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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第526話 荒野の逃亡と戦い

 壊されたキャンピングカーを見て、俺達は逃亡方法を考える必要があった。ここから町までは荒野を歩かねばならず、その間に襲って来るファーマー社を撃退しなければならない。


「ここから歩くしかあるまい」


「皆もつかな」


 そこで俺が言う。


「回復魔法を使う」


「よし。そうと決まればすぐに行くぞ。道を逸れて行った方が敵も見つけ辛いはずだ」


 俺達は荒野に入った。だがここから町までは、普通の人間が歩いたら丸一日はかかるだろう。俺達が出発してしばらくすると、基地の方から車両が走って来る音がした。


「来たぜ」


「先に行け!」


「わかった」


 大勢がぞろぞろと荒野を先に進み、俺は振り返って土ぼこりをあげて走って来る戦闘車両を見た。あの研究所にはまだ生存者がいるかもしれず、追手が来ると言う事は、まだ証拠隠滅する意思はないのかもしれない。


 戦車と装甲車という奴か。


 自衛隊の、カブラギに教えてもらったような車両がぞろぞろと迫って来た。


 シュッ! 俺は荒野を走り、戦車の砲塔を掴んで並んで走る装甲車にぶつけた。ボグゥゥン! と爆発し、ひっくり返った戦車に、装甲車が押しつぶされる。するとこちらに向けて、戦車が砲塔を回転させてきた。


 次の瞬間、俺は上空百メートルにいた。地上では、ひっくり返った戦車に向かって仲間達が砲撃をして爆発させている。大きな土煙が上がり、俺はそのまま撃った戦車の上に降りて剣技を振り出す。


「冥王斬」


 ザンッ! 真っ二つに割れる戦車。飛び出ようとしたゾンビ化兵も屍人斬で殺す。そうしてもう一台に肉薄し、更に剣技を放つ。


「推撃!」


 どん! と吹き飛び、車両が転がる。中からぞろぞろと、ゾンビ化兵達が這い出て来たので直ぐに剣技で殺した。


 戦闘しているとヘリコプターの音が聞こえて来て、離れた仲間達の元へと飛んできているのが見えた。


「閃光孔鱗突!」


 遠くを飛ぶヘリコプターはローターを吹き飛ばし、地上へと落下していく。あっちの処理はタケルとクキとミナミがどうにかするだろう。俺はそのまま、荒野を走る数台の先頭車両に飛びついては破壊していった。すると基地の方から次々に砲弾が飛んで来る。煙を上げている車両のおかげで、砲撃地点の観測が出来たらしい。


 俺はまた百メートル上空に飛び、基地の方角にめがけて剣技を放った。


「空接瞬斬!」


 次々に基地の砲台を斬り捨てて行く。地面に着地したところで、装甲車から這い出たゾンビ化兵達が俺に機銃を掃射して来た。すぐに並んでいるゾンビ化兵の端から端に走り抜けて、全ての首を斬り飛ばす。一掃して気配が消えたところで、俺は一気に仲間達のところへと戻ってきた。こちらではどうやら、ゾンビ化兵の攻撃で足止めをくらっている。生存者達は地面に伏せており、岩に隠れ仲間達が守っていた。


 タケルとクキとミナミが暴れているが、腕を斬り落としたり潰したりしても動くやつらだった。


「伏せろ!」


 俺が言うと戦っている三人が伏せる。


「屍人、飛空円斬!」


 ザシュッ!


 見える範囲のゾンビ化兵は崩れ落ちた。


「助かったぜ! 普通の兵士じゃねえ」


「数が増えて来たな」


「とにかく、敵の追撃が来る前に進もう!」


 そうして俺達は生存者を連れて、また街の方角へと移動し始める。一時間も歩いていると、水分の欠乏でフラフラする治験者が出てきた。


「まずは休むぞ!」


 俺は消耗して弱っている人間から、回復魔法をかけ始めた。何とか体力を持ち直して、動けるようにまでする。そして俺が言った。


「敵の車両を強奪するか?」


 だがクキが首を振る。


「だめだ。発信機が取り付けてあるから、位置がバレてしまう」


 それに生存者の一人が言った。


「こっから東に行けばいいんじゃないのか?」


「街は南だが?」


「いったん、どこかに身を隠したらいい」


 だが見渡す限りの荒野、丘陵地帯はあるもののそこまでも遠い。それまでに奴らの襲撃を受ける事になるだろう。


「まずはここに固まるのはダメだ。先に進もう」


 皆が重い腰を上げて、ずるずると足を引きずるように歩きだした。タケルやクキや俺が、子供や衰弱した人間を背負って進む。


 そしてそれから一時間ほどしたころだった。オオモリが指をさして言う。


「あれ、蜃気楼ですかね?」


 俺がそっちに目を向けると、どうやら建物があるようだった。


「建物があるな」


「どうします?」


「敵の施設と言う事はねえか?」


「どうだろう……」


 だが、かなり疲弊している治験者の女が言った。


「水を……水が飲みたい」


「仕方ない。あそこに行って見よう」


 そうして俺達は、建物のある方角に歩き始めるのだった。三十分も歩くと、あばら屋のような建物が数棟立っているところに辿り着く。土ぼこりが上がっており、窓ガラスが汚れて中が見えない。だが俺の気配感知には、数名の人間の気配があった。


「人がいる」


「敵か?」


「わからん。だが、ゾンビ化兵ではない。普通の人間らだ」


「接触してみよう」


「じゃあ私も一緒に」


 そして俺とミオの二人だけで、人がいる建物に近づいて行った。中にいる連中は、まだ俺達の存在には気が付いていないらしく、中で話でもしているようだった。


 ミオがドアを開けて言う。


「すみません。誰かいますか?」


 すると中の気配が固まる。直ぐには出て来ずに、しばらくすると訝し気な顔をした中年の女が出てきた。


「なんだい……あんたら」


 そこでミオは嘘をつく。


「車が故障して歩いて来たの。連絡手段が無いかと思って、それに少しの水を分けて欲しいかしら」


 すると怪しそうな目つきで俺達をジロジロと睨む。


「車が故障……ねえ」


「ええ。助けてもらえたら嬉しいわ」


 すると女の目に怪しい光が灯る。突然にこにこ笑いながら、明るく言った。


「まあ、入りな!」


 そこでミオは更にニッコリと笑って、大声でクキに聞こえるように言う。


「いいって! みんなこっちに着て!」


 俺達の仲間と、治験者たちが大勢立っているのを見てあっけに取られている。


「あんなにいたのかい!」


「あ。バスが壊れたの」


「聞いてないよ!」


「とにかく休ませてもらおう」


 俺は強引に女を押して、玄関を開け仲間と治験者を日陰に入れるのだった。すると奥から声がする。


「おい! なんだ! なにやってやがる!」


「あ、あんたぁ……」


 中から男が出て来て、大人数を見てあっけに取られていた。とりあえず治験者たちを床に座らせ、今度はシャーリーンが女に尋ねる。


「爆発音は聞こえませんでした?」


「ああ……それなら、また施設で実験でもしてるんだろうさ」


「施設の存在は知ってると?」


「な、何をやっているのかは知らないさ!」


「そうですか」


 そうして、助けた治験者の女が言う。


「水を……水を下さらないかしら」


「ふん! 仕方ないねえ!」


 そう言って中年の女が水を持ってくるが、それは茶色く濁っていた。


「えっ……」


「これしかないよ」


 女も流石にそれを飲むことはせずにいた。


 そしてオオモリが俺に言う。


「ここスマホが通じません。車両と一緒に衛星通信の機器も壊されましたし」


「なるほど。どうするか?」


 その話を聞いてシャーリーンがもう一度、中年の女に聞いた。


「電話を貸していただけないかしら」


「そんなものは無いよ」


「そうですか……」


 微妙な空気が流れる中で、アビゲイルが言う。


「とりあえず夜まで待てばいいのです。日が落ちれば気温も下がるし、皆の体力ももちます」


「そうしますか」


 そうしてクキが言う。


「悪いが夜まで居させてもらいたい」


 すると今度は主らしい男が言った。


「いいんじゃないか。なあ……」


「わかったよ」


 そうして俺達は何とかその場で日が沈むのを待つことにするのだった。

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