第480話 ポルトープランスの治安
ギャングに尋問したところ、どうやら最近首都に大きいギャングが現れた事で、縄張りを追われたという。そのギャングは子供年寄り関係なく殺すらしく、略奪などを好き放題やっているのだとか。
「お前らも同じようなんもんだろう?」
「ちがう。俺達はむやみに人は殺さない。時には反抗されて死んだり、はずみで殺したりすることはあるが、殺しが目的じゃない!」
「似たようなもんだ」
そしてクロサキが聞く。
「あなたもしかして、ゾンビの話を聞いた事がないかしら?」
すると二人のギャングは顔を見合わせてから、こちらに向いて言った。
「なんだい? ポルトープランスのギャングと同じことを言うのか?」
クキが取って代わって聞く。
「都心のギャングが何を言ってるって?」
「この世は終わる。だから今のうちにやりたい事をやるんだと言っている。そしてその理由は、いずれゾンビが世界を支配するかららしい」
「ゾンビが世界を支配?」
「も、もちろんそんな馬鹿な話は信じてねえけど、ヴードゥーの黒魔術でゾンビを蘇らせるってのは、この国で昔からの言い伝えだ」
クロサキが続けていう。
「他に何か知ってる事は?」
「その、ギャングのボスの弟が、ある村に行ったっきり帰って来なくなったとか」
「どういうこと?」
「しらねえ。ただそれだけだ」
「そのギャングの名前は?」
「サウザンド・ディーモンだ」
「ボスの名は?」
「そいつは……」
するとクキが首根っこを掴んで言った。
「早く言え。殺すぞ」
「わかった! バリーだ! バリー・ボルケー! 通称ミンチって呼ばれてる奴だよ!」
「ミンチ?」
「逆らったり裏切ったり、敵対組織の奴らが拉致されると、ミンチにされるんだ!」
「悪趣味だな」
「だから俺達は逃げた! ミンチにされたくねえからな!」
「なるほどね」
そしてクキがギャングに言う。
「お前らの仲間は取っ捕まった。俺達に車を差し出してくれるなら、お前らの命は助ける」
「ほ、ほんとうか!」
「本当だ。だからアジトに連れていけ」
「わかった」
「ちなみに言っておくが、下手な真似をすればアジトごとぶっ潰す。捕まった奴らが、警察にゲロするまえに連れて行くんだ」
「わかった! すぐに! 直ぐに行こう!」
それから一時間ほど歩いて、俺達はギャングのアジトに連れて来られた。そこはみすぼらしい小屋だが、雑多に車が置いてある。俺達がギャングを連れて、小屋に入ると女達が出て来た。
「あれ? みんなは? そいつらは何?」
「な、仲間はパクられた! ここから逃げねえとサツがくる」
「嘘でしょ……」
だがそこでクキが言う。
「本当だよ。とりあえずこいつらを助ける代わりに、車をもらいに来た」
「わ、わかった」
そして部屋の中から、車の鍵をもって来させる。
念のため俺が金剛と結界を張って前に出た。男達が大人しく車の鍵を持って来たが、奥から女達が出て来て手に拳銃を持って構えていた。
俺が男達に言う。
「やめさせろ。無駄に殺したくない」
男らが女に手を挙げて言う。
「やめた方が良い。この人らはおかしな術で腕や手を斬れるんだ」
「えっ…ヴードゥー?」
するとシャーリーンが言う。
「そうよ。魔導の力で呪われたくなかったら、大人しく車をよこしなさい」
女達が銃を下げ、男らが俺達と一緒に外に出る。荷台のあるトラックと、RV車を指さして持って行けと言った。
そこで俺が言う。
「お前達はギャングをやめろ。そして町の人の為に働け。サウザンド・ディーモンはそのうち消えるが、だからと言ってまたギャングを始めるんじゃないぞ」
「わ…わかった」
女達は不満そうにしているが、男は従うようで黙って俺達を送り出した。
クロサキが俺に言う。
「気休めですね。彼らはまた悪事を働きます。それだけこの国は貧困で、弱いものが犠牲になるような構造が出来ているからです」
「そうか。だが、この国の事はこの国に任せるしかない」
「はい」
俺達が乗る車は、アンスアピトルをでて一路、首都のポルトー・プランスを目指す。
ポルトープランスには六時間ほどで到着したが、既に夜になっていた。到着して分かった事は、あちこちに壊れた建物があること。オオモリが調べたところによると、十年ほど前の大地震の影響がのこっているらしい。
「復興がされてない」
「やはり見放された国なのかもな」
それを見てミオが言う。
「日本の縮図を見てるようだわ。やはり政府や外国の援助が無ければ復興などするわけがない」
マナが頷く。
「そうね。この状況でギャングがいたんじゃ、一般市民が生きるのは難しいわ」
クロサキも言った。
「この状況ではギャングがはびこるのも無理はないですね。さらに…ゾンビ騒ぎで、大勢の人が被害にあっています」
町に入って先ほどから俺が気配感知で感じているが、時おり訳の分からない殺気が飛んでくる。
「殺気に満ち溢れた町だ……」
それを聞いたクキが言う。
「まずは拠点をどうするかだな……」
それにオオモリが答える。
「それなりのところは確保できると思いますが、この状況ではむしろ安全とは言えなそうです」
「仕方あるまい」
そして俺達はオオモリが予約をしたホテルに行く。今までのように、超高級ホテルではなく一般的なホテルを選んだようだ。
「金持ちは襲われそうですから」
クキが答える。
「いいんじゃないか? とりあえずはそこで話し合いだ。外にいるよりは幾分安全だろう」
皆が頷いて、見た目はこぎれいな普通のホテルにチェックインするのだった。
そしてツバサがぽつりと言った。
「ヒカル…聞こえたよね」
「ああ。銃声がした」
「怖い所なのね」
「充分注意するべきだろうな。町を走っていても何度も殺気を向けられた」
数部屋確保したが、皆で一つの部屋に入り込み、サウザンド・ディーモンの攻略について話し合う。
まずは第一に、サウザンド・ディーモンに接触する必要があるという事。だが何処にいるかも分からず、町に出て調査をするしかないという結論になる。
この町はコンゴ民主共和国よりも危険で、ホテルとは言え安心はしていられないという事だ。
「で、サウザンド・ディーモンなんだが、どこに行って話を聞くかだな」
「九鬼さん。まずは繁華街じゃねえかな」
「やはりそうなるか。ならば行ける人間は限られてる」
「だな」
そして俺を起点に、夜の町に潜入するパーティーが編成されるのだった。




