第498話 大量救助と破壊された施設
ギャングと生存者を引き連れてセーフティーゾーンを抜ける時、俺とタケルが技でゾンビを倒すのを見て、ギャングと生存者達が目と口を大きく開けて驚いていた。
フランキーが言う。
「な、なんだ? それは特殊部隊の武器か!」
「そうだ」
「米軍はそんなものまで開発してんのか……」
「そうだ」
なるほど、俺達の技を適当に解釈してくれているようだ。アメリカ国民は非常に自由な発想をするらしい。なので俺とタケルは気兼ねなく、ゾンビを倒す事が出来ていた。
「そ、そいつは俺達でも使えるのかい?」
ギャングスターのフランキーは、俺達の力にとても興味深々のようだ。だがもちろん、普通の人が使えばなんの変哲もない日本刀とモーニングスターである。
タケルが言う。
「残念ながら、特殊な訓練を積んだ人間にしか使えない武器なんだ」
「か、貸してみてくれ」
タケルがフランキーにモーニングスターを渡す。
フランキーがダッ! と走っていってゾンビに振るうが肩に当たり、逆に捕まえられそうになる。直ぐにタケルが行って、ゾンビを蹴飛ばすと物凄い勢いで吹っ飛んで行った。
「だろ? 訓練しなきゃダメなんだよ」
「わっ! わかった! そのようだ!」
「んじゃ、行くぞ」
「あんたらはまるで、マー〇ルに出て来るヒーローみてえだ」
周りのギャングたちもうんうんと頷いている。ギャングと言うからには、ハイチで会った奴らのような者達かと思っていたが、まるで子供のように武器について話している。
「とにかく。バスかトラックを調達するんだ」
「わかった! おい! てめえら! バスかトラックを見つけたら俺に教えろ!」
「トラックが、ありました!」
「よし!」
確かに強運だ。必要となったらすぐに見つかるとは、ギャングスターの言ってる事はまんざら嘘じゃないらしい。そこでタケルが言う。
「でも動くかどうか…」
「エンジンかかりました!」
フランキーは当たり前のように思っているらしい。
「で、どうする?」
「皆を乗せて、外洋に繋がる場所まで行くんだ。俺達は最初にゾンビが始まったラフィートで降りる。そこまでは俺達がバイクで先導するから、そっから先は、その銃で皆を守りながら進め」
「聞いたか!」
「「「「「へい!」」」」」
大きなコンテナに繋がったトラックは、渋滞に巻き込まれて停まっており運転席には誰もいなかった。後ろのハッチを開くと、中には段ボールに入った飲料が積み込まれていた。
そしてタケルが言う。
「マジで強運だ。とにかく全員乗り込むんだ! 銃を持った奴らは天井に乗ってゾンビ対策だぞ」
「「「「「へい」」」」」
「飲み物は皆で平等に分けるんだ。こういう時はお互い様だからな」
「「「「「へい」」」」」
俺がフランキーに尋ねる。
「手下は随分素直だな」
「あいつらは俺が認めた相手なら言う事を聞くんだ。俺は、相手が信用出来るか出来ないかが分かっちまうんだよ。だから、アイツらも素直に従ってるって訳さ。俺らは、そうやって生き延びて来たんだ」
「ならその運を、生き延びる為に使え。このまま海まで抜ければ助かる。怖いのは空爆だ」
「分かったよ」
そして俺はトラックの道を開ける為、前方に出て剣技を振るう。
「推撃!」
車が吹き飛んで、進行方向の障害物が消えた。俺達のバイクが進むと、トラックもそろりそろりと動き出してついて来る。推撃で車を飛ばしながら都市を抜けると、車の数が減りより進みやすくなる。すると突然、横道から車が走ってきてクラクションを鳴らした。
俺達が停まると、その車の中から人が声をかけて来る。中を見ればどうやら家族のようだ。
「これは一体なんの集団だい?」
「避難しているところだ」
「わ、私達も連れて行ってくれ!」
「もちろんだ。ついて来い」
その車がついて来る。すると、すぐに道端を武器を持って歩いている集団がいた。俺達がバイクを止めて、集団に声をかける。
「どこに行くつもりだ?」
「都市に向かおうと思っている!」
「だめだ。都市はまだゾンビが多く、空爆の対象になっている」
「そうなのか…」
「俺達と来い!」
「分かった!」
また人が増えた。そうして進んでいると、次々に声をかけられて人が増えていく。まるで引き寄せられているかのように、大集団になって来た。
タケルが俺に言う。
「変な感じだ」
「ギャングスターの強運というやつか?」
「分からねえけど、そうとしか言いようがねえぞ」
「そうだな」
車に便乗し、トラックに乗り込んで飲み物を分け合っているようだ。見つけたゾンビは、俺が剣技で凪払い問題なく進んで行く。するとトラックからクラクションが鳴り響いた。俺達のバイクがスルスルと後退して、トラックの脇を並走する。
フランキーが言った。
「こっから右に行くと、あんたらが言っていたラフィートだ」
「そうか。ならここからは皆で力を合わせて先に進め。海までは空爆しないだろう」
「あんたら二人で行くのか?」
タケルが答える。
「ゾンビどころじゃねえ敵がいるんだよ。一般市民がいたら皆殺されちまう」
「わかった」
「フランキーさんよ。あんたの強運を見込んで頼むわ、生きてる人間を助けてやってくれ」
「分かったぜ! あんたらの幸運を祈っておく。またどこかで会えると良いな」
「ふはは、俺達になんか会わねえほうがいいよ。いつも危険な場所にいるんだからな」
「そうか…特殊部隊だもんな」
「んじゃな!」
「あんたらはいい奴だ。絶対に死ぬんじゃねえぞ」
「あんたらもな!」
皆が手を振り、俺達を送り出してくれた。そして俺達はギャングと生存者の集団から離れ、試験体が運び込まれた可能性の高いラフィートへとバイクを走らせる。
「ギャングっつっても人間なんだな」
「そうらしい」
「何の商売してっか分からねえけど、これからはまっとうに生きてもらいたいもんだ」
「ああ」
俺達のバイクが先に進むにつれて、ゾンビの気配が高まってくる。残り僅かな新型ゾンビ破壊薬は、温存しなければならない為、なるべく俺の剣技でゾンビを潰していく。
そしてタケルがスマートフォンを取り出して言った。
「そろそろラフィートだ」
俺達のバイクがスルスルと進んで行くと、ゾンビがバイクの音に惹かれてやって来る。俺の刺突閃で一つずつ潰していくと、ようやく最初の船着き場のようなところが見えて来た。
そこでタケルが言う。
「潜水艦が乗り入れるような場所じゃねえな」
「情報で教えられたのは、どのあたりだ?」
「自衛隊が送って来た情報じゃもっと奥だ。リトル湖ってところだな」
「まずラフィートの町の中心あたりで、破壊薬を撒いてやろう。生存者がいれば生き延びれる」
「だな」
ラフィートの町で数瓶の破壊薬をまき散らし、俺達は先に進むことにした。そしてようやくリトル湖に到着する。
「このどこかか?」
「九鬼さんに聞いてみる」
タケルがスマートフォンで通話した。
「おれだ」
「今どこだ?」
「潜水艦の消息が消えた辺りにいる。だが範囲が広くてよくわからねえ」
「わかった。大森に予測演算させてデータを送る」
「了解」
電話を切ってしばらくすると、データが送られてきた。
「なるほどなあ」
タケルが見ている画面を見ると、地図にはヘリポートと書かれた場所があった。
「ヘリコプターでここから空輸するつもりだったのか」
「そうらしいぜ。その時に逃げられたんだろ」
「行ってみよう」
バイクを走らせること数分、俺達の行く手は水に阻まれた。
「だめだ。どこ行っても湖にぶつかる」
「船を探そう」
「だな」
俺達はバイクを捨てて、船を探す事にした。すると小さな船着き場があり、その辺りにもゾンビがうろついている。二人でゾンビを始末し、動きそうな船を探していく。
するとタケルが見つけた。
「エンジンかかったぜ!」
「よし」
船にはタケルが倒したゾンビが倒れており、どうやら逃げる途中でゾンビに変わってしまったようだ。それを水に投げ捨ててタケルが船のあれこれを触り、ようやく湖に進んで行く。
「なるほど。由美に教えておいてもらって良かったぜ」
「やるなじゃないか」
「持つべきものは、レベル千の勇者の友達と船舶免許を持った彼女だな」
「そうだな」
「冗談のつもりなんだがな」
「すまん。笑いどころが分からなかった」
「はは。スベッた」
ボートがオオモリの指示した場所へと来ると、そこにはヘリポートの発着所があり、壊滅的に壊されていた。しかも湖には、軍服を着たゾンビがぷかぷかと浮いている。
「なるほど。水中にもゾンビがいるが、どうやら潜水艦が沈んだようだ」
「試験体が暴れたんだろ」
タケルが岸に船をつけ上陸した。そこは壊されまくった施設と、ゾンビがウロウロしている場所だ。
「手掛かりを探すぞ」
「んじゃ、いきますかあ!」
俺達が技を使って周辺のゾンビを駆除していると、壊れた施設のあちこちから軍服を着たゾンビが這い出て来た。俺達は虱潰しにゾンビを駆除していくのだった。




