第468話 流出し始めるゾンビ因子
ンジンジ・ファミリーのアジトに辿り着くが、入り口が厳重で中が見えない。扉に小窓があり、中に入るには中の奴から確認してもらわないといけないらしい。
「厳重ですね」
「そのようだ」
「ポエナ・イカーブをさらうにしても、ここにいるかどうかは分かりません」
俺はスマートフォンを使って、車に乗っているチンピラに言う。
「おい。全員で行って、ポエナ・イカーブに会いに来たと伝えて来い」
「はい!」
俺達をここまで連れて来たチンピラ達が、大きな扉に向かっていく。
「さて。行くぞ」
「はい」
そいつらが入り口の呼び鈴を押したと同時に、俺はクロサキを抱いて高い塀を飛びアジトの屋根に飛び乗った。屋上から見下ろすと、銃を持った奴が入り口に向かっている。
「進入する」
俺はベランダにおりて侵入した。気配感知では奥と下に人がいるようだ。クロサキが俺に言う。
「気配感知で人間のいるところは?」
「まずは奥だ」
クロサキが先に進み、ある部屋の前に辿り着いた時に俺が言う。
「中で三人。話をしている」
「わかりました」
そこでクロサキが中の奴らの話を立ち聞きする。
「幹部のようですね。酒を飲んでいるようです」
少しすると、階段下から人の気配が上がって来る。俺達はスッと身を隠し、その様子を見ていた。そこに来たのは、さっき入り口に行った男だ。クロサキが聞き耳を立て、ポエナ・イカーブを呼びに来たと聞こえたらしい。
「恐らくポエナが出てきます」
俺達が見ていると、あのオオモリが解析した動画に映っていた男が顔を出す。そのまま迎えに来た男と一緒に、階段を下りて行った。
「行こう」
俺達が再び進入した部屋に戻りベランダから見ていると、俺達を連れて来たチンピラのところにポエナがやって来た。
「客はどこだと聞いていますね」
「チンピラは俺達が居なくて慌てているんだろう」
「そのようです」
するとポエナがなにか指示を出し、残った奴らがチンピラをリンチし始めた。
「チンピラも反省するかもしれん」
「まあ……生きていられればですね」
「ポエナが戻って来る」
「はい」
俺達はさっきの部屋が見えるところで、ポエナが戻ってくるのを待った。ポエナがドアを開ける寸前に、俺が縮地で近寄り意識を刈り取る。そのまま背負ってクロサキのところに戻って来た。
「捕まえた行こう」
「はい」
俺達はそのまま先ほどのベランダに行き、クロサキに言う。
「前から俺にしっかりとしがみつけ。振り落とされるな」
「わかりました」
クロサキが両腕を俺の首に回して、しっかりと密着した。
シュッ! ベランダからジャンプし高い塀を越え、俺はその屋敷の前の通りに降り立つ。クロサキが俺から離れて言う。
「行きましょう」
「ああ」
それから俺達は一時間かからずにホテルの前へと戻って来た。
「クロサキ。またしがみつけ」
「はい」
クロサキは同じように俺の首に腕を回して抱き着く。そのまま十階のベランダに飛び移ると、中にいる仲間達が俺に気が付いた。
「な、なんで抱き合ってるの?」
「あ、これは違います」
俺が後に背負っているポエナを見せる。
「あ、背負ってたのね」
クキが言う。
「とりあえず縛って目隠しをするぞ」
ポエナは縛り上げられ、ホテルにあったナイロンの巾着袋に穴を空けてかぶせられた。俺が気を入れるとポエナが気が付く。スマートフォンを用意し翻訳の機能を開いた。
「な、なんだ! お、誰か!」
そこでクロサキが言う。
「こんばんはポエナ」
「お前は誰だ!」
「我々はある組織の人間よ」
「女? 縄をほどけ! 俺がンジンジ・ファミリーだって知ってんのか!」
「知っている。だから連れて来たわ」
「まさか! ジャ! ジャングルシャドウのやつらか!」
俺達は顔をみあわせる。するとオオモリが皆にスマートフォンを表示してみせた。ジャングルシャドウというのは、ンジンジ・ファミリーのライバルのマフィアらしい。
そしてクキが変わって言う。
「そうだポエナ」
「くそ! くそ!」
「どうした?」
「どうせ、殺すんだろう」
「さあてな、お前が何を話すかで決まる」
「報復か……報復に来たんだろう?」
そこでクロサキが何かを思いついたように手を挙げて、ポエナに行った。
「刑務所でお前がやった事は分かっている」
「くそ! なら、どうせ生かす気なんてねえだろ!」
「良くもやってくれた。と、言いたいところだけど、もしあなたが寝返るなら考えるわ」
「なに……」
「その代わり情報を喋るのよ」
「何だ?」
「誰を狙った?」
「知ってて聞いてんだろ…」
「お前の口からききたいところよ」
「ジャングルシャドウのボスだよ! 分かってんだろ!」
クロサキが周りを見て言う。
「そんな事は分かっている。手口を聞いてる」
「そいつは……」
ポエナが口ごもると、クキがポエナの口あたりにタオルを押し当て、後ろ側に回り縛られている指を掴んでへし折った。
ボキッ!
「うがあ! あああ」
「言う気になったかしら?」
「し、知らねえ」
「お前が差し入れをした事は知っている。何を差し入れた?」
「……」
ボキッ!
「んぐぅぅぅ!」
そしてクキがタオルを外す。
「まて、良く知らないんだ…」
「どこから入手した?」
「ま、まて! ちょっとまってくれ!」
ボキッ!
「んぐぁぁぁ!」
クキが後ろから言う。
「あと七本しかない。次は切るしかないぞ」
「ちょ、ちょっとまっ…」
ボキッ!
「んんん!!」
「あと六本だ」
「わかった。密輸だよ! 密輸」
「何を密輸した?」
「あのネットで話題になってるやつだ。ジャパンを壊滅させたって噂の薬だ!」
「ゾンビか?」
「そうだ! それだ!」
「ルートを言え」
「ま、待ってくれ」
ボキッ!
「がっ!」
「片手が終わったぞ」
「ふーっ! ふーっ! 港だ。港で手に入れた」
「だれから?」
「分からねえが、多分あれはファーマー社の社員じゃねえかと思う。出所は言うなって」
「そいつにはどうしたら会える?」
「それを知って、どうするんだ?」
ボキッ!
「ぐぁ……分かった…わかった…俺の後ろポケットにスマホが入ってる。そいつを取れ」
後のポケットからクキがスマートフォンを取った。
「俺の…指紋で解除できる」
「どの指?」
「右の親指だ」
そして折れた親指に付けると、スマートフォンが開いた。
「通話履歴を見てくれ」
スルスルとクキが見ている。
「ポールってのがいるだろ」
「ああ」
「そいつだ」
するとクロサキが言う。
「ならこの人にかけて、もっと薬を持ってくるように言って」
「そんなことしたら、この町がダメになるんじゃねえのか! 刑務所の暴動は凄かったらしいぞ!」
ボキッ!
「ふがあ!」
クキが言う。
「てめえがやったんだろうが、早くやらねえと残りの指は三本だ」
「お、折るならおれ!」
「いや。じゃあ切る」
「ひっ! ま、まってくれ!」
するとクキはタオルをひいて、ファイティングナイフで折っていない指を斬り落とした。
「ぎゃっ!」
口はクロサキがタオルで塞いでいる。クキは血をタオルで押して止めた。
「次は腕ごとやる。そして次はもう一本の腕、両足を斬り落として生きたままコンゴ川に投げる。生きたままワニに食われると良い。お前が吐かなければ、次はお前の組の誰か……いや、お前の娘だ」
「止めてくれ…わかった…やる」
そしてクロサキがポールとやらの履歴を押す。
「話して」
相手が電話に出た。
「どうしました?」
「あ、あの薬をもっとくれ」
「良いですよ。十万ドルの効果はあったでしょう?」
「あった。ム所では上手くいった」
「今度は敵の組織に使うんですか?」
「そうだ。十万ドルはすぐに用意する。だからもうひと瓶売ってくれ」
「わかりました。ではいつにします?」
「あ、朝の十時に」
「なら朝の十時に、キンシャサ植物園にお金を持ってきてください」
「わかった」
そして電話が切れた。
そしてオオモリが言う。
「携帯を僕に貸してください。パスを解除してこちらで操作できるようにします」
「あいよ」
「後は彼の声音をAIで生成します」
ポエナは力なくうなだれている。切った指を止血し、縛ったまま浴槽に連れて行かれた。
部屋に戻るとクキが言う。
「殺し屋のジョーイのような考え方をする奴が出て来た。いよいよ小銭を稼ぐ為に薬を売り始めたな」
「漏えい、しちゃったんでしょうね」
「いずれにせよ。明日接触して同じように聞き出すしかない」
シャーリーンが言う。
「悪党の扱いにも慣れているんですね」
「もう……散々やって来たからな。だがこうなってくると、いたちごっこだ」
「そのようです」
だがそこでミナミが言う。
「でも。この町にはゾンビ破壊薬を散布したから、ゾンビ破壊薬は効かないわ」
「だな。早く大量生産して、世界中に振りまくらねば」
俺達は新たな課題に直面する。これが世界中で起きる可能性があるからだ。俺達はそのまま一夜を過ごし、次の日の朝を迎えるのだった。




