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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第509話 米軍と市民の小競り合い

 俺達は兵士を人質に取りつつ、軍隊と報道がいる場所へと近づく。報道陣がバリケードを超えようとし、軍人がそれを押さえつけていた。


「勝手に入るな!」


「報道の自由を邪魔している!」


「あれらはテロリストだ!」


「ノーベル賞の博士がテロリスト? 軍は何を言っているんだ?」


「とにかく入るな!」


 押し問答を続けているが、そのうちに多くの市民が集まり始めた。あっという間に通りが塞がり、軍人たちもそれを止められず、勢いに押されているようだった。


 そこでアビゲイルが大声で叫ぶ。


「皆さん! SNS見ましたか! ニューオーリンズは米軍の爆撃を受けて壊滅しました!」


 実際は俺が防いだから、爆撃はほとんど受けていない。アビゲイルもそれを知ったうえで、ワザと嘘を言っているのだった。だが報道陣や市民がそれを聞き、一気に場が騒然とし始めた。


「見た!」

「市民が逃げていた!」

「軍が自国を爆撃するのか!」


 市民が一斉に軍隊を押し始めた。既にバリケードは意味を成しておらず、報道の人も市民の勢いと共に押し寄せて来る。


「タケル。アビゲイルを守れ」


「ほい」


 タケルがアビゲイルの護衛について、俺は人質にしてる兵隊を掴んで市民の方に投げ込んだ。俺達の前では市民や報道や軍隊が入り乱れ、タケルがアビゲイルを連れて装甲車の方に後ずさる。暴動になろうかというその瞬間。


 ガガガガガガガガ!


 銃声が鳴った。兵士の一人が上に向かって銃を撃ったらしい。それを聞いて報道も市民も、一気に地面に伏せてしまった。立っているのは俺とタケルとアビゲイルだけとなる。


「金剛、結界」


 シュッ! と後ろに下がり、装甲車に二人を押し込んだ。天井に縛り付けていた兵士達は救出されたらしく、居なくなっている。軍人たちは、一斉に俺に向かって銃を構えた。


「抵抗をやめろ!」


 別にもう抵抗はしていないが、軍人たちはピリピリとして俺を睨む。そこでようやく報道の人間が立ち上がって言った。


「彼は杖を一本持っているだけだ! 囲んで銃を向けるのはおかしい!」


 だが、俺達と一緒に来た兵士が叫んだ!


「いや! あいつはバケモノだ! 気を許してはいけない!」


「何処がだ! いい身なりをしているからか? 何処がバケモノなんだ!」


「あれは、ターミネーターなんだ!」


 その言葉に、報道と市民が一斉にざわつく。


「何を馬鹿な事を言っているんだ!」

「そんな戯言を言うのか!」

「薬でもやってるんじゃないのか!」


「本当だ。装甲車を持ち上げたんだ!」


 緊迫しているはずなのに、くすくすと変な笑いが広がった。


 すると上のハッチから、アビゲイルが顔を出して大声で言った。


「そうです! おかしいのです! その兵士達がどうかしています!」


 タケルがアビゲイルを引っ張り込む。


「博士。あぶねえって!」


「しかし!」


「まずはいいから!」


 すると再び、報道陣と軍人たちが言い争いを始めた。俺は密かに仕込み杖でコンクリートを削り、一瞬かがんでそれを手に掴む。


「思考加速」


 辺りが極端にゆっくりに見えて、ハエの羽ばたきすらも遅かった。俺は次々に、砕いた石を親指で弾き飛ばし始める。その石は、銃を持つ軍人の手に当たり骨を砕いた。視界に入る奴らの手を全て砕き、俺は何食わぬ顔で杖を掴んで真っすぐに立つ。


「ぐあ!」「ぎゃあ!」「うが!」「があ!」「うぐ!」


 手を砕かれた兵士達が、手を掴んでしゃがみ込む。その様子に報道や市民は気づいていないが、軍人たちは異変に気が付いたようだった。


「アイツが何かしたぞ!」


 うずくまる兵士達を見て、一緒に来た兵士が叫んだ。


 だが俺は涼しい顔で叫ぶ。


「見ての通りだ! 俺はここに立っているだけ! 軍隊は何らかの薬でもやっているのだろう。俺はここに立っていて、銃を向けられているだけ! どちらが、おかしい事を言っているか分かるはずだ!」


 多分これでいいはずだ。すると報道の奴が言う。


「言うとおりだ。彼はずっとあそこに立っているだけだ! 変な難癖をつけているのは軍だ」


 一気に市民達も活気づいて来て、軍人たちに詰め寄っていく。


「ニューオーリンズの映像は見たぞ! 壊滅状態だった!」

「ゾンビみたいなのが映っていた! あれはいったいなんだ!」

「隠蔽だ! 軍は隠蔽しているんだ!」


 市民達が騒ぎ出し、軍が押され始める。すると再び、ハッチの上からアビゲイルが出て来た。


「そうです! その事についてお話がしたい! マスコミの方! ぜひ話を聞いてください」


 だが、またタケルがアビゲイルを引っ張り込む。


「だからあぶねえって! 軍だけじゃなく、ファーマー社も狙ってる可能性があるから!」


 タケルの言うとおりだった。ここまで騒ぎが大きくなれば、間違いなくファーマー社も嗅ぎつけている。どこでどう狙っているかは分からないが、明らかにこの場所は危険だ。


 だが……集まった市民達を逃がす術がない。


 軍人が言う。


「な、ならば! 我々が君らを保護をする! それならいいだろう!」


「軍は信用ならない! 俺の仲間を拉致監禁した!」


 言い争いの時間が、だらだらと経過した。しかし俺の気配感知に、狙撃の気配が伝わって来る。


 直ぐに、居合で剣技を放った。


「突光閃!」


 次の瞬間、その気配が死んだ。銃の除き穴から入って、脳天を後ろまで貫いたからだ。


 そして俺はタケルに言う。


「ファーマー社のお出ましだ。絶対に博士を外に出すな」


「了解」


 アビゲイルも馬鹿じゃない。どういう事が起きているのかは理解しているだろう。


 すると突然。ボシュッボシュボシュ! 音がなり、軍人や市民のいるところに煙が立ち込め始める。


 そこでアメリカ兵が言う。


「催涙弾だ!」


 軍人が動きだし、市民や報道の人間が煙に巻き込まれていく。


 報道の人間が叫んだ。


「軍はこんなことをするのか!」

「逃げろ!」


 集まっていた報道陣や、市民達も煙から逃れるようによろけながらも逃げ出す。そして空を飛んでいる民間のヘリコプターが、突如として爆発し始めた。


「攻撃だ! 軍が攻撃を始めた!」


 それで一斉にパニックになり、市民達は大急ぎで逃げ惑い始めるのだった。

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