当にフェイクを信じて正義心でやるでしょうけど」
「騙されて、ファーマー社の片棒を担がされるという訳ですか」
「そうなりますね」
皆がオオモリの言葉に注目していた。
タケルがオオモリの背中をバンと叩いて言う。
「やっぱ、おまえすげえな! そこまで計算ずくで俺達を動かしたのかよ」
「別に、説明する必要はないと思いましたので」
「まあ……ねえな。やってみたから分かるけど、前もって言われても分からねえ」
「でしょ」
するとアビゲイルがキラキラした目で言う。
「ミスター大森は本当に素晴らしいのですよ。ミスター武。この頭脳は本当に宝です」
「お、おう……」
そして、それに対しクキが言う。
「で、それをネタに、大元や元締めを締めていくわけか。よくできてるな」
「はい。だから、今は泳がせましょう」
「まあ、それはおいおいか。それよりも、試験体のゾンビ因子を含んだ肉の行方だな」
「すみません。そっちはまだ捉えきれません」
「そりゃそうだ。あんな、得体のしれない殺人鬼のところを出荷された人肉なんて、普通に流通されるわけはないからな」
俺達はキャンピングカーの窓から外を見て、平和な人達の動きを見ていた。今のところ、俺の気配感知に試験体のゾンビ因子は見つかってない。という事は、こういう場所には流通していないという事だ。
シャーリーンが言う。
「普通のチェーン店には、出所の確かな食材が送られてきますから。それに加工されている段階で、ここで作られたものでは無い可能性が大きいです」
「その通りですね」
「何処に卸したか聞いておくべきだったか」
そしてクキが言う。
「車を移動させよう。いつまでもデカい車が止まっていると怪しい」
「そうですね。何処に移動させます?」
「黒崎さんはどう思う?」
「こういう時は、聞き込み調査ですけどね。地元の飲食や出入りしている精肉店、ギャングなども対象になるでしょう」
「だな」
そう。俺達は本来、次の目的地に進みたいのだが、試験体のゾンビ因子が流出した場所を探る必要があったのだ。その為に、まだロズウェルに足止めを食っている。
そこで俺が言う。
「オオモリはSNSやネットの情報を分析して、ギャングのアジトを調べられるか?」
「いやあ……流石にネットには出てないかも。でもある程度の情報は、フワリとつかめます」
「やってくれ」
「どうするんです?」
「痛い目めを見せれば喋るだろう」
「片っ端からギャングをとっちめるんですか?」
「そうだ」
するとクロサキが言う。
「それでは騒ぎが大きくなるので、聞き込みをしましょう。偽物の警察のふりをして」
「なるほどです。いいですよね九鬼さん?」
「そう言う事なら、黒崎さんの出番という訳だ」
それに俺が言う。
「なら俺が、クロサキの警護にあたる」
「お願いします」
オオモリが早速調べ始め、ギャングのアジトになりそうな所を地図でピックアップし始める。
そしてクキが言った。
「アビゲイル博士。万が一、調理した状態で試験体の因子を食べてしまった場合、吸収されるまでどれぐらいかかるものですか?」
「ゾンビ因子は、粉末にしたところで死にませんからね。ですが、直接血液に製剤を入れない場合、長くて二週間で発症。身体機能が低下している人なら、数日ででる症例もあるでしょうね」
「もう、出ている可能性もあるか」
「暴れ出した人とか、そう言う方向も探してもらった方が良いでしょう。ミスター大森」
そしてオオモリが言った。
「とりあえず。ギャングアのアジト周辺まで特定できました。数人の顔を見せます」
不鮮明ではあるがギャングの顔が見える。
そしてシャーリーンが装備を渡して来た。
「ヒカルさんはそのままのスーツで良いでしょうが、サングラスをかけて下さい。そして黒崎さんはスーツを着て眼鏡をかけましょう」
「わかりました」
そこでタケルが言った。
「んじゃ、俺はヤクの売人にでも接触してみっか」
「なら私も行くわ」
とミナミも手を挙げる。
そして俺達は、スーツに身を包んである場所で車を降りるのだった。これまでの長い戦いで、俺達のパーティーはすっかり役割分担が出来ているようだ。スムーズに各自の任務とやるべき事が分かり、独自の判断で動き出せるように迄なっていた。
クロサキの手元にあるスマートフォンには、ギャングの顔が移されており、そいつらを求めて歩きだすのだった。




