第500話 避難した市民を軍艦に乗せる
ここにいる大勢の人らは、どうやら都市部から逃げてきた人達だった。湾岸に逃げてきたはいいが、これ以上進むことができずに、ここで足止めされているらしい。
俺とタケルが、その先へ進むとギャングスターのフランキー一派が居た。
「おう! あんたら! もう仕事は終わったのかい!」
「どうにかな」
「すげえ爆発音が聞こえたが、あれはあんたらの仕業かい?」
「違う。あれはこのゾンビ騒ぎを起こしている連中の仕業だ」
「くそ野郎達のかい。とにかく無事で何よりだぜ」
「船が無いのか?」
「ああ。もう逃げた後らしくてな、ここら辺には船はねえようだ。だけど戻れば空爆の餌食になるかもしれねえってんで、どうするかを市民達と相談していたのさ」
そして、フランキーが海を指さして言う。
「なあ、あの遠くに浮かんでるのは軍艦だよな」
そこでタケルが言う。
「軍が海を閉鎖して検閲しているらしいぜ」
「なんだって、軍は助けに来ねえんだ?」
それには俺が答えた。
「恐らくはゾンビの流出を抑えるためだ。ここで食い止めて外に出さないようにしている」
「あんたらの力で呼べねえのかい?」
そこでタケルが言う。
「俺たちゃ米軍じゃねえからな。ゾンビ対策の為に海外から来たんだ」
「そうか……。だけどこのままじゃ、いずれここまでゾンビが来てしまうんじゃねえか」
「いや。ゾンビは来ない。そのようにやっている」
「じゃあ、ゾンビが収まるまで、ここで待つしかねえって事か?」
「そうなるかもしれん」
「まったく、市民は見殺しかよ。あんなところで俺達を見張りやがって」
そこで俺が言う。
「あの船をここまで引っ張って来ればいいんだな? ちょっと待っていろ」
フランキーがポカンとした顔で言う。
「どうやって? あんたら米軍じゃねえんだろう?」
「そうだ」
フランキーとギャングたちどころか、市民達もざわざわしている。
「とにかくあれを引っ張って来るから待っていろ」
タケルが言う。
「また泳ぐのか?」
「ああ。タケルはここで待っててくれ」
「あいよ」
俺はそのまま海に走り、ダッっとジャンプして軍艦の浮いている方角へと飛んだ。だが飛距離が足りなくて、そのまま海に落ちる。水中を一気に泳いで、軍艦の底に辿り着いた。
二つのスクリューが回って船が動くらしい。今は止まっており、湾岸を監視しているようだった。
よし。
俺は船の船尾を押さえ一気にバタ足で泳ぎだした。すると船が動き出し、そのまま岸辺に向かって進んでいく。突然スクリューに動力が入ったが、それが回ってもかまわずに泳いで押した。
ガッガガーン!
どうやら軍艦は陸地に激突したようだ。一旦水中にもぐり上空に飛んで、タケルがいる場所へと戻った。市民達はやって来た軍艦に走り寄っている。
「押して来た」
フランキーとギャングは、目が飛び出さんほど目を見開いて俺を見ている。
「「「「「おっ、押して来たぁぁぁぁぁぁ?」」」」
「ああ」
そしてタケルが言う。
「だけどアイツら銃を持ちだして、市民に向けて構えてるぜ」
振り向けば米軍が銃を構え、船べりからこちらを見下ろしている。
するとフランキーが怒った顔で言う。
「同じ国民に銃を向けるのか! 奴ら何を考えてるんだ」
「それもゾンビを防ぐ為だろう。だがちょっとまっていろ、軍艦の奴らを静かにさせればいいだけだ」
「静かにさせればいいだけ……って、銃を構えられてるんだぜ」
「問題ない。お前達はちょっと市民を避難させててくれ。タケル、よろしく頼む」
「そうしとくか」
俺が身をたわめ一気に軍艦の上空に飛んだ。そのまま甲板に落下し、縮地で銃を構えている軍人達に接近する。
この人らも、正義の為にやっているんだったな。
俺は片っ端から、仕込み杖で殴り意識を刈り取っていく。すると次々に船の中から、銃を構えた軍人が出て来た。瞬間的にそれらに接近し、更に意識を刈り取り続ける。それをしばらくやっていると、甲板は倒れた軍人だらけになってしまった。
俺が縁から顔をのぞかせると、タケルが俺に言った。
「ヒカル! ハシゴ降ろしてくれ!」
「わかった」
周りを見るとそれらしいものがあったので、降ろそうと思ったが機械で操るようだった。仕方がないので、力で捻じ曲げてその階段を外に出してやる。
「どうだ?」
「あがれそうだ! 皆! 登れ!」
すると市民達がぞろぞろと階段を登って来る。俺は次々に中から出て来る軍人の意識をかりまくり、市民達が甲板に寝ている軍人を変な顔で見ていた。
そして、ようやくフランキー達ギャングが乗り込んで来た。タケルも一緒に来てフランキーに言う。
「あー、軍人達の銃を奪ってくれ! 変に死人とかを出したくない」
「わかったぜ。おい! お前ら銃を奪え」
「「「「「「「「「へい!」」」」」」」」」」
するとギャングだけじゃなく、一般市民も協力して倒れた軍人から銃を奪い取った。中には目を覚ました軍人も居たが、銃を突き付けられて手を挙げている。そいつも銃を奪われ、数百人の市民達は船を占拠する事に成功した。
ドアの中から銃を構えている奴がいたので、俺が直ぐに制圧する。ドアのところで振り向いて、タケルに言った。
「まだ中に二百人以上乗っているようだ。ちょっと静かにさせて来るから、むやみに中に入らないように市民に言ってくれ」
「あいよ」
タケルがフランキーに言う。
「聞いた通りだ。ちょっと軍人を大人しくさせてくるってよ」
「海兵隊だぞ? こりゃどうなってんだ?」
「アメリカの海兵隊全員集めても、ヒカルにゃ絶対敵わねえよ。今は市民達の生き残りが最優先だ」
「は、はは…あんたら、何処の特殊部隊なんだい?」
「おれたちゃ、世界を守り隊だよ」
「わけわからねえ」
俺は軍艦の中に潜り、次々に武装している軍人達を無力化していく。だがどうやら艦橋のドアが締められ、進入されないようにしているらしい。俺はその取っ手に手をかけて、鉄の扉を曲げて中に入る。
パンパンパン!
中から撃って来たが、もちろん金剛と結界で何もならない。
「貴様は何者だ! 何処から来た!」
「あー、市民を助けてくれ。ゾンビになっている人はいない」
「市民を?」
「そうだ。既に甲板にはアメリカ市民が乗り込んでいる。彼らを安全な場所へ連れて行け」
「だめだ。ゾンビはここで食い止めねばならん!」
「繰り返して言うが、ゾンビになっている奴は居ない」
「信じられるか! 乗ってしまったのなら仕方がない、俺達もここで隔離されるしかない」
「それは上からの指示か」
「テロリストには関係ない」
「なんだそれは?」
話をしていても埒が明かないようだった。俺は艦橋にいる人間を一瞬で制圧し、市民とギャングたちに船の中へ入るように言うのだった。




