第477話 ミサイルを飛ばした地へ
コロンビアのグアルーリョス国際空港に向かう車中で、俺達は緊急会議を行っていた。
オオモリが言った。
「恐らくヒカルさんが軍事衛星を落として間もなく、ファーマー社は緊急で軍事衛星を打ち上げたのでしょう。流石に命取りですからね、最重要事項だったはずです」
何故そんな話になっているのか? それはローマだけじゃなく、ここブラジルでも核弾頭が使用されたからだ。人工衛星が無ければ、正確にミサイルを撃ち込むことが出来ない。
「うーん…どうだろうかな? ローマでも核を撃たれたからな。国家でもないファーマー社が、そこまで迅速に復活できたのかは疑問だが…」
「さすがに軍事衛星がないままでは、軍事バランスが崩れ紛争がおきまくっていましたからね。大国は早急に衛星を打ち上げたでしょうけど」
「国…ならな」
クキが言うとシャーリーンがそれに答えた。
「こちらの調査では、恐らく国家かそれに準ずる者が後ろ盾についていると見ています」
「だろうな。一企業では、そんな直ぐに軍事衛星を打ち上げる事など出来ないだろう」
それを聞いてアビゲイルが言う。
「すみません…私は一研究者で、そこまで知らないのが申し訳ないです。でも調査内容からすれば、本社がある国が後ろ盾についているのでしょうか?」
「そうとも限らないです。そこを隠れ蓑にしている可能性もあります」
そこで、俺が思った事を言った。
「国より力のある組織や、財力のある個人はいないのか?」
するとシャーリーンが答えた。
「その可能性も考慮に入れています。カリム様がいうには、自分らのような財力を持っているものが集まれば、一国の資金力を超えるだろうと」
「ファーマー社を動かす組織か」
「はい」
オオモリが言った。
「回収したデータから考えても、あちこちに軍事施設がある馬鹿げた財力ですしね」
あの軍事組織や核弾頭を考慮に入れると、ファーマー社単体ではそこまで出来ないだろうと考えていたのだ。だとすれば後ろに国か、もしくはそれ相当の組織が付いていると考えられる。
「とにかくミサイルが飛んだ海域は、カリブ海域だ。確かめる為にも行く必要がある」
シャーリーンがそれに答える。
「ベネズエラ行きのチケットは全員分抑えています。旅客機で申し訳ないのですが、まずは観光客として向かってください」
俺が言う。
「助かる。シャーリーンが来てくれたおかげで、俺達の動きが随分早くなった」
ミオも言った。
「そうね。こんなに頑張ってくれているんだから、きっといい結果が待っているわ」
「ありがとう美桜さん」
そしてオオモリがニュースを見ながら言う。
「ようやくサンパウロの山の事件がニュースになってますね。大量火薬引火による、大爆発という事になっているようです」
「ミサイルを確認する時間も無かっただろうからな」
それにマナが言う。
「やったのはヒカルだけどね」
「なおの事分からないさ」
そして俺達は空港に着く。普通にゲートをくぐり、オオモリのハッキングで荷物は全てパスできた。飛行機に乗り込むと、他の観光客たちが荷物を収めており、まもなく機内の放送が流れる。
「アビアンカ航空に、ご搭乗いただき誠にありがとうございます。機長はテッド、チーフパーサーはレニータでございます。まもなくグアルーリョス国際空港を離陸いたします。シートベルトをしっかりとお締めいただき、テーブルトレーをたたんで、座席の背もたれを直立させてください」
そして飛行機は飛び立った。飛んでしばらくすると、ベネズエラに関して注意事項が流れる。
「バスや地下鉄は、スリやひったくりに遭う可能性があるため注意が必要です。移動は信頼できるタクシー会社を利用し、料金交渉は事前に済ませておきましょう。屋台での食事は、食中毒のリスクがあるため避け、生水は飲まずミネラルウォーターを購入して飲みましょう。安全な場所に立地しているホテルを選び、治安面で不安な場合の観光は避けた方が良いでしょう」
それを聞いて隣に座っているミナミが言う。
「また危ないとこか」
「コンゴ民主共和国も危険だったからな」
「ピリつくからイヤなのよね。出来れば平和な国が良いわ」
「ふふ、ミナミは面白いな。危険な冒険をしているというのに」
「女の子はね。危ない事は嫌いなの」
「日本刀は好きなのにか?」
「それとこれとは別よ。あんなに美しいものはないわ」
「武器なんだがな」
「いいえ。芸術品よ」
「そうか……。最初に日本刀を取りに行った時を思い出すな」
「ふふっ。あの時は楽しかったわ」
「怖がりまくっていたように見えたが?」
「怖かった。だけど…ヒカルと二人きりだった」
「それはそうだ」
「それだけで楽しかったの!」
「そうか」
そんな話をしていると、俺の反対側に座っているエイブラハムが俺に聞いて来た。
「ヒカルよ」
「なんだ」
「わしゃ最初、アビゲイルにゃおまえさんがいいんじゃないかと言ったんじゃ。だが…他に思い人がいるらしい。誰か分らんかの?」
「聞いた事がない」
「そうか」
するとミナミが目を輝かせて聞いた。
「先生。その話詳しく!」
「わしはヒカルの嫁候補に孫を推薦したのじゃがな、どうやら他にいるらしいのじゃよ。わしが聞いてもなかなか答えんし、いったい誰なのかなと思うて」
「えー! 誰かしら? でも…対象は限られるわね」
「ほう。誰じゃ」
「ハンジさんはおじさんだから違うでしょ。カリムさんは結婚しているから違う。桑田さん、それかジュリオ、もしくは…」
そう言ってミナミは、通路に頭を出して前に座っている奴らを見る。
「あと、九鬼さんか…まさか大森君?」
「ふむ。確かにそれくらいしか思いつかんのじゃ」
「まさかだけどね。お付き合いしていた恋人とか、居たんじゃないの?」
「どうかのう。その辺りの話を孫から聞いた事は無いのじゃ」
「そりゃそうよね。私だって自分のお爺ちゃんには言わないわ」
「そうか…」
謎は深まる。それからしばらくミナミは推理をし続け、俺にあれやこれやと話をしていた。飛行機は途中乗り継ぎをして、十二時間ほどかけてベネズエラに到着するのだった。
するとすぐにオオモリが言って来る。
「まずは宿泊場所ですよね」
それにマナが呆れたように言う。
「また…何か企んでるでしょ」
「はい」
オオモリはおもむろにタブレットを取り出し、パチパチとやり出した。
「なるほど…」
「なにがなるほどよ」
「機内放送で言ってたじゃないですか。安全な地域のホテルにした方が良いって」
「確かに言ってたわね」
「ここです」
俺達が見ると、ベネズエラ沖に浮かぶ島のようだった。
「島?」
「アルバ。ここにあるこのホテルです」
「…えっ! 一泊一人十七万円もするじゃない!」
「余裕です」
するとミナミが言う。
「愛菜いいじゃない。どうせ危ないことするんだから、泊るところくらい安全な場所にしましょう」
「そうか…そうね」
それを聞いたシャーリーンが言う。
「オランダ領アルバでございますね。流石は大森さん良い所に目を付けました。目的はカリブですからね、ベネズエラでなくてはならない理由はない。直ぐに出国の準備をいたしましょう」
「おねがいしまーす」
そして俺達はベネズエラの滞在を数時間とし、オランダ領アルバへと出航するのだった。




