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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第505話 速やかに基地に潜入する方法

 未だに軍関係車の往来はあるが、食べ終わったレストランにいつまでも居座るわけにいかない。会計を済ませて店を出ようとすると、店員の女から声をかけられる。


「サイレン鳴ってるし軍関係の車しか通らないから、道路が閉鎖されてるかもしれないよ」


「よくあることなのか?」


「ほとんどないけど、基地で何かがあった時は、この通りは閉鎖されるからさ」


 旅行者のふりをしているので、タケルが女に尋ねる。


「車を拾うんなら、どっちに行けばいい?」


「車拾うなら南の四〇一号に行けばいいよ。反対は基地になるから行っても仕方ない」


「サンキュ。美味かったぜ」


「いい旅を」


 そうして俺達は店を出る。駐車場にも車はいるが、何人かが様子を見に表に出ているようだ。けたたましいサイレンを聞いて、何事かと思っているのだろう。


「騒ぎになってんな。ヒカル」


「剛龍爆雷斬は、ちょっとやりすぎたかもしれん」


「なんで、あの技にしたんだ?」


「クキ達が囚われているのなら、ツバサが必ず気が付く。技の音を聞いて行動を起こすかもしれん」


 タケルが苦笑いして言う。


「その可能性は高いぜ。騒ぎに乗じて何かするだろうな」


「だとすれば、そろそろ頃合いだろう?」


 俺達が道沿いを歩いていると、向こうから車がやって来る。


「ありゃ、パトか?」


「パト? 警察か?」


「よく見りゃあれはMP、軍の警察だな。壁に穴を開けたし、きっと怪しい奴を探してるんだろ」


「……なら俺達は、充分怪しいだろう?」


「だなあ」


「ならタケルも怪しそうな顔をしておけ」


「そいつはいいや。ヒカルいいアイデアだぜ」


 俺達はその車が近づいて来た時に、サッと反対側を向いて歩きだす。


 プワッ!


 とサイレンが鳴り、その車がとんぼ返りでこっちに回って来た。


「そこの二人、止まりなさい」


 俺達はしらばっくれたふりをして、そのまま歩いて行く。


「聞こえないのか? 止まれ! スーツとTシャツの二人!」


 とりあえずそれを聞いても、俺達は速足で歩いてみる。すると数台が来て、ぐるりと周りこむように前を塞がれた。俺達は立ち止まり、不遜な態度で車を睨みつける。


 すると中から、屈強な男達が何人も降りて来て言う。


「手を挙げろ!」


 俺達は言われるように手を挙げた。


「そのままこっちへこい!」


 俺達が行くと、そいつらが一斉に近づいて来て体を押さえつけた。


「車に手を着け!」


 一人の男が俺に言う。


「これは杖か?」


「そうだ。足が悪いからな」


「そっちの男のリュックには何が入っている?」


 タケルが答える。


「見たらいいだろ。大したものは入ってねえ」


 そうしてMPがリュックを取り上げ、中を開いてみる。


「こりゃなんだ?」


 モーニングスターを見てMPが驚き、タケルがさらりと答えた。


「旅行中は物騒だから、護身用に持ってるんだよ」


「こんな物騒な物をか?」


「だって、アメリカはいろいろとあぶねえだろ」


 次にいくつかの札束を取り出して言う。


「この大金はなんだ?」


「旅行にゃあ金は必要だろ! おろして来たんだよ!」


「持ち歩いてるのか?」


「現金主義なんだよ」


「じゃあ…これは?」


 ゾンビ破壊薬の薬瓶を持って言う。


「除菌剤だよ。何か食う時とか除菌するだろ。蓋開けて臭って見ろよ」


 するとMPは言われた通りにする。他の奴を見て言った。


「確かに除菌剤のような匂いはする」


 だが次の瞬間、タケルの身体検査をしている奴が言った。


「この銃は?」


 腰に挿していた拳銃を取り上げられ、タケルが答える。


「物騒な国だろ。護身用だよ」


「まて、お前外国人だな。携帯許可を取ってるのか?」


「んなもん知らねえよ」


 そして他の奴が聞いて来た。


「お前アジア人だな」


「悪いかよ」


 すると、すぐに肩から無線を外して言う。


「旅行中のアジア人が拳銃と鉄の棍棒を携帯しています」


「確認しますお待ち下さい」


 そうして俺達は車に手を着いたまま、その後の返事を待つ。すると無線の向こうから声が聞こえた。


「他に武器は持っていますか? 起爆装置やドリル、手榴弾などは?」


「もっていません。ただ拳銃の許可はされていない物と思われます」


「確認します」


 なんだ。さっさと捕えればいいのに、何か手続きに手間取っているようだ。だが無線の向こうから来た返事は、俺達の期待する物とは違った。


「拘束を解いてください。我々が追っている者ではないかと思われます。警察に任せて良いかと」


「了解」


 そしてMPは俺達を離す。だが俺とタケルは目配せをして、焦りつつどうするかを考えた。


「行っていいぞ」


 ここで逃がされては、俺達が基地を探るのに手間がかかりそうだった。


 何故か次の瞬間、俺達は同時に、近くにいたMPを軽くなでるように殴る。


「ぐえ!」

「うが!」


 そいつらは軽く吹っ飛び、周りが一瞬唖然とした。そしてタケルが啖呵をきる。


「勝手に人の尻を探っておいて、なんだその態度は!」


 すると次の瞬間、周りの奴らが一斉に銃を向けて来た。


「手を挙げろ!」


 俺達二人は素直に手を挙げる。


「な、お前達……何がしたいんだ」


「は? 気に入らねえからぶん殴っただけだ」


 すると転がってる奴が起きて来て、タケルと俺をグイっと道路にねじ伏せた。


「貴様。優しくしていればつけあがりやがって!」


「連行しろ!」


 武器を取り上げられ、俺達は無事に捕らえられた。金網に囲まれた後部座席で、後ろ手に手錠をかけられて座り、俺達がおとなしくしている。


 前に乗っている奴が言った。


「クソやろー。なんで殴った」


「ムカついたからだよ」


「大人しくしてればよかったんだ」


「うるせえよ」


 他の車列と別れ、俺達の車だけが基地の方に向かった。そこでタケルがMPに聞く。


「ずいぶん騒がしいじゃねえか、いったい何をそんなに騒いでんだ?」


「お前達には関係ない。手間をかけさせやがって」


「そっちが声かけて来たんだろ」


「お前達が怪しかったからだ」


「そうかそうか。やっぱりオーラは隠せねえか」


「黙ってろ」


 そうして車は、基地へ入るゲートをくぐる。


「この二人は?」


「連行してきた」


「怪しいのか?」


「いや。俺を殴ったからだ」


「チンピラか」


「頭を冷やさせてやる」


「やりすぎるなよ」


 なるほど、これは逮捕ではなく、基地の中で懲らしめようと思っているようだ。一番いい形で、俺達は基地に入り込めたらしい。


 基地の陰に車を停め、運転している奴が言う。


「ここらでいいか?」


「ああ」


 そうして、後部座席のドアを開けて言う。


「降りろ! 分らせてやる!」


 俺達は黙って従い、後ろに手錠をかけたまま降りる。


「そこに立て」


「へいへい」


 俺とタケルが直立で立つ。すると男は唐突にタケルを殴った。だがタケルはびくともせずに、頬でそのパンチを受け止めていた。


「グッ」


「どうした?」


「こいつ……なんか変だぞ」


 するともう一人がタケルの腹を殴る。


「うあ!」


 そいつは手を擦って唖然としていた。タケルが言う。


「なんかしたか? そんなへなちょこパンチじゃ聞かねえぞ」


「この!」


 どかどかとタケルを殴る蹴るし始めたが、タケルは平然とそれらを受けきっていた。だが、一方的に殴られているタケルを見ているうちに、俺が腹立って来た。


 ドカ!


 ビュン!


 男が十メートルほど吹き飛び、もう一人の奴があっけに取られていた。


「なっ……」


 俺はブツンと、手錠をひきちぎり男の頬を軽くたたく。


 バアアン! 吹き飛んで大人しくなった。


「し、死ぬんじゃねえか?」


 タケルがびっくりしている。


「いや。タケルが好き勝手殴られてるのを見て腹が立った」


「俺は、なんてことねえぜ」


「気分の問題だ」


「まあいいか。俺達の荷物はトランクに積んでたぜ」


「よし」

 

 俺は車に行って、ハッチの下に手をかけ引きちぎる。中にリュックと仕込み杖が積んであった。


「簡単に潜入出来ちまったな」


「だが、かなり人がいて、何処に仲間がいるか気配感知でも見つけ辛い」


「奥に入るしかねえな」


「行こう」


 転がっている二人は死んではいないが、しばらく目を覚まさないだろう。とりあえず車のところに運び、後部ハッチに放り込んだ。


 基地内には沢山の建物が建っていて、何処にいるかは皆目見当がつかない。


「まるで町だな」


「しらみつぶしに行くか」


 俺達はまず、背の高いビルを目指して行く。


「敷地内にも店とかがあるんだな」


「なら、屋根伝いに行くぞ」


 俺はタケルを掴んで、一気に近くの建物の屋根に飛び乗る。そのまま真っすぐにビルに向かって走ると、あたりを警戒するように、軍人たちがうろついているようだった。


「眠らせた奴らを見つけるだろうな」


「ああ、そのうち騒ぎになるだろう」


 目的の建物について、タケルが言う。


「マジか。こりゃショッピングモールだった」


「こんな所にはいないな、もっと先に進むぞ」


 俺とタケルは屋根から飛び降り、建物を縫って先に行く。兵隊に見つからぬように広い場所に出た。


 すると唐突にサイレンが鳴り始める。


「なんだ?」


「タケル。向こうで騒ぎが起きている、暴動か…何か争いが起きてるな」


 俺とタケルは顔を見合わせニヤリと笑った。そしてタケルが言う。


「んじゃ、彼らが逃げられるように俺達が派手にやるか」


「そうだな」


 俺達は地上を走り、止まっている軍用車両を見つける。


「タケル? コイツの燃料タンクはどのあたりだ?」


「あー、ここだ」


「離れていろ」


「あいよ」


「炎龍鬼斬!」


 バシュッ! ボゴン!


 車が爆発する。


「おー! いいねえl」


 タケルは目の前にある、RV車を思い切り蹴飛ばした。音を立てて、車は壁にぶつかり大破する。


「俺もそうしてみよう」


 近くにある装甲車を思いっきり蹴り上げ、建物の向こうに放物線を描いて飛んで行ってしまった。


「やっぱ、ヒカルには敵わねえな」


「タケル。なんか知らんがスッキリする」


「だろ! 蹴れ蹴れ!」


 そうして俺達が次々に車を蹴飛ばしていると、こちらに向かう軍人の気配がしてきた。


 俺は直ぐにタケルを掴み、急速に離れて建物の屋根に飛び乗った。俺達が暴れたところを見ていると、次々に兵隊が現れあたりを警戒し始めている。


 そしてタケルが言った。


「んじゃ、他をぶっ壊しに行こうぜ」


「いいだろう」


 俺達は次に破壊する場所を探して、巨大な基地内を走り始めるのだった。

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