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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第483話 ゾンビしかいない村

 険しい山道を登った先の、更に森の中にその村はひっそりとあった。俺達の車列が荒れた森の道を進んでいくと、気配感知には既にゾンビの気配が届いている。だがゾンビが氾濫している様子はなく、普通の人間ならば異常を感じないだろう。


「標識も何にもないのに良く分かったわね」


 マナがオオモリに言う。


「AIの解析ですよ。ネット上にあふれた情報を、僕のAIちゃんが解析した結果です」


「キモ」


「ひどい…」


 村の入り口に差し掛かると、柵があり俺達はその前で車を停める。


「閉鎖されているのか」


「どうする?」


 俺が車を降りて剣技を繰り出す。


「推撃」


 ドスンと音を立てて、入り口の柵が吹き飛んだ。


 ミンチが震えて言う。


「お、音を出すなって。化物が寄って来るだろ!」


「いや。来るならもう来ている」


「……」


「行こう」


 俺達の車列は柵を通り過ぎ、村の中に入っていく。ボロボロの建物が立ち並んでおり、俺達の車が入って来たというのに建物の中からゾンビが出てこない。


「どういう事だ……」


「ああ。九鬼さん。不気味すぎるな」


「ヒカル。確かにいるんだよな?」


「いる。だが息を潜めて出てこないようだ」


「なんでだ……」


 俺達の車列は村の真ん中ほどに進み、皆が武装を固めて車を降りる。何故こんなところにゾンビ共が村を作っているのか、そしてなぜゾンビが氾濫していないのか。それを知る必要があった。


 アビゲイルが言う。


「ミスターヒカル。危険になったら、新型ゾンビ破壊薬を撒きます」


「そうしてくれ。だがまずは情報が欲しい」


「わかりました」


「恐らくは全てがゾンビ化人間だ。だが一カ所に試験体の気配がする」


「そいつがここのボスかね」


「さあてな」


 そしてタケルがバリーをひきずりだす。


「ほら! 来いよ!」


「や、やめてくれ! いやだ!」


「ギャングのボスが情けねえな!」


「嫌だ…嫌だ……」


 ガチガチに震えている。確かにどうしようもない奴だ。


 タケルがバリーの首根っこを掴んで、俺と一緒に奥の試験体のいるところに進んで行く。もちろん皆がゾンビ破壊薬を仕込んだ拳銃と、ポケットにはゾンビ破壊薬のアンプルを忍ばせている。いざという時にはそれを使って、全ての息の根を止める事が出来るだろう。


 試験体の気配がする建物は、どうやら教会のようで俺達は入り口から様子を伺う。だが試験体は中の部屋で動く事はせずに、じっと俺達が来るのを待っているようだった。


「変だな」


「ああ。おかしい」


 恐らくは、ゾンビとなっても意識を保っていられる試験体がいる。


 念のため俺は皆に言う。


「念のため皆はここで待て。直ぐにゾンビ化人間に対応できるようにした方が良い」


 アビゲイルが新型ゾンビ破壊薬の瓶を見せて言う。


「みなさん。いざという時はこれを使いましょう」


 そして俺がバリーに言う。


「お前も来い。弟が行方不明になったんだからな」


「いやだ! やめろ! 逃げた方が良い!」


 だが今度はクキが言う。


「いいから来い。弟を助けるんだ」


「いやだ! いやだ!」


 俺とクキがバリーを連れて中に入っていく。すると試験体は祭壇の前で祈りを捧げていた。


「あれだ」


「ああ…」


 バリーのスマホの動画で見た奴がいた。コイツが分裂して人間になったのを見た。だがそれは神父の格好をしていて、俺達が来たにも関わらずにじっと祈りを捧げている。


 そいつに、あと五メートルほどに近づいた時だった。唐突にバリーの様子が変わった。


「うぐ…ぐぐぐ!」


 いきなり苦しみだすが、俺には何故か分かっていた。バリーはゾンビ因子に犯されつつあるのだ。すると目の前の神父がくるりと振り向く。神経質そうだが、優しそうな眼差しの眼鏡をかけた男だ。痩せていて、明らかに血色が悪い。


「ああ…哀れな」


 そしてクキが聞いた。


「ここで何をしている? この村は何だ?」


 すると神父は不思議そうな顔で、俺とクキを見て言う。


「あなた方は…何も感じませんか?」


「ああ特にはな」


 大きく目を見開いた。そして神父は言う。


「祈りが…通じましたか…。ですが、その人はもうダメです」


 そこで俺が答える。


「ああ。どうやらコイツはゾンビになるようだ」


「えっ! あなたは…それを分かっているのですか?」


「そうだ」


 すると俺達にスッと頭を下げた。


「本当に祈りが通じたようですね…よかった」


 クキがもう一度尋ねる。


「お前はファーマー社の人間だな?」


「ええ…少し前まではそうでした」


「少し前まで?」


「私はファーマー社を逃げた者です」


「逃げた……」


 すると神父はバリーを見て言う。


「はい。人が私に近づくとそうなってしまうからです」


「ゾンビ化か」


「はい。噛んだり触れなくても、五メートルに近づくとなります」


 そしてバリーがドサリと倒れた。だが間違いなくゾンビ化人間に変貌しつつある。ただのゾンビではなく、人をゾンビ化人間に変えるタイプの試験体らしい。


「なぜ逃げた?」


「そういう人間を増やすのが嫌だったからです。だからこの見捨てられた廃村に辿り着き、神父として祈りをささげ続けておりました」


「自らを隔離したのか?」


「はい。ですが、いつからか救済を求めて人がやってくるようになったのです。私にはそれをどうする事も出来ませんでした。いつしか、永遠の命が手に入るかのようなうわさが流れました。そのおかげで次々に人が訪れ、変わり果ててしまったのです。入り口を封鎖したのはその為で、あなた方はそれを破って入って来たという訳です」


 なんと…コイツはシャンティのように、人に危害を加えるつもりはないらしい。逃げて来たもののいつしか人があつまり、勝手にゾンビ化人間が増えていったようだ。


「それでこんなゾンビだらけの村が出来たという訳か?」


「はい。私はとんでもないことをしてしまったのです。死のうと思っても死ねずに、ただここでこうして祈るしかありませんでした。ファーマー社につかまれば有効利用されるか、更に新しい実験に利用されるでしょうから」


「そうか…」


 すると奥の部屋から、目の前の神父と全く同じのが、もう二人来た。その後ろからもう一人現れた男が前に出て、同じ顔の神父たちは後ろに立ってじっと見ている。どうやらあの動画で見たように、分裂するタイプのようだった。


「神父…また、人が来てしまったのですか?」


「ええ…」


 だがその男は倒れているバリーを見て言う。


「えっ! アニキ! アニキじゃないか!」


 男がバリーに近づいて揺り動かすと、バリーが薄っすらと目を開けた。


「お、て、てめえ! まだ生きてたのか!」


「ああ。アニキに、世の中を支配しそうな奴がいるって言えば、目が眩んで来ると思っていたんだけど、全然きてくれなかったね。ようやく来てくれたんだ?」


「あたりめえだ! 化物の住む場所なんかに来れるか! 勝手に連れてこられたんだよ!」


「でも…もう、アニキはゾンビだよ」


「はあ? んなわけねえだろ!」


 すると男は、突然バリーの胸を鉈で刺した。


「うっ! お前! あれ……」


「もう死ぬことはないんだ」


「うそ…だろ…」


「どうだい? もう貧困に怯える事もないよ?」


「嫌だ! 俺はバケモノなんかにゃなりたくねえ!」


「もう遅いかな」


「おまえ…。け、警察がこんな事していいのか!」


「だからこそだよ。もうアニキが人殺しをするのを見てられない。だけど俺はここから出る事が出来なかった。だからなんとかおびき出して、仲間に引き入れようと思ったんだ」


「てめえ……」


 男は俺達を見て不思議そうな顔をする。


「神父。この二人は…なぜ?」


「どうやらならない人達らしい」


「おお! やっと巡り合えたのですね!」


「そのようだ」


 すると男が俺達に向かって叫ぶ。


「わ、私達を滅ぼす方法を! 私達は自らを滅ぼす事が出来ない! 警察の仲間もみんなゾンビになってしまった! どうか!」


 そしてクキは神父に向かって言う。


「どういうことだ?」


「私は…いままで分身を使って、ここからゾンビ化した者が出て行くのを阻止していました」


「なるほど」


「ですがある時、あの法王の放送を見たのです。法王はゾンビを滅ぼす神の子が現れたといいました。だから私は自分らを殺す神の子を、ここで祈りを捧げて待ち続けたのです」


「自分らを殺す?」


「そうです。こうなってしまえば死ねなくなる。ですがあなたがたは、法王が言っていた神の子なのではありませんか?」


「まあ…法王とはあったが…」


 そんな事を言っていると、バリーが突然飛び起きてバッとその場を離れた。


「うおっ! すげえ! なんてえ身体能力だ!」


「あ、アニキ!」


「こんな力を終わらせるなんて勿体ねえ! これなら軍隊も怖くねえだろうが!」


「し、死んでるんだぞ!」


「死んでねえ。こうして自分で考えて生きてる! もう死を恐れる事はねえんだろ!」


「違う! 貧困にあえぐ事がないんだから、これ以上金を稼がなくてもいいんだ! もう銃を持って人を殺さなくてもいいんだ!」


「ばーか。こんなすげえ力があるんなら、生かさねえ手はねえぜ!」


 どうやら弟の思惑と兄の思惑は違うらしい。そこでクキが言う。


「馬鹿は死んでも直らねえか…」


「まってくれ! アニキ! そうじゃない! 話を聞いてくれ!」


「嫌だね!」


 俺はそれを無視して神父に聞いた。


「もう終わらせたいと言ったな」


「そのとおりです。ここにはギャングに追われ来た人が集まっていますが、全て生ける屍になってしまった。だが、いつかそこのギャングのような奴が出てしまうんじゃないかと、心配していたのでございます。残念ながら…とうとう、そのような者が出てしまいました。このまま増え続ければ、私の分身を使っても、もう堰き止める事は出来ないと思っておりました」


 それを聞いて俺が行った。


「俺はそれを終わらせることができる。本当に終わらせていいか?」


「やはりあなたは神の子なのですね?」


 だがバリーが高笑いして言う。


「神の子だか何だか知らねえが、おりゃ、ごめんだね! あばよ!」


 そう言ってダッ! と入り口の方に走っていく。


「屍人真空斬!」


 バリーはパラパラと崩れ去り、床にどす黒いシミを作った。


「あ、アニキ!」


「もう…目覚めん」


「ほ、本当に終わらせられるんだ…」


「ああ。村人を集めろ」


 すると神父が言う。


「わかりました」


「クキはシャーリーンを連れて離れてくれ」


「了解だ」


 クキが先に行き、神父が階段を昇って鐘を鳴らした。


 しばらくすると、次々に教会に人が入ってきて席に座る。皆がガサガサの肌をしており、既に人間の見た目をしていない。どうやらこの神父にゾンビ化されてしまった人間は、腐食が早いようだった。しばらくその光景を見ていると神父が俺に言った。


「これで村人は全部です」


「この人達にも伝えてくれ」


「はい」


 そして神父はゾンビ化人間になってしまった難民達に言った。


「みなさん。良く来てくださいました」


「神父様…」

「神父様…」


 皆が神父を拝むようにしている。


「生きながらにして朽ちて行くのはさぞ辛かったでしょう。ですがここにそれを終わらせられる人が来てくれました。もう辛い過去を抱きながら生き続け無くても良いのです」


「本当ですか……」


 神父が俺を見るので俺が頷いた。


「本当だ。そしてそれは一瞬だ」


 すると村人が言う。


「一瞬? 怖くないのですか?」


「ああ」


「なんと言う事だ……」


 そして俺は神父に向き直った。


「もう苦しまなくていい。苦しみの旅はここで終わりだ」


「わかりました。皆さん! ようやく法王が言っていた神の子が現れました。いつか来ると信じておりましたが、こうして目の前に来てくださったのです」


「「「「「おおお」」」」」


 皆はまるで、俺にすがるように祈りを捧げて来る。


「神よ…ありがとうございます」


 神父が祈るとゾンビ化人間達も祈りを捧げた。


 そして俺はポケットから、新型ゾンビ破壊薬を取り出して瓶のふたを開け、ざっと周りにふりまいたのだった。皆は…安らぎの顔で倒れ、そして機能を停止していった。


「アニキ…」


 男もばったりと倒れて動かなくなる。最後に残った三人の神父もガクリと膝をついた。だがアビゲイルが言っていた通りに、効き目が遅いようで苦しんでいる。


 俺は日本刀を上段に構えて振り下ろす。


「屍人斬」


 ザンッ!


 屍人斬によりゾンビ因子が全て崩れて、三体の神父が粉のように崩れて行った。


 俺の周りには動きを止めたゾンビが倒れ、俺は踵を返して皆の所に戻るのだった。

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