第460話 コンゴ民主共和国で車を買う
チェンナイ、ファーマー社同時爆破テロ! と銘打った記事が、テレビやネットをにぎわしている。俺達はそれを、カリムが手配した飛行機の中で見ていた。
飛行機は一路、次の目的の地であるコンゴ民主主義共和国へと向かっていた。
そのニュースを見ながら、クキが嬉しそうに言う。
「流石に世界は、無視できなくなってきたな」
オオモリも楽しそうに答える。
「もう火消しは無理です。記事によると、ファーマー社との取引をやめる所も出て来たようですね」
それを見てシャーリーンが複雑な顔をしていた。
「それが、テロによる影響だとは皮肉なものです」
そう。世界がファーマー社から手を引き始めたのは、自分らもテロリストの標的にされるのを恐れたからである。既に正義の女帝や陰の組織は、テロリストとして世界中で指名手配を受けていた。そのテロリストが、ファーマー社を徹底的に叩いているというニュースが、世界を震撼させているのである。
そこでミオが言う。
「どうでもいいんです。とにかくファーマー社の首を絞める事が出来るのなら、私達は悪にでもなります。世界中が目覚めるまで、私達は徹底的に打ちのめします。それが私達の使命だと思うのです」
それを聞いてシャーリーンが言う。
「素晴らしい。流石は正義の女帝ですね」
「その呼び名は不本意ですが、私が悪になる事でファーマー社を倒せるならいくらでも悪になります」
俺はミオに言った。
「ミオだけが背負う訳じゃない。ここにいる全員、いや日本で待っている全員が背負う」
「うん」
そこでマナが言う。
「衛星通信が繋がったわ」
するとスマートフォンに、日本にいるカブラギからの通話が繋がった。
「応答せよ」
「あー、こちら潜入部隊」
「派手にやりましたね」
「そちらでも見れてるか」
「はい。このニュースが入った途端、我々はガッツポーズでしたよ」
「世界の目は既にファーマー社に向いている」
「ここまでの成果が出るとは思っても見ませんでした。流石は隊長」
「作戦中に知り合った人らのおかげだ」
そしてカブラギが言う。
「では。博士の要望で高島教授を呼んでいますので」
「頼む」
するとカブラギからタカシマに変わった。
「こりゃどうも。命がけの作戦ご苦労様です」
「あ、こちらも代わります」
そしてアビゲイルが通信に出た。
「ミスタータカシマ」
「これはこれは! 稀代の天才であるアビゲイル博士」
「よしてください」
「本当の事だよ」
「これからコンゴ民主共和国に向かいます」
「危険だなあ」
「治安がですか?」
「治安? ヒカル君がいるんだから、そこは全く気にしとらん」
「そうですよね。ではエボラの方ですね?」
「そう。エボラ出血熱は危険ですな」
「ですが、どうしてもゾンビ因子に対抗する為に、現地に行ってエボラの宿主をつかまえる必要があるのです」
「ゾンビ因子とは違って、自然界で一番危険なウイルスです」
「分っています。だからこそゾンビ因子に抵抗できる可能性があるのです」
「では、こちらで分析しているエボラ出血熱のデータや、解析の情報を全て流します。アビゲイル博士の方で見てもらい、どうにか対抗手段を見つけ出してください」
「ありがとうございます。私達は先生が発明した、ゾンビ破壊薬のおかげでかなり助かっております。ですがいろいろと弊害があるようですので、更なる改良が必要になります」
タカシマが乾いた笑いをする。
「そこで、エボラに目をつけるあたりが…本当に天才と言ったところでしょうかな」
「必然です」
「よろしく頼みます」
「はい」
そしてカブラギに代わる。
「とはいえ、コンゴ民主共和国は治安が悪い。武装集団もいるので、くれぐれも気を付けてください」
「了解だ」
するとマナが言う。
「そろそろハックを回避する為に回線を切ります」
「わかった。それじゃあ」
「はい」
そうして衛星回線は切断された。
「ふう。日本も頑張ってるんだ。我々ももう一息だな」
「「「「「はい」」」」」
「これから行く先にもファーマー社はいる。武装集団より厄介だ」
それに俺が言う。
「立ちはだかる者は、全て潰せばいい」
そしてシャーリーンが俺に言った。
「それよりもミスターヒカル。その格好でコンゴ民主共和国を歩きますか?」
「変えるつもりはない」
「わかりました。まあミスターヒカルなら問題ないですが、金目の物に悪党が寄ってきますのでお気を付けください」
「ファーマー社より悪くはないさ」
「そうとは限りません。殺人や誘拐など当たり前にしてきます」
「なるほどな。気を付けよう」
だが、ここにいる誰もが不安を抱いていなかった。それぞれに普通ではない力を持っており、皆が切り抜ける自信があるからだ。
そしてシャーリーンが言う。
「皆様、くれぐれもお気を付けください。これから先の国ではカリム様の影響は届きません。完全に自力で突破する必要があります」
「全く関係ない。今までと同じだ」
「分かりました」
そして俺達はコンゴ民主共和国の大地へと着陸する。空港に降り立った俺達は、直ぐに荷物を降ろした。飛行機はすぐにここから飛び立つらしく、俺達は飛んでいく飛行機を見送ってから空港を出る。
「明らかに今までの国とは違うな」
クキが言うと、皆が気を引き締めた。
「空港の人も言ってたけど、空港周辺から離れないようにって」
「治安が悪いからだろうな」
「まあ、離れるんだけどね」
「背負子に入ってるのは、ほとんどが食料とゾンビ破壊新薬だ。食糧調達もままならないこの地では生命線だ。奪われたりしないように気を付けてくれ」
「「「「「「「はい」」」」」」」
「では、目的地に向かう為に足を確保するか」
「了解」
金は持っているので、まずはこの土地の車屋に向かう。そして車屋に到着すると皆が驚いている。
「日本車だぜ」
それにオオモリが答える。
「古ーい日本車ですね」
クキが言う。
「古いが日本車は丈夫だ。RV車を二台買うぞ」
「見立ては任せとけ」
だが現地の言葉は、シャーリーンしか話せずミオが聞き取り出来るくらいだった。シャーリーンに来てもらった事が、ここでも大きく役立ったのである。
値段を聞いてタケルが言う。
「随分吹っ掛けられたなあ」
だがシャーリーンが言った。
「問題ありません。古くても程度の良いものだと言っております。それにこんなところで揉めていたら先に進めません」
「んじゃそれでいっか」
そうして俺達はRV車二台を手に入れて乗り込む。荷物を入れるとぎゅうぎゅうだが、後ろの荷台にも乗らないと全員が乗りきれないので、俺とタケルが乗った。シャーリーンやアビゲイルが乗ると言ったが、彼女らでは体がもたない。一番頑丈な俺と二番目に頑丈なタケルが荷台に乗る事にしたのだ。
後の十人はそれぞれ座席に座り、俺はクロサキが運転する車に乗って、タケルはクキの運転する車に乗り込んだ。そこでアビゲイルが俺に言う。
「窮屈ではないですか? ミスターヒカル」
「悠々自適だ。クロサキ! 出して良いぞ!」
「はい」
そうして俺達の車列は、目的地の村に向かって出発するのだった。




